三省堂だより・後記
144号-153号
(SEPTEMBER 2000~MARCH 2002)

 124号-133号
 134号-143号
 「ぶっくれっと」一覧


144号  145号  146号  147号  148号  149号  150号
151号  152号  153号(休刊号)

144号(SEPTEMBER 2000) 144号目次

■大変ユニークな英語関係の辞書が二点刊行されました。ひとつは『クラウン受験英語辞典』。文字通り大学受験のための辞典です。重要度によってランク分け、色分けした入試頻出後一万四千、各大学の入試実例一万六千余を収録。和訳・英訳・誤文訂正・空所補充・適語句選択など各種問題形式も網羅し、解法のポイントまで明解に解説しました。もうひとつは『カタカナで引ける英和辞典』。新聞・雑誌で、テレビで、歌の歌詞で氾濫するカタカナ語。カナで表記されているものや音で聞くものはつづりが分からない――そんな時のための辞典です。これまでもカタカナ語辞典はありましたが、四万四千語も収めた、本格的な英和辞典でカタカナで引けるものは初めてです。もちろん普通の英和辞典としても引けるよう、アルファベット順の索引が付いています。

■ハンディ国語のトップセラーの『デイリーコンサイス国語辞典』と、カタカナ語辞典のトップセラー『コンサイスカタカナ語辞典』も、現代を映す最新の言葉を収録した最新改訂版が新発売になりました。

■昨年秋から今年の五月末を締め切りとして募集した「だいじょうぶでなかった わたしの日本語」エッセイに、幅広い年齢層の皆様から380余編の作品をお寄せいただきました。第一次・第二次審査を経て、次の七名の方々(敬称を略させていただきます)の作品が優秀作品と決まりました。ご本人にお知らせし、秋から全国の書店で配布する「辞書カタログ2000秋~2001春号」に掲載させていただく予定です。

奥山朋子(岐阜県恵那市)児玉南海雄(福島県福島市)菅原幸子(石川県金沢市)永澤裕子(宮城県仙台市)松本真理(静岡県沼津市)山本由美子(大阪府豊中市)吉田光雄(神奈川県横浜市)

■小社ではこの秋、全国主要書店で4種の辞典フェアを開催します。「勉強一途の辞典フェア」「ビジネスサポートの辞典フェア」「輝く女性の辞典フェア」「シルバーと孫の辞典フェア」。それぞれのタイトルに沿った選りすぐりの辞・事典を集めました。抽選で120名様に小社カタログから一万円分をプレゼントする特典付きです。


《後記》

山口仲美先生の敬語簡素化のお話、平安朝の複雑な体系を熟知された方の御意見として面白く拝聴いたしました。ところで、学生の間で「見れる」「着れる」が定着し、それが文法的に誤用だとの意識すら薄れてきたとのこと。英文法では、三単現のsを落してはいけないなど、あれだけ口やかましく注意しながら、国文法の誤りに寛容なのは変な気がいたしますが。

▼尤も、前号対談の山田先生のお話で、書記言語がきちんとしていれば、話し言葉は時代の波に揺れても構わないと、成程、波に揺られて消えてゆくものなんですね。

▼その山田先生の『詞苑間歩』に、敬語について次の様な文章がありました。「敬語の使ひ方は、なかなかむつかしいといはれる。謙遜のことばも同じことである。文法学者のいふ敬語法は、尊敬と謙譲と丁寧の三種を区別するものであるが、この三種は、時により場合により、相手と自分とのかかはりによつて微妙に変化するのが面白くもあり、また善意はあつても心理の動きが必ずしも正確に映らないところが泣きどころになる」

(塩)


145号(NOVEMBER 2000) 145号目次

■小社は1881(明治14)年、4月8日、東京・神田神保町で三省堂書店として開業しました。その2年後から出版も手がけはじめ、1915(大正4)年に出版と印刷部門が株式会社三省堂として独立しています。創業以来明年4月8日には、満120年を迎えます。本号の表紙に上掲の120年マークを入れました。このシンボルマークは、今後広告・印刷物などさまざまな場面で使用する予定です。また小社とルーツが一緒の三省堂書店でも同一デザインのシンボルマークが使用されます。今秋から明年いっぱいを120年記念の年として位置付け、支えていただいてきた読者の皆様への感謝をこめて、記念出版・謝恩フェアはじめ多彩な記念事業を展開する予定です。記念出版や謝恩フェア・記念事業については追々ご案内していく予定です。

■先号でもお知らせしましたが、120年記念フェアの第一弾として、今秋全国主要書店で四種類の辞典フェアが開催されています。「勉強一途の辞典フェア」「ビジネスサポートの辞典フェア」「輝く女性の辞典フェア」「シルバーと孫の辞典フェア」。それぞれのタイトルに沿った選りすぐりの辞・事典を集め、120年マークをあしらったポスター・POP・シールなどで飾り付けています。抽選で120名様に小社商品からお好きなものを一万円分選んでいただくプレゼント特典付き。全国のフェア開催店は一覧を小社ホームページに掲載してあります。

■秋は六法の季節。今年は民法・商法が大改正されたほか、民事再生法、消費者契約法、ストーカー行為規制法、児童虐待防止法、任意後見契約法、後見登記法など新法令が目白押し。実務と学習に定評ある判例付き六法の『模範六法』、小型携帯版の学習用判例付き六法の『コンサイス判例六法』、生きた法律を学べる、市民と学生のための小型法規集の『三省堂新六法』、公務員試験のための判例付き法令集の『公務員試験六法』の4点が10月中に発売になりました。類書中最大の202件の法令を収録し、昨年一部地域で品切れになるほど好評の『デイリー六法』も11月に発売されます。


《後記》

池内紀、中村保男両先生の連載が始り、「昭和の暮方」の項を併せると本号は何かカフカ、ロレンス、福田恆存と、反時代的人間の揃踏みといった感じです。連載記事が多くなりましたのは、当初二、三年の予定でスタートしたものがいよいよ佳境に入り、まだしばらく続く気配になって参りましたことと、その連載の終了を見越して依頼したものがはや脱稿の事態に至ったことによります。いづれにしても紙面が充実するのはよいことかと。

▼小誌連載の記事が単行本になります。神谷不二先生の「国際政治の半世紀」が小社から年内刊行の予定で進行中。リンボウ(林望)先生の巻頭言がPHPから、倉田保雄先生の「ナポレオン・ミステール」が文藝春秋から刊行の予定です。すでに本になったものに、阿川佐和子さんの巻頭言が『いつもひとりで』(大和書房)に、鶴見俊輔・佐高信両先生の対談が佐高信対談集『こいつだけは許せない!』(徳間書店)に、大野晋・山折哲雄両先生の対談が山折哲雄対話集『いのりの旅』(現代書館)に、それぞれ収録されて居ります。

(塩)


146号(JANUARY 2001) 146号目次

■いよいよ2001年、21世紀を迎えました。小社は1881(明治14)年、東京神田神保町で三省堂書店として業して以來、21世紀初頭の本年4月8日には創業満120年を迎えます。

 書店としてスタートしつつ、創業直後から出版事業も開始し、1915(大正4)年に出版と印刷部門が、株式会社三省堂として独立しました。ルーツをともにする三省堂書店も小社とともに4月8日に、創業満120年を迎えます。

 明治・大正・昭和・平成と、著者・関係業界の方々、読者の皆様にささえられて、わが国出版社の中で有数の長い道程を歩んでくることができました。皆様のご厚情に厚く御礼申し上げます。

 21世紀の初頭の年に、新たな121年目の歩みを踏み出します。これまでの辞書、教科書、六法・法律書、学習参考書、単行本、電子出版物はもちろん、急激なITの流れの中で、これまで培ってきた蓄積とノウハウをもとに、新たな、積極的な事業展開を目指してまいります。

■創業120年を迎えるにあたっては、いかに新しい小社の歩みを、読者の皆様に発信する120周年とするかに努力を傾けてまいりました。その結果空前の36万語もの収録語数を誇る『グランドコンサイス英和辞典』を柱に、『三省堂国語辞典 第五版』、キッズ(英語絵じてん)シリーズ4点、シルバー(大活字)辞典シリーズ6点、時代別国語大辞典・言語学大辞典の完結など、粒よりの出版企画をそろえ、合わせて『袖珍コンサイス英和辞典 復刻版』ほか5点の名著復刻版も用意しました。

 また本誌表二にご紹介しました通り、画期的な辞書の情報サイト「三省堂Web Dictionary」が1月12日、12時(正午)にはサービス開始となります。さらに関係業界の皆様のご協力を得て、この春前記記念出版物を中心に、楽しい読者プレゼントを加えた多彩なフェア企画を全国主要書店で展開してまいります。

 創業120年記念企画の成功とともに、121年目の新しいスタートに立つ小社に、より一層のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。


《後記》

20世紀最後の年、世紀末、ミレニアムなど形容語の多かった年もいつもと同じ時間がながれ(閏年で平年より一日多いだけで)、新しい年となりました。本年もどうぞよろしく。

▼過日、鈴木孝夫先生の講演を聞きましたら面白いことに、インターネットと英語との結び付きに必然性はない、と。偶々今は英語が主に使用されるだけであり、そのために英語を習得しなければと焦るのはナンセンスである。いづれ日本語でインターネットができる様になりますよ、とのこと。それで思出しました。かつて福田恒存先生が、タイプライターにのらないからと漢字廃止を叫んだ浅薄な論者に対し、機械のために日本語があるわけはないのだから、日本語のために機械を開発したらどうかと伝った。今や機械は漢字廃止どころか、制限自体を無にする情勢にあること周知の通りです。

▼前号の小誌掲載記事を収めた単行本情報に一冊追加。文藝春秋から刊行された米原万里著『ガセネッタ&シモネッタ』に米原さんの前号までの巻頭言と、柳瀬尚紀先生との対談が収録されました。

(塩)


147号(MARCH 2001) 147号目次

■創業120年の記念事業として、1月12日にスタートした日本最大級のウェブ辞書、「三省堂Web Dictionary(e辞林)」が、おかげさまで大好評です。1月12日から1月26日の2週間の総アクセス数が50万件近くにものぼり、個人の会員申し込みも続々到着しています。「ウェブ・ディクショナリー」を紹介した新聞・雑誌の記事を集めた分厚いファイルも二冊めに入りました。スタートから3月11日まではすべて無料でご利用いただけますが、12日以降は無料部分と 有料部分に分かれます。個人会員は年額2000円の会費ですが、3月11日までにお申し込みいただいた方は創業120年記念として初回の年額利用料は半額の1000円でご利用いただけます。また、法律で定める学校の個人会員は通常の半額でご利用いただける特典も用意しています。

■創業120年記念出版として『グランドコンサイス英和辞典』も刊行されました。わが国最大(多巻ものをのぞく)の36万項目もの収録語数を、使いやすいA5変型判に収めた英和辞典。このクラスとしては初めて二色刷です。連日たくさんの内容見本のご請求をいただきました。激しい変化の中にあるビジネスに、大学の英米語学・文学はもちろん理工・医学関係者にも必携の辞書になると自負しています。

■創業120年記念出版としては右の『グランドコンサイス英和辞典』を柱に、生きのよい現代語を満載した『三省堂国語辞典 第五版』、2002年小学校「総合的な学習(外国語会話)」にいちはやく対心した、楽しい「えいご絵じてん」シリーズ(四点)、従来の辞書を拡大したものでなく、最初から中高年のために内容を精選し、紙面設計した「大活字」シリーズ(六点)、『袖珍コンサイス英和辞典』ほか五点の名著復刻版など、いっせいに刊行しました。

■三月下旬から四月中旬にかけてこれら記念出版物が勢揃いしたフェアが、全国主要書店で開催されます。フェアの中で楽しい読者プレゼント(クイズ応募・抽選でプロ野球観戦付きホテル宿泊券)を実施します。ぜひフェア実施店のポスターや小社の新聞広告にご注目ください。


《後記》

「ものを書き出した二十何年か前から使ひ出して今でも始終、御厄介になってゐる字引に、三省堂の英和大辞典がある。昭和三年に初版が出たもので」と吉田健一が書いたのは昭和三十五年、当時すでに絶版だったので「字引の中でもかういふ、名作に属するものが一時的にも市場から姿を消すといふのは惜しい。字引にもかうして名作とか、古典と呼んで差し支へないものがあるので、それよりも少し語彙が新しい字引を出す位のことでもう無用になるといふものではない」

▼晩年の読点を極端に省いた文章と違って読み易い吉田辞書論、もう少しつづけますと「字引といふのは、ただ言葉を一定の順に従つて並べるだけで出来るものではないのである。一篇の文学作品、或は一箇の機械と同様に、その背後には或るはつきりした構想があり、それが長年の努力で大体の所は実現されて、(略)一冊の字引が作られる」

▼この評言に相応しい『時代別国語大辞典 室町時代編』が完結しました。一度書店で御覧いただきたく。それでは「三省堂英和大辞典」はどんな辞書だったか。八王子の資科室へ調べに行って参ります。

(塩)


148号(MAY 2001) 148号目次

■3月初旬に小社創業120記念出版として刊行した『グランドコンサイス英和辞典』がおかげさまで大好評です。新聞での紹介記事は全国紙はもちろん、各地方紙にも数多く掲載されています。紹介記事執筆にあたり、ある新聞社から「わが国最大の36万項目とありますが、本当にわが国最大ですか」との確認の問い合わせがありました。辞典協会が毎年発行している『優良辞典六法目録』の2000年版によると、『ランダムハウス英和大辞典 第二版』(小学館)が34万5000、『リーダーズ英和辞典 第二版』(研究社)が27万、『研究社露和辞典』(研究社)が26万、『小学館国語大辞典』(小学館)が25万、『新英和大辞典 第五版』(研究社)が23万5000とあります。もちろん多巻ものの『日本国語大辞典 第二版』(全13巻)(小学館)の50万がありますが、一冊ものの辞書では『グランドコンサイス英和辞典』がわが国最大の収録項目数となっています。

■愛読者カードも続々到着しています。3月末までの到着分でみますと、本書のどこがよいですかとの質問には、「収録語数が多い」が第1位、「2色刷紙面が見やすい」が第2位、「携帯性、利便性がよい」が第3位です。まさに、『グランドコンサイス英和辞典』の特長そのままです。

■創業120年を記念して、謝恩プレゼント実施中です。クイズ正解者の中から抽選で60組、120名様に八月下旬の東京ドームでのプロ野球セリーグ公式戦チケット付き東京ドームホテル宿泊券をプレゼントします。
《問題》
(1)三省堂は創業○○○年
(2)『グランドコンサイス英和辞典』は○○万項目収録

問題の○の中に入る数字をお答えください。お名前・年齢・ご住所・電話番号を明記のうえ、ハガキで小社宣伝部(住所は本誌裏表紙をご覧ください)宛にお送りください。締め切りは2001年5月末日(当日消印有効)。発表は当選通知の発送をもってかえさせていただきます。ふるってご応募ください。


《後記》

日本は今黒船以来の危機に直面して居るのであり、これからの英語教育はつまるところ大衆教育でなく、エリートを作る教育にギア・チェンジすべきだ、と鈴木先生は仰言る。少々過激なお話、あと2回つづきます。かつて東大の柴田元幸助教授に聞いた話ですが、90年代には彼が学生だった70年代の学生数の1.5倍になったとのこと。学力の上の方へは広がり様がないので、下の方を取ることになる。それだけ東大生の学力は薄まってしまった。

▼考えてみれば、日本全体が同じ様な事態にあるので、高校全入から大学進学率が5割に達するなど、教育の大衆化はずいぶん進みました。そのためか、落ちこぼれやいじめが社会問題になったりして、教育内容をどんどん易しくしてしまった。学力低下は当然の帰結ですね。落ちこぼれを作るまいと、跳箱を飛べない生徒が何とか飛べるまで、すでに飛んだ生徒は待たせておく、高等教育も同様にここ数十年やってきた。まさに「教育の普及は浮薄の普及也」(斎藤緑雨)ですか。

▼今回は吉田健一に褒められた『三省堂英和大辞典」について書く筈が紙数がつきました。

(塩)


149号(JULY 2001) 149号目次

■前号の本欄でもお知らせした、「創業120年謝恩プレゼント(クイズ正解者の中から抽選で60組、120名様に東京ドームでのプロ野球セリーグ公式戦チケット付き東京ドームホテル宿泊券プレゼント)」は5月末日をもって応募締め切りとなりました。全国から2万通を超える膨大なハガキが届いています。厳正な抽選のうえ当選者には当選通知をお送りします。発表は発送をもって代えさせていただきますので、ご了承ください。

■各新聞・雑誌で募集した『グランドコンサイス英和辞典』刊行記念100冊プレゼントにも23,000通ものご応募をいただきました。こちらも厳正な抽選のうえ、100名様に『グランドコンサイス英和辞典』をお送りしました。当選者の方から「ありがとうございました。勉強好きな主人、開口一番『これで孫の勉強が見てやれる』と喜んでおりました」というお便りも。

『言語学大辞典別巻 世界文字辞典』がいよいよ刊行されます(6月末)。『言語学大辞典』は1988年に『世界言語編・上』が刊行されて以降、「世界言語編」の全4巻、「補遺・言語名索引編」「術語編」と続き、この『世界文字辞典』をもって全巻完結となります。収録文字数は、これまで報告された古今の文字をほぼ網羅。規模と精度において現在望み得る最高水準の本格的文字辞典です。親見出し272、空見出し230。各項目は名称、系統、分布、歴史、普及状況、文字組織、文字構成、字形、文字見本、参考文献などを詳述。図版約1,000点、文字表約400点を収録。付録には国別使用文字一覧、地域別主要文字分布図を付け、研究者、図書館、資料室はもちろん、デザイン関係者にも必備の一冊です。内容見本を用意していますので、小社宣伝部宛にご請求ください。

■同じく7月には『e康煕字典 日本語版CD-ROM』も刊行です。中国清代に編纂され、漢和辞典の母体となっている『康煕字典』全一冊のデータをCD-ROMに収録。親字47,000字を読み、部首、総画数、筆順で検索が可能。漢文・中国語・漢字情報処理研究者に必備のCD-ROMです。


《後記》

前々号のこの欄で紹介した昭和3年刊『三省堂英和大辞典』(定価7円、特価5円50銭、2680頁)ですが、扉を開くとすぐ「術語分担執筆家芳名」として、105名の各分野専門家と一機関(これは参謀本部欧米課)の名がズラリと並びます。「文学」は坪内雄蔵、「哲学」井上哲次郎、「法律学」金森徳次郎、「語学・文法」金田一京助、「冠詞・助動詞他」市河三喜、ほかにも帝国大学教授、名誉教授、理学博士、工学博士、医学博士、経済学博士、陸軍中将、海軍少将、公爵と錚々たるメンバーであり、これでは原稿はなかなかできなかったのではと思ったら案の定、「巻頭の辞」に「本職の傍、劇務の余暇、之が執筆に當らるるものなるを以て、原稿蒐集の進行編者の焦慮と一致せず。到底豫定の歳月を以て之が完成を期待する能はざること明なるに至れり」と。で、どうしたか。次回のお楽しみに。

▼1998年から昨年にかけて本誌に連載し、好評を博した神谷不二先生の『国際政治の半世紀・回顧と展望』が刊行の運びとなりました。新たな書き下ろしの項を含め216頁、定価1900円(+税)です。

(塩)


150号(SEPTEMBERY 2001) 150号目次

■「三省堂創業120年謝恩プレゼント(クイズ正解者の中から抽選で60組、120名様に東京ドームでのプロ野球セリーグ公式戦チケット付き東京ドームホテル宿泊券プレゼント)」は、全国から2万通を越えるご応募をいただき、厳正な抽選の結果、60組、120名様の当選が決まりました。北は岩手県、南は鹿児島県まで全国各地から八月21日・22日・23日・24日・26日の5日間に分けてプロ野球巨人戦と東京ドームホテルの宿泊をお楽しみいただきました。発表は当選通知の発送をもってかえさせていただきましたが、あらためて膨大なご応募に感謝しつつ、当選者決定の報告をさせていただきます。

■昨年に引き続き、この秋全国主要書店で四種類の辞典フェアを開催します。「勉強一途の辞典フェア」「ビジネスサポートの辞典フェア」「シルバーライフの辞典フェア」「パワフルキッズの辞典フェア」。それぞれのタイトルに沿った選りすぐりの辞・事典を取り揃えました。フェア商品に貼ったシールが応募券になって、抽選で120名様に小社カタログの中からお好きなものを一万円分プレゼントする愛読者特典付きです。また16年ぶりに大改訂される『新コンサイス英和辞典』『新コンサイス和英辞典』を中心とした、創業120年記念フェアの第二弾も予定しています。

■来年四月から新指導要領にもとづいた新しい小学校・中学校の教科書が使用されます。それにともなって小社では小学生と中学生の学習辞典をいち早く改訂し、この秋続々新発売です。小学生用では『三省堂例解小学国語辞典』『三省堂例解小学漢字辞典』、中学生用では『初級クラウン英和辞典』『初級クラウン和英辞典』『例解新国語辞典』『例解新漢和辞典』です。さらに小学校で始まる国際理解教育に対応して、ビデオ全10巻にピクチャーカード、ウォールチャートなどを組み合わせた英語活動用教材も準備中です。

■六月米に刊行された『言語学大辞典 別巻世界文字辞典』が大変注目されています。小社のホームページへのアクセスのトップです。内容見本も用意していますので、宣伝部あてにご請求ください。


《後記》

前回に続き昭和3年刊『三省堂英和大辞典』ですが、多数の専門家に原稿依頼をしたものの多忙のため執筆は遅々として進まない。そのときに編集部の採った方法は、別に一冊の百科事典を作ることだった。この因果関係、よく分らないのですが、やってみれば百科事典も一冊で済む筈はなく、巻数も費用もかさみ第六巻を出して会社が倒産(大正元年)、再生して全10巻の完成は大正8年。英和大辞典はさらに8年を要し、編集に着手した時点に遡れば「前後殆ど四十有春秋に垂んとせる」

▼その熱意あふれる巻頭の辞の「我編輯所は常に巧遅を尊び敢て拙速に就かざリしは、即ち前後を一貫して毫も渝らざるの事実なり」とは少々手前味噌としても、後年の吉田健一のオマージュ、「三省堂の大辞典に就て特筆していいのは、一つは訳語が正確であるばかりでなくて、それが何れも本格的な日本語になってゐることである。…又、語彙が百科大辞典といふその名に背かず豊富なのも驚嘆に値する」。以て瞑すべしと申しますか。

▼今号から倉田保雄先生の連載が始ります。また山口仲美先生の「日本語草子」は一回休載いたします。

(塩)


151号(NOVEMBER 2001) 151号目次

■80年の歴史を誇る「コンサイス」が英和・和英とも全面改訂されて新発売です。わが国の近代小型辞書のあけぼのといわれる『袖珍コンサイス英和辞典』が生まれたのは、1922(大正11)年8月25日。「袖珍」とは着物の袖に入れられるほどの形という意味です。

■684ページ・収録語数5万7500でスタートし、戦前の1938(昭和13)年に第5版、戦後の1947(昭和22)年に第6版と版を重ね、1966(昭和41)年の第10版では、344ページ、収録語数は8万語に増えてきました。そして新発売の『コンサイス英和辞典 第13版』は1632ページ、現代語、俗語、日常語、専門語まで約13万項目収録のボリュームになっています。

■『袖珍コンサイス英和辞典』の姉妹編『袖珍コンサイス和英辞典』は、1911(大正12)年9月1日に刊行されました。大正12年の9月1日といえば関東大震災の日。このため「和英」初版本はほとんどが焼失、現存する初版本は大変貴重なものとなりました。新発売の『コンサイス和英辞典 第11版』は7万3000項目を収録。初版以来のローマ字引きから五十音引きに改めました。

■中国語学習者待望の、『クラウン中日辞典』が新発売です。学習に必要十分な6万5000項目(親字1万1500百字、熟語5万3500)を収録。新鮮で学習に役立つ用例、「表現」「用法」「比較」「由来」など豊富な参考情報、目中小辞典も付いています。ご好評をいただいている『クラウン独和辞典』も新正書法を全面採用し、6万項目を収録した第3版が新発売です。

■今秋、小社創業120年を記念して「コンサイス」英和・和英の最新版に、「デイリーコンサイス」シリーズ、『グランドコンサイス英和辞典』、「袖珍コンサイス」の英和・和英の初版復刻版に『クラウン中日辞典』を加えたフェアを、全国主要書店で展開します。フェア参加の書店名は小社ホームページに掲載予定です(前号でご紹介した四種類の辞典フェアの参加書店名はすでにホームページに掲載しました)。


《後記》

宗教は成立から千四、五百年を経た頃に新鮮な力を発揮すると村松剛『血と砂と祈り』にあります。キリスト教の15世紀は魔女狩り、異端審間が吹き荒れ、ジャンヌ・ダルクが火刑に処せられた。仏教は紀元前500年頃の成立として西暦1000年前後を見ますと、目本で源信が『往生要集』を書き、11世紀ばには末法思想が流行。そしてイスラム教です。年表によると西暦610年頃の成立ですが、1979年がイスラム暦1400年に当ったとのこと。

▼大事件が起き慌ててコーランの解説書などを開けば、「コーランで一貫している根本精神は人命の尊重である」「イスラム教徒同士で殺し合うことなど絶対に許さない」「被害以上の報復を加えることを禁止し、しかも、その報復の権利を放棄することを勧めている」と、にも拘らず狂信的テロリストが族出して居ます。

▼暗殺されたエジプトの大統領サダトが和平の為エルサレムを訪れた時の言葉、「回教徒もキリスト教徒もユダヤ教徒も、すべてが神を崇拝し、ただ神のみをあがめています。神の教えと戒律とは、愛と誠実と純潔と平和です」、これが実現するのは何時。

(塩)


152号(JANUARY 2002) 152号目次

■昨年年頭より一年間を「創業120年記念の年」と位置付け、それにふさわしい出版活動と、各種フェアを展開してまいりました。新刊辞書では、世界に誇り得る大型企画の『言語学大辞典 世界文字辞典』をはじめ、わが国最大の収録語数の『グランドコンサイス英和辞典』、使いやすさに定評ある『三省堂国語辞典』の最新第五版、キッズからシルバーまでとのキャッチフレーズに合わせた、小学生のための英語絵じてんシリーズと新しい大活字辞典シリーズ、さらに80年の歴史に裏打ちされ、磨きあげられた完成品の『コンサイス英和辞典 第13版』『コンサイス和英辞典 第11版』、待望の学習中国語辞典の『クラウン中日辞典』と続きました。また、わが国初の、120万語ものWeb辞書検索サイト、「三省堂Web Dictionary」(その後、2003年4月にリニューアル)を立ちあげることができました。

 小社はすでに121年目への新しい歩みを始めました。「ことばと教育の出版社」として、紙に印刷した書籍の形を大切にしつつ、あわせて電子出版、多彩な展開をみせる情報ツールへのコンテンツ提供まで、読者の皆様のニーズにお答えしてまいります。本年もよろしくお願い申し上げます。

■「いこう(衣桁)」「いなせ(鯔背)」「こけん(沽券)」…など、死語や死語になりかけたことばを集めた楽しい本が出ました。『生かしておきたい江戸ことば450語』(澤田一矢著・1600円)です。例えば「しらかわよふね(白川夜船)」=前後もわからず熟睡すること。京を知らない男が京の白川のことを問われ、夜船で通ったからわからないと答えた、という故事による、と解説したあと、落語の『三十石』の一説が用例として掲げられています。もはや死語に近いのでしょうか、「かや(蚊帳)」も「ちゃぶだい(卓袱台)」もこの本の項目にあります。

■知り合いが法事のお返しものに、『新明解故事ことわざ辞典』を使ってくれました。参加者に小学生が何人かいたせいか、会食の席は故事ことわざの大クイズ大会になり、おおいに盛り上がったとのことでした。法事をはじめ退職記念や出産祝いのお返しなど、名入れ辞書を個人の行事にご利用いただくケースが増えています。


《後記》

前号で御案内の通り、小誌は次号を以て最終号となります。124号から編集にあたりまして次号で丁度30冊目、丸5年担当したところで図らずも幕引役を仰せつかりました。御愛読いただきました皆様にお詫びと御礼を申し上げますと共に、この間、小誌に御登場いただいた筆者の方々のお名前を記して感謝の意を表したいと存じます(五十音順。小欄故敬称は略させていただきます)。

青木盛久、赤瀬川原平、阿川佐和子、秋永一枝、秋山虔、浅田次郎、飯島一泰、池内紀、石井桃子、市川孝、伊東俊太郎、井上章一、稲畑汀子、今井駿、今井雅晴、入江隆則、宇井純、上野千鶴子、内澤旬子、浦野起央、海老名香葉子、逢坂剛、大島晃、大野晋、尾形仂、荻野アンナ、小沢信男、越智道雄、小沼利英、岳真也、鹿島茂、加藤登紀子、加藤雅信、神谷不二、川本三郎、如月小春*、木下章、木原研三、木村繁、木村尚三郎、金田一春彦、久埜百合、倉島節尚、倉田保雄、高後元彦、糀正勝、古今亭志ん朝*、古藤晃、小西友七、顧明耀。(さ行からの芳名は次号に。*既に鬼籍に入られた方です。慎んで御冥福をお祈り申し上げます)

(塩)


153号(MARCH 2002) 153号目次

■昨年秋に刊行した高校英語の基礎を徹底攻略する『ビーコン英和辞典』がおかげさまで大好評です。全国の高校で新入生への推薦・採用が続々決定しています。高校でのご好評ばかりでなく、日常英語に携わっているビジネスマンからも「久しぶりに個性的な英和辞典の発刊です。いえ、日本で初のオリジナリティーのある英和辞典の出現といっても過言ではないでしょう」「高校生はおろか、社会人、プロの使用にも余りある快作です」との熱烈な賛辞をいただきました。

■四月から新学習指導要領に合わせた新しい小・中学校の教科書が使われます。小学校で国語辞典の引き方を勉強するのが、ほとんどの教科書でこれまでの四年生から三年生に変わります。また漢字辞典の引き方もほとんどの教科書でこれまでの五年生から四年生になりました。このため平成十四年度は新三年生と新四年生の両方で国語辞典の引き方を勉強するということになります。漢字辞典の引き方も同様に新四年生と新五年生の両方が勉強することになります。

 新しい小学校の教科書には「温室効果」「介助」「世界遺産」「キャッチコピー」など、これまでの教科書にはなかった言葉が数多く登場しています。そのため、辞書も新しい教科書に合わせて改訂されたものでないと、調べたいことばが出ていないということになりかねません。中学校の教科書もすべて新しくなりましたので、中学生用の辞書も同様です。小社では新しい教科書にぴったりの、小学生用『例解小学国語辞典』『例解小学漢字辞典』、中学生用『例解新国語辞典』『例解新漢和辞典』『初級クラウン英和辞典』『初級クラウン和英辞典』『初級クラウン英和・和英辞典』の全面改訂版を揃えました。

■本誌表二でご紹介している、日本最大級の Web辞書検索サービス「三省堂 Web Dictionary」が立ちあげから二年目を迎え、バージョンアップしました。収録語数三六万を誇る『グランドコンサイス英和辞典』を新たに登録し、16タイトル140万語となりました。また、『コンサイスカタカナ語辞典』『三省堂故事ことわざ辞典』の内容も最新版のものにし、検索機能を強化するなど、一層充実させました。


《後記》

前号につづき、この五年間に小誌に御登場下さった方々の芳名(さ行から)をあげ感謝の意を表します(敬称略)。

斎藤磐根、佐高信、佐藤要人、品田雄吉、篠弘、柴田武、辛淑玉、杉本達夫、鈴木一雄、鈴木孝夫、鈴木日出男、竹内誠、竹林滋、田近洵一、谷岡武雄、玉村豊男、千野栄一、陳舜臣、辻万千子、津野海太郎、鶴見俊輔、中村保男、新里眞男、新田春夫、信岡資生、萩谷朴、馬場あき子、濱川祥枝、濱口富士雄、浜辺陽一郎、早川東三、林四郎、林望、原義郎、深町眞理子、福本義憲、藤田洋、別府宏圀、細矢治夫、堀内修、堀江プリヤー、本名信行、本間長世、松岡榮志、松岡洸司、松本哉、道浦母都子、南伸坊、宮井捷二、武藤康史、森まゆみ、諸井誠、柳瀬尚紀、山折哲雄、山岸和夫、山口仲美、山田俊雄、山本孝夫、養老孟司、横地清、米原万里、若林俊輔、鷲巣月美、シュテファン・カイザー、チョ・ヒチョル、ピーター・バラカン、アーサー・ビナード

▼玉稿を賜りましたこと厚く御礼申し上げます。別れの言葉など少々気恥しいのですが、小林秀雄の「ランボウII」から。「果てまで来た。…私は別れる。別れを告げる人は、確かにゐる」

(塩)

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