加藤登紀子の男模様
坂本龍一

 『加藤登紀子の男模様』

体から
音があふれ
てる

坂本龍一さん
ミュージシャン
一九五二年生まれ

 ジャマイカ系英国人のバイオリン、ポーランド系ブラジル人のチェロ! そして未来系日本人のあなた。ピアノトリオのコンサート、東京で見ました。
 一言で「完璧だったね」。同じセリフ、「ラストエンペラー」の試写会の時もあなたに言ったっけ。クラシック音楽の深々とした美しさと、民族音楽の音の見事な調和。あの感動からひとつ時代がめぐり、ベルトルッチとのコンビネーションで生まれた数々の名作をゆったりと味わえた。
 テクノで生まれた幾何学的な繰り返しのフレーズをアコースティックな楽器に置き換えたときの炸裂的な面白さは、以前にオーケストラとのコンサートでも感じたけれど、今回はたった三人であることがより刺激的だった。
 一九八二年に「愛はすべてを赦す」、八三年に「夢の人魚」、二枚のアルバムを坂本さんのピアノ中心のアレンジでつくった時、「テクノで表現しようとしたことをピアノがあっさりやっちゃうね。今回はピアノを思い出させてもらいました」って言っていた。
「十八歳のころの僕ならもっとすごかった」といいながら、クルト・ワイルのブレヒト・ソングをどんなキーでも自在に弾いてしまう龍一にみんなボウゼンとしたっけ。
 あまりにも可能性がありすぎて、迷っているように見えたこともある坂本さんが、今は、どこまでも自分の好きな音に浸っている!
 体からあふれるその音は聴く者の奥底に届きます。テクノとかワールドミュージックとかクラシックとかじゃなく、それを超えて人が肉体で創り出す音楽の可能性を信じさせてくれた。
 テクノのヒーローとして登場したすぐの時、「いざとなったら石ころひとつでも音楽をつくってると思う」と言っていた。
 この秋には地球環境、愛、共生をテーマに新しいオペラで登場すると聞いた。いつも大胆なのに美しく、過激なのにやさしい。これからの作品を楽しみにしています。

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