三省堂だより・後記
124号-133号
(JUNE 1997~NOVEMBER 1998)

134号-143号
144号-153号
 「ぶっくれっと」一覧


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131号  132号  133号

124号(JUNE 1997) 124号目次

■今年も全国の高校に来年度ご使用の教科書の見本をお届けする季節になりました。小社では、国語12点、英語18点、社会11点、理科14点、数学6点の教科書を用意しました。『高等学校国語I』『オービットI』という2点の純新刊と、先生方からいただいた貴重なご意見をもとに、より使いやすく、分かりやすく工夫した改訂版です。小誌をお読みいただいている全国の先生方に、よろしくご検討のほどをお願い申し上げます。

■5月末には、『漢字引き・逆引き大辞林』が刊行されます。空前の23万3千語を収めた『大辞林 第二版』を、漢字・かなの文字別に再構成。『大辞林』を何倍にも楽しむマルチ検索辞典です。これまで大型国語辞典の「逆引き」は前例がありますが「漢字引き」は初の試み。『大辞林』の漢字を含むすべての見出し語を(1)同じ漢字が上につく日本語を五十音順に配列、(2)同じ漢字が末尾につく日本語を逆順に配列してあります。同じ漢字がつく日本語をまとめて一覧できる本書は、活用いただく読者のことばの世界をグーンと広げます。また、「漢字検定」を目指す皆さんの強い味方になるでしょう。ひらがなで書かれることばや、カタカナ語も逆引きでまとめて一覧、同じことばが末尾につく慣用句・ことわざもまとめて一覧できる、大変便利な検索辞典です。

■同じく5月末には『民間学事典』事項編・人名編が二冊同時刊行されます。「民間学」とは、いわゆるアカデミズム(官学)以外の、民間にその根をもつ学問を広く指しています。例えば、柳田邦男の民俗学、南方熊楠の生物学、山本宣治の性科学など。「事項編」では、暮らしのなかに根をもつ学問を七つの分野に分類して500余項目を収録。「人名編」では在野の学問を追究した約1000名の生涯、業績を解説しました。

■『漢字引き・逆引き大辞林』『民間学事典』ともに、内容見本を用意しました。ご希望の方は小社宣伝部(宛先小誌表4)までお申し込みください。


《後記》

衣更の季節になりました。小誌『ぶっくれっと』も、お色直しといひますか、新装開店版をお届けいたします。ひきつづき御愛読のほどを。

▼また第何次かの教科書問題が起きてをります。養老先生の文章を拝見し、三島由紀夫『金閣寺』に出てくる「南泉斬猫」の話を思ひ出しました。禅の公案で、禅院の東西両堂が一匹の仔猫をめぐつて争ひをおこしたとき、両派譲らず、南泉和尚はこの猫を斬つて捨てる。夜になり高弟の趙州が帰つてきたので、南泉は事の次第を述べ、趙州の意見を質すと、趙州、履を脱いで頭にのせて出て行つた。南泉は「ああ今日おまへが居てくれたら、猫の児も助かつたものを」。さて今日、養老師は教科書に墨をぬれといふ。教科書問題の渦中に、師若在、即救得……

▼サリドマイドからHIVと世に薬害の種はつきないかもしれません。自分をまもるためにも、患者自身が、ある程度の薬の知識は身につけておきたいもの。木村先生の長年の努力に敬意を表します。

▼芹沢俊介、川村三喜男両氏の連載は都合により休載となりました。

(塩)


125号(JULY 1997) 125号目次

■昨年末より5月末までの「大辞林キャンペーン」の一環として、『大辞林 机上版』にかぎって、初めて一冊から名入れを承ることとしましたところ、幸いたくさんのご注文をいただきました。これまでの10冊・100冊といったまとまったご注文は、企業や団体の業務や記念事業にかかわる名入れ。それに対して一冊からの名入れの『大辞林 机上版』は、あくまでもパーソナル・ユースです。

■最近承ったご注文の事例。「贈○○△△殿 父・母より」「贈 ○○□□殿 父・母より」「贈 ○○××殿 父・母より」と、別々の贈り先のお名前を箔押しした三冊。ご両親から三人のお子さんに、それぞれ一冊ずつ贈られたようです。

 大部分が、個人のお名前のみを箔押しした一冊で、ご自分の何かのメモワールなのか、蔵書としてなのかは伺い知れません。そんな中で、別々のお名前で一冊ずつのご注文が同時に十人、同じ書店さんを経由して入っています。これは何かのグループが、何かの記念に各人一冊ずつお名前を箔押しした『大辞林 机上版』をあつらえられたのでしょう。

 「○○△△生誕730年記念 24代○○□□」「断酒生活3年を記念し、この机上版大辞林を購入し、蔵書となす ○○△△」「△△浄水場水質係蔵書」というのもありました。

 「退職記念○○□□様 ○○○○一同」「祝 社会功労賞受賞 ○○○○一同」「祝○○○○博士 △△大学大学院□□研究室有志」「合格おめでとう○○○○様 贈 △△△△」「祝 成人○○○○様 △△△△」「願 快気 ○○○○」等々、贈る人、贈られる人の喜びや願いがたっぷりつまった『大辞林 机上版』。5月末までのキャンペーンの一環として始めた一冊からの名入れサービスですが,ご要望にこたえて今後も『大辞林 机上版』にかぎって、一冊からの名入れを承ります。小社の予測をこえる多彩な用途を、ぜひ読者の皆さんが開発してみてください。


《後記》

西暦2000年は20世紀最後の年か、21世紀最初の年か、と聞かれれば前者を採る方が多いかもしれません。では、何度も世紀末を経験した英国の辞書はどう記述するか。日本人学生に最も親しい『ロングマン現代英英辞典』で「世紀」を引きますと、「1900―1999年の期間が20世紀」とあり、オクスフォード版にもケンブリッヂ版の学習辞典にも同様の用例(後者は12世紀の例)があります。それでは他国の辞書はどうか。この調査結果は次回に。

▼言文一致について「書く通りに話すことはできない」と揶揄したのは確かヴァレリーですが、話した通りに記すことも至難の業であると、金田一、鶴見両氏の談話をまとめながらつくづく感じました。スポーツ新聞の見出し流で「舌好調」の話しぶり、その言葉の表情は決して文字になりません。

▼自画自讃の意味には、自分の描いた絵に自分の讃を付けること、自分で自分をほめること、の二つがあります。新刊紹介を著者自身に依頼することになり、少々もじって「自著自讃」としてみました。もちろん第一の意味をとりたいので、二番目の方は、有森さんにまかせて。

(塩)


126号(SEPTEMBER 1997) 126号目次

■小社中学英語教科書『NEW CROWN』に完全準拠したパソコンソフト、『NEW CROWN英語学習CD-ROM』(1・2・3年)は、こんなこともできるのかと驚かされます。教科書の音声、イラスト、写真はもちろん、アニメーションやビデオ映像などの動画も取り入れ、「聞く」「話す」「読む」「書く」という学習活動が、画面を見、音声を聞きながら実に楽しく展開されます。

 先ごろ、都内および近郊の中学校で英語を教えておられる先生方10余名にお集りいただき、このCD-ROMを実際の授業の中で、どのように活用していただけるかの研修会を開きました。ほとんどパソコンを操作したことがないという方もおられましたが、講師のレクチュアにしたがい、次々と画面を開き、マウスとキーボードを操作されていました。各学校でのパソコンの導入も急ピッチ。小社では今後同じような研修会を少しずつ規模を拡大しながら開催していきたいと考えています。

■『三省堂スーパー大辞林CD-ROM』も大好評です。8月には『音声入り電子ブック版大辞林&デイリー英和・和英』が発売されました。9月には『新グローバル&ニューセンチュリー英和・和英辞典CD-ROM』も発売され、電子出版ますます好調です。

■9月20日に『東京わが町 宮神輿名鑑』が刊行されます。撮影と編著の原義郎先生のお話では、まず東京にいくつの宮神輿があり、その祭礼がいつ行われるかの情報を集めるところからはじまったとのことです。26年間をかけて都心から多摩地区までの290余基を、祭りの情景の中で撮影する課程では、同じ日に祭りが重なりすぎてやりくりがつかなかったり、4年に一度しか行われない祭りが台風で中止になったり、とご苦労の連続だったようです、また祭りの現場の混雑の中での撮影のこと、車を置く場所もなく、すべて重い機材をかついで、電車とバスによる移動だったとのこと。

■祭りの情景と熱気をあますところなく伝える豪華写真集。ご期待ください。


《後記》

天国の門が今年3月39名、太陽寺院は94年52名、アメリカの新興宗教による集団自殺者の数です。これに反しオウムは集団自殺がありませんでした。アメリカのカルト教団はなぜ死に直結するのか。また日本の場合は? その文化的背景を探る越智論考、しばらくの連載です。

▼昭和30年代、大人の担ぐおみこしは荒々しく、子供心に怖かった印象があります。女性が触ることも二階から見下してもいけなかった(海老名さん)とは。僅か一世代、隔世の感がいたします。

▼「世紀」について、中西輝政『大英帝国衰亡史』中、次の文章が目にとまりました。「十九世紀の最後の年は何年か(中略)の問は一八九〇年代半ばのイギリスの知識界で――したがって世界中で――論争のテーマとなつた」そして王立天文局の「裁決」により、「1900年12月31日をもって19世紀の終りとする」と決着した。となりますと、はてさて前号に引いた辞書の用例は何なのか。あるいは、2000年になったときの新たな論争の楽しみを残してくれたのかも知れませんが。

(塩)


127号(NOVEMBER 1997) 127号目次

■今号は『新明解国語辞典』《第五版》新発売の特集号になりました。「新明解」は前身の『明解國語辭典』が昭和18年に刊行されてから55年目。昭和18年といえば,戦火激しくなり、紙の確保も困難さを増して来た時代。その時代背景の中で新しい現代語の辞典として刊行されたものです。今回《第五版》の刊行を機に、この昭和18年初版をその卓越した内容と時代背景の解説十七ページを付して《復刻版》も同時発売しました。

■昭和47年、『明解國語辭典』は山田忠雄先生を主幹とした『新明解国語辞典』として生まれ変わりました。以来昭和49年に《第二版》、昭和56年に《第三版》、平成元年に《第四版》と版を重ね、今日にいたりました。『明解國語辭典』刊行以来の54年間の総部数(小型・革・机上版を含む)は実に1700万冊。《第四版》だけでもすでに280万冊を越えました。これは辞書の中で、「新明解」という単独の商品としての部数として空前の数字です。

■新しい「新明解」は、これまでも定評のあったシャープな語釈、実感あふれる用例に一層みがきをかけました。収録語数もさらに増やして7万5000語収録、ストーカーやパパラッチなども収録されています。また国語辞典としては初めての試みとして、主要動詞に接続する格助詞を掲げて基本構文を示しました。例えば「上がる」という動詞に(どこヲ―/どこニ―)という格助詞を掲げてあります。これは学習や文章表現に大変役立つばかりでなく、外国人の日本語習得にも重要な情報です。

■今号の鼎談にご登場いただいた、赤瀬川原平さんの『新解さんの謎』(文藝春秋)も大評判になっています、小社の『クイズ新明解国語辞典』、山田忠雄先生の「私の語誌』と続き、マスコミでも数多く取り上げられ、読んで楽しめる辞書としてグーンと読者層が広がりました。

 同じ内容の「並版」と美しい「特装版」、読者の皆様から要望の多かった「大活字版」の新登場など、話題いっぱいの《第五版》です。


《後記》

『新明解国語辞典』で「世紀」を引きますと(この話、くどくなりましたので今回で止めますが)、「1901年から2000年までは二十世紀、〔誤って、1900年から1999年までと取る向きも有る〕」。同様の記述はアメリカの『スコット・フォーズマン』にも見られ、二十世紀は「1901年1月1日から2000年12月31日まで、俗に1900年1月1日から1999年12月31日までとよく見なされる」とあります。

▼農業国にして科学立国、文化の香高くして革命の国フランスの『プティ・ロベール』も「三世紀は201年から300年」ですし、こちらがやはり"科学的"なんですね。でも、こんな用例はいかがですか。「ルイ十四の死んだ1715年をフランス18世紀の始りとする」(白水社仏和大辞典)

▼宇井純、中村保男両氏の連載が本号を以て終了いたします。筆者の方々には長らくの御執筆、また読者の方にはその間の御愛読、有りがたく御礼申し上げます。

(塩)


128号(JANUARY 1998) 128号目次

■11月に発売された『新明解国語辞典 第五版』がおかげさまで大好評です。一部書店さんの売上データでは対前年比200パーセント前後、なかには四百パーセント近い数字も伝わってきています。

 マスコミにも「新明解」が次々に取り上げられはじめています。

 11月25日、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」で、荒川洋治さんが「新明解 第五版」と「明解國語 復刻版」を詳しく紹介。

 11月21日と11月28日の二回、文化放送「吉田照美のやる気マンマン」で、野末珍平さんがパーソナリティーのコーナーで「新明解・第五版」を紹介。

 1月11日と1月17日の二回、NHK総合テレビの「ことばTV」で「新明解 第五版」登場の予定。

 11月29日、読売新聞夕刊で、「人間味あふれる個性的な語句の解釈で定評ある新明解国語辞典の最新版が出た」として、〈実社会〉や〈公約〉という項目の実感あふれる語釈も紹介。

 11月30日、日本経済新聞「ブックマーク」欄で、「新明解 第五版」「明解國語 復刻版」「クイズ新明解」を紹介。

 11月11日、毎日新聞「余祿」欄で、「わだかまる」ということばの語釈を、「新明解 第五版」から引用…etc。

 これからも、さまざまな新聞・雑誌などで「新明解」が登場します。ご注目ください。11月初旬の「赤箱」「白箱」「革装」の発売に続き、12月初旬には携帯に便利な「小型版」と、読者のご要望が大変多かった「大きな活字版」も新発売になりました。読者の皆様の多様なニーズに応えるフルライン完成です。

■高校生の辞書を引く抵抗感を徹底して取り除き、本当に「わかる」ために数々の工夫をこらした「ヴィスタ英和辞典」、激動のドイツの現在を映し、新正書法を全面的に取り入れた初めての独和辞典の「新コンサイス独和辞典」、物の構造・機能を正確で簡潔な英文で記述するための辞書の「テクニカルライター英和辞典」と、新しい辞書も続々新登場です。


《後記》

ジャパン・アズ・ナンバーワン、21世紀は日本の世紀とはやされたのはいつの事でしたっけ。お隣り漢江の奇蹟を始めアジアの成長マシンは軒並み凋落、冷戦終結後八年にして深刻な経済危機です。平和とは「生産による闘争の時」(ヴァレリー)であり、国家間の戦はまだまだつづくのかもしれません。

▼第二次大戦の戦後もすでに半世紀をすぎましたが、キューバ危機、中東戦争、ベトナム戦争、中国の文化大革命、デタント、湾岸戦争、ソ連邦の崩壊とさまざまな事が起りました。神谷教授にはその五十年を見渡しアトランダムにテーマを取り上げ、論じていただく予定です。

▼『山口仲美の言葉の探検』に、近頃の若者は諺をひねり「壁に耳あり、ジョージにメアリ」と。そんな言葉遊びを面白がるんですね。やはり若者語で「情は人のためならず」に第二の意味ができたとは、もう旧聞に属しますか。「船頭多くして船山に上る」を、協力すれば不可能事も実現すると解した猛者がわが編集部には居ります。

(塩)


129号(MARCH 1998) 129号目次

■『新明解国語辞典 第五版』が、おかげさまでますます好調です。十一月の発売以来一月末までで、早くも50万冊を越えました。各雑誌での紹介記事も矢継早。新聞の一面下のコラムでも『新明解』からの引用が今まで以上に増えています。

 今回『新明解』は、スタンダードな赤箱と、斬新なデザインの白箱(特装版)を出しました。両者は内容はまったく同じで、お客様のお好みで選んでいただけるよう二種類の装丁を用意したものです。書店様のデータでみると、現在のところ両者の売れ行きの比率はほぼ半々のようです。

■11月末に刊行した『ヴィスタ英和辞典』も全国の高校の採用・推薦が続々決まりつつありますが、予想外に社会人にも受け入れられているようです。『ヴィスタ』は、学習者の負担を徹底的に軽減することの一つとして、できるだけ原音に近いカナ発音を入れました。社会人が使えるボリュームを持った英和辞典の中で、カナ発音を併記したものがこれまでになかったためではないか、と推察しています。

 『新明解』も『ヴィスタ』もいよいよ春の辞書のシーズンを迎えます。多彩に用意した他の小・中・高の学習辞書も含めて、先生方、書店の皆様によろしくお願い申し上げます。

■一昨年刊行してご好評をいただいた『三省堂こどもことば絵じてん』の続編として『三省堂ことばつかいかた絵じてん』が出ました。二歳から六歳までを対象に、子どもの日常生活に即した220の場面設定の絵本のような紙面で、ことばの使い分け、関連語、反意語などが自然に覚えられる構成です。

 『ことば絵じてん』では、広告で内容見本送呈を表示したところ、若いお母さん方から、連日大量のお電話をいただきました。今回も宣伝部がテンテコマイするほどのお電話があることを期待しています。

■三月には『引きやすい三分冊大辞林』『例解新漢和辞典』『デイリーコンサイス中日辞典』『官公庁のカタカナ語辞典 第2版』『コンサイス外国地名事典 第3版』と辞書の新刊が目白押し。ご期待ください。


《後記》

大野・山折両氏の対談は「カミ」の語源の問題から仏教論、日本文化論まで白熱の対話となりました。途中、コーヒーとケーキが出たものの、お二方とも見向きもなさらず、同席した当方、食べるに食べられず。対談終了後、山折さんに「あのケーキ、惜しいことをしました」と申し上げますと、「いや、話が面白かったですから」。この熱のこもった対話、二回にわたって掲載いたします。お楽しみください。

▼品田名画座新登場、今回は予告編です。中には本編より予告編の方が面白い映画もありますが、当名画座本編は古今の名作をさらに吟味の上、次号から開幕いたします。乞う御期待。

▼阿川さんの巻頭エッセイ、本号を以て終了いたします。一年のお約束で依頼したのはつい昨日のことの感がしますが、早いものです。私どもにもよく巻頭言が楽しみとの声が届きますので、阿川さんが抜けてがっかりなさる方は多数いらっしゃると存じます、アガワさんにはまたの機会もある筈。ひきつづき御愛読の程を。

(塩)


130号(MAY 1998) 130号目次

■関東周辺の皆さんのみへのお知らせで恐縮ですが、TBSラジオ毎週土曜日の「永六輔の土曜ワイド」という番組の中で、10時35分すぎから「明解三ちゃん」というコーナーが放送されています。『新明解国語辞典 第五版』の発売を機に小社提供で始まったコーナーです。リスナーからのことばに関するさまざまな疑問に、出演者の一人のはぶ三太郎氏が辞書を調べて答えた後、『新明解』の特色ある語釈を毎回一項目ずつ紹介し、「実感たっぷり、新明解国語辞典」と締めくくって終わります。手前みそかもしれませんが、リスナーからのユニークなことばへの疑問と『新明解』の実感あふれる語釈の紹介がうまくマッチし、楽しく聴けるコーナーになっていると思っています。東京周辺の桜が満開になった4月4日は、「はなぐもり」という項目の語釈を、アナウンサーの雨宮塔子さんが情感込めて読み上げてくれました。このコーナーは6月いっぱいまで続きます。

■細かい文字が読みにくくなってきた筆者の年代には、大きな活字の辞書や机上版の辞書は誠にありがたい存在です。しかし一冊に23万3000語も収めた『大辞林 第二版』は活字の見やすい机上版になると、ケースを除いても3.5キロ近くなり、重くて扱いにくいというジレンマが生じます。多くの読者の皆さんからも「大辞林机上版の分冊を」という声が寄せられ、ご要望にこたえて『引きやすい三分冊 大辞林机上版』を刊行しました。表紙も軽量化と扱いやすさを考えてソフトなカバーにしてあります。国語・漢和・英和・和英・カタカナ語などをそろえている「大きな活字の辞典」シリーズに、五月には『大きな活字の現代国語表記辞典』『大きな活字の漢字表記辞典机上版』『大きな活字の新明解四字熟語辞典』が加わります。

■6月末には、わが国初の辞書とCD-ROMを一体化した『ハイブリッド新辞林』刊行予定です。現代日本語15万項目を横組みにした辞書と、その全項目を収録し、インターネットへもジャンプできるCD-ROMを一体化しました。全国の書店で予約受付開始です。


《後記》

一行ごとに(笑)を付けたくなる志ん朝師匠のお話、その抑揚、律動を紙面に表せないのは何とも残念です。師匠の言葉の人を「しと」、一月を「しとつき」、私は「あたくし」と読んでいただけると、少し雰囲気が出るかもしれません。

▼神谷先生のお話に出た日米ソ三国の民間人モスクワ会談、1968(昭和43)年1月1日付読売新聞に掲載されて居ります。このときハーヴァード大学教授ヘンリー・キャッシンジャー44歳(ちなみに神谷先生40歳)、会談に一時間半遅刻をしてその理由が、ベトナム大使館に寄りベトナム戦争終結の条件を探っていたとのこと。まだ民間人でニクソン大統領の特別補佐官になるのはこの一年ちょっとの後のことです。

▼本号から巻頭のエッセイはリンボウ先生に替ります。「林望さんの出現はちよつとした事件である。このイギリス帰りの先生は、じつにおもしろい随筆を書く。をかしくて中身がある。藝があつて品がいい」(丸谷才一)リンボウ・ワールド、連載は一年の予定です。お楽しみください。

(塩)


131号(JULY 1998) 131号目次

■わが国初の辞書とCD-ROMを一体化した『ハイブリッド新辞林』がいよいよ新発売です。《辞書》は、「環境ホルモン」「キシリトール」「金融持ち株会社」「公的介護保険」「スラップスケート」「ビオトープ」「モバイルワーク」等々、最新のことばを積極的に採用。経済・政治・時事用語をはじめ、組織名・事件名・作品名など「現代」を読み解くあらゆるジャンルのことばを網羅して、15万項目を収録しました。もちろんカタカナ語も豊富。巻末には5000項目ものアルファベット略語辞典も付いています。

 15万項目も収めた辞書ですが徹底して使いやすさを追及したA5変型判で、片手でも十分扱えるサイズ。紙面は現代人にぴったりの、見やすく・引きやすいヨコ三段組みです。

■《CD-ROM》は、辞書の全本文を収録し、自在に検索できることはもちろん、引いたことばからより詳しい情報を知るために、関連するホームページに瞬時にアクセスできるのが、大きな特長です。

 例えば、辞書の「もんぶしょう」という項目を呼び出し、見出し語の前に付いている○印をクリックすると文部省のホームページのアドレスが表れます。そこをタッチすると改めて文部省のホームページアドレスを入力することなく、瞬時に文部省のホームページにつながります。さらに検索サービス・サーバのMapionを通して、文部省周辺の地図まで呼び出すことができます。本書では官公庁・大学・美術館・博物館など約3000か所のホームページにアクセスできます。また、検索サービス・サーバの「YAHOO」や「goo」を通してさらに幅広いインターネット情報への水先案内としても最適です。

■これまで、本とCDが一体となったものの例はいくつかありましたが、本書のように辞書とその全本文を収録したCD-ROMが一体となったものは、わが国初です。辞書とCD-ROMをセットになって本体6300円という低価格を実現し、今後の辞書の新しいスタイルのパイオニアとして、大いに期待しているところです。


《後記》

養老先生にお話を聞くためお訪ねした先は新潟県新井のスキー場「ホテル・ザ・クラブ」。ここに藤森照信、赤瀬川原平、南伸坊の路上観察学会の方々や気鋭の学者、評論家を集め四月末の木金土の三日間、昼はスキー(5月まで滑降が可能)に夜はシンポジウム、つまり自由闊達に討論する会(一般の聴講者は近隣在住の20名ほどしか呼ばない)とのことですから、今様「饗宴」と申しますか、きっと面白い会でしょうね。

▼アーサー・ビナードさんは1990年に来日、詩作や翻訳の傍らラジオのパーソナリティから青森県百石町のインフォーマントもつとめる米国人で、本年度「ふるさとの詩」大賞の授賞作はもちろん、今回のエッセーも日本語で書かれたものです。その「ふるさとの詩」大賞は羽生市(埼玉県)が市ゆかりの詩人太田玉茗を顕彰して制定し、今年で二回目。海外も含め1554編の応募作品の中からビナードさんの作品「釣り上げては」が選ばれたとのことです。この詩、お読みになりたい方は当編集部まで御一報下さい。

(塩)


132号(SEPTEMBER 1998) 132号目次

■7月初旬に発売した『ハイブリッド新辞林 全本文完全収録CD-ROM付き』がおかげさまで大反響。愛読者カードも続々寄せられています。

 早めに到着したカードでの分析では、購入年齢層が、20代3%、30代25%、40代38%、50代17%、60代以上が17%と、30代と40代を合わせると63%にもなります。これは小社の他の辞書の購買層と比べると若い方の購入比率が比較的高いという結果になります。

 また、愛読者カードをお寄せいただいた方の約70%がインターネットを利用しています。60歳以上の方にも相当のパソコン人口がいることもうかがえます。本書の「辞書を主に使う」と答えた方が9%、「CD-ROMを主に使う」が28%、「状況によって使い分ける」が63%。まさに本書の狙い通り。紀田順一郎さんからも「パソコン使用中はCD-ROMを、手元にパソコンがないときは冊子体を機能的に使い分けができる」という声をいただいています。

 読者の方からも「辞典+同内容のCD-ROMが付いていてこの価格は大変良い。インターネット機能も良い。検索語を入力しなくとも内容をパラパラ眺められるのがとても良い。こういう辞書を待っていた」(40代・男性・会社員)ほか、たくさんのご意見・ご感想をいただいています。

■新聞・雑誌にも幅広く紹介記事が出ています。7月12日朝日新聞・読書面のコラムで「新語・外来語を積極的に取り入れた三省堂の国語辞典『ハイブリッド新辞林』が、ほぼ同内容のCD-ROM一枚を付けた販売方法で注目を集めている」という書き出しで紹介。7月19日の日経新聞でも「現代の情報辞典刊行」と紹介されました。そのほか、新聞では読売新聞、毎日新聞、日経産業新聞、産経新聞、東京新聞、中日新聞など、雑誌では月刊アスキー、週刊アスキー、月刊マックファン、日経MAC、MAC People、PCing、ウィンドウズ ワールド、ターザン等々。

 ぜひ『ハイブリッド新辞林』にご注目ください。


《後記》

参議院選挙で自民党惨敗し過半数を割る:社会46、自民36、以下云々、これは小社刊『地図対照新日本史年表』の1989年の記述です。この年はベルリンの壁が壊されるなど世界的動乱が起りましたが、日本は太平マドンナの乱か、消費税絶対反対の旋風が吹きました。あの方々風と共に一体どこへ去ったのか。同年表によると、三年後の参院選では、自民復調:自民69、社会22、以下云々。さて、歴史は繰り返しますか。

▼前号でリンボウ先生がお書きになった「いぎりす」について、読者の方からお便りをいただきました。「島原の寒天状のいぎりすは紅藻類の〈いぎす〉を原料とした食物ではないでしょうか。私の郷里の鳥取県では、この海草を用いていぎすこんにゃくを作り食用としています。最近ではそれほどでもありませんが、以前はハレの日には欠かすことのできない料理の一つでした。島原で遭遇された食物も同類ではないでしょうか、味わいが今ひとつであったらしいのが残念ですが……」

(塩)


133号(NOVEMBER 1998) 133号目次

■ポケット判で最大の収録語数の『エクシード英和辞典』『エクシード和英辞典』『エクシード英和・和英辞典』が新発売です。これまで小社にはポケット判英語辞典の超ベストセラーの『デイリーコンサイス英和辞典』『和英辞典』『英和・和英辞典』がありました。それぞれ七万七千項目、七万項目、十四万七千項目を収録し、小型ながら大変見やすく、引きやすい紙面とご好評をいただいています。

 新発売の『エクシード』は同じポケット判ですが、広範な英語に取り囲まれている現代生活と広がる国際的なビジネス場面に対応し、ワンランク上の英語力を支援することを目指しました。そのため、ポケット判の限界を超える、最大限の語数を収録しました。『英和』12万、『和英』9万4000、『英和・和英』は合計で実に21万4000項目。ポケット判の英語辞典としては空前の収録項目数です。もちろん新語・口語・俗語からビジネス・コンピュータ・エコロジー・バイオテクノロジーの用語、地名・人名・企業名・組織名・商品名まで、現代生活に必要な最新情報を網羅しています。

 ビジネスに、海外旅行に、高校生・大学生の持ち運び用二冊目の辞書に、『エクシード』は圧倒的な収録語数で、『デイリーコンサイス』は抜群の見やすさ、引きやすさで、ポケット判英語辞典の双璧になることを期待しています。

■本欄を執筆している十月十五日現在、開会中の臨時国会で金融再生関連法など、重要法案の審理が続いています。こうした状況に対応し、例年では十月初旬に刊行していた『模範六法』の最新版の刊行が11月下旬まで延びることになりました。判例付き六法として実務に学習に定評ある『模範六法』ですが、その性格・読者層から最新情報をギリギリまで本文に織り込む必要があると考え、刊行日を変更しています。

 なお小社の他の六法『三省堂新六法』『デイリー六法』『コンサイス判例六法』『公務員試験六法』の最新版はすでに刊行されました。各々最新情報の別冊資料を作成してフォローする予定です。


《後記》

川勝平太『文明の海洋史観』、入江隆則『太平洋文明の興亡』など、太平洋を海道として東アジアの文明の交流を描く本が現れました。ブローデルやウォーラーステインに触発され、或いはその批判の上に成ったものですから、16世紀以降が論の中心となりますが、これを先史にまでさか上れば大野説に遭遇するのではないか。そんな次第で再び大野先生の御登場となりました。お相手は比較文明学会会長で十数ケ国語を解する、伊東俊太郎教授です。

▼先日、ある新聞一面のコラムに、ドイツの新正書法にふれ、これはオーストリア、スイス各独語圏の総意によるものであり、ついては同じ漢字を使用する日中が、漢字の字形を統一してはどうか、文化交流に資するのではないかとの感想が載りました。しかし、これは一言語内の表記法の統一と二言語にわたる文字(綴り)の統一を混同した乱暴な主張です。同じラテン語に由来するイタリア語とスペイン語なのだから、綴りも同じにすれば便利だと主張する様なものでは。

▼「ぶっくれっと名画座」お休みいたします。

(塩)

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