2009年5月までに、裁判員裁判がスタートします。市民6人が裁判官と一緒に、刑事裁判が行われる法廷正面の法壇に並びます。
国民は、国の主人公として立法や行政に「選挙」を通じて参加していますが、ようやく、80か国以上の世界の国々と肩を並べた、司法における市民参加が実現します。
この新しい制度のスタートをひかえて、市民の方々から「法廷用語は難しくてわからない」という不安の声を耳にします。これまで裁判官・検察官・弁護士は、専門用語を使って刑事裁判を行っていました。それは、ふつうの人々にはまるで外国語の会話のように聞こえたことでしょう。
裁判員裁判では、市民の参加により、さまざまな経験や常識が裁判に反映され、刑事裁判の質が高まると期待されています。法律の知識や裁判の経験のない方にこそ、参加してもらう意義があります。存分に役割を果たしていただくために、わかりやすい日常の言葉で話し、理解しやすい法廷を実現するのは、法律家の役割です。
日本弁護士連合会の「法廷用語の日常語化に関するプロジェクトチーム」は、3年半の検討を経て、2007年12月に61語の検討結果を報告書としてまとめました(『裁判員時代の法廷用語−法廷用語の日常語化に関するPT最終報告書』2008年4月、三省堂より刊行)。わかりやすい表現のモデルを示し、各言葉の問題点を分析して、法律家に参考にしてもらうためです。検討メンバーにはアナウンサーやテレビ報道局解説委員、国語学者など日常用語の専門家を迎え、言葉のプロはわかりやすさを、法律家は正確さを求めて意見を出し合い、議論を重ねました。
こうしてできあがった報告書は、法律を知らない方にも、わかりやすく理解していただけるものになりました。
もちろん裁判員は、法律を学んで法廷に臨む必要はありません。しかし、もし多少の予備知識があれば、裁判員になることへの不安が小さくなり、裁判の内容もより理解しやすくなるでしょう。刑事裁判に対する社会的な関心も広がっている昨今、報道される刑事事件をきちんと理解したいと考える方も増えています。このような方たちのために、報告書にさらに手を加えて、このハンドブックを作りました。
さあ、法廷の入り口にお立ちください。この本が、刑事裁判の世界にみなさんをご案内します。