加藤登紀子の男模様
筑紫哲也

 『加藤登紀子の男模様』

くつろぎと
スマイルを

筑紫哲也さん
ニュースキャスター
一九三五年生まれ

「筑紫哲也さんの言葉と発声の関係は理想的ですね」
 これは私の信頼するボイストレーナーの先生の発言。声のトーンがいつも同じで、一定の場所から、一定の量できちんと流れ出ている、だから言葉が聞き取りやすい。
 たしかに、テレビで対面して感心するのは、取り乱すほどの急な出来事が起こっていても、たとえ怒りの気持ちがこめられていても、その声のやわらかさが失われていないことです。
 たった一声の発言が、大きく時の流れを変える。それを思うと、ニュースキャスターというのは、気の休まらない仕事でしょうし、さすがの筑紫さんにとっても、楽ではないと思う。でも、あの安定感に、私たちはずいぶん救われている。
 思いきって言えばそれは漂泊者の持つやさしさに似ている。
 徒然草の吉田兼好のように、世の流れすべてを静かに軽やかに見守る視線、そして自由人の豊かさ。
 毎晩のレギュラーともなれば、さぞくぎづけ状態でしょうけれど、持ち前のフットワークで、パーティーやチャリティー活動の場などに、骨惜しみせず現れる。
 筑紫さんの企画だった水上勉さんの一滴文庫での「幻夢一夜」にも数年にわたって同席させていただき、よい語らいと、おいしいお酒を楽しませてもらいました。
 時代は急な流れです。間違わずにこぎ渡るには、お金でも、権威でも、腕力でもなく、ましてお上の力ではない。無用な固定観念に阻まれることのない広い視野と楽しみの心、そして淡々とした勇気ですよね。
 報道の在り方が問われている今こそ、力をぬいて筑紫流を続けてください。トーンの保たれたその声で!
 くつろぎとスマイルを待っています。

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