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  比較法

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比較法

滝沢 正 著

2,800円 A5 224頁 978-4-385-32314-5

比較法概説書の決定版。比較法学の多様な切り口を提示し、体系的に整理。比較法の基礎理論(観念、効用、方法、歴史)、世界の諸法体系を具体的に考察し、法系論を中心として、法の継受、法の統一、比較法史、日本法の位置づけ、これらを相互に関連づけ総合的に考察。「比較法研究の手引き」、事項・人名索引も充実。

はしがき   目 次

2009年2月25日 発行



はしがき

 筆者がフランス法の研究を始め、さらにはその教育にも携わるようになってから、早くも40年が経過した。このように外国法を対象として仕事をしてきた関係から、その関心はおのずからより広く比較法にも及ぶことになる。それがとりわけ比較法研究に熱心な伝統を有するフランス法であったことも、無関係ではないように思われる。フランス本国には、古くは近代比較法学の確立に決定的役割を果たしたサレイユやランベールがおり、近時においてもダヴィドやアンセルなど著名な比較法学者を輩出している。タンク先生やブラン‐ジュヴァン先生とは、比較法の国際会議でいつも親しくさせていただいてきた。他方わが国における杉山直治郎、野田良之両先生は、フランス法研究の先達であるが、同時に日本の比較法学の形成と発展に関して中心的存在であった。すなわち、杉山先生は早くから比較法の重要性を多くの論文で力説され、わが国最初のセンターとして中央大学に本拠を置く日本比較法研究所の設立を推進され、初代の所長に就任された。野田先生は独自の比較法文化論を展開するとともに、東京大学における比較法講座の開設に努力され、初代の担当者となった。しかし、残念なことに両先生とも、法学徒の勉学に便宜な比較法の概説書を著されることはなかった。

 もちろん、英米法やドイツ法など他の外国法、また法哲学や法史学といった他の基礎法分野、さらには実定法の研究者であって比較法に関心を広げられた学者も当然おられる。さらに近時では五十嵐清、大木雅夫両先生のように比較法を専門とする学者により本格的研究が行われるに至り、若干ではあるが比較法の概説書や訳書の刊行もみられるようになった。しかし、比較法は実定法各分野と異なり関係法規を有しておらず、また相対的に新しい法分野であるが故に、何をもって比較法学の対象とするかについていまだ確たる内容が形成されておらず、試行錯誤の段階であるということができる。諸外国の概説書を参照しても、基礎理論のみを扱うもの、法系論を中心に論じるもの、法の継受や統一法に力点を置くもの、さらには比較実定法を対象とするものなど内容的振幅が極めて大きい。本書を執筆した動機のひとつには、これらさまざまな傾向を統合して、わが国の比較法の講義としての内容につき筆者なりの統一的体系を提案することにあった。

 外国法専攻者として比較法についておのずから関心をもっていたものの、本格的には勉強する機会はなかった者が本書を纏めるに至った直接の契機は、実は講義担当という「外圧」による。比較法は専門家が少ない分野であり、もともとの専門のフランス法ではなく比較法の講義担当を依頼される機会が増えた。まず1991年より東京大学教養学部において講義において、ついで1997年からは、上智大学法学部において、さらに2004年以降は、上智大学法科大学院の発足に伴い、そこでの比較法の講義も引き受けている。2009年には東京大学法科大学院においても講義を担当することになっている。かくして近時は、フランス法との講義負担の比重が逆転するに至っている。講義の機会が増えると、講義案や資料の配付ではなくテキストの便利さが感じられるようになる。ところが手頃な概説書となると、わが国では皆無である。本書の他の執筆動機は、講義では十分に扱いきれなかった部分を含めて、比較法を講義される先生方や受講される学生諸君に便宜を図ることにあった。

 ところで、2004年より法科大学院が発足し、実践的な法学が幅を利かせている。法学が実務から遊離した空理空論であってはいけないことは確かであるとはいえ、基礎法学的な土台を欠く技術偏重の法学教育というものでは、長い目で見た場合に真にすぐれた法曹を育てることとはなるまい。実定法を専攻する者にとって考え方を深める上で比較法的な広い視野をもつことが有益であるということを実感してもらうべく、本書の構成と記述に工夫を凝らした。もっとも、比較法担当者としてはいまだ「駆け出し」であり、現実にこうした意図をどれだけ具体化することができたかについては、はなはだ心もとなく思っている。大方のご批判を得て、将来よりよいものに改めていきたい。

 比較法の書物を曲がりなりにも刊行できたことについて、最初に東京大学でご指導たまわった故野田良之先生、その後上智大学で長く同僚としてご教示いただいた大木雅夫先生のほか、現在理事長を務めている比較法学会を中心として教えを受けている多くの先学・同輩の学恩による。お名前をいちいち挙げさせて頂くことはしないが、感謝申し上げたい。

 著者が『フランス法』を刊行した直後より、上智大学において法学部長・図書館長・法科大学院長といった学内の業務に忙殺される日々が10年ほど続き、『比較法』の執筆は断念しつつあった。本書が遅ればせながら出版できたのは、ひとえに三省堂編集部の鈴木良明氏の忍耐づよい励ましによる。お礼の一言を述べさせていただきたい。

2009年1月

滝沢 正


目 次

目  次
はしがき
序 論

第1節 比較法の講義

第2節 本書の叙述の基本方針

第3節 参考文献

第1編 比較法の基礎理論

第1章 比較法の観念

第1節 比較法の概念規定

第2節 比較法と隣接諸学

第2章 比較法の効用

第1節 実務的効用

第2節 学問的効用

第3章 比較法の方法

第1節 対象の選定

第2節 比較の実施

第4章 比較法の歴史

第1節 西欧における歴史

第2節 わが国における歴史

第2編 世界の諸法大系の現状(法系論)

第1章 法系論序説

第1節 法系論をめぐる議論

第2節 各種の法族論

第3節 法系分類の要素

第2章 法規範に対する認識による分類

第1節 法観念

第2節 法技術

第3節 法源

第3章 法制度を支える仕組みによる分類

第1節 裁判所

第2節 法律家

第4章 比較法的にみた日本法

第1節 固有法の時代(上代)

第2節 中国法継受の時代(中代)

第3節 西欧法継受の時代(近代)

第4節 総 括

第3編 世界の諸法体系の変動

第1章 法の継受

第1節 法の継受をめぐる問題状況

第2節 継受の形態

第2章 法の統一

第1節 法の統一をめぐる問題状況

第2節 統一の形態

第3章 法変動の潮流

第1節 イデオロギーの衰退

第2節 法技術の接近

補 論 比較法研究の手引き
・章別参考文献一覧
・事項索引
・人名索引

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