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物権法


物権法

滝沢聿代 著

2,000円 A5判 240頁 978-4-385-32077-9

判例・学説の今日的展開をふまえて、わかりやすく概説したコンパクトな体系書。基礎的事項から重要論点まで、条文に即して物権法の全体像を明らかにする。法学部生・法科大学院生はもちろん、すべての民法学習者に最適の基本書。

  はしがき   目 次   著者紹介

2013年4月10日 発行




はしがき

 物権法は、土地、建物の利用や身近な生活用品に対する権利関係を中心に、人々の日常生活を直接に支配する法であるから、具体的であり、国や地方の社会生活の実態をそのまま反映するものとなる。この意味では家族法と共通のものがあると言えよう。債権法のルールがどちらかと言えば抽象的、普遍的であり、近時ヨーロッパ法やアメリカ法の影響下にあって、活発な法改正への試みに容易になじんでいることとは対照的である。

 したがって、日本民法の歴史においても、物権法は導入された西欧法と固有、土着の法との相克という問題に各所で突き当たり、そこに法社会学が発展する場となってきた。たとえば、永小作権という物権の創設によって、旧慣習法上の小作人が蒙った不利益と小作争議、戦後の農地改革による自作農創設などの歴史的経緯や、入会権という伝統的な物権を保護する試みのために、農村や農民生活の調査が活発に行われたことなどが注目される。また、民法物権編の条文には、各所に「(規定と)異なる慣習があるときは、その慣習に従う」という文言が挿入されており、民衆の生活と切り離されたかたちでは、物権法が機能しないことを知り得る。立法に当たっては、当然地方の慣習の存在などの調査も不十分ながら行われ、近代法の体系に合う物権へと整理がなされている。

 このように日本の物権法は、主としてはドイツ民法の物権編の構造を受け継ぎ、近代的な所有権法を中心に据え、独仏法とも共通する各種の制限物権を取り揃えているけれども、日本法としての独自性を当初から明確にしているのであり、その特色に注目しながら全体像を把握して行くことが必要である。とりわけ、物権変動の規定がフランス法から継受された意思主義・対抗要件主義を採用していることは重要であり、日本法の歴史が生み出したこの特徴のために、日本民法ならではの多彩な議論が不可避となった。さらに、解釈論のレベルになると、この制度はドイツ民法の影響をも大幅に取り込んでおり、独仏法の混在が顕著に見られる状況もある。これらは、以下の本論で明らかにすることになろう。

 日本社会の土地事情が反映されている独自の法状況も見られる。たとえば、わが国では、他人の土地を利用する関係においては、物権である地上権よりも賃貸借契約という債権契約が圧倒的に広く活用されている。国土や地形の影響によって、建物建築のための土地が相対的に狭く、他方、最近では下降気味であるとは言え、都市部の人口密度はかなり高い。したがって、土地を借りる側より貸す側に有利な社会状況があり、上述のような現象を生んだのであるが、そこに強力な借地権保護という日本法独自の展開も生まれた。こうした地上権の低迷という事情のほかに、前述した永小作権が現行法としてはほとんど機能していない現状も特殊日本的である。21世紀の今日、遠からず法改正の手が物権法にも及ばなければならず、新たな法形成の試みとその実現が求められていると言えよう。本書でも、できるだけこうした方向に沿った検討を加えることを目指し、民法改正のあり方に問題提起して行くことができたらと考えている。

 法科大学院の開設以来、法学教育のあり方は実務教育へと大きくシフトし、それに伴って伝統的な民法解釈学への関心には、少なからず衰えも見られる。しかし、最も大切なことは司法試験に合格することであり、法曹になって刑事裁判や民事裁判に関わることであろうか? その重要性を否定する余地はもちろんないであろうが、少なくとも制度が適切に機能するためには、そのベースとなる国民的知性が不可欠である。すなわち、学問的視野に立って、法制度に未知の可能性を探るための研究活動がなくてはならず、また裁判制度全体を支える市民一般の法学的教養の高さが、常に求められているはずである。このような意味で、法科大学院については、若い人たちが夢に向かってチャレンジされることを最大限に応援できる体制が望ましいと考える一方、法学部の教養志向の伝統も捨てがたいと見て、両者が併存している現状を前向きに肯定したいと考えている。本書もそのような観点から、法と正義の世界に関心を持たれる皆さんに、幅広く読んで頂ければと期している。

 本書の内容は、民法の学説・判例の最も今日的な展開を概説したつもりであるが、基礎的な事項については、我妻栄=有泉亨著・新訂物権法(民法講義 II)岩波書店1983年版に依った部分が少なくない。しかし、研究書を兼ねた我妻・民法講義においては、著者の情熱の赴くままに展開された詳細な研究成果の記述が、簡単には読み通せない迷路をなしていることもしばしばである。そのような場合には、法科大学院や法学部での学習に必要かつ有益と考えられる部分をピックアップし、私の言葉で書き直すことを試みた。

 いずれにしても、執筆に当たって心したことは、条文に即して、体系的な把握ができるようにということであり、その観点から、物権変動以外の領域においても、自説の議論をかなり自由に展開している。もちろん、上述の民法講義のほかにも、舟橋諄一・物権法(法律学全集)有斐閣1960年、星野英一・民法概論 II(物権・担保物権)良書普及会1976年、その他最近の何冊かの物権法のテキストをたびたび参照させていただき、重要な記述にはかならずどれかの一書を引用して、比較、参照できるように配慮した。また、物権変動論に関しては、拙著・物権変動の理論(有斐閣、1987年)、物権変動の理論 II(有斐閣、2009年)の内容を取り込むようにしたので、引用も多くなった。

 大部な教科書には詳細な書き込みがなされ、たくさんの知識が詰め込まれている。十分消化できればそれに越したことはないが、実は必要なときに資料に当たって確かめれば足りるような内容も少なくはない。民法を使えるようになるためには、細かい知識に拘泥するよりは、全体のストラクチュアを捉え、自ら考える手がかりをしっかり持つことが大切である。このような意図が、本書を使われる方々に、いくらかでも実感していただければ、これに過ぎるよろこびはない。なお、表現においては、なるべく明快さを出すべく、割り切ることを恐れずに書いている。法律学においては絶対の答えを求め得ないことを、読者は十分承知されていると考えるが、なお類書に当たって他説の立場を知り、必要に応じてより深く詳細な記述のある書を読み込む等の努力をしていただければと考える。また本書は、図式化もほとんど取り入れていないので、すべて文章を通して理解し、必要に応じて読者自らが図式化を試みながら読んで下さることを期待している。図式は、工夫された作者の満足ほどには、他人には分かり易いものではないとの経験から、あえて労を省いたが、学習に際してのその効用は改めて強調したいと思う。

 本書のように、少なくとも物権法の前半を扱うテキストをまとめてみたいと考えるようになってから、たちまちに数年が過ぎてしまった。法科大学院で授業を担当している間に完成できるべきであったにもかかわらず、定年退職した後も雑事に紛れたり、思いがけない病気に出会ったりして、出版に至る道のりは容易くはなかった。この誠にささやかな本書が、それでも日の目を見ることができたのは大きなよろこびであり、不備な条件の下で、前向きにご協力下さった三省堂に厚くお礼申し上げたい。原稿の整理にあたっては、法政大学での元ゼミ生・茂呂敏宏弁護士に見直しをお願いし、種々の貴重なご指摘を頂くことができて有難かった。また、企画、校正等に多大なご助力を頂いた編集担当の鷲尾徹氏にも心から感謝申し上げます。


平成25年2月

著 者


目   次

第1章 物権法の基礎

第1節 物権法の対象

1 物権法の範囲

2 物権法の特徴

第2節 物権・物・財産

1 物権の意義

2 物の概念と種類

(1) 物の概念

(2) 物の種類

3 資産ないし一般財産

4 物権と債権の区別

(1) 物権の排他性

(3) 物権の目的

第2章 物権の効力

第1節 物権法定主義

第2節 優先的効力

1 各種の効力

2 優先的効力

第3節 物権的請求権

1 物権的請求権の意義

2 物権的請求権の内容

3 判例の検討

第3章 物権変動

第1節 物権変動の意義

1 各種の物権変動

2 混同

第2節 公示制度

1 公示の原則と公信の原則

(1) それぞれの定義

(2) 公示と公信の一体的把握

2 不動産登記制度

3 ドイツ法主義とフランス法主義

第3節 意思主義・対抗要件主義

1 民法176条・177条の沿革

2 意思主義の2つの解釈

(1) フランス法的な解釈・有因主義

(2) ドイツ法的解釈・物権行為の独自性

3 所有権移転の時期

(1) 契約成立時移転説と反対説

(2) 請負契約における所有権移転の時期

4 対抗と対抗要件主義

(1) 対抗の一般理論

(2) 対抗要件主義

第4節 二重譲渡の理論構成

1 議論の意義

2 諸説の展開

3 法定取得─失権説の補足

第5節 第三者の範囲

1 第三者の定義

2 第三者の具体例

(1) 第三者となる場合

(2) 第三者とならない場合

3 第三者の主観的要件

4 背信的悪意者排除説

(1) 判例の展開

(2) 悪意と背信的悪意の区別

(3) 転得者の保護

第6節 登記すべき物権変動の範囲

1 意義と課題

2 公用徴収と登記

3 遡及的物権変動と登記

(1) 取消と登記

(2) 解除と登記

(3) 取消・解除のまとめ

(4) 無効と登記

4 相続と登記

(1) 共同相続と登記

(2) 遺産分割と登記

(3) 遺贈と登記

(4) 相続放棄と登記

5 取得時効と登記

(1) 判例理論

(2) 問題点とその分析

(3) いわゆる二重譲渡ケースの問題

(4) 取得時効と抵当権の関係

第7節 登記の効力

1 登記の有効性

2 登記の対抗力

3 登記の権利推定力

4 登記の公信力・民法94条2項の類推適用

5 仮登記

6 登記請求権

第8節 動産物権変動と対抗要件

1 引渡の態様

2 明認方法と特別法による対抗要件

3 第三者の範囲

第4章 占有権

第1節 占有の成立

1 占有・占有権の意義

2 占有の要素

3 占有の種類

第2節 占有の承継

1 占有承継の意義

2 占有承継の効果

第3節 占有の効力

1 本権の推定

2 果実の収取と返還・損害賠償

(1) 善意占有者の果実収取権

(2) 占有者と回復者の関係

3 占有による家畜外動物の取得

第4節 即時取得

1 即時取得の意義

2 即時取得の成立要件

3 即時取得の効果

4 盗品・遺失物に関する特則

第5節 占有訴権

1 占有訴権の意義

2 各種の占有訴権

3 占有訴権と本権の訴えの関係

第6節 占有の消滅

第7節 準占有

第5章 所有権

第1節 所有権の意義

1 所有権の歴史

2 所有権の一般的性質

第2節 所有権の内容

1 所有権の範囲と制限

2 所有権の効力

第3節 相隣関係

1 現代社会と相隣関係の意義

2 隣地の使用に関する規定

3 隣地の通行に関する規定

4 流水に関する規定

5 境界・囲障に関する規定

6 竹木の枝・根の切取りないし切取り請求権

7 境界付近の建築・掘削の制限

第4節 所有権の取得

1 先占・遺失物の拾得・埋蔵物の発見

2 附合・加工・混和

第5節 共有

1 共有の意義と態様

2 共有の法的性質

(1) 共有の成立

(2) 共有の内部関係

(3) 共有の対外関係

3 共有物の分割

4 準共有

5 建物区分所有法の共有

第6章 用益物権

第1節 用益物権の意義

第2節 地上権

1 地上権の法的性質

2 地上権の取得と消滅

(1) 地上権の取得

(2) 地上権の消滅

3 地上権の効力

4 区分地上権

5 地上権と賃借権

6 地上権の将来

第3節 永小作権

1 永小作権の意義

2 永小作権の内容

3 永小作権の将来

第4節 地役権

1 地役権の意義

(1) 地役権の特徴

(2) 地役権の種類

2 地役権の取得と消滅

3 地役権の効果

(1) 付従性・随伴性

(2) 不可分性

(3) 地役権者の権利義務

(4) 最近の判例

4 地役権の将来

第5節 入会権

1 入会権の意義

(1) 入会権の特徴

(2) 入会権の形成と変化

2 入会権の法的構成

3 判例における入会権の展開

4 入会権の将来

参考文献

事項索引

判例索引

民法条文索引


著者紹介

滝沢 聿代(たきざわ・いつよ)

 1940年 生まれる。
 1963年 お茶の水女子大学英文科卒業。
 1968年 東京大学法学部卒業。
 1975年 東京大学大学院法学博士。
 成城大学法学部教授、法政大学法学部・法科大学院教授を経て
 現在、弁護士。

 [主な著書]

  『物権変動の理論』(有斐閣、1987年)(CD 版あり)
  『物権変動の理論 II』(有斐閣、2009年)


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