書名 漢字 よみ 著者名 漢字 よみ
さらに詳しく検索

トップ・ページ  新刊・近刊
辞書  電子出版  一般書  六法・法律書  教科書  参考書  教材  品切一覧

戦後民主主義
「知」の自画像

戦後民主主義「知」の自画像

北川隆吉・東京自治問題研究所 編

2,200円 四六 320頁 978-4-385-35978-X (品切)

東京自治問題研究所の機関誌『月刊東京』連載の人気対談を再構成。戦後民主主義を生きた16名の知識人が、みずからの「戦後責任」も含めて総括。新しい時代への足がかりをつかもうと試みた対談集。

2000年7月10日 発行

 編者紹介
 『戦後民主主義「知」の自画像』を推薦します
 対談者プロフィール
 もくじ



 ●編者紹介

北川 隆吉(きたがわ たかよし)
1929  ソウルに生まれる
1952  東京大学卒業
1953  同助手
1967  法政大学教授 
1978  名古屋大学教授 
1980〜1991  第12〜14期学術会議会員
1992  専修大学教授
現在  東京自治問題研究所理事長

60年安保闘争・革新都政実現・大学紛争・沖縄問題など、戦後の主要な社会運動・自治体運動に常にコミットし、マルクス主義社会学を主導する理論的・実践的活動を続けてきた。

〈著書〉『製紙労働者の歴史』1955 岩波新書(共著)、『山村社会の姿と動き』1968 林業改良普及会、『日経連─日本の支配機構─』1968 労働旬報社、『講座現代日本のマスコミュニケーション1・2・4』1972〜1973 青木書店(編著)、『現代資本主義叢書20・21日本の経営・地域・労働者』1980〜1981 大月書店(編著)、『都市論の周辺』 1986 三省堂、『都市東京』1987 岩崎書店、『講座社会学5産業』1999 東京大学出版会(編著)ほか多数。



 ●『戦後民主主義「知」の自画像』を推薦します

大内 力(おおうち つとむ)東京大学名誉教授・生活協同組合東京高齢協理事長

いやしくも首相をつとめる人の口から「天皇を中心とする神の国」だの「国体護持」だのという主張がポンポン飛び出す時代になった。あらためて過去五〇年の戦後民主主義というのは何だったのだろうかを、問いなおさなければならない思いを深くする。その長所や欠陥のことより、いったい民主主義がどこまで日本の社会に滲透し日本人の血肉となっているのかが問われなければならないであろう。
一六名の代表的な英智の、戦後民主主義への思いを収録した本書は、そのための最善のガイドブックたりうるであろう。

一番ケ瀬康子(いちばんがせ やすこ)日本女子大学名誉教授・日本介護福祉学会会長

本書を読み進めていくと、戦後民主主義がいかにゆたかな「知」とヒューマニズムにささえられてきたかを知らされる。戦後の日本における社会福祉・社会保障の充実や、女性の社会的前進も、この「知」とヒューマニズムの果実であった。その意味で本書の中に示されている一六名の方々の想いは、次代の民主主義を担う世代に向けた、私たち戦後民主主義派からの贈り物である。若い人たちに、しっかりうけつがれるよう心から期待し推薦する。

福島 譲(ふくしま ゆずる)自治体問題研究所副理事長・自治労連中央執行委員長

二一世紀を迎えようとしている今、地方自治も労働運動も重大な転機を迎え、その原点に立ち帰ることが求められている。戦後民主主義とは一体何であったか。その形成の上で、学術、文化、思想の領域の第一人者として活躍されてきた方々の、本書に収められている率直で真摯な発言は、我が国の今後に貴重な指針を与えてくれる。すべての人にお薦めしたい本である。



 ●対談者プロフィール

久野  収 (くの おさむ 1910-1999)

哲学者。京都大学哲学科卒。戦前より一貫して平和運動を中心とする市民運動に関わり、大きな影響を与えた。とりわけ、日本人・日本社会の「閉鎖性」を問題とし、これを開く努力を続けてきた。60年安保闘争、ベ平連運動なども、この視点によって闘われている。戦前人民戦線運動により治安維持法違反で逮捕され、2年間の獄中生活を送った。主要論文には「平和の論理と戦争の論理」「政治的市民の成立」「憲法第九条と非武装的防衛力」「独占批判の論理学」などがあり、『歴史的理性批判序説』『三〇年代の思想家たち』などの著書のほか『思想のドラマトゥルギー』(林達夫との対談集)なども出版されている。

遠山 茂樹 (とおやま しげき 1914- )

歴史学者。東京大学国史学科卒。横浜市立大学名誉教授。戦前より歴史学研究会に参加し、戦後再建された会の中心メンバーのひとりとなった。講座派の理論的成果をふまえ、戦中にたくわえた史料と研究をまとめた『明治維新』(1951年)は、この分野の研究をリードする政治史として注目を集めた。また、1955年に刊行した『昭和史』(今井清一、藤原彰と共著)は、ベストセラーとなったが、同時に批判も浴び、昭和史論争のきっかけとなった。主要著書はほかに『明治維新と現代』『戦後の歴史学と歴史意識』『日本近代史 I』など多数。

中村  哲 (なかむら あきら 1912- )

政治学者。東京大学政治学科卒。台北帝大教授、法政大学教授など歴任。私大連盟や大学設置審議会など各種の委員を歴任。元法政大学総長。元参議院議員。主権論、植民地法、君主制、民族学などの研究業績がある。戦中は昭和研究会に参加した。戦後は近衛ブレーンといわれた矢部貞治のもとで最初の憲法改正案を作成した。その他、文学、書画に関する論稿など文化活動をはじめ多彩な活動を行った。主要な著書には『植民地統治法の基本問題』『国法学の史的研究』『日本国憲法の構造』『柳田国男の思想』などがある。

隅谷三喜男 (すみや みきお 1916- )

労働経済学者。東京大学経済学部経済学科卒。東大教授、信州大教授、東京女子大学長を歴任。また、公労委公益委員、雇用審議会会長、社会保障制度審議会会長など歴任。世界平和アピール七人委員会委員としても活躍。日本学士院会員。労働問題研究に取り組み、アメリカ労働経済学の観点を入れて、従来からの「社会政策」にかわる「労働経済学」の独自の理論を展開。五味川純平著『人間の条件』のモデルともいわれている。主要著書には『日本賃労働史論』『日本労働運動史』『日本石炭産業分析』『日本職業訓練発展史』『韓国の労働』『労働経済論』のほか、キリスト教徒の立場から『日本社会とキリスト教』などもある。

松本三之助 (まつもと さんのすけ 1904- )

思想史学者。東京大学政治学科卒。大阪市立大助教授、東京教育大教授、東大教授を歴任。現在駿河台大学教授。丸山真男に師事し、丸山理論の忠実な後継者のひとり。国学と近代とを系統的に関連づけ、幕藩体制下の政治思想や自由民権思想、近代天皇制国家の思想構造などに取り組み、戦後の政治学に応用し展開した。学術会議会員。主要な著書には『国学政治思想の研究』『天皇制国家と政治思想』『近代日本の知的状況』『明治精神の構造』などがある。

小出昭一郎 (こいで しょういちろう 1927- )

理論物理学者。東京大学理学部物理学科卒。東大教授、山梨大学長を歴任。現在山梨県立女子短期大学学長。東大名誉教授。原水爆禁止運動や日本科学者会議、日本物理学会等において活躍した。物理教育においては後進の育成にも力を注ぎ、その底辺を広げることに貢献した。主要著書に『量子論』『量子力学 I、II』『エントロピー』『物理現象のフーリエ解析』などがある。

若月 俊一 (わかつき としかず 1910- )

医師。東京大学医学部卒。佐久病院に赴任、従業員組合を結成して組合長、また院長に就任。現在佐久総合病院名誉総長。国際農村医学会名誉会長。日本病院会顧問。無医村地域で、農民の健康を守るための病気治療だけでなく、農業生産や農家の生活が抱える矛盾に踏みこみ、予防重視の医療活動を行う。無医村への巡回診療や集団検診、全村健康管理は新しい農村医療の方式と注目された。医師、保健婦、国民保健関係者、農民代表で長野県農村医学研究会を組織し、日本農村医学会設立に尽力した。著書には『農村医学』『村で病気とたたかう』『農家の健康』などがあり、『若月俊一著作集』全7巻も出されている。

朝倉  摂 (あさくら せつ 1922- )

舞台美術家。画家。彫刻家朝倉文夫の長女。幼少の頃、父親の教育方針で学校に通わず、家庭で個人教育を受けた。最初、伊藤深水に師事し、日本画家として才能を発揮したが、60年代より舞台芸術の仕事に転身し、古典からオペラまで幅広く活躍している。演出家蜷川幸雄との出会いから生まれた「ロミオとジュリエット」「リア王」「王女メディア」「近松心中物語」などのスケールの大きな舞台装置が国際的評価を受けた。芸術祭賞、朝日賞、紀伊国屋演劇賞のほか、ザ・ジョン・D・ロックフェラー3世賞など受賞。現在、イラストレーター、装丁家としても活躍している。著書には『朝倉摂のステージワーク』などがある。

祖父江昭二 (そふえ しょうじ 1927- )

文学研究者。東京大学文学部美学美術史学科卒。和光大学名誉教授。1960年劇団「民芸」の文芸部員になり、のちに顧問となる。また、仲間とともに「文学評論」を出すなど、戦後民主主義の視点からの文学研究を行っている。近年はプロレタリア文学・芸術運動の史料の復刻に力を入れている。主な著書には『政治と文学』『近代日本文学の探索』『近代日本文学の射程』などがある。

猿橋 勝子 (さるはし かつこ 1920- )

地球化学者。帝国女子理学専門学校(現在の東邦大学)理数科卒。気象庁に入り、気象研究所地球化学研究部長で退官。この間、東邦大、原子力安全協会、第五福竜丸平和協会、地球化学研究協会の理事を歴任。女性初の日本学術会議会員。日本婦人科学者の会の創立者のひとり。第五福竜丸事件以降、放射性物質の海洋での挙動についての研究を行うなど、海洋放射能研究の権威。核兵器廃絶運動にも尽力。「女性科学者に明るい未来をの会」を設立、「猿橋賞」を設けた。地球化学研究協会学術賞受賞。1996年には世界9カ国の優れた女性科学者10人のひとりに選ばれる。著書には『女性として科学者として』『女性研究者』などがある。

小林 直樹 (こばやし なおき 1921- )

憲法学者。東京大学法学部卒。東大教授、専修大教授を歴任。憲法学者として学界をリードし、民主主義の立場から憲法擁護運動にも指導的な役割を果たしてきた。とくに憲法の法構造や動態の分析に力をそそぎ、1961年に出版された『憲法の構成原理』で知られるようになった。1980年には江藤淳と毎日新聞上で「改憲論争」を行い、注目を集めた。また岩波新書『憲法9条』は、自衛隊の「違憲・合法」論で論争を巻き起こした。主著は上記のほか『日本における憲法動態の分析』『日本国憲法の問題状況』『憲法秩序の理論』『法・道徳・抵抗権』などがある。  

磯村 英一 (いそむら えいいち 1903-1999)

都市社会学者。東京大学社会学科卒。東京市役所(のち都庁)に入庁、以後民生局長、都民室長などを歴任。退庁後都立大学教授、東洋大学長に就任。また、日本都市学会会長、国際アジア研究センター所長などを努めた。都立大・東洋大名誉教授。地域対策協議会会長。都庁在任中より都市問題を中心とした論文を多数発表していたが、退庁後都市行政の経験を生かして、同和問題、核禁運動など幅広い分野で都市問題の専門家として活躍した。主著には『人間にとって都市とは何か』『都市問題事典』『地方の時代』『都市社会学研究』『都市問題の系譜』など多数ある。

大谷 幸夫 (おおたに さちお 1924- )

建築家。東京大学工学部建築科卒。東大教授、千葉大教授などを歴任。丹下健三計画研究室で東京都庁舎などの公共建築の設計に携わる。建築の形のなかに都市の生成の原理を見出そうとした「東京都児童会館」「金沢工大」等の一連の建築作品はユニークである。建築家としてのみならず、都市工学の研究者としても活躍している。また、歴史的街並み保存運動にも取り組んでいる。建築家としての代表作は前記のほか「国立京都国際会館」「東大法学部4号館・文学部3号館」「沖縄コンベンションセンター大展示場・会議室」等がある。また主著には『都市空間の構成史』『空地の思想』などがある。

小倉 武一 (おぐら たけかず 1910- )

農政学者・農林官僚。東京大学法学部卒。農林省に入り、農政局長、食糧庁長官、農林事務次官などを歴任。近代化農業の憲法といわれる「農業基本法」の起草を行う。退官後、農林水産技術会議会長、米価審議会会長、農政審議会会長など農政の中心的ポストを歴任して政策決定に関わった。また、アジア経済研究所会長、日銀政策委員も歴任した。1974年から税制調査会会長として消費税を含む税制改革の基本案を作成したが、これはシャープ税制以来の税制改革といわれている。食料・農業政策研究センター名誉会長。 主な著書には『日本の農業は生き残れるか』『土地立法の史的考察』などがあり、『小倉武一著作集』14巻が出ている。

川上  武 (かわかみ たけし 1925- )

医師・医事評論家。順天堂医専(現・順天堂大)卒。内科診療に従事するかたわら、技術論と社会科学的分析を武器に医療問題を理論的に追求する。杉並組合病院など地域の医療機関に勤め、サークル運動や労働者の集団検診などに取り組む。国民皆保健で顕在化した医療危機のなかで、1961年に著した『日本の医者』と65年の『現代日本医療史』の両書は社会医学の基本文献といわれている。主な著書には前述のほか『現代病人史』『技術進歩と医療費』『農村医学からメディコ・ポリス構想へ』共著として『戦後医療史序説』『日本人の死生観』『人間国崎定洞』などがある。

大田  尭 (おおた たかし 1918- )

教育研究者。東京大学文学部教育学科卒。東大教授、都留文科大学長を歴任。日本こどもを守る会前会長。東大名誉教授。都留文科大名誉教授。専攻は教育史・教育哲学で、1952年に再建された、現場の教師中心の「教育科学研究会」では指導的役割を果たした。また、自宅で教師、親を交えた学習会を開くなど、実践的な活動にも精力的につとめている。主な著書には『教育の探求』『学力とは何か』『教育とは何か』『生命のきずな』などがある。


編集者からの言葉

 「左翼」という言葉が死語になってひさしい。この言葉は確かに、さまざまな色合いを帯びながらも、戦後という時代を象徴するものの一つであったように思う。それは、「民主主義」という言葉とともに、戦後日本の民衆の期待がこめられた時代的表現であったにちがいない。では今日、左翼という言葉の死とともに、民主主義もまた葬られるのであろうか。 戦後民主主義を清算しようとする右派政治家や学者・ジャーナリズムの、昨今の跳梁ぶりは目にあまるが、ふり返って、仮に民主主義がさほどに脆弱なものであるとすれば、ここで問われねばならないのは、「戦後的価値」を内包した思想全体のありようである。

 本書は、戦後民主主義を生きた知識人が、そうした意味で、みずからの「戦後責任」も含めて総括し、新しい時代への足がかりをつかもうと試みた対談集である。そこには、浮遊する現代に幾分当惑しながらも、自分史とダブらせつつ、いまなお訣別すべからざる「戦後」の今日的意味を、正確に見いだそうする姿勢がある。そして、時代の歯車を逆転させてはならぬという、「歴史責任」とでもいうべき静かな決意がうかがえる。

 いうまでもなく「民主主義」は、あらゆる思想をその内に許容し、試行錯誤を通してもなお社会の前進を信ずる思想である。したがって、いかなる混迷をものりこえる生命力を備えているとされてきた。しかし、今日進行している事態は、必ずしもさほど楽観的なものではない。本書では、現実の壁の大きさを突き崩せない無力感が、今日の日本では簡単に常識化し、ときには強権への服従へとつながる政治的土壌が指摘されている。戦後民主主義の脆弱性と一口に言ってもよいが、各対談では、個人の自立がふたたび国家にからめとられていく過程や、社会の公正性や公共性が経済的合理性という拝金主義にすりかえられていく過程、あるいは、秩序の名の下に暴力が肯定されていく過程など、いずれも、人間社会の負の本性にかかわり、従って民主主義と相容れない根深い現実が分析されている。また、戦後の理念が次々に覆されるような状況のもとで、民主主義そのものの中に含まれた弱点や限界を問うという問題関心は、刺激的かつ示唆に富んでいる。民主主義擁護の側にもあった官僚主義やセクト主義、あるいは自治能力(現実的解決能力や政策立案能力)の不足などが率直に語られているし、体制側の危機管理のなかで不断に再生産される、民主主義への懐疑や民主主義否定の観念を、容易に受け入れてしまうあなどりがたい思想構造への言及も興味深い。

  本書の対談者は、民主主義が直面するこうした問題状況への、処方箋を描くことには抑制的であるように見える。むしろ、これからが民主主義の試される時代なのだという認識を共通の土台とし、戦後がたどった経験を事実として投げ出すことによって、解決を次の世代に託しているようにさえ思われる。多様性の名の下に社会内部に芽生えたさまざまな分岐や、科学の発達で生じた人類的危機は、単なる「技術としての知」ではなく、人間存在の根源にかかわる哲学を求めている。本書が訴えかけているのは、戦後の知の水脈に分け入り、そこに折り重なった「知を検索する」ことによって、時代を拓いてほしいという願いではないだろうか。本質は細部に宿るという。本書には詳しい脚注が付されており、300名をこす登場人物をはじめ、対談の行間に蓄積された「知」に、読者がアクセスしやすいよう編集されている。対談者たちといっしょに戦後を生きた世代に、そしてむしろ若い世代に是非薦めたい本である。

  本書は、東京自治問題研究所の機関誌『月刊東京』に、最近三年間にわたり連載された人気対談を再構成してまとめたものである。対談は、研究所理事長で実践的社会学の第一人者である北川隆吉氏(法政大学・名古屋大学・専修大学教授など歴任)が聞き手になって行われたものである。氏は、「過去について語るだけ、とくに繰り言にも似た批判だけがあって、明日を語ることのない」人は相手に選ばなかったと言っているが、16人の対談者は、それぞれ戦後の学問・思想・文化の分野で著名な人たちであり、いずれも社会との関わりにおいて自己の研究・実践を行ってきた人である。また、社会運動のみならず行政サイドで活躍した人や、社会科学のみならず自然科学で業績をなした人など、幅広い分野からの参加をえている。

 逝去により本人との対談こそ実現しなかったものの、生前の丸山真男も評価したと言われるこの対談は、それぞれの対談者が、自分史を語りながら戦後の諸事象に分けいるという形で進められている。その内容は多岐にわたっているが、単行本での刊行にあたり、全体の内容を、今日的社会状況に対する戦後知識人としての「戦後責任」と「歴史責任」という観点で再構成している。雑誌で収録されたときのものから見ると、テーマの流れから外れる内容は幾分削られているが、再構成によって、対談者たちの問題関心がより鮮明に浮き彫りになっており、再読による新たな発見も多い好著である。



 ●もくじ

刊行の賦   北川 隆吉

I 民主主義の定着と日本社会の基層

1 保守の源流にのみこまれかねない戦後民主主義
〈対談者〉久野  収

時代の思想は庶民の雑誌にひそむ/抜きがたい中央集権の歴史/日本人の生活にしみ ついた保守主義/体制変革より「生活習慣」の革新を/真の多元論と市民運動の課題
▼久野さんからのメッセージ「自治哲学を固める必要」

2 自治がビルトインされなかった日本の近代化
〈対談者〉遠山 茂樹

戦中から戦後への歴史研究の原点/戦後歴史学における自治の問題/自由民権運動の 挫折と可能性/大衆運動に支えられた平和への願い

3 現実感覚と国際感覚を基礎にしたもっと自由な思考が必要
〈対談者〉中村  哲

柳田民俗学の政治的位置/「曲学阿世」論に見る戦後知識人の位相/旧植民地時代か らのアジアへの視点/父の想い出・ゾルゲ事件の回想/自治の思想をめぐって/注目 すべき岡山の自治の伝統/沖縄ナショナリズムの功罪

4 民主主義の主導権を「官」がとるか「民」がとるかだ
〈対談者〉隅谷三喜男

戦後初期労働組合研究の回顧/成田空港問題の解決と隅谷委員会/「官」の民主主義 と「民」の民主主義/「金での解決」は体制側に有利/「民」主導の民主主義の経験 /クリスチャンとしての社会底辺への関心/学問の根底に「人間の思想」を

5 進歩の観念を肯定した知の巨木─再考・丸山真男論─
〈対談者〉松本三之介

丸山「近代主義」への誤解/「古層」論は現実の壁を乗りこえる試みだった/悔恨共 同体を形成した知識人の戦後責任/大衆化社会における現実主義との格闘/「自立的 個人」論から見る丸山真男の地方自治論/近代理想主義を陳腐とする風潮に抗して

II 個人の自立と知識人の役割

1 科学者が社会への倫理を失ったらどうなるのか
〈対談者〉小出昭一郎

物理学界の民主的な雰囲気の源は/自然科学は真理探究の欲求に根ざす/全共闘運動 の反動としての管理教育/学問の社会性が求められた時代からの出発/エリート教育 は理科離れをもっと進める/埋められた外堀を掘り返す科学者運動を

2 民衆に恋するほどでなければ本物の運動にはならない
〈対談者〉若月 俊一

農村医療を通じて闘ってきたことと/イデオロギーが先行しては何もできない/利用 され押さえこまれた農民の政治意識/騙されやすいが最後に力を持つのは民衆/個を 大切にすることからの出発

3 権威にからめとられた観念から創造性は生まれない
〈対談者〉朝倉  摂

好きな道を自由に追求して/六〇年安保闘争と演劇界に吹いた風/縦割り社会「日本」 からの脱出/すぐにファシズムに変身する日本の社会/固定観念から不断に自由でい ること/自分の中に基準を決めない

4 いまなお具現せぬ「自治の思想」の将来像を求めて
〈対談者〉祖父江昭二

時代の共感としての社会運動/学問の商品化と哲学の衰退/高等教育の大衆化がもた らした文学状況/若者にきらわれた「組織」と「政治」/「大衆文学」に見る社会の 変化/根付かない生活レベルの「自治」/労働者・学生・母親の中の希望.の光

5 フェミニズムよりも実力と人がらで世の中を変えたい
〈対談者〉猿橋 勝子

地球化学者三宅泰雄先生との出会い/政治のかけひきに利用される科学/人間の中に 不平等があるのはいやだ/「猿橋賞」がめざすもの/子どもたちをむしばむ学校教育

III 新しい自治と共同の模索

1 真の公共性を回復する「世界・国家・自治体」の見取り図
〈対談者〉小林 直樹

法の理念を支える社会的理由の考察/公共性の名目で国民につけをまわす構造/世界 連邦と地方自治体が中心のシステム構想/世界連邦構想に必要な自立した個人/ポス トモダニズムにおけるすりかえ/暴力人から平和をとりもどす課題

2 現場を知ることによってこそ発言し行動する勇気と知恵も湧く
〈対談者〉磯村 英一

キリストへの信仰に満足できなかった頃/実践を重視した恩師戸田貞三/東京市社会 局と大阪市社会部の交流/現実の行政を研究のフィールドにする大切さ/同和問題で の自信、「自治体の墓」という発想/グローバルな視点からの都市研究を

3 近代合理性が経済合理性にすりかわった都市に再生はあるか
〈対談者〉大谷 幸夫

戦後の焼け跡で見たもの/自己批判のあいまいさ/経済従属性をひきずった戦後責任 /都市計画と国土計画は誰のための計画か/機能合理主義の苦手な日本人/管理の立 場からコミュニティは生まれない/都会は自立した個人を育てる

4 農業に現れた矛盾は日本全体の活力の喪失につながる
〈対談者〉小倉 武一

自作農創設が政策のすべてではない/戦後農政の中枢にあって/政策決定システムの 今日/これからの農業の担い手は協同組合/農村社会学との出会い

5 機能不全におちいった日本の福祉は再建できるか
〈対談者〉川上  武

社会と結びついた医療思想を育んだもの/医学はすべて善か、福祉は権利として定着 したか/福祉と防衛は両立しない/人権を理念でとらえるだけでは不十分/炭坑での 私の医療運動/医療の社会化に取りくんだ先駆者/「時代の声」を内発性に転化して

6 不完全な人間同士だから教師と生徒が知恵を出し合う教育を
〈対談者〉大田  尭

学んだことが役立たなかった無力感/生まれ出るものは「生きる力」を備えている/ 命と命をつなぐ絆としての共同体の再構築/教育はアートである/民主主義は不完全 性を前提にしている

あとがき

収録対談出所一覧

このページのトップへ
トップページへのアイコン




Copyright (C) 2014 by SANSEIDO Co., Ltd. Tokyo Japan