加藤登紀子の男模様
宮崎駿

 『加藤登紀子の男模様』

女は常に
賢くて、
強い

宮崎 駿(MIYAZAKI−HAYAO)さん
アニメーション映画監督
一九四一年生まれ

 宮崎駿さんの「スタジオジブリ」へ行くと、玄関のところに、「馬鹿っ」と書いた書が額に入れて飾ってあります。何を隠そう、これは、私が「紅の豚」にジーナ役として声の出演をした記念に宮崎さんに贈った書です。
 空賊たちとの戦いで、もうついに死んだかと思われたポルコ・ロッソからの電話に、ジーナが大声で叫ぶセリフが、「馬鹿っ」。
「登紀子さんが生きてきた何十年かの間の、男というものへの怒りを全部はきだして下さい」なんて要求されて、苦戦したセリフです。
「この字を見てショックを受けて正気に戻る奴が結構いるんです。男は馬鹿なことばっかりやっていてね、どうしようもないんです。女は常に賢くて、美しくて、強い」
 宮崎流フェミニズムは、どの作品にも一貫してある。半面、馬鹿さ加減をおし通していく男のダンディズムも、堂々とある。
「人間が愚かだなんてことは、今さら言っても始まらないんです。ただ肝心なのは、どんなひどい時代でも、素晴らしいものはあるってことですね。バブルの時なんかより、僕はずっと今の方が好きですよ」
「紅の豚」のラストソングは、私のオリジナル「時には昔の話を」でした。
「あの歌の中の『あの日のすべてが空しいものだとそれは誰にも言えない』という歌詞が僕はうれしかったですね」と、宮崎さんが言ってくださった。
 けれど、この歌をうたう度にいろんな男たちの群像が頭をかけめぐる。何かとんでもない間違いばっかりして来たような気もするし、あほらしくて涙が出ちゃうようなこともある。
 でも人間というものは、どうしても何かをしようとしつづけるんですよね。何もしない方がいいとわかっていても、こりもせず夢を見る! そのどうしようもなさがたまらない。男は「馬鹿っ」て言える位がいいよ。

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