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ヨーロッパ市民法

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ヨーロッパ市民法

岡村 堯 著

4,500円 A5判 452頁 978-4-385-32222-3

数度の改革を繰り返しながら今日に及んでいるEUの人、物、サービスおよび資本の自由移動の原則は、統合が進むにつれて、内容が変化していった。このEU法の進化・深化をEU裁判所の判例を中心に読み解く。

はしがき   目 次   著者紹介

2012年8月1日 発行




はしがき

二〇〇一年に『ヨーロッパ法』(三省堂)を上梓して以来、二〇〇四年に『ヨーロッパ環境法』(同)、二〇〇七年に『ヨーロッパ競争法』(同)、 そして、二〇一〇年には『新ヨーロッパ法』(同)を著してきた。これらの執筆にあたり、筆者が絶えず意識したのは、法的視点からのEUの生成発展およびEU法の深化を考察することであった。

なぜ、そのような方法を用いたかというと、巷間にはEUを論ずるものがあふれているが、その大半は政治面あるいは経済面からのものであり、筆者はそれらが時の移ろいにも似て、ほどなく記憶から消え去ることに一種の儚さを感じていたからである。

法的考察と言っても、条文の解釈だけではなく、その適用を巡って繰り広げられる裁判例を通してであった。なぜ判例かというと、現二七の構成国に適用される共通の法としてのEU法は、それぞれの国内法と相俟って適用されるのであり、しかも連邦法と州法というように明確に区別されていないことから、結局のところ万人をして納得せしめるには、ヨーロッパ裁判所の裁判による他ないからである。

EUは、発足以来連合諸条約の変遷を経ながらも、人、物、サービスおよび資本の自由を四大柱の基本規定としてその位置を変えることなく、さらにその上、それらを補足する規則、命令といったEU立法も数多く制定され、これらに関する判例も膨大な数にのぼり現在に至っている。

しかしながら、筆者の場合も含めて、これまでの論述をみるに依然として、連合条約あるいは機能条約の条文の並べられた順に平面的に捉え、法体系として捉えるのに十分な位それぞれの分野が厚みを増しているにもかかわらず、そのことが見過されてきたように思われる。

労働者の自由移動といっても、賃金、有給休暇、産休等の労働条件、あるいは男女同一労働同一賃金の原則等に関する議論に終始してきた。当初はそれでよかったかもしれないが、労働者自身も年をとり、また彼の家族もあることから年金、生活保護および医療保険など社会保障法の範疇で捉えるべき問題が生じてきた。同様に、労働問題に関しても、労働法として捉えることが可能なくらい法的整備が進んできたといえる。

物、サービスおよび資本の分野についても同じことが言える。物の自由移動についても機能条約は、輸出入の関税あるいは数量制限の禁止、またはそれらと同様の効果を有する行為を禁止しているが、いかなる場合がそれらに該当するか規定しているわけではない。結局のところ、ヨーロッパ裁判所の判断を待たねばならないのである。今日のEU法は、条約およびEU立法を骨子として、同裁判所による判例法で補われているのである。今や物の自由移動については、物流法と名付けてよいくらいに発展しているのである。

また、マーストリヒト条約(一九九三年)以来、EU構成国の国民はEU市民としての地位を与えられたのであるが、機能条約で規定されているのは、国籍に基づく差別禁止、ヨーロッパ議会議員選挙の選挙権および被選挙権、他の構成国による外交的保護を受ける権利ならびにオンブズマン制度であった。国籍に基づく差別の禁止はEU市民の権利保障の大原則であるが、その他の諸権利はいずれも公法的性格のものであり、そこにはEU市民が日常の市民生活を送る上で具体的にどのような権利を有しているかなんら規定はないのである。

このことから、本書では、四つの自由に関して、それぞれの法体系化を試みると共に、それらを包摂するEU法の主役を演じるのはEU市民であることに鑑み、あえて本書のタイトルを『ヨーロッパ市民法』とした次第である。

本書の出版作業の追い込みに入っているこの四月、編集部の鈴木良明さんが定年を迎えるに至った。作業途中に鈴木さんの手が離れることは、これまで二人三脚でやってきた筆者にとって右腕を取られるのに等しく途方に暮れていたところ、三省堂のご厚意で出版の暁まで同氏のお手伝いをいただけることになった。この書がいささかでも読者のみなさんの満足を得られるならば、それはひとえに三省堂、同編集部のみなさんならびに鈴木さんのご厚意とご尽力の賜物であることは疑いなく、ここに記してみなさんに深く感謝の意を表したい。


二〇一二年六月


あじさいの
 露にうたれて
  色映ゆる


岡村 堯

 


目  次

はしがき

第1部 ヨーロッパ連合の成立発展

第一章 ヨーロッパ共同体条約からニース条約へ

第二章 クロアチアのEU加盟

第三章 ヨーロッパ憲法条約案の制定

第四章 ヨーロッパ憲法条約案の内容

第五章 ヨーロッパ連合条約(リスボン条約)の内容

第六章 連合の対外行動に関する一般規定と共通外交安全保障政策に関する
    特別規定

第七章 最終規定

第八章 ヨーロッパ連合条約(リスボン条約)のまとめ

第2部 ヨーロッパ連合の諸機関

第一章 ヨーロッパ理事会

第二章 ヨーロッパ議会

第三章 理事会

第四章 ヨーロッパ委員会

第五章 ヨーロッパ中央銀行

第六章 会計検査院

第3部 ヨーロッパ連合司法制度

第一章 ヨーロッパ裁判所

第二章 ヨーロッパ裁判所の特徴

第三章 ヨーロッパ裁判所の構成

第四章 ヨーロッパ裁判所の管轄

第五章 裁判所補佐官

第六章 一般裁判所

第七章 ヨーロッパ公務員審判所

第4部 ヨーロッパ法

第一章 連合基本法

第二章 連合立法

第三章 法の一般原則

第5部 ヨーロッパ市民法 ── 基本的人権に係る法

第一章 ヨーロッパ連合市民権

第二章 連合市民権をめぐるその他の問題

第三章 第三国の国民の権利の保障

第6部 ヨーロッパ社会法

第一章 ヨーロッパ労働法

第二章 ヨーロッパ社会保障法

第7部 ヨーロッパ物流法

第一章 物(財貨)の自由移動

第二章 物(財貨)の自由移動に対する合法的規制

第8部 ヨーロッパサービス法

第一章 国営独占機関による事業

第二章 第三国の国民によるサービス提供の自由

第三章 営業の自由

第四章 公共機関における労働者に対する自由移動の原則の不適用

第9部 ヨーロッパ資本法

判例索引

事項索引



著者紹介

岡村 堯(おかむら・たかし)

1937年生まれ
1965年 九州大学法学研究科修士課程修了
1965年 九州大学法学部助手、西南学院大学法学部教授を経て
1982年 上智大学法学部教授、法学博士、上智大学地球環境大学院教授、
     上智大学法科大学院教授を経て
現  在 上智大学名誉教授、NPO法人 地球環境・経済研究機構理事長、
     弁護士(芝綜合法律事務所)

〔主要著書〕

『取引の公正 I』〔共著〕(消費者法講座3)日本評論社・1984年
『国際取引と法』〔共著〕(現代経済法講座10)三省堂・1991年
『EU入門』〔共編著〕有斐閣・2000年
『ヨーロッパ法』三省堂・2001年
『ヨーロッパ環境法』三省堂・2004年
『ヨーロッパ競争法』三省堂・2007年
『新ヨーロッパ法』三省堂・2010年



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