実務判例
解説学校事故

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伊藤 進・織田博子 著

7,573円 A5 868頁 978-4-385-31332-X 品切

過去の学校事故裁判例をほぼすべて網羅し,学校事故の実態,損害賠償責任の所在を分かりやすく解説。授業中,クラブ活動中から通学途上の事故まで類型別に編集。収録判例一覧,事案事項索引等,資料も充実。

1992年 7月10日 発行



●はしがき

 学校事故は,社会における深刻な問題である。次代を担う児童,生徒,学生が,教育の場において被る被害であり,本来,生じてはならないことなのである。

 しかし,学校事故は,学校の教育活動に内在するものであり,容易に回避できるものではない。学校の教育活動には,二つの危険性が存在する。一つは,教育自体の危険性である。体育や理科などの授業,学校を離れた臨海学校,体育の課外クラブ活動など,それ自体に内在している危険がそれである。二つは,学校は,発達成長過程にある児童,生徒,学生の生活の場でもあることによる危険性である。発達成長過程にある児童,生徒,学生の生活の場においては,未成熟,未発達な者たちが共同の生活を営むことに内在している危険がそれである。そして,これら二つの危険が相乗することもありえよう。

 このように学校事故は,本来,生じてはならないものでありながら,学校の教育活動においては容易に回避できないものであることから,学校の教育活動に関係する者にとっては,とくに悩ましい問題である。このため,学校事故の問題については,国や自治体,学校法人などの学校設置者や教育委員会や校長などの学校管理者,教師や職員など直接,教育に携わる者はもちろんのこと,父兄や児童,生徒,学生自身においても真剣に考えなければならないことなのである。

 学校事故の問題は,いろいろな見地から考えなければならない。本書は,そのうちの法律上の責任の側面に焦点をあてて検討するものである。その検討の方法としては,学校事故に関する判例を分析することによって,具体的な学校事故事例につき「何をしていれば法律上の責任がないのか」,「何をしなかったがために法律上の責任があるのか」を,まず解明している。学校事故問題の究極的目的は,学校事故を防止するところにあることはいうまでもないが,このような判例の分析,検討は,そのための指針となりうるものと思われる。この意味において,本書は,学校事故の問題を真剣に考えようとする学校関係者にとって,一つのバイブルになればと願っている。

 なお,本書は,「学校事故賠償責任の判例法理」と題して,判例時報誌に52回にわたり連載した論稿に,その後の判例(1991年12月まで)を追加し,修正加筆したものであることから,「序」で指摘したように学校事故特有の損害賠償法理の形成をも意図したものである。このため,一般の損害賠償責任法理と比較して学校事故損害賠償責任法理には,どのような法理論上の特徴力くみられるのか、またどのような特徴を認めるべきかについても検討されてい。この意味において,とくに,学校事故の損害賠償の問題に携わっておられる裁判官,弁護士などの法曹実務家や研究者の方々からの教示も得られればと願っている。

 ところで,本書での判例の取り扱いとしては、当該判例全体として責任を肯定したのか否定したのかについて検討しているる箇所と当該判例の判示内容を分解して,それぞれについて肯定,否定を検討している箇所がある。このため,判例としては責任肯定であるが,分解された判示部分については否定となっている場合がある。これは誤りでも矛盾でもないことに留意していただきたい。

 最後に,本書は,前述のように判例時報誌に連載した論稿を基礎にしたものであり,判例時報誌の論稿をこのような形で出版することを快く承諾して下さった判例時報社に対して感謝するものである。また,本書の出版を引き受けて下さった三省堂に対して,とくに直接の労をとって下さった法律書出版部の方々に対して,心からお礼を申し上げたい。

平成4年5月14日

伊藤  進
織田 博子

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