ひとり暮らしに対するイメージは、その年齢によって随分異なっています。10代で進学や就職のために初めて実家を離れて始めるのは、不安と希望がないまぜになったチャレンジでしょう。本人が自分なりのライフスタイルを創りあげたと手応えを感じる20代も、端から見れば青春時代の一時的な暮らしの形態に過ぎないかもしれません。仕事か家庭かと揺らぎながら達した30代なら、継続か中断か二者択一の正念場を迎えていると見られるはずです。

 しかし、40代に突入して、ひとり暮らしを続けていれば、あるいは、離婚や、一緒に暮らしていた親との死別で単身に戻ってしまったら、目前の充足に急ぐだけでなく、ちょっと呼吸を整えて先行きを考えざるを得なくなります。年齢が寿命の半ばに至ったという事実は重く、自分の足跡を辿りながら後半の人生へ想いを巡らし、準備を始めなければという気持ちになるものです。そういう意味では、ひとり暮らしの自己管理の本番は40代がスタートで、設定したゴールに向かって進むには、情報と支援が必要になってきます。

 幸いなことに、現在は情報には事欠きません。その理由のひとつは、単独世帯の急増です。

 2000年の国勢調査で、1,291万世帯、全体の27.6%を占めていた単独世帯は、日本の総人口が減少に転じると推計されている07年から最も多い世帯類型になると予想されています(国立社会保障・人口問題研究所、03年推計)。暮らしの風景は間もなくガラリと変わります。

 単独世帯とは、二世帯住宅で暮らしていても、生計を別にしていれば単独となったりしますから、厳密には単独世帯イコールひとり暮らしとは言い切れませんが、便宜上、単独世帯をひとり暮らしとすれば、世帯類型は近代家族のモデルであった両親と子どもの核家族を押しのけ、ひとり暮らしがその筆頭になります。

 家族が分解して、なくなってしまうわけではありませんが、単独世帯が増え続ける背景には、やはり「少子高齢化」があります。

 日本は女性の寿命が世界一であるだけではなく、その男女差も広がる一方で、03年の平均寿命は女性85.33歳、男性78.36歳と、女性が男性よりも7歳ほど長生きします。したがって、65歳以上の女性では夫と死別している割合が46・1%を占め、離別3.5%と未婚3.3%を合わせると夫がいない高齢女性は52.9%と過半数を占め、夫がいる45.5%よりも多くなっています(2000年)。要するに、女性は65歳を過ぎると、2人に1人はシングルです。

 高齢になってからのひとり暮らしには、未だに何かしら惨めというイメージがどこかにこびりついていますが、数が増える結果、そういった負のイメージも払拭されることでしょう。そうでなければ、世の中全体が暗くなってしまいかねません。

 偏見や差別に繋がるような否定的社会通念が変化するのを一番後押しするのは、残念ながら理念ではなく、数の力です。その一例がシングルに対するおせっかいやかんぐりでした。ところが、予想以上にシングルが増えて、30代前半の男性の未婚率が42.9%、女性が26.6%(2000年)にまで達してくると、結婚する・しないは個人の選択であると見なされ、結婚していない理由を取りざたするのはハラスメントになると認識されるようになってきました。

 少子化の影響としては、子どもの数が少なければ、核家族の変化のサイクルもスピードアップされるのは必然で、子どもが実家を出れば、家に残るのは親世代だけになってしまいます。核家族のサイクルは、これまで30年とされていましたが、ひとりっ子が10代で生家を後にすれば、一挙に短縮されて20年足らずとなってしまうでしょう。

 加えて、晩婚化、非婚化、また、離婚の増加があります。ひとり暮らしには、ますます数のパワーが加わります。

 かく言う私は非婚で、ひとり暮らし歴が40年近くになります。18歳で実家を離れ、ひとり暮らしに憧れ、今ではどっぷりと浸かって、その気楽さ、快適さを手放す気にはなれません。しかし、先行きへの不安が押し寄せてくる頻度は年とともに増えてきました。そこで、この機会に不安解消に繋がるさまざまな情報を集め、ひとり暮らしを始めようとしている女性たち、また続けていく中高年女性たちと共有したいと思い立ちました。

 これまでの体験、経験を通して私が実感しているひとり暮らしの必要条件は、簡単にまとめると次の9ポイントです。

@ 経済的自立
A 身体的自立
B 精神的、性的自律
C 生活をまかなえる技術
D 住居の確保
E 良好な人間関係
F 社会的係わりの継続
G 安全対策の充実
H 生きがいを持つ

 総てを常に保持するのは難しいかもしれません。気力がみなぎっているつもりでも、抱え込んでいる不安は突然、どこからともなく現れたりしますから、この条件は目安くらいに受け止めていただければ結構です。自立は状態を指し、自律は能力と解釈して区分しました。

 いずれにしても、この40年間続けてきた新聞記者、ライターとしての取材、インタビューなどを通して蓄積してきたひとり暮らしを支えるための情報を、全部整理し、安心して充実した生き方をするための読むガイドブックに仕立てられたらと思っています。

 ひとり暮らしを進化させるために、少しでもお役に立てば幸いです。