小学校にオンライン教育がやってきた!
- 大学生
- 専門
- 一般
- 著者名
- 上松 恵理子 著
- 判型
- B6
- ページ数
- 144頁
- ISBN
- 978-4-385-36438-4
コミュニケーションの新たな回路を開き,“学びを止めない”オンライン教育のスタイルを知る。Withコロナの時代,海外事例からも学ぶ待望の入門書! 全4章,「オンライン教育Q&A」・「各教科でオンラインにトライするアイデア」・「簡略用語集」付き。
著者紹介
上松 恵理子(うえまつ えりこ)
博士(教育学)。新潟大学大学院人文科学研究科情報文化専攻修士課程修了、新潟大学大学院現代社会文化研究科人間形成文化論専攻博士後期課程修了。
現在、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、早稲田大学招聘研究員、国際大学GLOCOM客員研究員、明治大学兼任講師、東洋大学非常勤講師。
「教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟(超党派)」有識者アドバイザー。
総務省「プログラミング教育事業推進会議」委員を歴任した。
はじめに
この本は、「小学校でオンライン教育をするというのはどういうことなのだろう」、「いつもの授業でオンライン教育をプラスする方法はどのようなもので、どういった効果があるのだろう」、そして「学校にICTを導入するとどのようなことが起きるのだろう」という疑問に答えるものです。
この本で扱うオンライン教育の定義とは、インターネットを使い、学校でも家でもどこでも授業を受けることができるような教育です。教育の主体は学習者です。学習者の理解を促すためには、これまでの授業の一部にオンライン授業を導入することが今の時代に必要だからです。けれども授業の全てをオンラインで行わなければならないということではありません。
海外ではすでにICTの活用が進み、インターネットを使った調べ学習の宿題は、先進国では日本と比較にならないほど行われています。また宿題の提出もインターネットを介してクラウド上で行われています。そういったところでは突然の休校ということになってもオンラインで学習の継続が可能なのです。
小学校1年生で学校からID番号をもらい、授業で毎日インターネットにアクセスし、メールの送受信の方法や書き方などを授業で学ぶ国もあります。国によっては義務教育が日本よりも1年早くスタートするため、小学校1年生は日本の幼稚園年長さんの年齢にあたるということになります。そのような低年齢からICT化された教育環境にいるのが先進国の現実です。
未来の情報化された社会に対応できる力を醸成することが教育にも求められ、教育内容や方法を更新させ実践されている国々があります。そういった国々の教育内容の変化や進化には目覚ましいものがあります。それは教育が子どもたちの未来を担うものであるという考えからです。この本には海外事例をいくつか載せてあります。ぜひ参考にして頂ければと思います。
また、「インターネットが使える、パソコンが得意、いつもオンラインで色々なことをしている=オンライン教育ができる」ではありません。ですから、学校教育の現場にオンライン教育が入る時には、本書の事例は参考になると思います。そして学校関係者だけでなく家庭で学習者を支える保護者の方々にも読んで頂きたいです。2020年、学校も新型コロナウイルス(COVID-19)の脅威で休校になりましたが、日本の公立小学校ではわずか5%程度しかオンライン教育がされていなかったという報道もありました。
さらに、小学校の先生が紙のプリントを一人一人に配布するために家庭訪問をする事例があったそうです。学校に登校したら、学習プリントを渡されただけだったという事例もあったそうですが、保護者の方はどう思われたでしょうか?今どきメールもありますし、スマートフォンからウエブサイトも見ることができる時代です。学習プリントを紙で学習者に配る以外の方法が他に無かったわけではありません。
もちろん紙を否定するつもりはありません。どちらかではなく、利点を理解しマルチで併用していくことが大事です。グーテンベルグが活版印刷機を発明後、人々の教養は高まり、情報が伝達され保存されたという文化は素晴らしいものでした。また紙は長く保存するにもよいものでした。授業で紙のノートを使ってそれをポートフォリオにするという古典的な海外の事例もたくさんみてきました。長期保存という観点からみると読み取り機が必要ないという点では優れています。しかし、紙は紛失の懸念もありますからオンラインとベストマッチで使うということはリスク軽減になります。オンラインでやりとりすることは学習者がいつでもどこでも学習しやすい環境にいるだけでなく、教師にも保護者にもメリットがあります。どんなメリットがあるのか、これまでのやり方よりも効果的で簡単な方法がわかるように、この本を編んでみました。
コンピュータが発明され、その後、インターネットに接続されるようになった当時、素晴らしい可能性があることを研究者が唱えていました。それが現実となったのです。世界に繋がるツールがあるのに使わないのはもったいないことです。さあ、オンライン教育の扉を開きましょう。
著者