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  対話的違憲審査の理論

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対話的違憲審査の理論

佐々木雅寿 著

2,400円 四六判 272頁 978-4-385-32249-0

憲法保障とは、違憲審査が行われたその1つの時点ではなく、法律制定→違憲審査→法改正→さらなる違憲審査→さらなる法改正というように、「対話」によってなされているという新しい視点を提起する。

2013年9月15日 発行


  はしがき   目 次   著者紹介



はしがき

 本書は、違憲審査制や憲法保障に関して、従来とは異なる新しい視点をもたらす「対話的違憲審査の理論」を提示しようとするものである。

 従来の議論と本書との違いを一言で表せば、「静止画」と「動画」との違いである。従来の議論は、自覚するか否かはともかく、人権保障や憲法的価値を実現するという憲法保障は、最高裁判所(以下「最高裁」)の違憲審査という一つの点によって実現すると考える傾向が強かった。そのため、憲法保障の担い手としては最高裁のみが強く意識され、他の国家機関や国民などの役割や機能については必ずしも十分な関心が払われていなかった。このような従来の議論は、最高裁の違憲審査の時点で撮られた「静止画」によって憲法保障をとらえる方法といえよう。

 それに対し本書は、時間の流れを止めずに、「動画」として、憲法保障の流れをとらえる。すなわち、憲法秩序を守るという憲法保障は、最高裁による違憲審査という一つの点によって実現するのではなく、国会の法律制定・最高裁の違憲審査・国会の法改正・最高裁の更なる違憲審査・国会の更なる法改正という、最高裁と国会などとの相互作用のプロセスによって実現すると考える。本書ではこの相互作用のことを「対話」と呼ぶ。日本においても、憲法に関する対話は、最高裁、国会、行政府、地方公共団体、それに国民などによって実際に行われている。そのため本書は、憲法保障に関しては、最高裁のみならず、国会、行政府、地方公共団体、国民などもそれぞれ重要な役割を担っていると考える。

 このように最高裁と国会などとの対話に着目する視点は、近年では、カナダの憲法学説と判例によって形成された「対話理論」の影響の下、多くの国の憲法学説に取り入れられようとしている。しかし、このような視点は日本にとって決して未知のものではない。戸松秀典教授は、すでに1993年の『立法裁量論』(有斐閣)323頁で以下のように指摘している。すなわち、「司法審査を媒介として、議会と裁判所の間には、対抗関係と補完関係との二つの相互作用が生み出されることになる。……最高裁判所を、最終の憲法の番人として受け止めることはできよう。しかし、最高裁判所による違憲の判断が、憲法価値についての文字どおりの最終決定となるわけではないことにも注意を向けなければならない。ある法律が違憲であると最高裁判所により判断されたとき、その裁判書は、国会に送付されることになっており(最高裁判所裁判事務処理規則一四条)、それを受けて、国会は、当該法律の改廃を行うことが予定されているのである。国会は、最高裁判所の判断に応諾することも、対抗することも可能である。対抗の要素を含んだ法律の改正に対して、最高裁判所がさらに自己の判断を加える場合があることも予定されている。こうして、相聳立する二つの統治機関の間で、そこに社会の様々な関係要因を絡ませながら、憲法価値の実現が図られることになっている。そこには、憲法価値をめぐる十分な論議が尽くされることが求められ、そうであれば、憲法の意図する民主制の統治機構がよく機能しているということができるのである。」。

 本書は、カナダの対話理論と戸松教授の指摘から刺激を受けたものである。しかし、本書には、新しい視点を示すことに加え、以下の特徴がある。第一の特徴は、日本においても憲法に関する対話が実際に行われていることを、法律を違憲と判断した最高裁判例とその後の国会や行政府の対応を詳細に分析することによって実証した点である。第二は、最高裁が示した憲法判断の内容に加え、最高裁の違憲判決後、国会や政治部門などがどのような対応をしたのかまたはしなかったのかも検討し、国民などの対話への参加の仕方も考慮し、対話を促進させるために必要な理論と制度とを提案することである。第三の特徴は、日本国憲法の基本的枠組みに適合的で、かつ、日本における憲法的対話の実状をふまえたうえで、日本の現状を説明し、現状を批判し、さらに、現状をあるべき方向へと誘導するための「対話的違憲審査の理論」を独自に体系化したことである。

 このような特徴をもつ本書は、第一部で対話的違憲審査の理論の概要を示し、その具体的なイメージを得てから、第二部で憲法的対話が日本において実際に行われていることを最高裁の判例とその後の国会などの対応を分析することにより実証的に示し、最後の第三部で対話的違憲審査の理論が要請する理論と制度とを検討する。本書は、すでに公表している「対話的違憲審査の理論 ─ 法の支配と憲法的対話の融合 ─」『新世代法政策学研究』一九号一頁(2013年)を基にしているが、多くの部分は加筆している。特に憲法的対話の現状を実証する第二部は、大幅に加筆した。

 そのため、第二部にかなりのスペースが割かれている。そこでは、多くの最高裁判決の内容を説明し、その後の国会などの動きも、国会の議事録などを用いて分析している。この第二部は、本書が提示する「対話的違憲審査の理論」にとって不可欠の要素となっている。しかし、判例の細かな説明や国会の議事録などにあまり興味をもてない読者が、各章のはじめの部分と最後のまとめを読んで、中間の説明を省略しても、各章の主旨がなるべく伝わるように工夫してある。それぞれの読者に合った方法で本書を読んでほしい。

 本書の内容に関しては、大阪市立大学大学院法学研究科の渡邊賢教授から、憲法研究者の視点からの貴重な助言をいただいた。この場をかりて感謝したい。

 また、華道の教授である妻裕子は、一般の読者の視点から本書の内容や表現の仕方について、丁寧なアドバイスをしてくれた。筆者が研究者としての道をこれまで歩むことができたのは、あらゆる面でサポートしてくれた妻がいたからである。心から感謝したい。

 本書の出版にあたり大変お世話になった三省堂六法・法律書編集室の黒田也靖氏にも謝意を表したい。

 最後に、今は亡き両親に本書を捧げたい。

2013年5月3日

佐々木雅寿



目   次

はしがき

凡例

第一部 対話的違憲審査の理論

序章 「対立」から「対話」へ  2

1 従来の視点とその問題点  2

2 「対話」という新たな視点  4

3 カナダにおける対話理論  5

4 本書の視点と目的  9

(1)法の支配  9  (2)憲法的対話  10  (3)対話的違憲審査の理論  12

第一章 対話的違憲審査の理論  14

1 理論の概要  14

(1)基本的な視点  14  (2)対話の意味、類型と主体  15  (3)最高裁からの対話のメッセージ  16  (4)国会や政治部門の対応の仕方  18  (5)対話のモデル  19

2 理論の要請  20

(1)最高裁への要請  20  (2)国会などへの要請  21  (3)国民などへの要請  22

3 理論の性格  22

4 本書の検討対象  23

第二部 日本における憲法的対話の現状

第二章 立法手段を違憲とする判断手法による対話  26

1 一回的な対話  26

2 尊属殺重罰規定違憲判決  28

(1)最高裁の判決内容  28  (2)違憲判決後の対応  30  (3)違憲判決後の国会での審議  32  (4)平成三年の刑法改正における議論  44  (5)平成七年の刑法改正における議論  46  (6)まとめ  48

3 薬事法違憲判決  50

(1)最高裁の判決内容  50  (2)違憲判決後の対応  51  (3)国会での審議  51  (4)まとめ  55

4 森林法違憲判決  56

(1)最高裁の判決内容  56  (2)違憲判決後の対応と国会での審議  56  (3)まとめ  59

5 郵便法違憲判決 _60

(1)最高裁の判決内容  60  (2)違憲判決後の対応と国会での審議  61  (3)まとめ  65

6 在外国民選挙権制限違憲判決  66

(1)最高裁の判決内容  66  (2)違憲判決後の対応と国会での審議  68  (3)国外における不在者投票制度の創設  73  (4)まとめ  76

7 まとめ  77

第三章 衆議院の議員定数不均衡に関する対話  79

1 中選挙区制の下での継続的な対話  79

(1)中選挙区制  79  (2)継続的な対話  80  (3)昭和五一年大法廷判決  82  (4)昭和五八年大法廷判決  84  (5)昭和六〇年大法廷判決  87 (6)昭和六三年判決  89  (7) 平成五年大法廷判決  92  (8) 平成七年判決  96  (9) 昭和六一年の公職選挙法改正と継続的対話  96  (10) まとめ  98

2 小選挙区制の下での継続的な対話  99

(1)小選挙区制  99  (2)平成一一年大法廷判決  101  (3)平成一九年大法廷判決  102  (4)平成二三年大法廷判決  105  (5)その後の対応  110 (6)まとめ  111

第四章 参議院の議員定数不均衡に関する対話  113

1 選挙制度の概要  113

2 判例の流れと継続的な対話  114

(1)判例の流れ  114  (2)継続的な対話  115

3 昭和五八年大法廷判決  117

(1)多数意見(合憲判断)  117  (2)反対意見(違憲判断)  118

4 その後の合憲判決  118

5 平成八年大法廷判決  119

(1)多数意見(違憲状態・結論合憲)  119  (2)意見(多数意見の結論に同意)  120  (3)反対意見(違憲判断)  121

6 平成一〇年大法廷判決  122

(1)平成六年法改正  122  (2)多数意見(合憲判断)  123  (3)反対意見(違憲判断)  123

7 平成一二年大法廷判決  124

(1)多数意見(合憲判断)  124  (2)反対意見(違憲判断)  124

8 平成一六年大法廷判決  126

(1)平成一二年法改正  126  (2)多数意見(合憲判断)  127  (3)補足意見1  127  (4)補足意見2  128  (5)反対意見(違憲判断)  129

9 平成一八年大法廷判決  132

(1)多数意見(合憲判断)  132  (2)補足意見(多数意見に同意)  134  (3)反対意見(違憲判断)  134

10 平成二一年大法廷判決  135

(1)平成一八年法改正  135  (2)多数意見(合憲判断)  135  (3)反対意見(違憲判断)  137

11 平成二四年大法廷判決  140

(1)多数意見(違憲状態・結論合憲)  140  (2)補足意見(多数意見に同意)  142  (3)意見(多数意見の結論に同意)  144  (4)反対意見(違憲判断)  145  (5)平成二四年法改正  147

12 間接的要請から直接的要請へ  148

13 まとめ  150

第五章 国籍法違憲判決をめぐる対話  153

1 国籍法違憲判決  153

(1)多数意見(違憲判断)  153  (2)補足意見(多数意見に同意)  155  (3)意見(違憲判断)  156  (4)反対意見(合憲判断と違憲判断)  157

2 違憲判決後の国籍法改正  159

3 国会での審議  159

(1)国籍法改正法案へよせられた反対意見  159  (2)最高裁判決のとらえ方  161  (3)違憲判決の効力  163  (4)少数意見などからメッセージを受け取る姿勢  164  (5)最高裁判決の批判  165  (6)準正要件以外の要件を付加する可能性  168  (7) 国籍法違憲判決と民法九〇〇条四号ただし書との関係  171

4 まとめ  173

第六章 最高裁と国会との対話が実現しなかった例  175

1 非嫡出子の相続差別に関する対話の不成立  175

(1)平成七年大法廷決定  175  (2)平成一二年判決  177  (3)平成一五年三月二八日判決  178  (4)平成一五年三月三一日判決  180  (5)平成二一年決定  182  (6)まとめ  183

2 合憲限定解釈による対話の失敗  184

第七章 最高裁と地方公共団体との対話  187

1 建設的な憲法的対話の実例  187

(1)最高裁判決の内容  187  (2)判決後の対応  188  (3)差戻し後の裁判所の判断  189  (4)建設的な憲法的対話  190

2 合憲限定解釈による対話の失敗  191

第八章 日本における対話の特徴と対話の必然性  195

1 対話の特徴  195

2 対話の必然性  197

(1)対話は不可欠  197  (2)人権や統治規定の性質  198  (3)違憲審査の性質  200  (4)三権分立  200

第三部 対話的違憲審査理論の要請

第九章 要請される理論  204

1 違憲判決の効力  204

(1)通説的理解=個別的効力プラス  204  (2)新たな理論  205

2 国会や政治部門の憲法上の義務  207

(1)法律制定に関する憲法上の義務  208  (2)違憲判決を受けた後の法改正などの憲法上の義務  209

3 最高裁と国会や政治部門とのダイナミックな関係  210

4 違憲審査の民主的正当性  212

(1)違憲審査は民主主義に反するか  212  (2)新たな理論  213

5 司法積極主義の再評価  216

(1)より厳格な違憲審査の要請  216  (2)最高裁と国会や政治部門との連携  216  (3)違憲性の客観的判断と違憲判決の効力や救済方法との区別  218

第一〇章 要請される制度  220

1 最高裁に求められるもの  220

(1)対話を促進するための手法  220  (2)違憲審査における主張・立証責任  221  (3)私人間の憲法訴訟に対する国の訴訟参加  228  (4)違憲審査における利害関係のある私人の関与  230  (5)統治規定に関する違憲審査の要請  231

2 国会や政治部門に求められるもの  234

(1)立法過程における憲法論議の活性化と質の向上  234  (2)違憲審査における国側の主張・立証責任  236  (3)違憲判決後の法律制定・改正における憲法論議の活性化と質の向上  237

3 国民などに求められるもの  237

(1)一般的要請  237  (2)憲法訴訟の当事者としての要請  239

終章 今そこにある対話  240

参考文献  242

判例索引  249

事項索引  252


著者紹介

佐々木 雅寿(ささき まさとし)

  北海道大学大学院法学研究科教授

1963年札幌生まれ。北海道大学大学院法学研究科修士課程・トロント大学大学院法学研究科修士課程(LL.M.)修了。博士(法学)(北海道大学)。
北海道大学法学部助手・大阪市立大学法学部助手を経て、1991年から2001年まで大阪市立大学法学部助教授、2001年から2007年まで同教授。2007年より現職。
専攻は、憲法学。

 [主要著作]

『現代における違憲審査権の性格』〈単著〉(有斐閣・1995年)
『グローバル化時代の法と法律家』〈共編〉(日本評論社・2004年)
『はじめての憲法学 第2版』〈共著〉(三省堂・2010年)
『判例講義憲法・』〈共著〉(悠々社・2010年)



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