新編 芭蕉大成

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25,000円 B5(本製・布クロース装・貼箱入り) 918頁  978-4-385-35745-X (品切)

芭蕉の全作品と芭蕉の言行に関するもっとも確実な資料を細大もらさず網羅。進展著しい研究成果を全面的に取り入れ真蹟を含めた新出資料を追加して集大成。わが国唯一の、一冊本「芭蕉大成」。“芭蕉学”研究の基礎文献として好個の書。

1999年2月15日 発行


【編者】尾形 仂(代表)・小林祥次郎・嶋中道則・中野沙恵・宮脇真彦

【旧版の編者】尾形 仂・加藤楸邨・小西甚一・広田二郎・峯村文人

1962年11月刊行の『定本 芭蕉大成』以後発見された、数多くの真蹟をふくめた新資料をすべて追加して集大成。全てを原典に当り直し、読みや校異も再検討。さらに成立過程を確認し、年次校訂を行った。

◎本書は、芭蕉の全作品、芭蕉の言行に関する最新の資料を網羅・分類した、わが国唯一の芭蕉大成。

◎原本を忠実に復元するとともに、読解の便も考慮して校訂。

◎発句、連句、紀行文、日記、俳文、書簡、句合評・評語、俳論を収録。
 さらに芭蕉翁終焉記・芭蕉翁系譜などをまとめた伝記編を加える。

◎発句編、連句編、俳文編、書簡編は作品の成立年代順、紀行文・日記編は内容事項の年代順、俳論編は内容上の関連順で掲出。

◎最近確認された芭蕉自筆の「おくのほそ道」も、紀行文・日記編に<注>として挿入。
「更科紀行」は、自筆本にさし替えた。

◎句合評・評語編に「点巻」を挿入した。

●本書の構成

第一 発句編
第二 連句編
第三 紀行文・日記編
第四 俳文編
第五 書簡編
第六 句合評・評語編
第七 俳論編
第八 伝記編

<付録>
・芭蕉略年譜
・発句五十音索引・発句季語別索引
・対照連句索引・人名索引・地名索引
・俳論要語索引
付図 芭蕉足跡図(タテ52センチ×ヨコ78センチ)

芭蕉足跡図


●『新編 芭蕉大成』

自著自讃(「ぶっくれっと」NO.126号.1997_SEPTEMBERより)

尾形 仂

 『芭蕉大成』初版が世に出たのは昭和三七年のことです。芭蕉の発句からはじまって連句、紀行文、俳文、書簡、俳論、とにかく芭蕉に関する当時の文献を網羅し、それを一冊本に収めた。その頃、類書がありませんでしたから、無から有をつくる作業で、校正も大変でした。確か、五校くらい見たと思います。

 というのは、ただ原文通りに翻字するだけではなくて、解釈の助けになるよう、漢字、かな等をあてかえて送りがなや句読点も施し、読みやすい本文を提供しようと考えたからです。ただし、原文に戻れるようにも工夫を凝らし、行間のカッコなどをたどり直していけば、原文通りに読むことができます。あまりそういうことにこだわらずに作品を読むという方々のためには、読みやすさを追究しました。

 それからすでに三五年がたち、この間、芭蕉研究は非常に進展しています。とくに一昨年、岩波書店から、芭蕉の真蹟を網羅する『芭蕉全図譜』という本が出ましたし、昨年は、『奥の細道』のいわゆる野坡本という芭蕉自筆本が出ました。今回の新版は、それらの成果を織り込んだので、それだけでも大変な作業になりました。また、年代順配列にしても、かつてはこの並べ方で良いと思っていたものが、その後の研究で変わってきたり、ということでちょっとした手直しではもちろん終りません、全面的な改訂版です。

 芭蕉の魅力といいますと、受けとる人さまざまだろうと思いますが、なんといっても作品がすぐれていることが第一でしょう。つまり、日本人の心の奥底にあるものを射止めている。それは日本的な心性であると同時に、世界に通用する人間性の普遍的真実、そこを射止めていると思うのです。そして、そういう作品を生み出すのに、芭蕉は素裸になって、お金を儲けるとか名誉を得るとか、そういう世俗に関する一切を放棄し、純粋に詩人それ自体として生きた。ひとつ所に定住して地歩を固めるということもなく、漂泊の旅を通してたえず自己脱皮を重ね、そのなかからすぐれた作品を生み出していったのです。その生き方と作品と、両方が魅力になっているのではないでしょうか。

 芭蕉を自然詩人としてとらえる人もありますけれども、自然のもっとも深い、いわば自然の神秘というところまで深く迫っていった。しかし、それは対象としての自然をとらえるだけでなく、同時に自分を表現することでもあったのです。自然と一枚になった自分を表現する。あるいは他人に対する挨拶の心持ちを、自然に託して表現する。そういうことからいえば、自然詩人というより、人間に対する関心の深かった人という感じがいたします。その点が、たとえば正岡子規などの写生中心の俳句にあきたりなさをおぼえる人々の心を引きつける原因ではないかと思います。

 近代文学にとっては、孤独が美徳でありつづけてきたわけですが、芭蕉は逆に人間連帯のなかで作品をつくり出した。「座」ということは山本健吉氏がいい始めたか分かりませんが、『座の文学』という、一つの本の形にまとめたのは私が最初です。山本さんは、挨拶と滑稽と即興ということをいわれた。滑稽は別として、あとの二つは、芭蕉の頃にはそういう人間連帯がありえたわけです。近代はそれを失ってしまった。そういう基盤を喪失したなかで作句しなければならない現代の俳人に、覚悟をつきつける、それが山本さんの主張だったと思います。芭蕉は人間連帯の回復を切望する現代人の救済者ともいえるでしょう。

 ところで今回の新版には、芭蕉の伝記史料を加えました。江戸時代も後世になると駄目なので、直接の門人達の書き残した史料です。ですから頁数も判型も、旧版よりだいぶ大きなものになりました。それにしても、一冊で芭蕉の全貌が分かるというのはこの本だけですので、広くご利用いただきたいと思っています。

(おがた・つとむ 国文学者)



●芭蕉画竹図 杉風筆(天理図書館蔵)

芭蕉画竹図 杉風筆(天理図書館蔵

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