中国人的生活芸術
料理の国へようこそ

料理の国へようこそ

陳 詔 著/松岡 榮志・鈴木 かおり 監訳

2,600円 A5 216頁 978-4-385-35941-X (品切)

中国の著名随筆家による、中国料理にまつわる珠玉のエッセイ集。数千年の歴史と国際的評価を誇る中国料理のエッセンスを、37編の読み切りエッセイで描く。カラーを含む豊富な図版類も圧巻。詳細な注付き。料理王国の今昔に蘊蓄を傾ける。

1999年11月30日 発行


●『料理の国へようこそ』

「ぶっくれっと」139号「自著自讃」より)

松岡栄志

 料理の国へようこそ!

 これが、本書のタイトルです。中国語の書名は、「食的情趣」。日本語に訳すと、「食の味わい」といった意味になります。中華三〇〇〇年の伝統、いや数千年の長きにわたる中華料理の味わいについての、三七篇からなるエッセイ集です。

 エッセイといっても、折りにふれてのちょっとしたいい話、などではありません。古今の経典、正史をはじめ、稗史、小説、街談巷説の類にまで材をとり、絶妙な語り口で味付けをほどこした、まさに名菜のフルコースです。食材の話、箸の話、料理名人列伝、礼儀作法、火加減、医食同源、満漢全席、お粥や餃子、ワンタンの話、さらに店のしつらえや、店名の善し悪し、古典文学と料理の話、などなど。火加減、盛りつけともに申し分ありません。(もちろん、飲み物やデザートの話もあります、御安心を)

 目次の中から、ちょっとだけ味見をしてみましょうか。( )は、章のタイトルです。

 中華料理の開祖(1)/上古のフルコース・ディナー(2)/孔子の飲食観(3)/唐代の「焼尾宴」(6)/グルメの祖、蘇東坡(7)/北宋と南宋の飲食業(8)/目で食べる料理(12)/腕前三分、火加減七分(14)/五色・五香・五味(15)/医食同源(16)/宴会の礼儀作法(19)/座の楽しみ(20)/食事のスタイルの変遷(21)/器のよさも味のうち(22)/眺めのよい部屋(24)/蟹の宴と蟹文化(27)/アウトドアでの食事(30)/各地の小吃巡り(32)/ワンタン・ギョウザ 今昔物語(34)/虫を食べる(36)

 どうですか? きっと、食指がぐぐっと動いたでしょう。

 さて、本書はじつは、「中国人的生活芸術」シリーズ全七冊中の、最初の一冊です。この「生活芸術」というのは、文字通り「生活の芸術」という意味。「生活と芸術」ではありません。中国の人たちにとっては、生活じたいが芸術であって、それらを隔てる境がないのです。生活は芸術であり、また無上の楽しみであって、それらは渾然一体となって人生を豊かにしているのです。このシリーズには、さらに酒、茶、服飾、旅、囲碁将棋(賭博)、草木虫魚がテーマとして全七冊に収められています。これらを究めれば、おのずと人生を楽しむ「達人」になること請け合いです。

 著者の陳詔氏は、一九二八年中国浙江省鎮海県生まれ。上海の専門紙記者を経て、全国紙である『解放日報』の主編をつとめ、二十余年にわたり中国古典文学と飲食文化の研究に従事されています。著書に、『紅楼夢と金瓶梅』、『紅楼夢小考』、『紅楼夢談芸録』、『金瓶梅小考』、『紅楼夢と飲食文化』など十数冊。中国近現代の生活や社会に造詣の深い陳詔氏は、本書の著者としてまさに最適の人といえるでしょう。

 本書は、一九九一年に上海で出版され、香港、台湾でも版を重ね、高い評価を得ました。私が本シリーズを香港の商務印書館の書店で見つけたのは、もう五、六年前になります。そして、さっそく教鞭をとっていた中国語翻訳ワークショップのクラスで、テキストとして読み始め、やがて数人で分担して訳稿をつくってもらいました。その原稿を鈴木かおりさんが手直しし、また未訳の部分も自ら訳稿を作り、さらに注の原案もこしらえてくれました。私は、その一篇一篇に目を通し、朱を入れ、改めて著者の博学ぶりに舌を巻きつつ、存分に楽しみながら仕事を終えることができました。

 さあ、最初のページを開いてください。

 料理の「王国」へ、ようこそ!

(まつおか・えいじ 東京学芸大学教授)


●編集担当者からの言葉

 本書は、<中国人的生活芸術>と題した7冊シリ−ズのうちの一、「食的情趣」の日本語訳版である。このシリ−ズは、長い歴史を持つ中国文化のうち、人々の生活に密着した食・衣・お茶・酒・囲碁将棋・旅・動植物の7テ−マを扱っていて、各々がエッセイ形式をとっている。各テ−マとも、日本人にも身近な話題が具体的にちりばめられ、魅力的な内容となっている。中でも本書「食的情趣」の評価は群を抜いているようで、香港・台湾で屈指のロングセラ−になっているそうである。
 目次を見ていただこう。「中華料理の開祖」「孔子の飲食観」「西太后と清朝宮廷料理」−これは歴史にまつわる話。「上古のフルコ−ス・ディナ−」「唐代の焼尾宴」「目で食べる料理」−これはメニュ−にかかわる話。「料理人列伝」「中華料理の包丁さばき」「腕前三分、火加減七分」−料理技術の話。「五色、五味、五香」「医食同源」−栄養・健康の話。「宴会の礼儀作法」「座の楽しみ」「器のよさも味のうち」「箸のはなし」−食の作法の話。そして今日マスコミを騒がせている「公費で贅沢三昧のル−ツ」までもが盛られている。
 著者の陳詔氏は、上海のジャ−ナリスト、『解放日報』の編集長を務め、定年退職。その後、中国古典文学と飲食文化の研究に専念し、『紅楼夢と金瓶梅』『紅楼夢と飲食文化』などの著作がある。 
 ペ−ジの下段に日本人向けの詳細な注を付け、豊富な図版も読者の理解を助けている。

 料理王国、本場中国の「生活に密着しながら芸術にまで昇華した」中国料理の奥行きと蘊蓄を堪能していただきたい。

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