ことばは人を育て、未来をきりひらく知の源です。三省堂はことばをみつめて135年 サイトマップお問い合わせプライバシーポリシー
三省堂 SANSEIDOトップページ 三省堂WebShop辞書総合サイト Wrod-Wise Web教科書総合サイト ことばと教科
辞書教科書電子出版六法・法律書一般書参考書教材オンラインサービス
書名検索漢字かな著者名検索漢字かな詳細検索
新刊・近刊案内
メディアでの紹介
本の注文
書店様専用
大学向けテキスト
卒業記念
名入れ辞書
品切れのご案内
「ぶっくれっと」アーカイブ
会社案内
採用情報
謹告
三省堂印刷
三省堂書店へ
三省堂書店はこちら
声に出して読めない日本語。
「ほぼ日刊イトイ新聞」
(『大辞林』タイアップ・サイト)
  世界言語への視座―歴史言語学と言語類型論―


世界言語への視座

松本克己 著

4,200円 A5 480頁 978-4-385-36277-9

格、語順、主語、母音調和、キョウダイ名等、印欧語から日本語まで、具体的な言語現象に焦点を当て、言語学の基礎を成す歴史言語学と最前線の言語類型論の手法を縦横に駆使して、世界の言語を俯瞰した知的興奮の書。巻末に事項索引(9頁)、言語名索引(6頁)、人名索引(5頁)。

2006年11月10日 発行

著者略歴 目次 あとがき 見本ページ



●著者略歴

松本 克己(まつもと・かつみ)

1929年長野県に生まれる。東京大学文学部言語学科卒、同大学院修士課程修了。金沢大学法文学部、筑波大学大学院文芸・言語学研究科、静岡県立大学大学院国際関係学研究科教授を経て、現在、金沢大学、静岡県立大学名誉教授、元日本言語学会会長。専攻は、印欧比較言語学、言語類型論。

著書に、『古代日本語母音論 ― 内的再建の試み』ひつじ書房:1995、訳書に、R. ヤーコブソン・L. ウォー著『言語音形論』岩波書店:1986、B. コムリー『言語普遍性と言語類型論』\(共訳)、ひつじ書房:1992、G. プライス(編)『ヨーロッパ言語事典』\(監訳)、東洋書林:2003、など。



●目  次

第I部 印欧語の世界

第1章通時的に見たことばの記述――歴史言語学の原理と方法――

1.1ことばの変化相
1.2音変化の規則性
1.3比較方法
1.4言語の分岐的変化と収束的変化
1.5内的再建

第2章印欧言語学への招待

2.1印欧語の世界:研究略史
2.1.1サンスクリット語の導入と「比較文法」の成立
2.1.2シュライヒャーの印欧語系統樹と青年文法学派
2.1.3ヒッタイト語の登場

2.2印欧語の母音組織
2.2.1印欧祖語に母音はいくつあったか
2.2.2サンスクリット語における口蓋音の問題
2.2.3印欧祖語5母音説の問題点

2.3印欧語の母音交替と喉音学説
2.3.1印欧語における母音交替の諸相
2.3.2ゼロ階梯と「ソナント」
2.3.3ソシュールの「ソナント的機能音」
2.3.4喉音学説と印欧語の母音組織

2.4印欧語の語順のタイプ
2.4.1語順の2つのプロトタイプ
2.4.2印欧語における語順の諸相
2.4.3印欧語の統語法を遡る

2.5印欧語の形態法
2.5.1印欧語の格組織と格変化
2.5.2印欧語における格組織の崩壊
2.5.3アジアの印欧語における格組織の再生

2.6印欧語の名詞形態法の起源
2.6.1名詞の文法範疇としての「性」と「数」
2.6.2印欧語の格変化の2つのタイプ
2.6.3印欧語の格標示と能格性

第3章印欧祖語の子音組織――類型論的考察――

3.1印欧祖語における有声帯気音の問題
3.2第IhspaceI列音Mediae(有声音)の問題
3.3有標性の序列
3.4新たな解釈:喉頭化音説
3.5喉頭化音を持つ自然な体系
3.6残された問題

第4章印欧語における能格性の問題

4.1能格性とは
4.2印欧語の格組織と能格説
4.3印欧語の能格説とシルヴェステインの名詞句階層
4.4印欧語の名詞形態法における「主格」の位置
4.5能格型と動格型
4.6印欧語の動詞組織と動格性

第5章言語圏として見たヨーロッパ

5.1言語圏または言語連合
5.2「大西洋・地中海言語連合」としてのヨーロッパ
5.3ヨーロッパ的地域特徴
5.3.1「大西洋・地中海言語連合」の全般的特徴(No.1--13)
5.3.2「バルカン的特徴」(No.14--24)
5.3.3「大西洋的特徴」(No.25--32)
5.4おわりに

第II部 語順の類型論

第6章印欧語における統語構造の変遷――比較・類型論的考察――

6.1序論:統語構造の2つの基本型
6.2印欧諸言語における統語型の種々相
6.2.1印欧語の東方群と西方群
6.2.2主要印欧諸語における語順の型
6.2.3印欧語の西方群における統語構造の変化
6.2.4ギリシア語の統語構造
6.3統語構造の変化の原因
6.3.1語順変化の外的要因
6.3.2語順変化の内的要因
6.3.3印欧語における動詞の活用形式

第7章日本語の類型論的位置づけ

7.1言語の線状化の原理
7.2世界諸言語の語順のタイプとその地理的分布
7.3世界諸言語の中の日本語

第8章語順のタイプと線状化の原理

8.1構成素の配列と「支配の原理」
8.2同一範疇に属する構成素間の配列順位
8.3語順と文の情報構造
8.4「主語」の位置と「定」/「不定」
8.5動詞文頭型言語の場合
8.6語順と有生性階層あるいは「話者の関心度」

第9章語順の分布と語順の変化

9.1データベース
9.2基本語順の地域ならびに系統的分布
9.3基本語順の主要なタイプと世界言語におけるその分布
9.4稀なタイプと接触または過渡地域
9.5SVO語順の場合
9.6むすび

第III部 主語をめぐる諸問題

第10章主語について

10.1はじめに
10.2主語の定義
10.2.1西欧以外の文法学における「主語」概念の欠如
10.2.2パーニニのk=raka理論
10.2.3ストア派の統語理論
10.2.4アラビア文法の観点
10.3西欧中世の統語理論
10.4中世ヨーロッパ諸語の語順のタイプと統語法
10.5「標準ヨーロッパ語(SAE)」における主語の義務化
10.6まとめ

第11章主語のない文法モデル

11.1主語へのさまざまなアプローチ
11.2人類言語の普遍的範疇としての「動詞」/「名詞」とその役割
11.3意味に基づく動詞の分類
11.4態:動詞の結合価とその変換
11.5情報伝達の担い手としての文
11.6まとめ:文の3つの構成原理

第12章自動詞の分裂または「動格」現象
12.1「犬モ歩ケバ棒ニ当タル」
12.2自動詞の意味内容
12.3「動格型」言語
12.4能動詞と所動詞

第13章類型論から見た主語現象

13.1主語の両面性---題目と主役---
13.2動詞の人称標示と名詞の格標示
13.3多項型人称標示と能格性
13.4役柄標示と名詞句の階層
13.5動格型の役柄標示(いわゆる自動詞の分裂)
13.6語順の文法化

第IV部 世界諸言語の類型地理論

第14章世界言語の数詞体系とその普遍的基盤

14.1はじめに
14.2ユーラシアの5〜20進法
14.3ユーラシア以外の地域の5〜20進法
14.4「原初」の数詞体系

第15章形容詞の品詞的タイプとその地理的分布

15.1はじめに
15.2ユーラシアにおける形容詞の2つのタイプ:用言型と体言型
15.3ユーラシアの周辺

第16章流音のタイプとその地理的分布――日本語ラ行子音の人類言語史的背景――

16.1はじめに

16.2世界言語における流音タイプの分布

16.3太平洋沿岸部における単式流音型言語
16.3.1環日本海諸語
16.3.1.1日本語,アイヌ語,朝鮮語の流音
16.3.1.2ギリヤーク語の流音
16.3.2環日本海以北の沿岸諸言語
16.3.2.1チュクチ・カムチャツカ諸語の流音
16.3.2.2エスキモー・アリュート諸語の流音
16.3.2.3沿海州のツングース語
16.3.3中国および東南アジア大陸部の諸言語
16.3.3.1中国語の流音
16.3.3.2チベット・ビルマ諸語の流音
16.3.3.3シナ・チベット語族における漢語(=中国語)の位置
16.3.3.4ミャオ・ヤオ諸語とタイ・カダイ諸語の流音
16.3.3.5オーストロアジア諸語の流音
16.3.4オーストロネシア諸語の流音タイプ

16.4アメリカ大陸
16.4.1北米諸語の流音タイプ
16.4.2中米諸語の流音タイプ
16.4.3南米諸語の流音タイプ

16.5その他の地域
16.5.1ニューギニアのパプア諸語
16.5.2サハラ以南のアフリカ
16.5.2.1ニジェル・コンゴ語族の流音
16.5.2.2コイサン諸語の流音
16.5.2.3ピジン・クレオール

16.6複式流音型の言語圏
16.6.1アフロ・ユーラシアの複式流音
16.6.1.1中心分布としての複式流音圏
16.6.1.2アフロ・ユーラシアにおける単式流音型の痕跡
16.6.2オーストラリア原住民諸語の流音タイプ

16.7流音タイプの分布と人類言語史

第17章ユーラシアにおける母音調和の2つのタイプ

17.1いわゆる「ウラル・アルタイ型」の母音調和
17.2中期朝鮮語の母音調和と母音組織
17.3太平洋沿岸諸語における母音調和
17.3.1ギリヤーク語の母音調和
17.3.2チュクチ・カムチャツカ諸語の母音調和
17.3.3ネズパース語の母音調和とペヌーティ諸語
17.4母音調和の2つのタイプ:ユーラシア内陸型と太平洋沿岸型
17.5ツングース語の母音調和

第18章世界諸言語のキョウダイ名――その多様性と普遍性――

18.1はじめに

18.2世界諸言語に見られるキョウダイ名のタイプ
18.2.1中立1項型(=A型)
18.2.2年齢2項型(=B型)
18.2.3年齢・性別型
18.2.3.1 年齢・性別3項型(=C型)
18.2.3.2 年齢・性別4項型(=D型)
18.2.4性別2項型(=E型)
18.2.5性差が関与するキョウダイ名
18.2.5.1 性差2項型(=F2型)
18.2.5.2 性差・性別3項型(=F3a型,F3b型)
18.2.5.3 性差・性別4項型(=F4型)
18.2.5.4 性差と性別が関与するその他のタイプ
18.2.6性差と年齢差が関与するキョウダイ名
18.2.6.1 性差・年齢3項型(=G3型)
18.2.7性差・年齢・性別が関与するキョウダイ名
18.2.7.1 性差・年齢・性別4項型=G4型
18.2.8多項型キョウダイ名(Gm型)
18.2.8.1 複合多項型=Gm-a型
【ギリヤーク型】
【アルゴンキン型】
【ナヴァホ型】
18.2.8.2 組込多項型=Gm-b型
【セリ・ダコタ型】
【ノス・カヤビ型】
【グリーンランド型】
【ビルマ型】
【アイヌ・ユピック型】
【ムン・ウディ型】
【オトミ型】

18.3主な言語圏におけるキョウダイ名タイプの変化
18.3.1チベット・ビルマ諸語
18.3.2オーストロアジア諸語とミャオ・ヤオ諸語
18.3.3エスキモー・アリュート諸語
18.3.4環日本海諸語
18.3.5オーストロネシア語族
18.3.6その他の言語圏
18.3.6.1 アメリカ大陸
18.3.6.2 アフリカ
18.3.6.3 オセアニア

18.4むすび

収録論文初出

あとがき

索引



●あとがき

 本書は、私がこれまでいろいろな形で発表してきた論文の中から、なるべく一般的なテーマについて扱ったものを選び出して一書にまとめたものである。時期的には1970年代の中頃から現在まで、およそ30年間に及ぶ長短さまざまな18編の論文からなる。ほぼ内容別に、印欧語関係、語順類型論、主語論、類型地理論という4部に分けられているが、もちろん全体が整合的に構成されているわけではない。書かれた時期や発表された場に応じて論文の性格も異なり、一般向けのものもあればかなり専門的な論考も含まれ、読み易さという点でも大きな違いがあろうかと思われる。それぞれの論文は独立の章として扱われているので、読者各自の興味のままに自由に選択して読んでいただければ幸いである。

 今ここに収められた論稿を振り返ってみると、私がこれまで言語学という学問に関わってきた遍歴の跡が浮かび上がってくる。私がこの道に入った(あるいは迷い込んだ)のは、ギリシア、ラテンという西洋古典語の学習を通してであった。学生時代、私が志したのは言語学よりもむしろ西洋古典学で、学部の卒業論文や大学院の修士論文で扱ったのもホメロスのギリシア語だった。その後、サンスクリット、ヒッタイト語などいろいろな古代語にも手を染め、やがて、古典学と言語学のいわば接点、その意味でまたきわめて伝統色の濃い印欧比較言語学を自らの専門分野とするようになった。私にとって言語の研究は当初からその歴史的側面と切り離せない関係に立っていた。本書の第1部(および第2部第6章)の諸章は、このように私が古くから馴染んできたいわばホームグラウンドでの産物である。

 1980年代に入ってから、私の関心は印欧語の領域を越えて、人類言語の多様性と普遍性の問題と取り組む言語類型論へと移っていった。フンボルト以来言語学にとって最も大きなそして魅力的な研究課題とされてきた分野である。この方面へ私を導いたのは、とりわけ語順の類型論的研究で、本書第6章の論文がその出発点となった。この種の研究では、世界諸言語からの幅広いデータの収集が不可欠であるが、現在世界言語に関してわれわれが入手できる情報は、フンボルトの時代とは較べものにならないくらい豊富である。それだけに、これらの情報を効果的に利用するためには、昔ながらの手作業では難しく、私の場合、当時ようやく普及しはじめたパーソナル・コンピュータを使って世界言語のデータベース(らしきもの)を構築できたのが大いに役立った。

 最近の言語類型論はとりわけ言語普遍性の研究と密接に結びついているが、私の場合、普遍性の究明もさることながら、むしろ言語諸特徴の地理的な分布を手掛りに、そのような分布を生みだした諸言語の歴史的な背景を探るという点により大きな関心が向けられてきた。本書第4部「世界諸言語の類型地理論」は、比較的近年に書かれたこの分野での論文を含んでいる。とくに、現役を退いてからここ10年近く、私の主たる関心は、日本語のいわゆる“系統問題”で、伝統的な歴史・比較言語学の手法では到底手に負えないこの難問の解決を、世界言語の類型地理論的アプローチに求めようとする。第4部の形容詞や流音タイプの地理的分布、またユーラシアの母音調和を扱った論文は、このような線に沿った一連の論稿から選ばれた。

 第3部「主語をめぐる諸問題」は、前後の章とはやや性格が異なると見られるかもしれないが、現代言語学の流れの中で自らの学問上の立場を明確にするために、これも私の言語研究にとって欠かせない柱のひとつである。私がこの学問に関わってきたこの半世紀近く、とりわけ日本の言語学は、滔々として押し寄せるアメリカ言語学の潮流、それも一部の流行現象に翻弄されてきたかに見える。とりわけ最近の“英語専一主義”の流行(ないし横行)は、この学問の偏狭化と貧困化につながりかねない。第3部を含めて本書の全体は、本来人類言語を総体的に視野に収めるべきこの学問のこうした現状に対する警鐘の意味も込められている。

 最後に、本書がこのような形で公刊される運びとなったのは、ひとえに筑波大学大学院の一般言語学卒業生諸氏のたゆみない熱意と支援の賜物である。私の喜寿の祝いにと、通例の記念論文集の代わりに、私自身の論文集を刊行するという企画を立て、それを熱心に推進してくれた、とりわけ山本秀樹(弘前大学)、池田潤(筑波大学)、乾秀行(山口大学)の諸氏、またこの企画を快く受け入れ、本書の出版に向けて惜しみない協力を賜った三省堂出版局、とりわけ『言語学大辞典』以来の永いお付き合いとなる柳百合さんの並々ならぬご尽力に対し、この場を借りて心から御礼を申し述べる次第である。本書はまた、最近の言語学関係の出版物でしばしば利用される \TeX の組版によって出来上がったが、この組版を準備するために、この方面には不慣れな筆者を惜しみなく支援してくれた乾秀行、高橋洋成(筑波大学大学院)、佐々木冠(札幌学院大学)の諸氏にも心から感謝の意を表したいと思う。

  2006年9月

松本 克己

このページのトップへ