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日本人の契約観

加藤雅信・藤本亮 編著  (品切)

2,000円 四六判 192頁 978-4-385-32260-5

22カ国・地域における国際比較調査をふまえて、日本人の契約観の実相を明らかにする。従来の「日本人の契約観」をめぐる印象論を排し、実験調査法にもとづいた実証的な多国間契約意識調査の成果を詳述。

2005年9月15日 発行


執筆者紹介 はじめに 目次




●執筆者紹介(50音順)

 (*は編者)

青木 清  南山大学法学部教授
太田 勝造  東京大学大学院法学政治学研究科教授
岡田 幸宏  同志社大学法学部教授
アレハンドロ・M・ガロ  コロンビア大学ロースクール教授
*加藤 雅信  名古屋大学大学院法学研究科教授
河合 幹雄  桐蔭横浜大学法学部教授
金 祥洙  韓国・東国大学校法科大学助教授
季 衛東  神戸大学大学院法学研究科教授
菅原 郁夫  名古屋大学大学院法学研究科教授
高見澤 磨  東京大学東洋文化研究所助教授
野口 裕之  名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授
ルーク・ノテッジ  シドニー大学法学部上級講師
*藤本 亮  静岡大学法科大学院助教授
ダニエル・H・フット  東京大学大学院法学政治学研究科教授
ピシェット・マオラノンド  タイ国・人権委員会委員・弁護士
マイケル・K・ヤング  ユタ大学総長



●はじめに

 1986年秋、ニューヨークのコロンビア大学ロースクールの一教室で、マイケル・K・ヤングと私は、侃々諤々と毎週のように学生の前で議論を闘わせていた。日本人の契約観とアメリカ人の契約観、日本人の法意識と西洋人の法意識、2人が担当した日本法の講義は、半年の間、法意識論を中心に展開していくこととなった。また、その年の10月には、アメリカ比較法学会で「日本とアメリカにおける法と法律家の役割(The Role of Law and Lawyers in Japan and the United States)」というテーマで、日米の法意識とそれぞれの社会における法と法律家の役割の違いを私は報告した。

 このような機会、またその他の機会に訪れた諸外国で、私自身の興味もあって日本人の法意識を外国の研究者と論ずる機会は多かったが、そのさい、外国人研究者が日本人の法意識や契約観を示す典型例としてしばしばとりあげるのが日豪シュガー・ケースであった。“日本のビジネスマンは、オーストラリアとの砂糖の長期輸入契約を、都合が悪くなると一方的に破棄しようと試みた。いかにも日本的、いや東洋的である、云々云々……”。

 私が年単位で住んだのは日、米、英の3国に過ぎないが、数ヶ月間の短期居住、短期訪問を含めれば相当多くの国を訪れている。それぞれの国で、法の社会的役割は同じではありえず、それぞれに異なっている、との感覚はあるが、川島博士以来日本人の法意識、契約観としてステレオタイプに語られているように、本当に日本人は権利意識が弱く、契約遵守の意識に乏しいのだろうか。日豪シュガー・ケースで日本のビジネスマンはたしかに長期契約の破棄を試みたが、同じような状況のもとで、アメリカのビジネスマンが契約破棄を試みたウェスティングハウス・ケースの例もある。印象論でものを語るのではなく、より実証的に研究してみる必要がある。それも、日米という2国間の座標軸ではなく、世界のなかですべてを相対化するために多国間比較が必要であるし、また、日本の位相を明確にするために、他の儒教文化圏、仏教文化圏との対比を考えてみる必要がある。こう考えた私は、アメリカから帰国後、太田勝造教授、青木清教授らと語らって、タイ調査や韓国調査に乗り出し、1991年には「東アジアの法意識」をテーマとするソウルシンポジウム等を韓国の高翔龍教授と共同主催したりした。

 その後、より実証的な研究を大規模に展開するために、藤本亮教授、河合幹雄教授、野口裕之教授、岡田幸宏教授らをさそい、アメリカ、アルゼンチン、韓国、スウェーデン、タイ、中国、ドイツ、日本、ニュージーランド、ベトナムの10ヵ国の研究者からなる、法意識国際比較研究会を1994年に設立し、「所有・契約・社会」をテーマとし、その3つのテーマのそれぞれにつき大規模な国際的な実証研究を展開することとなった(法意識国際比較研究会のメンバーおよびその活動経緯については、河合隼雄・加藤雅信編『人間の心と法』(有斐閣、2003年)281頁以下に譲る)。そのうちの、「契約」をめぐる22ヵ国/地域の調査結果を記したものが本書である。この、採取サンプル23885件からなる22ヵ国/地域の調査結果の基本データは、「契約意識22ヵ国/地域比較調査基本報告書」法政論集196号に発表したが、本書はその分析結果の中核部分を中心に執筆したものである。

 この22ヵ国を対象とした調査の結果によれば、契約遵守度において、日本はとりたてて特異な位置にあるわけではなく、むしろ世界のごく平均的なところに位置している。また川島博士が日本の対照としてあげたアメリカも、契約遵守度は世界の平均的なところであり、日本とそれほど隔たっているわけではない。この調査において、回答者の契約遵守度が相対的に高かったのは、香港、イスラエル、スウェーデンであり、逆に契約遵守度が低かったのは台湾とブラジルであった(香港調査は、中国返還前に実施されたものである)。この調査結果からみるかぎり、同じく中国人からなる香港と台湾の調査結果が両極に分かれているのであって、契約遵守度の違いは東洋と西洋という要因によって規定されているとはいえないのである。結局のところ、「契約意識」論として、日本人ないし東洋人は伝統的に契約遵守度が低いことがしばしば指摘されてきたが、この命題は、「神話」なのではないかということが、この調査からはいえるように思われる。

 この調査の示すところは、前段に述べた伝統的な命題の否定にとどまるものではない。法律家のたまごである法学部の学生は、ビジネスマンのたまごである経営・商学部の学生よりも契約遵守度が低いという結果が、ほとんどの国で見受けられた。また、男性と女性の契約遵守度も一様ではない。日本やドイツなどでは男性の契約遵守度が女性よりも明らかに高い。このような傾向は多くの国でみられるところではあるが、台湾やフランスでは契約遵守度の性差はみられない。契約遵守度をめぐる男性・女性のありかたも、国によって一様ではないのである。さらに、契約逸脱行動に対する非難も、逸脱行動をしたものが自国企業か外国企業かによって、非難の度合いが異なる国とほとんど異ならない国とがある。日本、イスラエル、スウェーデン、ドイツ、フランス等の回答者は逸脱企業が自国企業か否かには影響されずに同じ程度の非難を示し、いわば公正な偏るところのない反応を示したが、このような公正さがすべての国において貫かれているわけではない。

 この8年間にわたる調査に協力してくださった各国の学生達や、本書173頁以下に紹介した調査の仲介の労をとってくださった各国の研究者の方々、本書の執筆者には名をつらねていないが、調査を自ら実施してくださったベトナムのハノイ大学のスタッフ、イタリアのベネツィニ教授、スウェーデンのファールヘック教授、ドイツのライザー教授らに、まずは心からの感謝の意を表したい。また、この調査を含め、われわれの研究会の活動は、次に記した多くの財団・組織から助成を受けてなされたものである。科学研究費(国際学術調査)(1991)、名古屋大学アジア太平洋地域法制研究教育事業基金(AP基金)(1992)、科学研究費(国際学術調査)(1994−1995)、平和中島財団国際学術研究等助成(1994)、名古屋大学AP基金(1994−1995)、名古屋大学AP基金(1995−1996)、松下国際財団(1996)、日本証券奨学財団(1997)、科学研究費(国際学術調査)(1998−2000)、国際交流基金日米センター(1999−2001)、松尾総合法律事務所(2000)、三井安田法律事務所(2000)、名古屋大学学術振興基金(2000)、社会科学国際交流江草基金(2001)、トヨタ自動車(2001)、中部電力(2001)、科学研究費(基礎研究B(1))(2002−2003)、科学研究費(基礎研究B(1))(2004−2008)。ここに記し、これらの財団・組織に心からの謝意を表したい。最後になったが、多大なエネルギーを要したこの共同研究に労を惜しまなかった研究会メンバーに深甚なる謝意を表したい。

  2005年6月28日

研究会メンバーを代表して
加藤雅信



●目  次

はじめに 〈加藤雅信〉

第1部 契約意識論序説――日本人とアメリカ人の契約観

第1章 「日本人の契約観」と日豪シュガー・ケース〈加藤雅信〉

 第1節 「日本人の契約観」の古典的理解
  1 川島・法意識論
  2 川島・法意識論への疑問

 第2節 日豪シュガー・ケースにみる日本企業の契約行動
  1 長期輸入契約の締結と,社会的反応
  2 契約紛争の概要
  3 原糖引取りの繰延べ――スタート直後の契約の変更
  4 再度の引取り繰延べと代金の延払いの申入れ
  5 価格改定交渉
  6 交渉過程において登場した受領拒否構想
  7 実行された受領拒否と紛争の深刻化
  8 交渉の妥結
  9 結 語

 第3節 小 括…… 46

第2章 「アメリカ人の契約観」とウェスティングハウス・ケース

 第1節 ウェスティングハウス・ケースにみるアメリカ企業の契約行動〈太田勝造〉
  1 はじめに
  2 長期契約
  3 市況の大変動
  4 破産の危機
  5 決 着

 第2節 「アメリカ人の契約観」の実相――マッコーレイ調査から〈加藤雅信〉

第2部 22ヵ国/地域契約意識調査

第3章 調査の設計――印象論から実証研究へ〈加藤雅信・藤本亮〉
  1 調査の基本設計
  2 多国間調査
  3 留保点

第4章 日本調査〈加藤雅信・藤本亮〉

第5章 22ヵ国/地域調査結果の概要〈加藤雅信・藤本亮〉

 第1節 調査の対象

 第2節 調査票の内容

 第3節 契約遵守意識の各国比較
  1 全体的傾向
  2 国別比較――「日本的契約観」論,「東洋的契約観」論の破綻
 第4節 専攻別にみた契約遵守意識
 第5節 法学科目履修の程度と契約遵守意識
 第6節 契約遵守度の性差
 第7節 同胞意識と契約意識
 第8節 親日・反日感情と親米・反米感情
 第9節 社会的関心度の国際比較
 第10節 力に対する志向度
 第11節 男女差再論――社会的関心と力に対する志向度の観点から
 第12節 結 語

第3部 契約意識の日米比較

第6章 日豪シュガー・ケースとウェスティングハウス・ケースの法と経済学〈太田勝造〉

  1 はじめに
  2 合理的行動:法と経済学
  3 合理性と法意識

 ★各国調査実施の概要

  1 日本調査 〈加藤雅信〉
  2 韓国調査 〈青木清〉
  3 台湾調査 〈高見澤磨〉
  4 中国調査 〈季衛東〉
  5 香港調査 〈青木清〉
  6 フィリピン調査 〈岡田幸宏〉
  7 ベトナム調査 〈加藤雅信〉
  8 タイ調査 〈河合幹雄,ピシェット・マオラノンド〉
  9 インド調査 〈加藤雅信〉
  10 イスラエル調査 〈太田勝造〉
  11 エジプト調査 〈岡田幸宏〉
  12 イタリア調査 〈菅原郁夫〉
  13 スウェーデン調査 〈ダニエル・H・フット〉
  14 ドイツ調査 〈野口裕之〉
  15 フランス調査 〈河合幹雄〉
  16 イギリス調査 〈加藤雅信〉
  17 スペイン調査 〈マイケル・K・ヤング〉
  18 アメリカ調査 〈藤本亮〉
  19 メキシコ調査 〈マイケル・K・ヤング〉
  20 ブラジル調査 〈アレハンドロ・M・ガロ〉
  21 ニュージーランド調査 〈ルーク・ノテッジ〉
  22 オーストラリア調査 〈金祥洙〉

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