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  三国志ハンドブック


三国志ハンドブック 陳舜臣 監修、竹内良雄 編

1,900円 A5変 256頁 978-4-385-41035-X (品切)

『三国志』をより深く楽しむために、三国時代の社会背景、物語の要旨、主な激戦の様相、武器や武具、多彩な登場人物の生涯、名言・名句などを、図解を交えて詳しく紹介。年表、参考図書も付した格好の入門書。

1998年 7月10日 発行

スタッフ紹介 目次 『三国志ハンドブック』 見本ページ 三国鼎立時代の要地図 ハンドブック・シリーズ



●スタッフ紹介

監修◆陳 舜臣(作家)
1924年、兵庫県神戸市に生まれる。大阪外国語学校印度語科卒業。69年『青玉獅子香炉』で直木賞、71年『実録・アヘン戦争』で毎日出版文化賞受賞。97年日本芸術院会員となる。主な著作に『太平天国』 (4巻)、『中国の歴史』(15巻)、『中国畸人伝』、『諸葛孔明』(2巻)、『小説十八史略』(2巻)などがある。

編集◆竹内良雄(慶応義塾大学教授)
1945年、東京都に生まれる。東京都立大学大学院中国文学修士課程中退。主な訳書に『史記』『三国志』『十八史略』(共訳)などがある。

執筆◆
竹内良雄[第一部『三国志』への招待/第三部『三国志』合戦事典/参考図書]
山谷弘之(中国史研究家)[第二部『三国志』をたどる]
丹羽隼兵(中国史研究家)[第四部 人物列伝/第五部 名言・名句編/『三国志』年表]



●目  次

第一部 『三国志』への招待
正史『三国志』の成立
『三国志演義』について
三国時代の社会背景

第二部 『三国志』をたどる

破局の予兆
割拠する群雄
官渡の戦い
天下三分の計
三国鼎立
司馬氏の台頭

第三部 『三国志』合戦事典

主な激戦の様相
武器と武具

第四部人物列伝
後漢末の武将たち
魏の勇将・智将
蜀の勇将・智将
呉の勇将・智将
歴史を彩る女性たち

第五部 名言・名句編

『三国志』年表

参考図書

索引



●『三国志ハンドブック』

「ぶっくれっと」132号より

陳舜臣

『三国志』の面白さ

 中国の歴史上の抗争をあげますと、まず楚と漢、つまり項羽と劉邦の争いがあります。これは項羽と劉邦という二人のストレートな争いですね。ところが『三国志』になると少し複雑になりまして、三国のうちのどれが天下をとるかという面白さがあります。しかし複雑といっても、後の時代の五胡十六国となると、名前をおぼえるだけでもしんどい、これは複雑すぎます。その点、三国の争いではそう頭が混乱することはない。適当に複雑であると、そこがまず面白いところではないでしょうか。

 そして、正史の『三国志』と一般にわれわれが読む『三国志』とは違うので、前者では魏が正統とされているのに対し、後者では蜀を正統として書かれています。だから正史で読むのと、ふつうに講談本などで読む『三国志』はちょっと違う。何か、蜀を正統だとする、ちょっとデリケートな違いがあるのです。そこがまた面白い。

 たとえば、関羽が殺されます。戦争に負けて捕えられ、首を刎ねられる。このとき、関羽を捕えた呉の大将の呂蒙、この人がほとんど同時に死んでいます。というのは、それまで肺結核で死にかけていたので、これは不思議なことではない。ところが呂蒙の副将、孫皎もほぼ同じときに死にます、健康な若い人が急に死んだ。これはおかしいと、それで関羽のたたりだということになってくるんですね。

 ほんとは偶然でしょうが、講談として伝わっている話では、この二人の死にはおかしなところがあるという。それは、関羽の怨霊にとりつかれて悶死したのだというわけです。そうなると日本の天神さんと同じで、たたりというのは怖いから、みんな関羽をおがむ。それが各地にある関帝廟ということになります。関羽は王でも皇帝でもないのに、なぜ帝という字がつくのか。これはもう関羽にたたられると怖いと、みんながおがんで関帝廟になった。

 関羽の死はそれだけ悲惨なものだったのです。呂蒙の策略にのって、息子の関平といっしょに捕まり、首を斬られて死ぬ。この首が魏の曹操のもとに送られます。曹操と関羽は短いながら一度は主従として、仲のいい時代もあった。ですから呉の孫権から曹操に送られるわけですが、まあ呉にしてみれば、首を置いておいてはたたりが怖いということもあったでしょう。それはいまと違って迷信深かった時代です。

 ところが、曹操という人はそういう迷信を一切信じなかった。たたりなどないといっている。人間は死んだらゴミになるという感じの人ですね。自分の葬儀にしても、大きい墓は建てるなと、遺体には平服を着させ、金玉珍宝を副葬してはならぬといいます。

 しかしこの、大きな墓を建てるなというのは、もう一つ理由があって、どうも曹操は軍資金がなくなると昔の大きな墓を掘って、そのなかから副葬品、財宝を盗み、軍資金にあてていたらしい。ですから、自分の墓もそうなったらかなわないから、薄葬にしろという遺言を何通もつくっています。迷信を信じない曹操が、死んだら痛くも痒くもないという人が、自分の葬儀について、何もするなと非常に気にしている。これもおかしいので、本当に痛くも痒くもないのであれば放っておけばいいわけです。やはり、財宝を埋めたら、それを掘り起されるのが怖かったのだと思います。

 こういう人間の違いといいますか、当時の迷信深い人と、曹操のような迷信を信じない、唯物主義者というキャラクターの取り合せなども『三国志』の面白いところです。

 登場人物も面白い

 蜀の劉備という人もちょっとおかしい。明らかに負けるとわかった戦争でもやります。関羽の仇討ちに、いまの蜀の力では勝てないんだからやめておきなさいといわれても、出て行って負ける。関羽の仇討ちというだけで戦う。そういうところがしかし、ああこれは劉備のいいところだなと、みんなついて行ったわけです。そういう人柄です。鋭い人ではない。

 諸葛孔明というのは真面目な人、欠点は一つもないんです。誰がみても立派な人、あんまり立派すぎてかえって面白みがない、そういう人です。べつに戦争に強いわけではない。知謀はちょっとマイナスで、負けてばかりいます。それでも誠心誠意、一生懸命やったということですね。

 自分の兄さんが呉にいる、また魏のほうにも知った人はいるにもかかわらず、ひたすら劉備について行く。劉備は死ぬときに、もし息子の劉禅が補佐するに価するなら補佐してほしい、しかし駄目だとなれば、きみがとってかわれと孔明にいうんです。それほど信頼されていた。もちろん、孔明にそんなことができるはずはなく、劉禅に仕えていく。非常に真面目な人です。

 それから、関羽と張飛の性格の違いも面白く描かれています。劉備と関羽と張飛は義兄弟です。形の上では君臣ですが、ほんとは義兄弟で、その関羽と張飛の性格はガラリと違う。人との付き合いでもそうです。関羽は自分の目上の者にも一切遠慮をしない、どちらかというと部下の兵隊を可愛がる。張飛は反対です。目上の人にはへいこら、おべんちゃらをいって健児(兵隊)には厳しい。結局、うらまれて健児たちに殺されることになります。

 呉の孫権という人は柄が悪く、酒ぐせも悪い。そして出自もよくない。どうも孫権は、私が考えるに、海賊だったのではないか。金はもっていたのです。孫権の軍隊は土豪連合軍です。ですから赤壁の戦いを前に、降参するか戦うかというときに、主戦論者の周瑜など、この人は土地の有力者でしたから、曹操が来てこの国を滅ぼしたら、自分はちょっとした名士だから位をくれるかもしれないけれども、あんたは駄目だ、と孫権にいっている。だから、あきらめて戦いなさいというわけです。孫権の出自がよくないということはみな知っていた。そんな人です。それが非常に勇猛であったということですね。

 私は大体、魏と蜀についてはもう書きましたので、『三国志』で書き残したものがあるとすれば、呉のことです。呉は広く、南は広州、そのころは交州といって、ベトナムのほうまで含んでいました。外国貿易もやり、南海との交流もあった。しかし土地は広いけれども、人口が少ないというのが呉の悩みなんです。兵隊の数が足りなかったわけです。

 曹操、劉備、孫権と並べてみますと、曹操というのは第一番の文筆家です。その当時の文筆家として、曹操と二人の息子、曹丕と曹植は三曹といわれ、並ぶ者もない文人だった。そういう文人だけれども、蜀を圧迫したので評判が悪いわけです。判官びいきで悪役にされ、蜀を滅ぼした、けしからんといわれた人です。

 たとえば、講談本の『三国志』では初めのほうで、逃げるときに友人の家に泊まり、その友人を斬り殺して逃走したという話が出てきます。しかし、それは嘘なんです。だれも信用しない本の中に書いてある。正史には書かれていませんから、それはなかったことでしょう。そんなことをいっぱい書かれるほど、判官びいきは強かったんですね。(談)

(ちん・しゅんしん 作家)

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