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  三省堂新六法 2009 平成21年版(普通版+大きな活字版)

はしがき

本書『三省堂新六法』は、法律の初学者と一般市民にとって利用しやすい法規集となるよう工夫して、編集したものである。

しばしば「日本には、一体どんな法律があるのか一般には知らされていない」とか、また「法律は、読んでも、むずかしくて、わかりにくい」といわれる。その通りだ、と思う。なぜなのか、は少し説明が必要となる。そもそも日本の法律は、明治維新以来、第二次大戦の敗戦にいたるまで、法治国家としての日本の法秩序を維持し、また国家発展のための国策を推進する手段(道具)として作られ、そういう目的のものとして存在した。だから法律は、政治家や官僚、裁判官あるいは弁護士や法律専門研究者などの特別な職業人だけが、それを使うために知っていればいいものとされ、一般の国民は「法律に背くようなことがあってはならない」と戒められ、その文章が無理に難解に書かれていたり、多くの場合、その存在すら知らされていなかった。そうした時代が長かったために、今日なお日本の国民の間には、いまだに、そういう法律観が根強く残存している。

しかしながら、第二次大戦後の日本は、日本国憲法が制定され、国民が国政の方向を決定する主権者となる民主主義の国となった。この憲法は、その前文に「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」と宣明している。また本文の第13条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については……立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と書かれている。したがって、この憲法の下での今日の日本の法律は、国民の権利を保障する手段(道具)として存在するものとなり、しかも国民の意思にもとづいて制定されることとなった。そうだとすれば国民は、つねに立法や国政の動向に注目することが必要になる。そのためには、国民一人ひとりに、主権者としての自覚を持ち、ますます法律への関心を高め、深めるようになることが期待される。本書が、一般市民に広く利用されることを期待しているのは、そのためである。

いま日本には、調べてみると100種類を超える〝六法〟とか〝六法全書〟という名の法規集がある。なかには厚さが10センチ以上もある大きく重い、多数の法令を収録した、裁判官や弁護士あるいは研究者向きのものもあるし、きわめて専門別に、たとえば、福祉六法・教育六法・建築関係六法のような特定の専門分野の職業人向きのものもあるし、また明らかに学生を主たる利用対象とするように編集された小型の〝六法〟もあり、近年では、それに収録した1条ごとに、その条文と関係ある判例(裁判の判決)を掲載したりする工夫をしたものもできている。しかし、多少の差はあれ、そのほとんどが、ただ法律を伝統的な法律学上の体系にそって収録する方式を採っている点で共通している。これでは法律の初学者や一般市民には、依然として、わかりにくい。

それで本書は、広く一般市民に利用されるように、次のような工夫をした。1つは、「どういう法律があるのか」という素朴な疑問に応えられるように、よくマスコミを賑わす法律など、一般市民が、現代社会の中で日常生活をいとなむのに関係をもつ法律を、できるだけ広く、数多く集めた。そして、――巻頭の総目次に示しているように――それらの法律を、現代的人権にかかわってブロック別に〝柱立て〟し、さらに区分して、例えば、その「Ⅳ市民の活動②」には、「教育・文化」、「健康・医事」、「社会保障」などの各編を、その「Ⅴ市民の活動③」には、「環境」、「土地・建物」、「情報」などの各編を、順序立て設定した。その2は、「法律は、むずかしくて、わかりにくい」という意見にも応えられるように、それぞれの編ごとに、例えば、憲法編、民法編、租税・財政法編ごとに、本書の編集にあたった専門研究者が「解説」を書いている。このような工夫を凝らした点が、類書には見られない本書の特色である。したがって本書は、一般市民が法律を知る手がかりになる法規集としてだけではなく、大学あるいは短大の〝法学〟の授業などにも利用されるようになろう。

ところで本書『三省堂新六法』は、実は1978年に、永井憲一・室井力・利谷信義・宮坂富之助・籾井常喜・宮澤浩一の6名の編集委員が、「法律をすべての市民のものに」をスローガンとして出発した同名書の改訂版である。初版刊行以来20年余の歳月を経過した。この間、多くの読者に支持をえてきたが、20世紀を終えようとする今日、国際事情も、また国内における政治・経済も大きく変動し、それに影響を受けながら、日本の法律の置かれる状況も、ますます多様化・複雑化の度を強めようとしている。そこで、本書においても、創刊20周年を契機として、旧編集委員から推薦を受けた新編集委員がその仕事を受け継いだ。そして本書の初志をより的確に生かせるように、収録法令を再検討し、その体系区分を新しく試み、解説も新しくするなどした。これからの21世紀は、曲折はあるにせよ確実に、人類的規模で人権保障がより発展する時代となろう。それに向けて、より良いものを世に送り出していく努力を、今後も重ねていきたいと思う。

1999年10月

  • 永 井 憲 一
  • 浅 倉 むつ子
  • 安 達 和 志
  • 井 田   良
  • 柴 田 和 史
  • 広 渡 清 吾
  • 水 島 朝 穂

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