ことばは私たちのまわりを取り囲んでいます。その、ことばが取り巻く世界の中で、私たちはさまざまなことを思い描き、感じ取り、また、相手に伝えています。そこでは、自己の思考や感情を言い表すのに最もふさわしいことばが意識的に、また感覚的に一つ一つ紡ぎ出されて、それらの総体が表現内容を成り立たせ、彩っているのです。
ことばを成り立たせる要素には種々ありますが、その中でも、意味を持つ一まとまりの単位である語が最も基本的なものです。そして、そのまとまりを語彙と言います。「ボキャブラリーが貧困だ」という場合のボキャブラリー【vocabulary】のことです。日本語全体を対象とすれば「日本の語彙」となり、ある意味分野または領域に限れば、「親族語彙」「漱石の語彙」などというようにも用いられるものです。
そこで、語や語彙についてもっと知りたい、初歩的な知識から学びたいというような、ことばに興味を持つ方々のために本書を編集しました。先に刊行した『図解日本語』『図解日本の文字』に倣って、図や表などをできるだけ多く掲載し、見やすく読みやすく、そして、わかりやすく解説することを心がけました。脚注には、本文の説明を補足する事柄や、関連する事項なども記しました。初歩的なものからやや専門的な事柄に至るまで、必要に応じて学べるように工夫してあります。興味を持つ章から読み始めてください。あるいは、まずは知りたい事項だけ読むという使い方もよいでしょう。
豊饒なことばの海に乗り出していきましょう。そして、ことばの波をかき分け、ことばの山を見はるかし、さらに、ことばの新たな世界を探り、さまざまな発見をしてください。