ある子が言いました。
「あの子は不思議(ふしぎ)ちゃんなんだよ!」
小さな子どもたちは、不思議ちゃんを見つけると、容赦(ようしゃ)なく、ストレートに「おばけ」「こわい」「変な顔」と言ってきます。
幼(おさな)い頃は、何を言われているのかよくわからないのか、ひどい言葉を言われても、自分から好(この)んで子どもたちのいる方へ行き、遊んでいます。
自我(じが)にめざめ、物心(ものごころ)つく頃、不思議ちゃんは傷つき、そっと隅(すみ)っこで小さくなっていることもありました。
しかし今、不思議ちゃんは、たくましく前向きに生きています。朗(ほが)らかで人なつこく、優しくて思いやりのある子に育っています。
知らない子に「変な子どもがいるよ」と指さされた時、「おれアペール症でも大丈夫」と母親にそっと言ってくれます。
アペール症の子は、この障害が自分から切り離せないことを知っています。
人にジロジロ見られるだけでなく、小さい時から何度もの入院や手術をして、痛い思いやつらい思いをしても、その中で自分らしく生き抜く術(すべ)を身につけていきます。
子どもとはいえ、「尊敬(そんけい)すべき人」です。
アペール症の子が、たくさんの困難(こんなん)に立ち向かい、一生懸命に生きていること、親は、子どもたちから、かけがえのない幸せをもらい、子育てを楽しんでいることを、一人でも多くの人に知っていただきたいと願って、私たちアペール症の子を持つ15家族(本人・親・きょうだいの他、先生や友人など)でこの本を書きました。子どもの成長ぶりや家族の暮らしがわかるように、アルバムから家族写真もたくさん公開しました。
皆さんに知っていただくことで、アペール症の子どもたちが、少しでも生きやすくなればうれしいです。また、これから生まれてくるであろうアペール症の子とその家族に、勇気と力と光明(こうみょう)を少しでも伝えられたらと思います。