| お金が語る 現代中国の歴史 |
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冨田昌宏 著 2,100(2,000)円 四六 224頁 4-385-35779-X (品切) 現代中国の現金通貨である紙幣と硬貨の変遷の跡を辿りながら,激しく移り変わってきた20世紀の中国の歴史を考える。併せて,返還なった香港,及びマカオ・台湾の通貨にも言及。紙幣や硬貨の図版70点余を収録。 1997年 7月10日 発行 ●著者紹介 冨田昌宏(とみた・まさひろ) 1947年大阪市生まれ。1970年、神戸市外国語大学中国学科卒業、外務省入省。在ペナン総領事館領事、在中国大使館書記官、在ニューオリンズ総領事館領事などを経て、1994年より在広州総領事館領事。またアマチュアの通貨研究者であり、世界銀行券協会(IBNS)の終身会員。本書の図版で紹介した紙幣および硬貨もすべて著者の所蔵品。著書に『紙幣が語る戦後世界』(中公新書)『紙幣の博物誌』(ちくま新書)がある ●目 次 序章―現代中国の通貨入門 ●『お金が語る現代中国の歴史』の刊行にあたって 自著自讃(「ぶっくれっと」1997.7 no.125より) 冨田昌宏 アマチュアの通貨研究者としての私の研究対象は、広範な現代世界の紙幣ですが、外務省職員としての私の仕事上の専門分野は中国です。このたび三省堂より、『お金が語る現代中国の歴史』を出版して頂くことになりました。仕事の専門分野である中国の通貨について書くのは初めてです。 中国の現代のお金がなぜ面白いのか、そのキーワードは「変化」です。現在の中国の通貨の起源は、一九二〇年代、地方根拠地の共産党政権が発行した、手製とも言える粗末なお札に遡ります。それ以降、国共内戦、新中国の建国、社会主義計画経済の時代、改革開放の開始を経て、現在の一定の外貨交換性をもつ通貨へと大きな変遷を経てきました。現在の人民幣銀行券は、新しい偽造防止技術を具えた斬新なお札へと発展を遂げています。そして香港とマカオの通貨についても、中国への返還を控えて、デザインの変更と中国銀行の発券参入など、大きな変化が進行してきています。 私は一九七三年に初めて中国に赴任して以来、現在までに中国大陸には通算約八年間、研修時代の台湾と香港を合わせると、合計約一〇年間中国に滞在しています。その間、中国およびその周辺地域の通貨の様々な変化を見てきました。そして中国の通貨、人民幣の様々な特徴や移り変わりを身をもって知りました。たとえば、人民幣は五三年に第二シリーズが発行されて以来、低額のお金は、同じ額面の銀行券と硬貨が並行して発行され続けています。これは世界でも例が少なく、膨大な人口を擁する経済であるため、硬貨の生産が追いつかず、お札で補わざるを得ないためのようです。地方によってその流通ぶりが大変違っており、北京などの大都市では、おつりは硬貨でくれるのに、地方では同じ額面のお札ばかり出てくることがあったりします。 日本ではあまり報道されていませんが、近年中国では偽札の横行が社会問題になっており、大きな店ではどこでも、偽札鑑定器が備え付けられてあり、怪しいお札はすぐその場で調べます。日本では偽札など見たくても、めったに本物にはお目にかかれませんが、中国では市場で横行しており、油断をしていると偽札を掴まされ、警察に没収されて大損をします。中国は米国に負けず劣らずの偽札大国です。 社会主義国中国では、かつては通貨の製造、発行に関する事項は国家機密で、伺い知ることはできませんでした。しかし改革開放の時代を迎え、その分野でも国際協力が進められるようになり、過去の銀行券の製造、発行、改版、回収などを巡る内幕も次第に公表されるようになりました。 今日では、かつての通貨発行の関係者や学者などによって、多数の文献が発行されるようになりました。特に、五〇年代の中ソ関係の悪化を契機として、中国が紙幣製造の「自力更生」(本格的な自力生産)に踏み切った経緯や、周恩来総理がお札のデザインに深い関心を示し、自らあれこれ指示をしていたこと、それに六〇年代には人民幣通貨は国外持出し禁止であったため、ベトナム戦争を支援するため、北ベトナムに派遣された人民解放軍の将兵には、「軍用代用金券」が発行され、これを携行し、使用したことなどは面白いエピソードではないかと思います。 本書では、私の所蔵の紙幣、硬貨七〇数種類の図版を掲載し、これらを参照しつつ、あまり主観を交えずに、たんたんと中国のお金の現代史の流れを語るという書き方をしています。特に中国に関心がなくても、また特別に紙幣や硬貨に注目したことがなくても、この本によって、少しでも中国のお金に親しみをもっていただければと願っています。 |