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  睡眠時無呼吸症候群のすべて


睡眠時無呼吸症候群のすべて

成井浩司 著   (品切)

1,500円 四六判 184頁 978-4-385-36174-1

"新幹線いねむり運転手" から注目された睡眠時無呼吸症候群の患者は推定200万人といわれて いる。政府もやっと対策にのり出した。本書は患者数が全国一の虎の門病院の専門医が検査と治 療、高血圧などの合併症の怖さなどについて全解説。

2003年9月10日 発行

著者・連絡先 目 次 高橋英樹さんに対する主治医からのコメント 1章 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは? あとがき



 ■著者・連絡先■

成井浩司(なるい・こうじ)

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院呼吸器科勤務。専門──呼吸器病学、睡眠医学。1992年シドニー大学 Colin Sullivan 教授のもと、auto CPAP の共同研究に携わる。

※連絡は、虎の門病院呼吸器科へ(HPは⇒ こちら
TEL 03-3588-1111
FAX 03-3582-7068



 ●目  次

巻頭インタビュー 俳優 高橋秀樹さん
"僕の患者体験をお話します!"

(高橋英樹さんに対する主治医からのコメント)

1章 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

はじめに
SASの定義と分類
SAS患者の特徴
SASの患者数
SAS患者のいびき
さらにご注意! SASの症状
SASの重症度の判定
早期発見、早期治療がポイント

2章 睡眠時無呼吸症候群がおよぼす社会的影響の大きさ

労働災害と社会的問題について
SASと交通事故
SASとそのほかの事故
社会生活に悪影響をおよぼすSAS
睡眠保健指導の重要性
SASを発見するために

3章 睡眠時無呼吸症候群の症状と合併症

SASと高血圧(SASと高血圧との関連を示す最近の大規模研究)
SASとそのほかの心血管疾患(虚血性心疾患・脳血管障害)
SASと糖尿病
SASとED(勃起障害)

4章 小児や女性も睡眠時無呼吸症候群になるの?

小児のSAS(症例:A君のケース/症例:B君のケース)
女性とSAS(症例:C子さんのケース)

5章 肥満と睡眠時無呼吸症候群──SASの治療で肥満が解消できる

SASと肥満の関係(肥満とSASの疫学[日本と欧米の比較]/日本人のSAS患者の特徴/SAS肥満の臨床的問題)
SASに対するCPAPによる減量効果の検討
肥満と成長ホルモン(症例:D子さんのケース)
肥満と缶コーヒー症候群
生活習慣病とSAS

6章 睡眠時無呼吸症候群の検査方法と診断

問 診
スクリーニング(昼間の眠気指数[Epworth Sleepiness Scale:ESS]のチェック/簡易式検査器によるスクリーニング)
睡眠ポリグラフ検査=ポリソムノグラフィー(PSG)
セファロメトリー検査
SASの診断基準

7章 睡眠時無呼吸症候群の治療のすべて──SASは治る病気です

CPAP療法(CPAPの種類/CPAPの副作用と鼻マスクの選択/CPAPの保険適応/外来での指導管理/CPAP治療体制の整備のために)
口腔内装具
外科手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術[UPPP]/レーザー手術([LAUP])
薬物療法(鼻スプレー剤)
そのほかの療法(減量/睡眠姿勢の改善/禁煙とアルコール)
治療後のケアについて

8章 睡眠時無呼吸症候群に対する国の考え方

厚生労働省の考え方(厚生労働省への要望)
国土交通省の考え方

あとがき

立ちあげに協力した診療施設
終夜の睡眠検査ができる全国の主な医療機関



 ●高橋英樹さんに対する主治医からのコメント

 高橋英樹さんは、長年いびきをかいていましたが40歳を過ぎてから体重が増加して、大きないびきだけでなく、いびきといびきの間に呼吸が止まるいわゆる無呼吸が見られるようになりました。その無呼吸の回数が多くなり奥様が心配するとともに、奥さんが無呼吸の診断をしてくれたわけです。テープレコーダーでいびきの音を記録し、無呼吸と大きないびきを聞き、高橋さんも受診を決心しました。

 そのころの自覚症状は、昼間の眠気と疲れやすさでした。しかし、睡眠時無呼吸症候群は寝ているときに起きていることなので、本人が自覚できずに進行していたわけです。このような症状が年をとったためなのかもしれないと本人は考えていたわけです。熟睡できないために心も体も本当の意味の休息を取ることができなかったわけです。仕事に対する意欲も少し低下し、もちろん大切な趣味のひとつであったゴルフの成績も下降気味、飛距離も落ちていたわけです。

 簡易検査では、無呼吸数は1時間に30回以上あり重症でした。すぐに、CPAP治療を導入するために入院していただき睡眠ポリグラフ検査を行いました。無呼吸数は、一時時間に21.3回、睡眠が浅くなる回数(覚醒反応指数)も一時間に17回ありました。そこで、鼻CPAP治療を導入しました。CPAP治療をすると無呼吸も消失し、睡眠から覚醒する回数も減り、深い睡眠も増加しました。この状況を高橋さんに説明しCPAP治療を続けていただきました。自宅でも、ロケ先でも毎日使用しています。効果は絶大で仕事も私生活も充実しています。もちろんゴルフの成績もアップです。集中力は回復し、忍耐力が出現し、いつもゲームをあきらめずパッティングの調子も良くなり、飛距離も回復です。

 とにかく、高橋さんとその家族、奥様、お嬢様に会えば、そのほほえましい姿を見るたびにCPAPの治療効果が絶大だと私は確信しています。しかし、もしCPAP治療がなされなかったらどうでしょう。睡眠時無呼吸症候群は大きないびきと昼間の眠気だけではなく、長期治療がなされなければ、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳梗塞を併発してくる危険性が高く、特に高橋さんの重症度では寿命が短くなった可能性も十分考えられます。もちろん高橋さんはお父様が狭心症であったという家族歴を考えますとその可能性は高くなります。

 とにかく高橋さんにとって非常に良いタイミングでCPAP治療を始めることができました。しかし、今後の課題は体重を減量することと、良い睡眠がとれて元気になっていますので頑張りすぎて自分の健康を過信しないことです。最後にCPAP治療を多くの方に広めてくださる桃太郎侍、高橋英樹さんいつまでも元気でいてください。



 ●1章 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

●──はじめに

睡眠中、本人はまったく無意識のうちに数十回も呼吸が止まってしまう病気が、睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)です。睡眠中にのどの筋肉がゆるんで気道をふさぎ、呼吸が止まってしまうのです。しばらく呼吸が止まると脳から非常信号が出て呼吸は再開しますが、一晩に何十回もこれを繰り返していると、当然十分な睡眠をとることはできません。最近、患者さんの数が急増し、一説には200万人ともいわれており、さまざまな不快症状や恐ろしい合併症を引き起こす、わが国の国民病の一つともいえる病気でありながら、まだ病気の実態が広く一般に知られていません。これは、眠っている間に症状が出るために、患者さん本人に自覚がないことや、症状があっても「たかがいびき」と、それほど深刻に考えずに治療を受けない人がいるためです。しかし、現実にはどれほど多くの人が、毎日苦しい夜を迎え、また昼間の眠気にさいなまれ、日々を送っていることでしょう。SASは明らかに生活の質(QOL)を低下させ、学習・労働能力へ悪影響を与えているのです。

さらに2003年2月には、JR山陽新幹線での居眠り運転が発覚し、国民に衝撃を与えました。幸い緊急停止し、けが人などはださずにすみましたが、岡山駅に着くまで睡眠時無呼吸症候群の運転士は、なんと8分間も居眠りをし、列車が停まって車掌が駆けつけたときにも、まだ眠り続けていたといいます。この新幹線は眠り続ける運転士を乗せ、最高時速約270kmで8分間、約26kmも走り続けていたのです。体重100kgを超え高血圧気味の運転士は、検査の結果、重症のSASと診断されました。大事故にならなかったものの、自動制御装置のない電車で起きたらと思うとぞっとする話です。2章で述べますが、これまでにあがっている統計においても、SASは交通事故などのアクシデントを増加させ、また大きな産業事故を引き起こしているのです。

●──SASの定義と分類

SASは「10秒以上の無呼吸が、一晩(7時間以上の睡眠中)に30回以上生じる病態」と定義されています。さらに、その無呼吸の状態が起きる原因によって、次の3つのタイプに分類されています。

まず「閉塞型」と呼ばれるタイプは、睡眠中に空気の通り道である上気道がふさがって、呼吸ができなくなるものです。どんなに健康な人でも眠っている間は筋肉がゆるむために、仰向けに寝ると舌が垂れ下がって上気道は多少狭くなりますが、気道がふさがって呼吸が止まってしまうことはありません。しかし、このタイプの人は、舌や肥大化した軟口蓋(上顎の奥の部分)がのどを圧迫して呼吸ができなくなってしまうのです。

第2のタイプは「中枢型」といい、もともと呼吸をつかさどる脳の中枢部分のはたらきに異常が起きていることが原因で、睡眠中無呼吸になるものです。この人たちは第1のタイプに比べると、いびきも少なく、夜中によく目が覚めてしまうと不眠を訴えるケースが多いようです。しかし、呼吸停止にともなって血液中の酸素飽和度が低下し、心循環器系に悪影響が出るのは第1のタイプと同じです。

そして3つ目は「混在型」と呼ばれるもので、「閉塞型」と「中枢型」の両方が無呼吸の間に混在しているタイプです。特に中枢型の無呼吸が多くみられる場合は、心不全など心臓の機能が低下していることが原因のこともあります。

このなかで、もっとも多いのが第1の「閉塞型」のSASです。このタイプの特徴は、「ガァーッ、ガァーッ」という大きないびきをかいているかと思うと、突然呼吸が止まり、この状態がしばらく続き、苦しさに耐えられなくなって再び呼吸を始めると、また大きないびきをかくことです。これを睡眠中に何度も繰り返します。

呼吸が止まると低酸素により眠っていた脳が活動して覚醒命令が伝わり、呼吸が再開されるのです。

●──SAS患者の特徴

いびきをかく人には太った人が多いというイメージがあります。実際SASは、30〜60歳の肥満の男性にいちばん多くみられます。肥満の人は首やのどの周辺部分にも脂肪がついているため、上気道が狭められて呼吸がしにくくなるのです。

日本人の患者さんに共通してみられるのは、大きなおなか、小さなあご、短い首の3点です。さらに、口の中の特徴としては、舌の位置が高く、後ろのほうにあることがあげられます。鏡に向かって口をふつうに開けてみて、のどの奥が見えないという人は、この病気の可能性があります。

日本人には、欧米人などと比較してSASになりやすい特徴があります。また、日本人のSASの患者さんは、欧米人ほど太っていない場合が多いのも特徴です。ある統計によると、日本人のSAS患者4800例のうちの3割は、肥満度(体格指数:BMI)25以下(非肥満)であるという報告もあります。

それは、日本人をはじめ東洋人の顔は、もともと短顔で顔が平らであり、そのうえあごが小さいため、のどが咽頭の近くにあります。さらに一般的に扁桃腺の大きい人も多く、生まれつき気道が狭くなっているのです。このように日本人は、顔の骨格構造の点からもSASになりやすく、さらに重症の患者さんが多いのです。

また、SASにかかる人は家族歴も非常に重要です。この病気は顔の骨格が深く関係しているので、親が大きないびきをかいている場合、顔が似ている子どもは、遺伝的にSASになる可能性が高いといえます。

このように、われわれ日本人にとってSASは、太った中高年だけに起きる病気だと簡単に片づけてはいけない病気なのです。

●──SASの患者数

欧米では、中高年の男性の4%、女性の2%にSASが認められたという報告があります。日本ではどうでしょう。ある報告では、中高年の男性の3.3%、女性の0.5%弱にSASの症状がみられたとされています。ホルモンの関係で中年の男性に多くみられる病気なのです。

日本の全人口の2%、200万人にSASの疑いがあるといわれていますが、近年の日本の食生活の変化から肥満の方が増加する傾向にあり、さらにSASの患者数は増加すると考えられます。この数は、気管支ぜんそくの患者さんの数と同じ数字です。また前ページの表で、SASが日本の代表的な成人病と患者数が似たりよったりであることがわかります。しかし、実際にSASの患者さんとして治療を受けている人は、わずかに3万人程度しかいません。なんと残りの少なくとも百何十万人もの患者さんが治療を受けずに毎晩いびきをかき、呼吸が止まり、日中の眠気をがまんするというSASの症状に悩んでいるのです。これは、非常に重大で深刻な問題です。

2003年2月に製薬会社のエーザイが行った、全国の20〜30代の既婚女性158人への調査によると、なんと9割の人が「夫がいびきをかく」と回答。一方、「夫のいびきを静かにさせたいと思うか」という質問には、妻の8割が何とかしたいと考えているという結果が出ています。この調査を見ても、いびきをかいている本人は自覚がなく、むしろ、妻をはじめ家族の心配、家族の発見が多いのがSASだということがよくわかります。

●──SAS患者のいびき

SASの患者さんに共通するのは、いびきですが、一口にいびきといってもさまざまなタイプがあります。一般的に、寝入りばなにかくいびきや、お酒を飲んだときや疲れたときだけにかく、いわゆる習慣性のいびきはあまり気にする必要はありません。これらのいびきは、比較的音が静かであるというのが特徴です。

しかし、上を向いて寝ると大きくなるいびきや音に強弱のあるいびき、朝までずっと続くいびき、さらに最近になって急にいびきが大きくなって音も変わってきたという場合は、気をつけたほうがよいでしょう。

日本人の約2割がいびきをかいているといわれています。この傾向は年齢とともに高くなり、中高年の男性では6割、女性ではその4割がいびきをかいているそうです。

SASの疑いで医療機関を訪れる場合、そのほとんどは、パートナーがご主人の大きないびきを心配して受診を勧めたケースです。ですから、患者さんの人数は男性のほうが圧倒的に多いのです。これを逆に考えると、夫婦では妻のほうが遅く寝ることが多いため、女性にいびきなどのSASの症状があっても、気づかないままに見すごされ、重症化しているということも考えられます。さらに女性には、いびきで病院を受診することにためらいを持つ人も多いようです。これからは、女性のいびきに十分な注意が必要でしょう。

SASの患者さんに多いいびきの特徴は、呼吸がいったん止まったあと、再び呼吸をしはじめたときにかく「ガァーッ」という大きないびきです。SASの患者さんは、睡眠中のどの奥(咽頭部)の上気道が狭くなって空気の流れが妨げられるときに、その摩擦音として発生する大きく激しいいびきをかく時期と、さらに咽頭部が圧迫されてふさがってしまうために呼吸が停止(無呼吸)し、静かになる時期を周期的に繰り返しています。

もともと人間の睡眠には、リズムがあります。一晩の睡眠中には、体は眠っていても脳が目覚めている状態で、眼球運動があったり、はっきりとした夢を見るレム睡眠と、脳も体も完全に眠っている状態の深い眠りのノンレム睡眠を繰り返しています。本来、ノンレム睡眠のときには、深い眠りが得られるはずなのに、SASの場合は、無呼吸とその後の大きないびきのせいで、脳も体も十分に休むことができないために、眠りが浅くなってしまうのです。

眠っている間の症状なので、本人が無呼吸を自覚することはほとんどありません。しかし、深い睡眠がとれずに、熟睡感がなく、頭が重くなったり、いびきを繰り返すことで口やのどの渇きを感じることがあります。「最近年をとったせいか、とても疲れやすい。どうしたのだろう?」と思っている場合など、原因がSASにあったというケースが非常に多いのです。

●──さらにご注意! SASの症状

SASが疑われる症状には、さまざまなものがあります。まず、当然ながら、激しいいびきと無呼吸です。しかしSASは、そのほかにもいろいろな症状を生み出します。中高年の場合は、肥満も症状の一つです。また、口やのどが渇いて口臭がある、熟睡感がないために起こる昼間の強い眠気・居眠り、疲労感や集中力の低下、頭痛、勃起不全などがあげられます。

そして、SASと診断される症状としては、これらのほかに睡眠時にたびたび起こる覚醒、夜間頻尿、うつなどがあります。このなかでも夜間頻尿は、特に多くみられる症状です。無呼吸のあとで再び呼吸が始まるときに、「ガァーッ」と大きないびきをかくことで、腹圧が上がって尿意がもよおされたり、同時に、尿を出さないようにしているホルモンの分泌が低下するために、頻尿の症状があらわれるのです。夜間頻尿から、前立腺肥大だと思って泌尿器科を受診するケースもあります。しかし、前立腺の治療を行っても、夜間頻尿の症状は改善しないため、悩んでいる人も少なくありません。

そして、むしろもっと恐ろしいのは、本人が自覚しない部分で進行する合併症です。SASを長いこと放置しておくことは、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心不全などを招く元凶になっているのです。中等症のSASの患者さんは健康な人に比べ、高血圧が3倍、心疾患が2倍、脳血管障害が2倍というデータもあるくらいです。研究の進んでいるアメリカでは、SASに関連した心血管系の障害により、毎年4万人近くが死亡するというデータが出ています。さらに、SASの高齢者の死亡率は、健康な人の2・7倍という数字もあがっています。

●──SASの重症度の判定

SASと診断された場合には、どの程度の症状であるのか、その重症度を調べます。詳しくは6章を読んでいただければと思いますが、無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)という方法で、睡眠時の1時間当たりの無呼吸と低呼吸の平均回数を調べます。無呼吸とは、睡眠中に10秒以上換気が停止すること、低呼吸は換気が50%以下に低下することです。

このAHIの睡眠時1時間当たりの数値が、5〜15が軽度、15〜30が中等度、30以上が重度のSASと判定されます。

日本人の場合、この数値が30以上になる重症の患者さんがかなり多くいます。しかし、SASの場合はほかの多くの疾患とは異なり、重症といっても、治療によって確実に良くなることが多いので、重症度をあまり気にする必要はありません。

●──早期発見、早期治療がポイント

SASはほかの病気のように複雑な治療、痛い治療、頻繁な通院は必要ありません。7章をお読みいただければわかるように、夜寝るときに鼻にCPAPという鼻マスクをつけて、圧力をかけた空気を持続的に送り込み、気道がふさがれないようにして呼吸を助けるだけで、爽快な目覚めと昼の活力を取り戻すことができるのです。 治療費もCPAPの貸し出し代のみです。気になっている方は、迷うことなく病院に行かれることをお勧めします。病院で支払う自己負担額は、月々4500円程度です。



 ●あとがき

1982年4月、虎の門病院に内科研修医として勤務し、すぐに重症睡眠時無呼吸症候群の患者さんに出会いました。当時はCPAP療法はなく、体重減少指導や耳鼻科的な手術を行いました。さらに心不全を併発するような重症SAS患者さんには気管切開を行い、上気道の閉塞をバイパスする治療が行われました。当時の気管切開を行った患者さん3人は現在も生存しています。

当時はSASを診断できてもCPAP治療が行えない状態でしたし、診断の睡眠ポリグラフ検査も記録はコンピューターではなく、脳波計で一晩記録紙を用いて行う検査で、準備から終了まで大変に労力がかかる検査でした。虎の門病院では1985年3月に初めてSAS患者さんにCPAP療法を試み、1988年ころよりCPAP治療器をアメリカから輸入し患者さんに治療を開始しました。当時のCPAP治療器は大きく、重量も重く、駆動音も大きいため、治療継続がうまくいかないこともありました。

当時は日本にはSASの患者さんは多くはいないと考えられていたため、この医療は私の趣味の医療と考えられ、病院でも理解者の少ない医療でしたが、臨床検査室の技師からの協力が得られていたので睡眠検査を行うことができました。また、当時の虎の門病院呼吸器科部長、現東邦大学教授、中田紘一郎先生が睡眠医療に理解を示され、睡眠検査技師の育成、海外研修、海外での研究発表を積極的にバックアップしてくださいました。また、1992年9月3日オーストラリアのケアンズで開催されたSASの国際学会で研究発表をした際にシドニー大学サリバン教授と出会い、同年シドニー大学でSAS治療器のオートCPAPの勉強をしてきました。

1993年ころより日本でもSAS診療の重要性、CPAPの治療効果が評価され患者数も飛躍的に増えてきました。その結果、全国からCPAP治療を受けるために多くの患者さんが虎の門病院にみえ、CPAP治療により昼間の眠気もなくなり、快眠が得られるようになり、健康になっていきました。その患者さんたちは、政財界や官僚の方や、高橋英樹さんをはじめ多くの著名人の方、多くの働き盛りの勤労者の方、公共交通機関の運転手、中高年の主婦の方、80歳を超える高齢者の方など、今では3000人を超えるほどです。

その方々は元気に暮らしていますが、しかしCPAP治療を受ける機会もなく、日常の眠気に悩まされ、事故を起こしやすくなったり、合併症のリスクにさらされている潜在SAS患者は200万人以上いると考えられています。このような方々が睡眠医療の恩恵を受けられるように、SAS患者に適切な診断、治療が行えるような全国的な睡眠医療の普及に、本書が役立つことがあれば本望です。最後に私の20年間の睡眠診療を支えてくれた虎の門病院呼吸器科のスタッフ、臨床生理検査部、特に睡眠検査に携わるスタッフに感謝します。また、いつも睡眠検査のために遅く帰っても笑顔で迎えてくれる最愛の妻にも感謝します。

2003年8月

虎の門病院 成井浩司

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