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  【うた】をよむ


【うた】をよむ

小林幸夫・品田悦一・鈴木健一・高田祐彦・錦 仁・渡部泰明 編著

2,000円 A5 232頁 978-4-385-34585-7 (品切)

生き生きした好奇心を引き寄せ、<うた>を読むおもしろさを示す待望の入門書。和歌をめぐる主要な視点・論点を明確にし、そのおもしろさ・意義から和歌への魅力的なアプローチの方法を提供する。

1997年11月10日 発行




●はじめに

 この本は、〈うた〉に関心をもつすべての人のために書かれた。ここでいう〈うた〉とは、「万葉集」の時代の歌、「古今集」以降の古典和歌、近現代の短歌をひっくるめて指している。わざわざ〈うた〉という見慣れない表記を用いたのには、少々わけがある。日本人は、この三十一文字という詩形式を、昔からあきれるほどしぶとく守り抜いてきた。実際いつ滅びてもおかしくなかっただろう。そういう特異な伝統を、古臭いといって切り捨てるのも短気に過ぎるが、かといって、だから日本文化は優秀なのだと短絡的に祭り上げるのも、問題であろう。まずは、日本の歴史を貫いて持続してきたことを率直に驚き、いったいどうしてこういうことになったのか、という素朴な疑問に立ち帰ってみたい。そういう思いが、〈うた〉という語にはこめられている。

 わたしたち六人は、みな〈うた〉の研究に閑心をもっている。そして、大学の教員でもある関係上、〈うた〉について教室で触れることも少なくない。ところが〈うた〉というものについて少し深く考えてみたいという学生に、まずこの本を読んだらどうか、と勧めるに足る本がなかなかない、という共通の悩みをも抱えていた。私たちが求めていたのは、和歌や短歌はツマラナイ、ワカラナイ、と思っていたけれど、これを読むとそうでもなさそうだ、と感じさせるような本であった。現代の若者の、定まらないけれどもその分生き生きとした好奇心を引き寄せ、〈うた〉を読むおもしろさを示した入門書であったのである。それがないならいっそ自分たちで作ってしまおうではないか、そう思ったのが実は本書の出発点となった。

 本書を作り上げるために、私たちはまず幾度かの研究会を行った。いったい何がわからないのか、最初はそこから議論をはじめ、その中から各自自由にテーマを選び、それについて自分はこういうことが語れる、ということを発表した。発表に対してさまざまな観点から疑問や意見が出され、活発な議論が展開された。やがて、問題意識も、和歌的修辞はなぜ用いられたか(第一章)、〈うた〉を詠ませ持続させた、文化・社会の在り方へ目を向ける(第二章)、〈うた〉の抒情を最も発揮する恋歌の本質を歴史的な展開に添って考える(第三章)、〈うた〉の言葉のもつ力を、各時代のこの一首といえる〈うた〉について、具体的に一語一語分析する中から、探り出してみたい(第四章)、という本書の構成に見られるような形で、あらあら固まってくることとなった。

 本書に収められた文章のほとんどは、その研究会の発表と議論を踏まえて執筆されたものである。出版する当てもない、という作業であったけれども、私たちにとって実に刺激的な経験となった。〈うた〉とは何がおもしろいのか、という出発点に立ち戻っての問いかけが、私たち自身にも次々に新たな発見をもたらしたからである。〈うた〉をおもしろく読みたいというのは、何より私たちの願いだったのである。執筆する上で何に気を使ったかといえば、そういう発見の高ぶりを、文章の語り口にうまくのせることであった。だから文体に一部統一を欠くような印象を与えるかもしれないが、意図するところを汲んでいただければ幸いである。要するに、自分達の好奇心を最大限に発動させることによって、読者の好奇心に揺さぶりをかけようとしたわけである。

 思いもしない偶然から、本書は幸運にも公刊の運びとなった。所期の目的を達成するものとなっているかどうか、もとより読者の判定を待つほかはないが、ともかく私たちは全力投球でポールを投げ込んでみた。そういう自信だけはそれぞれに持っている。そして、それに負けない力強いボールがそちらから投げ返されてくるかどうか。今私たちは固唾をのんで待ちうけている。

六人の一人として 渡部泰明

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