「スイスはドイツ及びオーストリアと並んでもっとも発達した登記制度をもった国に属する。フランス、イタリー、ベルギー、オランダ及びスペインでは制度は十分に発達しておらず、アングロサクソン法域の国々においては――大まかに言うのであれば――20世紀において初めて不動産登記制度を手に入れたにすぎない。」この文は、チューリヒ大学教授Dieter Zobl博士の著書Grundbuchの一節である(43ページ Rn. 36)。
Zobl博士の指摘をまつまでもなく、ドイツ(及びスイス)の不動産登記制度はもっとも理想的な登記制度であるということについては異論のないところであろう。
このドイツ土地登記法という巨峰に登ってみたいという衝動に駆られ、登りはじめ、苦心惨憺の末、8年もかかって、どうにか頂に辿り着くことができたのである。その頂に辿り着いてみると、その眺望はすばらしいものがあったといわざるを得ない。それは、そこから見た、わが国の不動産登記制度の構造的脆弱性とそこからくる問題点が、あたかも、掌を指すがごとく、理解することができたことである。この点の問題意識なくして、あすのよりよき登記制度の構築はありえない。かかる意味で、ドイツ土地登記法は、わが国の不動産登記法の鏡Spiegelであるといえる。それだけでなく、現行不動産登記法の諸問題、とりわけ、仮登記制度の本質的理解のためには、ドイツの仮登記制度の理解が不可欠であるともいえる。この時の成果を石川は登記研究650号(2002年3月)から726号(2008年8月)において発表している。
その当初の発表からすでに9年が経過し、この間にドイツにおいても土地登記法及び関連する法律が改正され、とくに2009年には大幅に改正されている。そこでそれを契機として、共著者として小西を加え、再検討し、かつドイツ土地登記法に関する体系的著書が皆無であることも踏まえ、ドイツ土地登記法を改めてまとめてみたいと考えた次第である。もとより、用語の不統一、訳文の稚拙等々不十分な点が多々あり、多くのご批判が寄せられるであろうことは感じながらも、あすのよりよき登記制度の構築のためにささやかな一石を投ずることができればと念じているものである。
この研究の過程で、早稲田大学教授田山輝明先生から数々のご指導を賜り、心から感謝申し上げる。また愛知県司法書士会名誉会長村瀬鋹一氏、和歌山県司法書士会名誉会長中弘氏及び日司連総合研究所法制度比較研究部会主任研究員有野久雄氏からは数々のご助言及び激励のお言葉をいただき、お礼を申し上げる。
本書の刊行にあたり、一般書出版部部長鷲尾徹氏から多大なご尽力をいただき、厚くお礼申し上げる。
第1章 序 説
第1節 不動産登記制度の意義
第2節 不動産登記制度の沿革
第3節 法 源
第4節 登記法を支配する原則
第2章 登記機関とその設備
第1節 登記所
第2節 登記官
第3節 登記簿
第3章 登記義務のない土地と登記能力のある権利
第1節 登記義務のない土地
第2節 登記能力のある権利
第4章 登記簿の公開の原則
第5章 登記手続総論
第1節 登記申請
第2節 登記許諾(GBO19条)
第3節 物権的合意(アウフラッスング)の証明(GBO20条)
第4節 登記申請後の処分制限
第5節 登記義務者先行登記の原則
第6節 登記要件とその証明方式
第7節 公証人の登記申請代理
第8節 職権登記
第9節 順位関係
第10節 登記官の審査と中間処分
第11節 登記の実行
第12節 登記済通知
第13節 登記申請の取下げと却下
第14節 バーデン‐ヴュルテンベルクでの特例
第15節 オンライン申請の導入
第6章 登記手続各論(その1)
第1節 訂正登記
第2節 抹消登記
第3節 仮登記
第4節 異議登記
第5節 嘱託登記
第7章 登記手続各論(その2)
第1節 表題部の登記
第2節 所有権移転登記
第3節 先買権の登記
第4節 地上権の登記
第5節 用益権の登記
第6節 制限的人的役権の登記
第7節 地役権の登記
第8節 抵当権の登記
第9節 土地債務の登記
第8章 不服申立て
第9章 登記の効力
第1節 占有的効力(BGB900条)
第2節 物権変動成立的効力(BGB873条)
第3節 推定力(BGB891条)
第4節 公信力(BGB892条、893条)
第10章 登記費用
第1節 登記手数料
第2節 公証人手数料
用語解説集
土地登記法(GBO)
登記簿のひな型(共同登記簿用紙)
事項索引