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遺言は愛のメッセージ

遺言は愛のメッセージ

森 保(もり・たもつ)著

1,600円 四六 272頁 978-4-385-35427-X (品切)

著者は元公証人連合会の広報委員長で、「遺言の基礎知識」は実務家にとっても一般の人 にとっても、実際にとても役に立つ内容。著者略歴「はしがき」と「あとがき」目次(見本ページ)

2001年7月30日 発行


 

【著者略歴】

弁護士。千葉県出身。早稲田中学、小樽高商を経て1942年海軍短期現役主計科士官。復員後1951年東大法学部卒。各地で検事として活躍後、法務総合研究所教官、内閣総理大臣官房参事官、法務省人権擁護局総務課長、高松法務局長・札幌法務局長を経て1980年東京法務局所属公証人となる。

日本公証人連合会常務理事・広報委員長として遺言普及に尽力。”遺言は家族に残す愛のメッセージ、お茶の間に遺言を”と豊富な人生経験を生かした、さわやかな遺言作りを提唱。世田谷公証役場で10年間に作成した遺言件数は2千件、相談件数は5千件に及ぶ。遺言文に遺言者の思いを盛り込み、死後のトラブルを未然に防ぐ新風をもたらした。


 

【はしがきとあとがき】

●はしがき

 親が遺言の威力をちらつかせながら、子供に老後の介護扶養の義務を強要したという話を聞いたことがある。日々を生きるためには、自分の身を守る方法としていろいろなことを考えつくものだと感心させられた。

 一方、子供の方はどうか。財産を持っている親に、いい遺言をしてもらいたいと期待するのは人情。そのためにはどうすればよいか、と歯に衣着せぬ質問を受けることがある。

 質問の内容を慎重に検討し、『親孝行をすることが一番効果的だと思う』と簡単明瞭に答えたつもりが、さらに追い打ちをかけるように『親孝行とはどういう意味でしょうか』と尋ねられた。若い人の頭の中には、もはや「親孝行」などという言葉は無くなってしまったのかとの思いにかられること、ひとしおであった。

 しかし、こういう話が大手を振ってまかりとおっているかといえば、実際はそれほどでもない。平素おつき合いをしている友人や知人の場合でも、親子の間柄は、しごく平穏無事にすぎているというのが実感である。中には財産をもらうと税金を納めるのがわずらわしいので遺言は要らない、という若者もいるほど。子供としては、親が自分で丹精した財産で子供に負担をかけないように余生を送ってもらうことが何よりだと願っているケースも少なくない。

 親の方はといえば、子供がどんなに成人しても、子供のことで心配が絶えないのが親心。行き届いた遺言を書き残した親が「相続のときはもう一度自分が生き返ってきて子供の面倒をみてやりたい」と言ったりするほどである。

 個人や家庭の事情はさまざまである。一見したところでは平穏無事な家庭が多いように思われるが、必ずしもすべてがそうであるわけではない。遺言にはそれぞれの事情がある。

 本書は、著者が公証人として弁護士としてこの二十年余りの間に関わった遺言事例から、情理ともにあわせもった愛のメッセージに関するものを精選して、お話としてアレンジしたもので、とくに、遺言者本人の意思を尊重した、遺言への決断という流れでまとめてある。

 人間の旅立ちには必ず相続という事態が発生する。相続は私どもの意思に関係なくやってくる招かざる客である。これに対し、あらかじめ積極的に準備して備えるものが遺言である。遺言は、私どもそれぞれが持っている個別の事情を背景としながら、個別の意思にもとづいて作り上げるもの。そのためにはまず決断し、実行することだからである。

 本書は、五十話のお話の部分と、遺言に関する法律的な知識の部分から成る。

 「一章・女にとっての遺言25話」、「二章・男にとっての遺言25話」は、それぞれ「子供がある場合」「子供がない場合」の順に並んでいる。目次に、それぞれのお話の内容がわかる副題を付けてあるので、目次で自分の関心のあるお話を探して、拾い読みすることもできる。お話は一話ずつ完結しているので、どこから読んでも読める。

 また、お話の中には、遺言作成にあたって必要な知識を散りばめてある。気楽に読み進めながら、いつの間にか、遺言の全体像に触れることができる仕掛けである。といっても読者は書かれている知識をそのつど頭に詰め込む必要はない。お話全体に散りばめた知識は、「三章・遺言の基礎知識」でもう一度整理してまとめた。読者がいつでも必要に応じて確認できるように、こまかく見出しを付けたうえでやさしく解説してある。

 本書は小説でも随筆でもない。さりとて事実の紹介でもない。遺言は一つ一つがきわめて高度なプライバシーにかかわるものである。そのことへの厳格な配慮を尽くしながら、遺言をする人の心の中にまで踏み込み、ときには、書きにくいようなことも思い切って書き綴った。どのお話も、上品な週刊誌を読んでいるような気分で読んでいただけるようにと心がけたつもりである。

 ご愛読を切にお願いしながら、本書がそれぞれの読者に、必要かつ十分な音ずれをもたらし、少しでも社会の一隅に光を送る役目を果たすことができるならば幸甚である。

2001年6月10日

著者 森 保


●あとがき

 公証人として約十年間、弁護士として約十年間、私は遺言作りに関わってきた。本書の題名の「遺言は愛のメッセージ」とは、私の体験的な実感の中から生まれて来た実務上のキーワードである。

 私にとっては、明けても暮れても遺言作成の必要を啓発しつづけてきたこの二十年間であった。私が公証人に就任した当時は、まず、遺言を茶の間の話題に呼びこむことが私の役目であった。テレビも新聞も、遺言の普及に力を貸してくれた。尋常一様ではない熱の入れ方であった。そのことを私はいつも感謝しながら、テレビ出演の回数を重ねた。

 やがて、日本公証人連合会の広報委員長をつとめることとなり、遺言の広報はさらに熱の入ったものとなり、全国的な関心の高まりの中で公正証書遺言の件数は増加しつづけた。遺言と私はますます深い縁を重ねることになった。「テレビの先生」などと過分な敬称さえも受けるようになったことは、それほどに遺言が世間一般に理解されてきたことの証左でもあった。

 遺言の相談は、相談する人にとっても相談を受ける側にとっても、真剣そのものである。生かじりの知識や勘で解決できるものではない。遺言は、いつ旅立ちを迎えるか、計り知れない人のためのものだからである。

 遺言の相談者に対して、その期待に応えるためには、まずその人の真実の声は何かを理解すること。さらにその人の真実に共感することが大切である。遺言者が自由な気持で遺言をする状態を応援し、遺言にその人の命を吹き込むこと、それが遺言作成という重要な使命を達成するために私が心がけてきた信条である。遺言は、本人自身が感動するような作品でなければならない。なぜならば、遺言は、長い間ひそやかに持ちつづけてきた偽りのない真実を美しく写し出す鏡だからである。

 公証人として携わった遺言は、当然のことながら公正証書遺言の作成にかかわるもの。約五千件の相談を受け、約二千件の公正証書遺言を作成した。弁護士として携わった遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の二つである。

 遺言は、公正証書遺言にしても自筆証書遺言のいずれにしても、その効力は変わることがない。しかし、旅立ちの後のことを、誤りなく、最も正確に担保してくれるものは、公正証書遺言にまさるものはない。遺言をめぐる裁判の証人として出廷した経験などをかえりみていっそうそのことを痛感しているものである。

 私の願いは、公文書である公正証書遺言が、そのいかめしい扉を開けて、遺言者のうるおいのある情感をたたえた愛を十分に呼び寄せ、少しでも多くの人びとのために役立ってくれることである。

 公証人の職を退いた者が、公正証書遺言のことを語りすぎるのは、ある意味では分を越えたことであるかも知れない。また本書の題名も、専門家の眼から見れば、くだけすぎた題名であるかも知れない。いずれも、公正証書遺言のことが正しく一般の人々の間に浸透し、理解され、世の中の生活の秩序に平和と安穏をもたらしてくれることを願ってのことである。

 著者は、1992年に三省堂から単行本『遺言は語る』を刊行し、たくさんの読者から共感と励ましのお便りをいただいた。このたび、大幅に新しい原稿を書き足し、さらに読者に役に立つ形になるように、本書をまとめ直した。数え切れないほどの私のわがままを寛容に受け容れ、ここまでまとめていただいた三省堂出版部の阿部正子さんに心から感謝とお礼の言葉を申しあげたい。

 本書が一般の読者にとっても専門家にとっても少しでも役立つことを衷心から願っている。

 本書は、読者に贈る、著者からの愛のメッセージでもある。

2001年6月10日
                            著者 森 保


 

【目      次】

一章●女にとっての遺言 25話

[子供がある場合]

【1】老舗の奥さんのおどろき
    ---遺言がないため銀行預金が払い戻せなかった妻。

【2】何も残されなかった妻
    ---全財産を愛人に与えようとした亡夫の誤算。

【3】そば屋の後継ぎ
    ---分散相続の権利が揺るがす老舗の”のれん”。

【4】マイナスの財産
    ---借金の保証をしていた父の急逝で始まった騒動。

【5】四十歳の抵抗
    ---犯罪を繰り返す夫から子供と財産を守る妻の闘い。

【6】新しい家族
    ---再婚相手の子を養子に。もし離婚となると。

【7】兄と妹
    ---障害をもつ長男の将来を思い、介護扶養を託して。

【8】ピュリダンのロバ
    ---三人の子供への思いに迷い決断できなかった母。

【9】老人性痴呆症
    ---母が元気なうちに相続を決められなかったために。

【10】「農家の嫁」の心配
    ---大家族農家の財産分散を防いだ遺言。

【11】老婆心
    ---財産を狙う長男を封じ込める十項目の付言事項。

【12】遠くの子よりも近くの子
    ---独り暮らしの母が献身的な長女に託すメッセージ。

【13】病気見舞いの点数
    ---娘たちの”親思い度”で財産配分を改訂した母。

【14】現代の論功行賞
    ---全財産の換金処分と配分比率を指定した母。

[子供がない場合]

【15】八十歳の離婚
    ---ボケの夫と離婚したい妻の理由。

【16】横たわる銀幕の女王
    ---大女優が病院のベッドで残した最後の独白”口授”。

【17】夫と妻の二通の遺言
    ---子供がない夫婦の心配り、同時遺言。

【18】愛犬桃子のために
    ---子供がない夫婦が愛犬に財産を贈る。

【19】義母の訴え
    ---亡夫の自筆遺言で守られなかった再婚の老妻。

【20】一通の内容証明郵便
    ---母への配慮を怠った亡夫の自筆遺言で困った妻。

【21】様変わりした舞台
    ---亡夫のきょうだいから多額のハンコ代を要求された妻。

【22】画龍点晴
   ---亡夫と相談を重ねていた没後の処置を伝える母。

【23】二十人の代襲相続人
    ---子もなく親きょうだいも他界している料亭の女将の場合。

【24】白髪の美しい女医さん
    ---戦争に奪われた夫への思いを形に。

【25】亡夫の両親からの贈り物
    ---亡夫の両親に孝養を尽くしながらも途方に暮れる妻。


二章●男にとっての遺言25話

[子供がある場合]

【26】愛憎は紙一重
    ---寝たきりの夫に妻の浮気。老夫婦の涙の結末。

【27】未完の遺言
    ---長男へ相続させる遺言作成途中での父の急死。

【28】庄司家の相続
    ---祖父の死が巻き起こした農家の相続争い。

【29】行方不明の二男
    ---相続人の一人が行方不明のために難航した手続。

【30】遺言というもの
    ---土地を長男名義で登記したために。

【31】息子への戒め
    ---変貌した長男への両親の切り札。

【32】遺言執行者は長女
    ---長男夫婦をおさえ、スムーズに執行された父の意思。

【33】老医師の栄光
    ---老後は子供と一緒にを崩された孤独な父の選択。

【34】長男の勘当
    ---先祖伝来の農家の資産を守るため長男を廃除する。

【35】恋人のために
    ---危険地域へ赴任前に、ビジネスマンが残した遺言。

【36】この子らを残して
    ---万一を考え子供たちの後見人を指定した商社課長。

【37】外国勤務の光と影
    ---家庭と婚外の子への責任の板ばさみになって。

【38】農地を「相続させる」
    ---農家でない子供たちへの農地の相続。

【39】旅立ちのあわただしさ
    ---がん末期に病床で果たした男の責務。

【40】熱海の別荘は彼女に
    ---娘が取り上げようとする財産を遺贈した父。

【41】終曲の序奏
    ---内縁の女弟子に長男の介護扶養を託す作曲家。

【42】美しく老いる
    ---世界的技術研究を支えた秘書への感謝の表現。

【43】愛は限りなく
    ---愛妻の老後が不安のないように。

【44】行き届いたあいさつ
    ---家族を納得させ、気持が伝わる遺言。

【45】クリーニング店の廃業
    ---夫婦だけの第二の人生をスタートさせる同時遺言。

【46】あるスポーツ選手の老後
    ---夫から妻へ、妻から夫へ、自立する二人のメッセージ。

[子供がない場合]

【47】英文日記を書きつづける老先生
    ---天涯孤独の元大学教授のための生活費調達法。

【48】禁じられた結婚
    ---数十年、生涯の愛を貫いてきた二人の場合。

【49】老いらくの恋
    ---内縁の妻に葬式・祭祀を含めて一切を任せたい。

【50】遺言は愛のメッセージ
    ---一休さん、良寛さんの情熱


三章●遺言の基礎知識

(一)初めに遺言ありき

●遺言は法定相続を修正する

---[遺言とは、遺言の持つ特別な法的性格、遺言と遺書の違い、遺言できる人・できない
人、遺言ではできないこと、遺言しておいた方がいい場合]

●遺言でできること

---[(1)遺産の処分(法定相続分の修正)、内縁関係、(2)婚外の子の認知、(3)相続人の廃除・
廃除の取消、(4)後見人の指定、(5)祭祀の主宰者の指定、(6)遺言執行者の指定、遺言執行者
の仕事、遺言執行者の権限を示す証明書、(7)遺言信託]

(二)遺言のスタイル

●公正証書遺言

---[公証人、証人、病気の人のための「出張遺言」、公正証書遺言ができる人・できな
い人、日本人が外国で公正証書遺言を作る場合、公正証書遺言に必要なもの、公正証書遺
言の手数料、公正証書遺言の保管、公正証書遺言の秘密保護、公正証書遺言の改訂(取消
・書換え)、公正証書遺言が複数ある場合]

●公正証書遺言の書き方

---[公正証書遺言(付言事項、負担付き遺言、予備的遺言、本旨外要件)、公益信託を設
定する遺言、永代供養信託を設定する遺言、婚外の子の認知の遺言、「遺贈する」と「相
続させる」の言葉の違い ]

●公正証書以外の形

---[自筆証書遺言、秘密証書遺言、遺言に代わる死因贈与契約]

(三)法定相続(遺言がない場合)

●遺産分割協議

---[行方不明の相続人がいる場合の遺産分割協議、遺産にならないもの]

●相続放棄

---[相続放棄の手続、相続分譲渡のための相続放棄、相続開始前の相続放棄はできない]

●法定相続人・法定相続分

---[第一順位・第二順位・第三順位、法定相続分、婚外の子の相続権、特別縁故者(相
続人がいない場合)、養子の相続権、再婚相手の子供と養子縁組した場合、”節税養子”
の数の制限、離婚した親子の相続問題]

●法定相続分と遺留分

---[遺留分の割合、遺留分がない相続人、遺留分の放棄、遺留分を侵害する遺言・侵害
しない遺言、遺留分の請求、ハンコ代]


●見本ページ

【1】老舗の奥さんのおどろき
    ---遺言がないため銀行預金が払い戻せなかった妻。

 昔方式で真面目な生活をしている人が、思いがけなく、サラ金などの高利のお世話にならなければならない場合がある。

 ある下町で、盛業中のお菓子屋さんがあった。有名な老舗である。その店の製品を手に入れるためには、毎日、行列をして求めなければならないほどの人気であった。

 ところが、六十歳になったばかりのこの老舗の店主が、突然、ゴルフに行った先で心臓発作を起こして亡くなってしまったのである。家族のかけつけるのも間に合わないほどのあっという間の出来事であった。

 困ったのは、あとに残されたこの店の奥さんである。店のことは一切夫に任せっきりだっただけに、夫の突然の死に、妻はただ周章狼狽するばかりであった。翌日からの仕事にも困るという状態の中で、まず、とりあえず夫の葬儀を営まなければならなかった。子供は男二人、女二人で計四人いるが、長男は商社マンでヨーロッパに在勤していた。長女はアメリカ人と結婚して在アメリカ。二男は北海道に住み、二女は結婚して九州にいるという次第。

 とりあえず、相談する人が身近にいない。とにかく、いろいろなことでお金が入用なので、銀行の窓をたたいてしかじかの事情を話し、定期預金などを解約し、夫の葬儀費用として五百万円くらいを準備するつもりでいた。ところが、当然のことながら、この申入れに対して銀行の対応は冷たかった。

 預金は亡くなった夫名義のものであるから、相続人全員の印鑑と印鑑証明を揃えてもらわなければ一円のお金も払い戻すことはできないという。何とかならないものかと支店長に会って直接交渉を試みたが、銀行のガードは堅く、きびしい限りであった。

 遺言のない死亡者の預貯金の払戻しは、相続人全員の印鑑と印鑑証明が必要なのである。死亡したお菓子屋の店主の相続人は、いま、途方に暮れている奥さんと、長男、長女、二男、二女と合計五人である。この五人の印鑑証明と印鑑を揃えなければ、亡夫名義の預金を銀行から払い戻すことができないというのである。とてもいまこの急場には間に合わせることができない相談である。一方、お金がなければ夫の葬儀を出すこともできないわけである。

 途方に暮れたこのお菓子屋の奥さんは、恥をしのんで、日頃から毛嫌いをしていたサラ金会社の門をたたいた。とりあえず、三百万円を現金で借り受けた。これまでに経験したこともない高利であることに、改めて衝撃的なおどろきを覚えた。しかし、ともかく このサラ金という金融会社の店で、夫の葬儀用の資金を確保することができたのは、何よりも幸いなこととしてみずからを慰めるのに精いっぱいだった。

 彼女は、子供たちにはこんなつらい思いをけっしてさせたくないと思った。亡夫の野辺送りを済ませたあと、子供たち一同と遺産分割協議の結果、彼女が亡夫の全財産を相続することになったので、早速自分の遺言をしたためることとした。

 遺言があれば、万一の場合、銀行でも、面倒なことを言わずに、故人の預金をすぐ払い戻してくれるからである。

 この奥さんが公証役場を訪れたのは、取引先の信託銀行で、「遺言のことは、公証役場へ行って相談してみてください」と言われたのがご縁であった。

 この奥さんが作成した公正証書遺言とは、次のような趣旨のものであった。

 一、遺言者は、遺言者の有する住宅兼店舗の建物ならびにその敷地等を含む一切の不動産を長男勇太郎に相続させる。

 二、遺言者は、現金、預貯金、有価証券等を含む一切の金融資産ならびに前記以外のその余の一切の財産を長男勇太郎、二男雄次郎、長女淑枝、二女朋子の四名に相続させる。

 ただし、その取得分は平等とする。

 三、この遺言の執行者を株式会社東京信託銀行(世田谷支店扱)と指定する。 <

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