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新・判例コンメンタール 民法1
はしがき

 判例とは,裁判の先例である。しかし,すべての先例が判例というわけではない。判例の中,先例としての価値あるものはかぎりがある。何がそれに当たるかは,意外と研究者・実務家の間で合意と了解がえられやすい。良き判例は美味なる料理に似ている。外形も整っており,味も深い。

 良き判例は,素材も選ばれる。その上で,時代の特色を反映するものであることが必須である。そして,当然に,素材を調理する弁護士と裁判官の誠実さと努力によって仕上げられる。これらのひとつが欠けても,良き判例は生まれない。そこから,反面教師としての悪しき判例も生産される。

 良き判例には,その形成にかかわったひとたちの哲学が感じられる。悪しさ判例には,偏見が読みとれる。ダイシーは,判例と時代思潮との間に半世紀のずれが生じることを実証した。判例は,それ自体,保守的な想念を残映させている。後向きになりやすい。情況を改善するよりは混乱させる。法典の年次が古ければ,一層その心配がある。先見性がとくに判例に望まれる理由である。

 判例は批判的に読め,判例に読まれるなとは,そのような情況からの教訓であろう。いうまでもなく,判例は,その本体において,当事者の争いに白黒をつけるけじめである。そこには,合議体としての各裁判官の見解の対立とその止揚の経過も読みとれるが,その根底にある学説の影響も透視される。そこまで、判例は味読したいものである。

 現代法における判例の比重の高まりは,経済構造とそれに基づく社会生活の変化に起因する。民法においては,1896(明治29)年という約一世紀前の制定にかかるだけでなく,1888年のドイツ民法第1草案を基本に,1804年のフランス(ナポレオン)法典を加味したものだが,実質的にはこ千年前のローマ法を軸にしているといえよう。このため,原理的にも実際的にも,現代の経済・社会の実態に合わない点が多い。

 法典は,制定の年次が古ければ古いほど,解釈が法文から離れ,遠心的になり,広く散開する。「類推解釈」が一般化してゆく。そして,次第に,「判例法」が新しい「体系」として生成し,制定法の機能を補充・代替するようになる。個別の法条が,公序良俗・信義則・権利濫用・個人の尊厳など,いわゆる「一般条項」によって修正されはじめる。判例の量は次第に「一般条項」の上に集まり,やがて質の変化をもたらす。そこに,「判例法」の独自性がみられる。

 本巻は,民法総則の最初の部分であり,また本コンメンタール中の民法の第1巻にあたる。人・物・法律行為の基本体系つまり民法の骨格に相当する。本来、総則は抽象的規定であり,後続の各則(各論)を予告する機能をもつ。このため,総則独自の判例はそれほど多くないのが建前である。しかし,それでは,総則各条の具体的展開が把握しにくい。そこで、本巻では,物権・債権・親族・相続など,民法各則にかかわる判例でも,本巻に収めた各条の理解に必要な範囲で収録し,コメントを付すように努めた。そのため,ときには民法各則の各巻と収録判例が重複することもある。しかし,それぞれの巻において,それぞれに収録の意味が異なること,およびコメントそれ自体が学説であり解説者の価値判断が加わること,などの理由から,あえてゆきすぎた「調整」をおこなわないことにした。なお,今回の『新・判例コンメンタール民法』から前田達明が編者に加わった。

 1977年に刊行した『判例コンメンタールシリーズ』民法は14年の歳月を経過し,この間多くの読者に支えられ,増補版を含めて15回の版を重ねた。この間多くの読者からご意見を寄せられ,とりわけ法曹実務家から熱いご支援とご叱正をいただいた。編集委員は三省堂と慎重に協議を行い,『新・判例コンメンタール民法』の基本的コンセプトを旧版の“判例をもって条文を語らしめる”というところにおきながら,「読者対象を徹底的に法曹実務家と定め,最新の実務判例を重点的に取り上げ,参照判例を含めて戦後重要判例の大半を,しかもそれらの判例評釈と文献をも検索できる実務判例データベースとする」というところに主眼をおいたことを付記したい。

 編集にさいしては,判例資料の収集,作成にご尽力いただいた京都大学・辻正美教授,索引作成に貴重な時間を割かれた早稲田大学大学院法学研究科博士課程・山本芳裕氏,また三省堂編集部の献身的奉仕をえた。これらの方がたに感謝したい。

1991年7月

篠塚昭次
前田達明

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