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  WTO法―実務・ケース・政策―

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WTO法

【第2版、2010年10月1日 発行】
   → 第2版へ

滝川敏明 著

2,500円 A5判 240頁 978-4-385-32262-9

WTO協定と紛争解決ケースをわかりやすく解説する教科書。またWTO法に関する知識がビジネスマンに求められており、環境、農業問題など市民生活に直接の影響を与えるWTO法の実務での運用を解説する。

2005年10月25日 発行

執筆者紹介 はしがき 目次
 『WTO紛争解決手続きにおける履行制度』


●執筆者紹介

滝川 敏明 (たきがわ・としあき)

1948年兵庫県生まれ。1971年京都大学法学部卒業。1976年カリフォルニア大バークレー校経営大学院修了(MBA)。OECD日本政府代表部一等書記官、公正取引委員会渉外室長等を経て、富山大学経済学部教授(1990年)、関西大学法学部教授(2001年)、2004年より関西大学法科大学院教授。専攻は国際経済法、経済法。

著書として、『WTOの諸相』(共著, 南窓社, 2004)、『日米EUの独禁法と競争政策 第2版』(青林書院,2003)、『日本の通商政策とWTO』(共著, 日本経済新聞社, 2003)、『ハイテク産業の知的財産権と独禁法』(経済産業調査会,2000)、『貿易摩擦と独禁法』(有斐閣,1994)、論文に“Harmonization of Competition Laws after Doha”, Journal of World Trade, Vol. 36, No. 6 (2002) 、その他がある。

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●はしがき

 本書は、WTO(世界貿易機関)協定と紛争解決ケース(あわせて「WTO法」)の解説書である。急増する中国からの輸入品対策、BSE(狂牛病)対策の米国産牛肉輸入禁止、日本が矢継ぎ早に締結してきているFTA(自由貿易協定)など、現代のあらゆる貿易・通商問題は、最終的にはWTO法に照らしてその合法性が判断される。WTO法を理解することが、現代の貿易・通商問題に適切に対処するための鍵である。

 本書は、法科大学院と大学の「国際経済法」テキストにとどまらず、ビジネスマンと市民の方々に向けた実践的な解説書であることをねらいとしている。そのため最先端の内容をわかりやすく説明することをこころがけた。紛争事件のケースが判例としてWTO法の血肉となっている。本書は多くのケースをとりあげ、ポイントを押さえて説明しているので、具体的事例に即してWTO法を実感として理解できる。

 WTO法は、モノ(物品)の貿易だけでなく、サービス(第三次産業)貿易を含む。サービスについては直接投資をも対象とする。さらに、知的財産権について加盟国が守らなければならないルールを規定している。このため、現代の国際ビジネスに従事するものには、WTO法の理解が欠かせない。

 国際ビジネスの実務にとっては、貿易に匹敵する重要性を直接投資が持つようになってきている。直接投資ルールをWTO協定に取り入れることについては検討中の段階であり、現時点では二国間投資協定(BIT)の方がビジネスに直結している。本書は、BITを中心とする直接投資の国際ルールについて1章を設けて解説している。現代の国際ビジネスに必要な貿易ルールと直接投資ルールの双方を本書により把握できる。

 WTO加盟国の通商法は、WTO法を遵守することを義務づけられている。国際通商ルールの基本をWTO法が形成している。日米貿易摩擦に際して米国政府は、米国通商法による制裁を日本企業と政府に対するおどしとして利用してきた。しかしWTO成立(1995)後は、WTO法が通商法の濫用を抑えている。近年にはFTA(自由貿易協定)がブーム的な勢いを見せている。しかしFTAはWTOに替わるものではなく、WTO法に違反しない限りにおいてその存在を許されている。本書は、WTO法との関連から米国通商法を解説し、FTAについては1章を割いて解説している。

 WTO法は、ビジネスにとどまらず、市民生活に深刻な影響を及ぼす存在となっている。安全と環境保護を理由とする輸入制限がWTO法に違反する場合があるからである。また、市民の台所に直結する農業貿易は、WTOの今回ラウンド(ドーハラウンド)の最重要課題である。本書は、WTOに関心を持つ市民の方々に読んでいただくため、専門的事項をわかりやすく解説している。

 WTO法は固定した存在ではなく、加盟国がその内容を改善し、発展させてゆくものである。日本政府には、アメリカとEU(欧州連合)に次ぐ貿易大国として、WTO法を発展させていく責務がある。WTO法を改善していくためには、法解釈にとどまらず、政治経済上の政策分析が必要である。本書は、WTO法の実務にとどまらず政策(ポリシー)を分析し、改善策を提言している。

 関西大学の法科大学院と学部(法・商)での「国際経済法」講義が本書の基礎になっている。2年間の授業で作成した講義ノートとパワーポイント・スライドを基にして執筆した。WTO法はその内容が複雑で多様なため、読者は、森の中に入って迷った状態におちいりやすい。学生の意見を聞くことにより、本書の記述をわかりやすくするための改善を重ねた。この結果、

(1)図表を多用して、直感的に内容を把握できるようにした。
(2)各章の冒頭にその章のテーマを簡潔に記述している。
(3)[この章のポイント]を箇条書きで示し、キーワードをゴチックで強調している。
(4)ケース(紛争解決事件)は、膨大な内容(300頁を超えることが通常)を論点ごとに整理することにより、ポイントが容易に理解できるように工夫している。
(5)[BOX]として、興味深いトピックを囲み記事として記載している。

 本書の執筆にあたっては、松下満雄、ジョン・ジャクソン、ロバート・ヒューデックをはじめとするWTO研究者の業績を参照し、引用した。偉大な先達に深い敬意を表したい。

 本書の出版と編集について、三省堂の鈴木良明氏が行き届いた配慮をしてくださった。心から感謝を申し上げたい。

2005年8月

滝川敏明

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●目  次

はしがき


第1部 WTOの基本原理と紛争解決手続

第1章 WTOの基本原理――貿易自由化の法と政治経済

I. 国際通商の憲法としてのWTO協定

A. WTOと自由主義・自由貿易
B. 自由貿易への反対論――重商主義と保護主義
C. ブレトンウッズ体制とGATT

II. GATTの自由化ゲーム

III. GATTからWTOへ

A. 消極的統合から積極的統合へ
B. 国際機関としてのWTOとその意思決定

IV. 「WTO協定」の構成と「一括受諾」

A. 一括受諾
B. WTO協定の構成
C. 「WTO協定」および「WTO法」と「国際経済法」
V. 発展途上国の「特別かつ異なる」待遇
VI. ドーハラウンドの課題と展望

第2章 紛争解決手続

I. 外交的解決から法的解決への転換

II. DSB・パネル・上級委員会の役割

A. パネル
B. 上級委員会
C. パネルと上級委員会の審理へのNGO等の参加

III. 勧告不遵守に対する措置――代償あるいは制裁・対抗措置
[ケース2-1] EC―バナナ事件(1996-2001)

IV. 非違反申立

A. 非違反申立ができる場合の要件
B. 非違反申立の勝訴時の「調整策」
[ケース2-2] 日本―写真フィルム事件 (パネル, 1998)

V. 加盟国における直接適用の否定

VI. 米国通商法の「攻撃的一方主義」とWTO紛争解決手続
[ケース2-3] 米国―通商法301条事件(パネル, 1999)

第2部 物品貿易の自由化原則

第3章 物品貿易の基本ルール(1)――数量制限禁止・関税引き下げ・最恵国待遇・透明性

I. 数量制限の禁止と関税率の引き下げ

A. 数量制限の禁止
B. 関税の輸入制限効果と国内政治
C. 相互主義による関税率引き下げ「譲許」
D. 一律関税率引き下げ方式のラウンド交渉
E. 「関税分類」と「関税評価」

II. 最恵国待遇――加盟国間無差別

A. WTO協定の共通原則としての「最恵国待遇」
B. 最恵国待遇の「フリーライド」と相互主義
C. 「事実上」の差別取り扱いと最恵国待遇原則
[ケース3-1] カナダ―自動車事件 (上級委員会, 2000)
D. 「同種の産品」の認定問題
[ケース3-2] 日本―トウヒ・マツ・モミ材関税事件(GATT時代パネル, 1989)

III. 透明性と「貿易政策検討制度」

IV. 原産地規則に関する協定と「迂回輸入」

第4章 物品貿易の基本ルール(2)――内国民待遇

I. 内国民待遇の基本目的――国産品保護の防止

II. GATT3条1――内国民待遇の一般原則

III. GATT3条2――内国税に関する同等取り扱い義務

IV. GATT3条4――国内規制についての同等取り扱い義務
[ケース4-1]  韓国―牛肉販売事件 (上級委員会, 2000)

V. 「同種の産品」の同等取り扱い要求――「目的と効果テスト」の否定

[ケース4-2] 日本―アルコール飲料事件(上級委員会, 1996)
[ケース4-3] EC―アスベスト製品事件(上級委員会, 2001)

VI. 政府調達協定

A. 政府調達における国産優遇への対処
B. WTO政府調達協定

第3部 自由化原則の例外と特別規定

第5章 アンチダンピング措置

I. アンチダンピング措置発動の要件

A. 輸入国事業者からの申請
B. 価格比較と「実質的損害」

II. アンチダンピング措置――セーフガードか不公正貿易への対抗措置か

III. 国際差別価格としてのダンピング認定

A. ダンピング認定とAD税額
B. 第三国価格との比較

IV. コストを下回る価格のダンピング認定――構成価額方式

A. 構成価額方式を採用できる場合
B. コストを下回る価格は不公正なのか――競争法基準との比較

V. 価格比較における偏向性への対処

A. 関係会社間取引の取り扱い
[ケース5-1a] 米国―日本製熱延鋼板AD措置事件(上級委員会, 2001年)
B. コスト割れ国内価格とフォワード・プライシング
C. 平均価格か個別価格のどちらかを選択する義務
D. マイナスAD額ゼロ算定(ゼロイング) のAD協定違反
E. 輸出企業が情報を提供しない場合の取り扱い
[ケース5-1b] 米国―日本製熱延鋼板AD措置事件(上級委員会, 2001年)

F. 加盟国当局の事実認定をどの程度尊重するのか

VI. 実質的損害と因果関係

A. 実質的損害の認定
B. ダンピングと実質的損害の因果関係
[ケース5-1c] 米国―日本製熱延鋼板AD措置事件(上級委員会, 2001年)

VII. アンチダンピング税の課税期間とサンセット条項

VIII. 価格約束

IX. ダンピングの迂回防止措置

第6章 補助金規制と相殺関税

I. 補助金に対する規制

A. 補助金の貿易歪曲効果
B. 補助金の定義
C. 補助金の特定性
D. 赤・イエロー・緑の交通信号区分
1. 禁止する補助金([赤]補助金)
2. 相殺関税を課すことが輸入国に許される補助金([イエロー]補助金)
3. 相殺関税の対象とすることが禁止される補助金([緑]補助金)――失効
[ケース6-1] 米国―外国販売会社[FSC]事件(上級委員会, 2000)
E. 紛争解決手続と是正方法

II. 補助金相殺措置に対する規制

A. 「相殺関税」の発動要件
B. 相殺関税額と「サンセット条項」

第7章 セーフガード――緊急輸入制限

I. セーフガードの目的

A. セーフガードを必要とする政治要因
B. セーフガードと「構造調整」

II. セーフガードの発動要件

A. 輸入増大が「予見しがたい発展」による
B. 輸入増大と「重大な損害」の因果関係
C. 輸入制限の方法・程度・期間
[ケース 7-1] 米国―鉄鋼輸入セーフガード事件 (上級委員会, 2003)

III. 代償措置と対抗措置

IV. 選択的セーフガードの許容と輸出自主規制の禁止

A. 選択的セーフガードの目的と要件
B. 輸出自主規制の禁止

第8章 農産物貿易の特別ルール――農業協定

I. 農産物貿易ルールの日本にとっての重要性

II. GATT時代に農業分野自由化が遅れた理由

III. 農業協定――関税化と補助金対策

A. 市場アクセス――関税化・関税割当・ミニマム・アクセス
1. 関税化義務
2. 関税割当とミニマム・アクセス
B. 補助金
1. 輸出補助金
2. 国内補助金
[ケース8-1] 米国―綿花補助金事件(上級委員会, 2005)
C. 特別セーフガード

IV. 農業の「非貿易的関心事項」と「多面的機能」論

第9章 環境・安全と自由貿易の調和

I. 環境保護と自由貿易――対立か調和か

II. 一般例外規定――GATT 20条

A. 環境に関する20条の各項
B. 20条柱書――目的と解釈基準
[ケース9-1] 米国―エビ/海亀事件(上級委員会, 1998)
[ケース9-2] 米国―マグロ/イルカ事件(GATT時代のパネル, 1992)

III. 技術的障壁に関する協定――TBT協定

A. 強制規格・任意規格・標準(スタンダード)
B. 国際規格の重要性
C. TBT協定の制定
D. 強制規格についての基準
1. 無差別義務
2. 必要である以上に貿易制限的でないこと
3. 国際規格との関係
4. 他国規格の承認と相互承認
[ケース9-3] EC―いわしのラベル表示事件(上級委員会, 2002)
E. 任意規格についての基準
1. コードの遵守義務と努力義務
2. コードの内容

IV. 衛生植物検疫に関する協定――SPS協定

A. 安全・健康リスクの科学的証拠の必要性――2条
B. 国際基準との関係――3条
C. 安全・健康目的に必要である以上に貿易制限的ではない――5条
[ケース9-4] EC―ホルモン牛事件(上級委員会, 1998)
[ケース9-5] 日本―りんご事件(上級委員会, 2003)

V. PPM(製造・生成方法)規制と「同種の産品」性

VI. 「予防原則」による輸入制限とWTO

A. WTOにおける予防原則の否定
B. 多国間環境条約(MEA)の予防原則とWTO
C. 遺伝子組換え食品の輸入制限とWTO

第4部 サービス・直接投資・知的財産権――物品貿易以外のWTO協定

第10章 サービス貿易協定

I. サービス貿易の4モード

II. 特定分野約束――加盟国が約束した分野に限定する義務

A. 内国民待遇のポジティヴ・リスト方式
B. 「市場アクセス」のポジティヴ・リスト方式
1. 市場アクセス推進措置の約束―特定分野限定
2. 6種類の制限禁止
[ケース 10-1] 「米国―越境賭博サービス事件」(パネル, 2004)
C. 「市場アクセス」措置と「内国民待遇」措置の関係
D. 約束表
E. 規制の公正性確保

III. 一般義務――サービス分野全体をカバーする義務

A. 最恵国待遇の原則と例外
B. 透明性の確保義務
C. 資格相互承認の奨励
D. 独占的供給者の取り扱い
E. 競争制限的企業行為についての二国間交渉

IV. 規制改革とGATSの分野別合意

A. GATSと規制改革
B. 電気通信分野のGATS合意
1. 基本電気通信の合意
2. 規制原理の合意――「参照文書」
[ケース 10-2] メキシコ―電気通信サービス事件(パネル, 2004)
C. 金融サービス分野のGATS合意

第11章 直接投資とWTO体制

I. 直接投資に関する制限と恩恵

II. 二国間投資協定 (BIT) と自由貿易協定 (FTA)

A. BITによる投資企業の保護
B. MIGA(多国間投資保証機関)
C. 北米自由貿易協定(NAFTA)

III. WTO・TRIMS(貿易関連投資措置)協定の限定された役割

IV. WTO・GATS――直接投資協定としての側面

V. WTO直接投資協定の必要性

A. BITとの比較
B. 内国民待遇――ボトムアップかトップダウンか
C. 投資誘致インセンティヴ措置の規制

第12章 知的財産権ルール――TRIPS協定

I. 知的財産権を巡る南北対立とTRIPS協定の成立

II. 知的財産権・登録手続の国際調和

A. 登録手続国際化と内国民待遇
B. 米国の先発明主義による国際不調和

III. 既存の国際協定とTRIPSの関係

IV. TRIPSの無差別原則

V. 知的財産権保護のミニマム基準と例外

[ケース 12-1]  カナダ―ジェネリック医薬品事件(パネル, 2000)

VI. 発展途上国の特別取り扱い

[ケース 12-2] 「インド―医薬品特許事件」(上級委員会, 1997)

VII. 権利消尽と並行輸入

VIII. 知的財産権保護と人権保護――医薬品アクセス・強制ライセンス・国際消尽

A. 途上国エイズ危機と強制ライセンス・並行輸入
B. 2001年ドーハ宣言

IX. 知的財産権に関する反競争行為への対処

第5部 自由貿易協定(FTA) とWTO体制

第13章 自由貿易協定(FTA) とWTO体制

I. WTO協定におけるRTAの分類

II. RTAの自由貿易に与える効果

A. RTAの貿易転換効果と「スパゲッティ・ボール」現象
B. RTAの貿易創出効果

III. RTAを承認するためのWTO基準――GATT24条

A. 「対外貿易要件」と「対内貿易要件」
B. 「実質上のすべての貿易」自由化要件の解釈
[ケース13-1] トルコ―繊維製品事件(上級委員会, 1999)
C. RTAの審査手続き

参照文献

索引

BOX 1 政治的理由による経済制裁はWTO協定に違反するか
BOX 2 情報技術協定(ITA)による関税廃止
BOX 3 エアバスとボーイングのどちらの補助金が悪いのか
BOX 4 繊維製品の数量制限廃止と中国製品の急増
BOX 5 電子商取引とWTO――ネット配信は貿易かそれともサービス取引か
BOX 6 先送りされたWTOの競争政策協定

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