加藤登紀子の男模様
美輪明宏

 『加藤登紀子の男模様』

次は自らの
人生演じて

美輪明宏さん
歌手、俳優、演出家
一九三五年生まれ

「恋は不思議ね」と岸洋子さんが歌ってヒットした「恋心」、美輪明宏さんは違う訳詞で歌っていた。私のデビューのころのことだ。
「涙の雨にずぶぬれになって……」。聴いた瞬間、「やられた」と思った。
 シャンソンの訳詞がとかくお嬢さん趣味でイライラしていた私は、勇気百倍、味方を得た。
「メケ・メケ」を女装して歌ったのが一九五七年ごろ、丸山明宏時代。
「あのころはすごかったわよ。私が行くところ、常に黒山の人だかり。お化けを一目見ようというわけよ。称賛と罵倒の嵐ね。『よいとまけの唄』を歌った時はやっと立ち直ったなんて、妙な評価を受けてね。私が女になるのは、男をやってるだけじゃ満足しないで、船乗りになったり、政治家になったりするのと同じよ」
 寺山修司の追悼公演の時の「毛皮のマリー」、美輪さん、美しかった。まさにはまり役、女装の娼婦の誇りと悲哀がメラメラと立ちのぼってた。楽屋で感激の抱擁をしたら、家に帰っても香水のにおいが体に染み込んでいたっけ。
「毛皮のマリー」で共演した、いしだ壱成さんと今度は「愛の讃歌−エディット・ピアフ物語」。二人の個性が強烈なピアフをどう表現するのか楽しみに観に行った。道端で歌っていた十八歳から始まり、四十七歳で世を去るまでの物語。いしだ壱成はピアフの二十一歳も若い最後の恋人の役。全体としてはピアフを悲劇の人として描いていた。
 ピアフは雀、小柄で強くて、スカッと空に突き抜ける声を持っている。悲しみも怒りも、すべてを凱歌として歌い切った人。けれど美輪さんのピアフには、ピアフより美輪さん自身の人生がくっきりと浮かび上がってくる。
 次にはぜひ、美輪さん自身の人生を描いたものを演じて下さい。何を歌ってもだれを演じても、美輪明宏の方が強烈です。

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