判例付き法令集の決定版。家事事件手続法(新法)・非訟事件手続法(新法+旧法改正)については旧法も掲載。民法・民訴法、刑法・刑訴法、社会福祉関連諸法令改正などを網羅。震災・原発事故関連法令も収録。収録法令422件。うち39法令に判例要旨掲載。追録贈呈(4月)。小社HPで改正法情報を毎月更新中。
日本国憲法のもとに法の支配の原則が確立されている現在、われわれの生活は、政治・経済・文化などいずれの分野におけるかを問わず、その全般にわたり法によって規律されており、そのために多数の法令が相次いで制定されている。このようにしてわれわれの生活は、法の網の中でいとなまれているといっても過言ではないのであって、法について学習や研究をしたり、実生活において生起する諸問題を法律的に処理するためには、まず多数存在する右の諸法令について知ることが必要である。それらの法令を集めたものが、六法全書にほかならない。それゆえ現代に生きる者にとっては、六法全書を座右に備える必要が少なくないといってよいであろう。
この「模範六法」が「模範六法全書」なる名称をもって創刊されたのは、1921年のことであった。その後、戦中戦後の一時期には、諸般の事情により停刊のやむなきに至ったこともあるが、1948年には復刊されて、今日に至っている。
ところで、法が現実に機能し、われわれの生活を規律するのは、裁判所における法の具体的適用である裁判を通じてであることが多い。それゆえ、「先例としての判決」である判例は「生ける法」ともいうべきものであって、本当に法を理解するためには、書かれた文字の上だけでなく、進んで判例を研究することが必要であるといわなければならない。
本書が、かかる判例の重要性にかんがみ、初めてこれを収録したのは昭和32年版においてであった。この時には、憲法ほか一部の法令についてのみ判例をとりあげるにとどまったが、昭和46年版において、本格的な判例つき六法とするために、判例を掲載する法令の範囲を拡大し、基礎法のみに限らず、利用度の高い特別法にまで及ぼすとともに、収録判例の数も大幅に増やし、面目を新たにした「模範六法」を世に送った。爾来、学習および実務における判例の重要性がますます高まる中で好評をもって迎えられ、読者からのご支持をいただくことができた。この間、昭和57年版、昭和62年版、平成9年版において大幅な改訂を施し充実をはかってきたが、その後も、実務家を中心とした社会人の読者から法令収録に関してきわめて多くのご要望、ご意見が寄せられ、実務上の需要により的確に応えるべく、われわれは常に本書全体を見直す努力を重ねてきた。
その結果、現在では、長文化する新法と増え続ける一方の新判例の収録により、ページ数も製本上の限界に達しているが、それでも「総合型六法は一冊であるべし」との信念を読者と共有し、種々の工夫を施すことで、本年版も一冊本として刊行することができた。
編修委員がおもに担当した部分は、収録法令および判例の選択、参照条文の執筆であった。とくに判例については、基礎的な判例に遺漏のないこと、新しい判例を着実に追うこと、一つの判例が二つ以上の法令または条文に関係する場合には、その相互関係を明らかにすること、出典が正確であることなどに相当の神経を使ったつもりである。
一方、六法全書の生命ともいうべき収録法令については、三省堂の編集部が着実に官報を跡づけてくれた。そのため、最新かつ正確な法令を収録し、またこの種の六法としては最も多くの法令を収めることができたと自負している。
戦後の復刊以来これまでの間に、江家義男、岩垂至、赤木暁、吾妻光俊、恒田文次、田中真次、尾後貫荘太郎、河村又介、有倉遼音、薬師寺志光、村松俊夫、勝本正晃、鈴木重武、大隅健一郎、池原季雄、天野和夫、遠藤浩、鈴木禄彌、高田卓爾、正田彬、浦野雄幸、唄孝一および清水誠の諸先生が編修委員として関与されたが、現在これを受け継ぎ、編修顧問である小山、戸田、河本、片岡、大塚、石本、森本、西谷、大須賀、吉田、落合の各先生に大所高所からの指導助言をいただき、実務は、編修委員会を構成している20名の委員が分担している。すなわち、憲法編は、国際私法に関する部分を除き、中島と江島が、行政法編は手島が、民法編は田山、淡路、野澤、石井が、商法編は小塚、北村、前田、早川(徹)が、民事訴訟法編は伊藤、上原、山本が、刑法編は川端と佐久間が、刑事訴訟法編は渡辺が、社会法編は村中が、経済法編は舟田がそれぞれ担当した。また、憲法編のうち国際私法(法の適用に関する通則法)に関する部分は早川(眞)が、国際公法を中心とした国際法編は石本(顧問)が担当した。
本年は、ここ数年にない数多くの法改正がなされたが、中でも重要基本法令の改正が目を引く。民法(親族編における親権停止の審判に関する規定の新設等)、民事訴訟法(国際裁判管轄に関する規定の新設等)、刑法・刑事訴訟法(コンピュータ犯罪に対応する規定の新設等)と、いわゆる基本六法令(憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)のうち四法令に、現代的意義のある新たな規定が設けられたのである。また、新非訟事件手続法および家事事件手続法の制定も、大いに実務上の注目に値する。
さらに、東日本大震災および福島原発事故に対処するための立法が数多くなされたが、本書では、東日本大震災復興基本法、東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律、原子力損害賠償支援機構法、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律を収録したのに加え、これらと密接に関係する既存の法律として、原子力損害の賠償に関する法律を新たに収録することとした。その他、本書収録の法令にかかわる改正を完全網羅したことは言うまでもない。
このようにして、今年もまた、きわめて充実した内容の「模範六法」を世に送ることができたと考えている。この機会に、編集部に多くの貴重なご意見をお寄せいただいた全国の法学関係者、折りにふれてお手紙をくださった読者諸賢に厚くお礼を申し上げたい。また、資料収集などにご尽力をいただいている早稲田大学法学学術院助教山城一真(民法編)、一橋大学准教授杉山悦子(民事訴訟法編)、京都大学准教授稲森公嘉(社会法編)、東海大学教授角田政芳(特許法、著作権法)、仙台地方裁判所次席書記官小野和夫(民事訴訟等手数料一覧、全国裁判所管轄区域表)の各氏に深甚の謝意を表する。
2011年9月1日