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  新ヨーロッパ法 リスボン条約体制下の法構造

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新ヨーロッパ法 リスボン条約体制下の法構造

岡村 堯 著

4,800円 A5判 480頁 978-4-385-32332-9

リスボン条約発効後の新しいヨーロッパ連合の組織、強化された機能を読み解く。多くの判例を紹介しつつ競争法、環境法、知的財産法の動向を解説。「ヨーロッパ連合条約」「ヨーロッパ連合機能条約」全文収録。

はしがき   目 次   著者紹介

2010年7月10日 発行



はしがき

 「ヨーロッパ共同体法と国内法の関係」(法政研究三四巻四号)と題する論文を書いたのは、一九六八年であった。

 一九五二年発足のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体が超国家法とよばれる法的特徴を有していたことから、共同体法と国内法との関係をどう捉えるかをめぐって、換言すれば、どちらが優位するかの議論が欧米ではかまびすしかった。一般には、国際法上の二元論の立場から捉える者が多かった。右の小論では、共同体が条約という国際法により創設されているからといって、二元論で両法の関係を論ずべきでないとして、各構成国の憲法、共同体裁判所の主要判例ならびに学説等をふまえて検討した結果、共同体法独自の法的性格から、同法が国内法に優位すべきと論じたのである。

 その数年後、同じ題目で国際法学会での発表の機会を与えられた際、ヨーロッパ裁判所が、EEC条約は、固有の法秩序を有し、構成国から権限の委譲を受けたのであり、共同体の利益のために、共同体の概念と相容れない後の一方的立法が認められないという意味で、主権の決定的な制限を生じさせると判示した代表的な判例等を中心に検討した結果、結論として、共同体法は内容においては国際法から、形式においては国内法から区別される独自の法、換言すれば国際法でもなければ国内法でもない、いわば第三の法と定義できると報告した。第三の法の存在という大胆な報告のせいか、第三の法などあまりにも無謀ということで袋だたきにあったが、一般に法といえば国内法でなければ国際法というように、法は二つしかないというのは単なる思い込みでしかなく、客観的に証明されているわけではない。したがって第三の法の主張もありうるのではないかと真っ赤になって反論したことをまるで昨日のことのように鮮明に覚えている。今思えば若気の至りとはいえ、よくも大胆なことをいったものだと思う。その後、共同体から連合へと発展を遂げ、国家連合ではなく、一部の分野では連邦的な形にまで統合が進み、EU法は国際社会で影響力を有する独特の存在感を示している。

 かれこれ五〇年前くらいから共同体に関心を持ったのは、それが経済分野からの統合を目指した発想に注目したからである。何故なら、経済統合は経済的利益が一致するかどうかが問題になり、政治イデオロギーや国家面子はさほど問題にならず、統合が進めやすいのである。

 次に注目したのは、統合促進に裁判所の機能を活用したことである。どういうことかというと、普通、組織を作る場合、それを機能させるためのルールを可能な限り細かく作るのであるが、EUは、「木」本体と太い「幹」に相当する基本規定とその補足規定を作り、それらの解釈をめぐって争いが生じた際に、EU裁判所に判断させた判例をもって「小枝」および「葉」とし、その後の立法の糧にしたり、あるいは構成国、EU機関あるいは市民の次なる行動のよすがにする手法である。換言すれば、判例による法の創造作用である。当然、統合の分野が広がれば、立法の範囲が広がり、判例も増えることから、発足当初は一つだった裁判所が、今日では三つになっているのである。このように考えるとEUは、成文法と不文法(判例法)の壮大な融合であったといえる。

 このような思いから、研究に着手してからかれこれ五〇年、EU裁判所の判例を読み続けてきた。華やかな議論をするわけでなし、非常に地味な作業であった。最初の判例集(仏・独)は一九五三年であるが、その時の収録件数はわずか五件であり、今日の一万頁を超えるものと比べるとまさに隔世の感がする。

 昨年(二〇〇九年)、リスボン条約と共に、Treaty on the Functioning of the European Union が発効した。この条約については、「EU運営条約」と訳すものが散見されるが、筆者はその訳を採らない。その理由は、次の通りである。連合の活動は同条約に掲げる政策の実現で示されるわけであるが、その実現のためには、議会、理事会、委員会および裁判所等の諸機関がいかに機能すべきかを規定したのが、この条約に他ならないからである。

 これまで、EU諸条約は改正のたびに厖大な量にのぼり、条約集に収録の際には中略あるいは抄録を余儀なくされた。しかしながら、この方法はEUについて本格的に学ぼうとすればするほど、使い勝手が悪いのである。したがって、本書ではあえて、EU諸条約全訳を巻末に収録することにした。

 この拙著の上梓に際しては、各先生の文献に負うところ大であったことはいうまでもなく、また、三省堂の各部門の皆さんには大変お世話になったが、とりわけ編集部の鈴木良明さんにはいろいろとご迷惑をかけた。同氏との関わり合いも四〇年に及ぶが、いわば「岡村番」とでもいうべき存在で、今ではすっかり古典化した、読みやすいとはいえない手書き原稿を素早くワープロに打ち直してくれて、その際に気づくのか、一読者としての鋭い目線からの質問あるいは指摘に思わずハッとすることが少なからずあった。

 昨年末リスボン条約が発効してから、まだ間もないうちに拙著も刊行できたのも、ひとえに同氏の献身的努力の賜物であり、ここに改めて深謝する。

二〇一〇年六月

色映えの紫陽花を賞でつつ

岡村 堯

 

目  次

目  次

はじめに

第1部 ヨーロッパ連合の成立と発展

第一章 ヨーロッパ共同体条約からニース条約へ

第二章 トルコのEU加盟問題

第三章 クロアチアのEU加盟問題

第四章 マケドニアのEU加盟問題

第2部 ヨーロッパ憲法条約

第一章 ヨーロッパ憲法条約の制定

第二章 ヨーロッパ憲法条約案の内容

第一節 連合の定義と目的

第二節 基本権および市民権

第三節 政策と機能

第3部 ヨーロッパ連合条約の内容

第一章 共通規定

第二章 民主主義原則の諸規定

第三章 諸機関に関する規定

第四章 協力推進の規定

第五章 連合の対外行動に関する一般規定と共通外交安全保障政策に
    関する特別規定

第一節 連合の対外行動に関する一般規定

第二節 共通外交安全保障政策に関する特別規定

第六章 最終規定

第七章 リスボン条約のまとめ

第4部 ヨーロッパ法の法源

第一章 連合基本法

第二章 連合立法

第三章 法の一般原則

第5部 ヨーロッパ連合の諸機関

第一章 ヨーロッパ理事会

第二章 ヨーロッパ議会

第一節 ヨーロッパ議会の構成

第二節 ヨーロッパ議会の機能

第三節 ヨーロッパ議会の権限

第三章 理事会

第一節 理事会の種類

第二節 理事会の権限

第三節 理事会の機能

第四節 常駐代表委員会

第四章 ヨーロッパ委員会

第一節 委員会の役割

第二節 委員長および委員の任命

第三節 委員会の機構

第四節 委員会の機能

第五節 委員会の活動

第五章 ヨーロッパ連合司法制度

第一節 ヨーロッパ裁判所

第二節 ヨーロッパ裁判所の特徴

第三節 ヨーロッパ裁判所の構成

第四節 ヨーロッパ裁判所の管轄

第五節 裁判所補佐官

第六節 一般裁判所

第七節 ヨーロッパ公務員審判所

第6部 ヨーロッパ競争法

第一章 ヨーロッパ競争法の近代化

第二章 新競争法の登場

第三章 カルテルおよび協調的行為の規制 ── EU機能条約第一〇一条

第一節 機能条約第一〇一条一項をめぐる問題

第二節 協定と協調的行為の区別

第三節 構成国間の取引に影響を及ぼしうる場合

第四節 競争を妨げる目的または効果

第五節 de minimis rule

第六節 機能条約第一〇一条二項 ── 無効規定

第七節 機能条約第一〇一条三項 ── 同条一項の適用免除

第八節 機能条約第一〇一条三項の適用要件

第四章 支配的地位の濫用の禁止 ── 機能条約第一〇二条

第一節 機能条約第一〇二条の意義

第二節 支配的地位の意味

第三節 共同的支配的地位

第四節 製品市場

第五節 地理的市場

第六節 共同市場の実質的部分

第七節 市場占有率の意味

第八節 市場占有率以外の参入障壁

第九節 共同支配

第五章 市場支配的地位の濫用

第一節 濫用に関する概説

第二節 濫用とされる禁止行為

第六章 制限販売

第一節 垂直的協定一括免除

第二節 機能条約第一〇一条一項適用の態様

第三節 機能条約第一〇一条三項の適用

第7部 ヨーロッパ環境法

第一章 第六次環境行動計画

第二章 ヨーロッパ連合の大気汚染対策

第三章 排出量取引制度

第一節 排出量取引制度の基本的仕組み

第四章 京都議定書

第五章 EU排出量取引制度

第一節 EU排出量取引制度の創設

第二節 EU‐ETS第二フェーズの対応

第三節 EU‐ETS第三フェーズでの対応

第六章 化学物質の安全性確保と法規制

第一節 電気および電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する命令九五号(RoHS)

第二節 電気および電子機器の廃棄に関する命令九六号(WEEE)

第三節 化学物質の登録、評価、承認および制限に関する規則(REACH)

第8部 ヨーロッパ知的財産権法

第一章 問題の所在

第二章 ライセンスによる特許権の消尽

第三章 輸出構成国における保護のない場合における消尽

第四章 輸出構成国における強制ライセンス

第五章 権利消尽の原則の地理的範囲

第六章 EU機能条約第三六条に反する国内法

第七章 商標権

第八章 著作権

第九章 意匠権

第9部 日本企業に対するEU競争法等の適用

第一章 競争に関する事件

第二章 特許に関する事件

第三章 行政に関する事件

第四章 二〇〇〇年以降の適用事例

 

資料

・ヨーロッパ連合条約

・ヨーロッパ連合機能条約

判例索引

事項索引


著者紹介

岡村 堯(おかむら・たかし)

1937年生まれ
1965年 九州大学法学研究科修士課程修了
1965年 九州大学法学部助手、西南学院大学法学部教授を経て
1982年 上智大学法学部教授、法学博士、上智大学地球環境大学院教授、上智大学法科大学院
     教授を経て
現在 上智大学名誉教授、NPO法人地球環境・経済研究機構理事長、弁護士(芝綜合法律事務所)

〔主要著書〕
『取引の公正 I』〔共著〕(消費者法講座3)日本評論社・1984年
『国際取引と法』〔共著〕(現代経済法講座10)三省堂・1991年
『EU入門』〔共編著〕有斐閣・2000年
『ヨーロッパ法』三省堂・2001年
『ヨーロッパ環境法』三省堂・2004年
『ヨーロッパ競争法』三省堂・2007年


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