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子どもの目 親の目から見た
私の家族

私の家族

鳥越俊太郎 編

1,300円 四六 240頁 978-4-385-36072-X (品切)

財団法人のキリン福祉財団が行っている「キリンファミリー賞」(子どもの目、親の目からみたわが家)への一般応募作品から50編をえらび、審査員の一人である鳥越俊太郎氏の家族、子育て論を加えて本にしたもの。「子どもの目からみたわが家(20編)」、「親の目からみたわが家(30編)」、鳥越俊太郎氏の「私の家族論、体験的子育て論」からなる。

2001年10月30日 発行


●刊行に当たって

 近年、学校におけるいじめや不登校、学級崩壊、子どもの引きこもりや家庭内暴力、子どもによる殺傷事件など、子どもにかかわる様々な問題や事件が発生し、社会的な関心事となっています。こうした話に接したとき、私たちはまず「なぜ」「どうして」と驚き、そして、事件を引き起こした子どもの親、あるいは被害にあった子どもの親はどんな思いでいるかと、その家族のことを思います。

 家庭は私たちの生活の、そして社会の基盤です。こうした出来事と、今の私たちの家庭や家族のありようとの間にどんなかかわりがあるのでしょうか。 私たちの誰もが気になることと思います。

 財団法人キリン福祉財団は「青少年の健全育成」活動の一環として、毎年一般から作文募集と表彰事業を催されています。第18回は「子どもの目、親の目から見たわが家」というテーマで、平成十二年十月に作文を募集されましたが、これに三省堂も協賛いたしました。

 この募集に対して多くの作品の応募があり、平成十三年三月に入選作の発表・表彰が行われました。その審査委員に鳥越俊太郎氏がおられました。氏は以前より教育・家族問題に深い関心を持たれ、今回の応募作品の中に生き生きとした現代の家族像を見出された旨の感想をもらされていました。

 そこで三省堂は、財団法人キリン福祉財団のお許しをいただいて、鳥越氏独自の観点から作品を選定し、かつ氏の家族や子育てについての考えを収めて一冊の本として刊行することを企画いたしました。そしてここに、鳥越俊太郎氏の編集のもとに、応募者の方々のご了解をえて、本書を刊行するにいたりました。

 財団法人キリン福祉財団のご厚意に御礼申し上げますとともに、本書が、よりよい家族・親子関係を生み出すためのヒントになってくれることを願うものであります。

   平成十三年十月

三 省 堂 編 修 所


●編者の主な経歴

1940年3月13日生まれ、福岡県出身。1965年京都大学文学部国史学科卒業。同年毎日新聞入社。 新潟支局社会部、サンデー毎日編集部、外信部(テヘラン特派員)を経て、88年サンデー毎日編集長となる。89年10月から「ザ・スクープ」キャスターを担当。


●目  次

第一章 子どもの目から見たわが家
   
夏カレー 鈴木由加里
僕の宝物    金澤 友也
家族で出掛けられるって素敵 高井 彩乃
うるさく言わないで 高井 俊宏
今は…すてきな家族 野中 麻生
わたしのじまんの家ぞく 小川 陽子
母のビタミン愛 山形 真代
私の誇り――それはわが家 菊地 由夏
少しでも家族が歩み寄れるように 長尾ゆう子
もっと、話を聞いてよ 橘川 春奈
笑顔満載家族 岩瀬 渚
うちのおかんは 廣岡奈津美
俺って幸せ者 吉田 貴弘
家族の機能 原 弘子
母に一言、「ありがとう」 高田 麿
一人の人間である息子より 渡辺 勇教
父の存在 三浦奈都美
あたたかいわが家 恒成 恵利
大事な顔 中山亜沙美
仲良しファミリー 飯島萌・飯島泉
   
第ニ章 親の目から見たわが家
   
新聞配達をしたいと言い出した息子 浅田外喜子
たくさんの擬似家族に支えられて 遠近 光子
トイレタイムを有効に 村松 つね
わが家は合宿家族 木林美由紀
ギャングのホットドッグ 片山ひとみ
大きくなあれ、わが家の輪 八太 千春
娘の不登校を乗り切って 法量ユフ子
自分らしく、家族らしく 風岡 広
音・絵・文が癒いやすこと 松谷 和子
今が大事,それが大事 藤松 美和
ぬくもり塾 谷口 直之
「いじめ」に立ち向かった日 木村 暁子
ハッピー、ラッキー、新堂ファミリー  新堂 祥子
伝えていきたいこと 横光 佑典
自分より大切と思えるかかわりを作ってやらにゃあ 笹谷 豊子
お父さんの畑と家族 小沢 和子
年に一度、離島で暮らす 棚谷かおる
子どもからの通信簿 長嶋 節子
手触りの喪失 吉田 千枝
シングルインカムフォーキッズ 能戸 美佳
私の家族でありがとう 小島 晶子
祖父の一周忌 江馬 修三
えっ、放任家庭なの 三宅由里子
甘える時がある、甘えられる場所がある 中川 幸代
わが家の子どもたち 高谷 幸代
今、親として思うこと 小林久仁子
散歩家族 山根 敬子
しっぺ返しの法則 くぬぎすみ子
CONTINUE(コンティニュー) 菅原 聡美
現代の家族像と,私の体験的子育て論 鳥越俊太郎


●見本ページ

夏 カ レ ー

鈴木 由加里〔千葉県流山市・17歳〕

 父さんがすいかを買ってきた。私は両手ですいかを抱えて、何度もペチペチと叩たたいた。すいかは、透き通った、重みのある音でそれに応え、私をとても満足させた。すいかを買ってきてくれて、冷や奴でご飯がたべられる人と結婚しよう、と思った。夏休みの日曜日、家に家族が集結している。私は家中を点々としては本を読み、すいかを食べ、洗濯物の様子を見た。

 父さんと母さんは、毎朝二時間以上もかけて、それぞれの職場へと働きに行く。平日の朝、学校のある日に私が起きると、父さんはすでに背広を着ていて、髪の毛も顔もぐしゃぐしゃの高校生の長女に、いつもこう言う。

 「おはよう。ゆんゆん」

 私は少しうんざりして、ほんの少し照れくさいと思う。「ゆんゆん」とは、小さい頃の私のあだ名だ。たっぷりと入ったイノダのコーヒーカップを片手にして、薄暗い台所に立ったまんまで父は言う。

 「ご飯は仕掛けてあるから。六時には炊けると思う。今日は燃えるゴミの日だから、廊下にゴミ箱だしておいてね」

 わが家には、どこか曖あい昧まいな役割分担というものがある。小六の妹が、日々なにも手伝いをやっていないことに気がついて、私が突然、いつものパターンを制度化したのだ。父さんはゴミ出し。私は掃除と洗濯と食事の準備。妹は皿と鍋なべ洗い。そして母さんは、いつも何をやっているのかが定かでないので、まぁ、全部適当に。何やら、いつも人の仕事までやってくれるのが父さんで、母さんはいつも仕事から帰ってくると、ヨレヨレになっている。そして毎週日曜日の夕方になると、「ああ、『ちびまる子ちゃん』が始まってしまった。今週も休日が暮れていくわ」と言っては、明日も休みたいと駄々をこねる。

 「由加里の家は、変だよね」

 友達はみんなそう言って、首をかしげる。

 夏休みの休日。どこかの家から、低いラジオの声が聞こえる。扇風機がまわる音、雲の白がとけた青空。家族はみんな機嫌が良くて、父さんがはりきって作った焼き魚とご飯と味み噌そ汁と、納豆と梅干しがのっかった冷や奴を食べた。満腹のおなかが、少し重くて息苦しい。

 うちの両親は、とても嫌な夫婦だと思う。時には、じゃれ合う犬みたいに仲が良いけれど、時によっては、口げんかと精神的な抗争の末、離婚話にまで発展する。二人が怒りながら家の中を歩く音はギスギスしていて、家の中の空気が淀よどむ。

 去年の春、私はそれで散々泣いた。去年もおととしもその前も。しかし今年の夏、私は小さくつぶやいた。

 「もう、飽きた」

 まったく、本当に嫌な夫婦だ。しかし今日は「さっき駅でパパと会ったの。ちょっと飲んで帰るから」なんていう電話が入った。私は、テーブルの上に用意し始めた、カボチャ入りの夏カレーを横目で見ながら苦笑する。

 モジリアーニとエゴンシーレをこよなく愛する母さんが、主婦をやめて五年になる。十三歳の中学生だった私は十七歳になり、小学生低学年だった妹は学童保育所にも通うことなく、「六年生のお姉さん」になった。(以下略)

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