大学生のための メディアリテラシー・トレーニング

  • 大学生
著者名
長谷川 一・村田 麻里子 編著
判型
A5
ページ数
160頁
ISBN
978-4-385-36534-3

「テキスト」と「トレーニングシート」の2分冊で,日常の習慣的行為からメディアリテラシーの視点を学ぶ。テレビを考える/ケータイ・スマートフォンを考える/雑誌を考える/自分を撮る他,全19章。

*採用ご検討の際には、下記「〈大学向けテキスト〉一覧/見本請求」のページにて採用見本のご請求を承っておりますので、是非ご利用ください。

目次

本書の活かし方
   ──メディアを学び、メディアリテラシーを養う 1

第I部 基礎 身近なメディアを考える
はじめに 6
第1章 テレビを考える(1)
   ──映像が伝えるもの、伝えないもの 8

第2章 テレビを考える(2)
   ──番組編成・広告・産業としてのテレビ 16

第3章 ニュースを考える
   ──私たちは何を共有しているのか 24

第4章 ケータイ・スマートフォンを考える
   ──身体と空間をめぐる関係 33

第5章 ソーシャルメディアを考える
   ──新しいコミュニケーション空間 38

第6章 ネット社会を考える
   ──アーキテクチャとネット上の会話 45

第7章 雑誌を考える
   ──紙のメディアの可能性 52

第8章 ラジオを考える
   ──日常的な音との関わりから 57

第9章 メディアとジェンダー、エスニシティ
   ──描かれること、描かれないこと 65

第10章 メディアリテラシーの系譜
   ──3つの学びのモデル 75

第II部 応用 メディアを拡張して考える
はじめに 86
第11章 写真で地域を物語る
   ──自分なりの「ものの見方」とは 88

第12章 自分を撮る
   ──「わたし」が映す「わたし」 95

第13章 街中にあふれる記号を読む
   ──広告・サイン・貼り紙 100

第14章 メディアとしての空間
   ──展示を読み解く 105

第15章 複製される空間と行為
   ──コンビニを読み解く 111

第16章 イメージの帝国
   ──ディズニーランドを読み解く 116

第III部 発展 物質性と身体性から考える
はじめに 124
第17章 「よく知っている」を捉えなおす
   ──認知地図・カメラ・トマソン 126

第18章 「わたし」とは誰なのか
   ──デジタルストーリーテリング 134

第19章 のぞき見ることと見せること
   ──テクノロジー・映画・アトラクション 147

参考文献 153
執筆者紹介 159

コラム1 インターネット時代のマスメディア 14
コラム2 インターネットと広告 22
コラム3 インターネットと表現の自由 31
コラム4 インターネットと倫理 43
コラム5 初音ミクとN次創作 50
コラム6 異文化を理解する 63
コラム7 メディア教育 73
コラム8 大学でメディアリテラシーを教えること、学ぶこと 82

本書の活かし方

本書の活かし方 ─ メディアを学び、メディアリテラシーを養う

 この本は、これからメディアやメディアリテラシーについて勉強を始めようとしている大学生のみなさんを支援するために編まれたものです。基礎から応用、発展まで、要点をきっちり押さえながら着実に理解を深めてゆくことができるのはもちろん、誰もが知っている身近なメディアを手がかりに、実践的な手法をとおした学びができるよう、十分に配慮され、工夫が凝らされています。思う存分に活用し、とことん使い倒してください。

 メディアリテラシーは、社会のあらゆる場所にメディアが入り込んだ現代において、必須の基礎力として要請されています。─というと、よく耳にするような、インターネット利用の危険性から身を守れという類の主張を連想するかもしれません。でもご安心を。「お説教」するつもりなどありませんから。

 「リテラシー(literacy)」とは読み書き能力のこと。だからメディアリテラシーとは、メディアを読み書きする力のことだといえます。注意してほしいのは、たんなる知識や即物的な技術的能力というより、知識に裏づけられた教養という意味あいを帯びていることです。幅広くて深い見識をもち、物事をしっかり把握して、的確な判断をくだすことができる力、それがリテラシーなのです。メディアリテラシーもまた、メディアを読み解き、メディアをつかって表現することをとおして、物事をさまざまな角度から捉え、論理的かつ柔軟に思考することができるような力を養うことと結びついています。

 つまり、メディアリテラシーを養う最大の意義は、メディアとメディアをめぐる世界のあり方を批判的に見つめかえし、それまでとは異なる相貌で捉えなおすことができるような視座を獲得することにあります。なぜなら、今日では誰もが多種多様なメディアを当然のように日々つかいこなしているため、私たちにとってメディアはあまりにも自然であたり前なものになってしまっているからです。実際には、まったく自明なものでないにもかかわらず。ですからメディアリテラシーとは、特殊な人のための特殊な技能なのではなく、誰もが身につけるべき素養であり、誰であれ身につけることができる力なのです。

 そのための柱となるのが、実践的な学びです。教師が学生に知識を授けるという従来からの座学的手法ではなく、身体をつかった活動のなかで、学生が自身の気づきを育み、理解へとつなげられるようにデザインされた授業のこと。中心となるのは、学習者が自身のリアリティのなかでメディアとの関わりをあらためて発見しなおしてゆくプロセスです。教師が果たすべき役割は、知識の伝達というより、そのプロセスを支援することにあります。

 メディアリテラシーにおいて実践的な学びが鍵を握るのは、どんなメディアも身体と結びついて行為や活動を織りなしているからです。実際、大学をはじめとする教育現場では往々にして、教師よりも学生のほうがメディアをより広く深く使用しています。ある意味では、教えられる立場の人のほうが、教えるはずの人よりも詳しく知っている。この逆説的状況に、従来型のやり方で対応できるはずがありません。リアリティに根ざした新しい発想が不可欠です。

 本書の文章は、それぞれ独自の文体やスタンスをもっていますが、それも執筆者それぞれのリアリティに根ざしているためです。なぜこんな話題を扱うのか、どんなリアリティなのか、背景を想像してみましょう。そして学んだことはぜひ、読者それぞれのリアリティのなかに置きなおしてみてください。

 本書は基本→応用→発展という3部構成をとっています。第Ⅰ部「基本」は、すべての出発点であり土台でもある核となるパートです。身近な種々の媒体を中心に、しくみや読み解き方など、基本となる重要項目が網羅されています。

 つぎが第Ⅱ部「応用」です。ここではメディアという概念を少しずつ拡張し、撮影という行為や街中のサイン、ミュージアムの展示から、コンビニやディズニーランドといった空間までを扱います。時間的余裕がないときは、いくつかの章を選んで勉強してもいいでしょう。

 なお第Ⅰ部と第Ⅱ部では、別冊のトレーニングシートを活用することで、簡単なワークショップを実施することができます。テキストとトレーニングシートを往復しながら、実践的で双方向的な学びのなかで理解を深めてください。

 第Ⅲ部「発展」では、より根源的な問題へと遡り、物質性と身体性という観点からメディアを捉えかえします。このパートには、あえてトレーニングシートを付していません。まずはテキストをよく読むことから始めましょう。

 さいごに、編集の労をとってくださった三省堂編集部 飛鳥勝幸さんに御礼を申しあげます。

[長谷川一・村田麻里子]

編著者・執筆者紹介

<編著者紹介>
長谷川 一(はせがわ はじめ)
明治学院大学 文学部 教授。博士(学際情報学)。東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。
『ディズニーランド化する社会で希望はいかに語りうるか』(慶應義塾大学出版会)、『アトラクションの日常』(河出書房新社)、『出版と知のメディア論』(みすず書房)、『知の現在と未来』(共著、岩波書店)、『本は、これから』(共著、岩波書店)ほか。


村田 麻里子(むらた まりこ)
関西大学 社会学部 准教授。博士(学際情報学)。東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。
『思想としてのミュージアム──ものと空間のメディア論』(人文書院)、『マンガミュージアムへ行こう』(共編著、岩波書店)、『ポピュラー文化ミュージアム──文化の収集・共有・消費』(共編著、ミネルヴァ書房)ほか。

<執筆者紹介>
長谷川 一(はせがわ はじめ)
 →<編著者紹介>
担当:本書の活かし方、第III部はじめに、15章、16章、17章、18章、19章。


村田 麻里子(むらた まりこ)
 →<編著者紹介>
担当:本書の活かし方、第I部はじめに、第II部はじめに、9章、14章、コラム8。


林田 真心子(はやしだ まみこ)
福岡女学院大学人文学部専任講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。
『コミュナルなケータイ』(共著、岩波書店)ほか。
担当:1章、8章、12章。


古川 柳子(ふるかわ りゅうこ)
明治学院大学文学部教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。テレビ朝日報道局・編成制作局勤務を経て現職。
『コミュナルなケータイ』(共著、岩波書店)。
担当:2章、コラム1、コラム2。


土屋 祐子(つちや ゆうこ)
広島経済大学経済学部准教授。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。メディア実践のワークショップを多く手がける。
『現代地域メディア論』(共著、日本評論社)ほか。
担当:3章、10章、11章。


宮田 雅子(みやた まさこ)
愛知淑徳大学メディアプロデュース学部准教授。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。
『メディアリテラシー・ワークショップ』(共著、東京大学出版会)ほか。
担当:4章、5章、7章、13章。


小笠原 盛浩(おがさはら もりひろ)
関西大学社会学部准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。
主要論文「ソーシャルメディア上の政治コミュニケーションとマスメディア」ほか。
担当:6章。


松井 修視(まつい しゅうじ)
関西大学社会学部教授。福岡大学大学院法学研究科博士課程満期退学。
『レクチャー情報法』(法律文化社)ほか。
担当:コラム3、コラム4。。


溝尻 真也(みぞじり しんや)
目白大学社会学部専任講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。専門は音楽メディア研究。
『メディア技術史』(共著、北樹出版)ほか。
担当:コラム5。


劉 雪雁(りゅう しゅえいえん)
関西大学社会学部准教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。
『東アジアの電子ネットワーク戦略』(共著、慶應義塾大学出版会)ほか。
担当:コラム6。


森本 洋介(もりもと ようすけ)
弘前大学教育学部専任講師。博士(教育学)。京都大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。
『メディア・リテラシー教育における「批判的」な思考力の育成』(東信堂)。
担当:コラム7。


関連書籍

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大学生のための メディアリテラシー・トレーニング

  • 2015年09月10日発行
  • 定価 2,310 (本体2100+税10%)
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