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  精神障害法

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精神障害法

池原毅和 著

3,400円 A5判 400頁 978-4-385-32320-6

精神障害と社会と法の関係を体系的に明らかにした初めての概説書。治療同意、強制入院、個人情報保護、成年後見、自立支援法と総合福祉法、刑事責任と医療観察法など多くの論点を新たな地平から照らし出す。当事者・家族・精神保健医療福祉にかかわるすべての人に最適な画期的なテキスト。

はしがき(抜粋)   目 次   著者紹介

2011年7月20日 発行



はしがき(抜粋)

「精神障害法」という言葉を聞いて、そんな名前の法律はあっただろうかと思われる方も少なくないだろう。「精神障害法」という名前の単行法はもちろん存在しない。「精神障害法」というのは、精神障害に関連した事柄を定める各種の法律を個別法を超えて横断的に観察・研究の対象にしようとする法学分野であるとさしあたり規定することができる。しかし、それは単に国内の実定法の領域にとどまるものではなく、とりわけ20世紀後半から世界的に展開してきた人権思想や障害のある人の権利についての規範の発展の系譜をも視野に入れたものでなければならない。1991年に国連で採択された精神障害者の保護及びメンタルヘルスケア改善のための原則や2006年に国連で採択された障害者権利条約は「精神障害法」の展開に大きな影響を与えている。

それにしても、なぜ「精神障害者法」ではなく「精神障害法」なのか。その答えは本書の中でも論じるが、「障害」という事態は単に個人の心身の内部に生じている出来事ではなく、その人の持っている心身の特性と社会環境の相互作用の中で生じている事態だというのが「障害」についての基本的な理解の仕方となっていることによっている。「精神障害法」は、精神障害という事態の一方の項である個人にも視点を当てなければならないが、もう一つの項である社会環境の側にも視点を当てなければならない。そして、従来の社会や法が社会環境の側の問題にほとんど意識を注いでこなかったことからすると、むしろ、社会環境の側の問題点を吟味していくことが現在の精神障害法にとって重要な課題となっていると言ってよい。その意味で「者」をとって、「精神障害法」と命名することには重要な意味がある。

「精神障害法」を包摂する法領域として他の障害も含めた「障害法」という領域を観察・研究することも重要である。しかし、とりわけ「精神障害法」における個人と社会環境の関係には社会の固定観念や差別意識が根強く作用しており、センセーショナルな事件とその報道過程を通じて形成される歪んだ社会的認知が法制度に大きな影響を与えてきた。公平で公正な観点から現行の精神障害法の総体を検証する場合、固定観念や差別意識、扇情的に影響された社会意識による法の形成と適用の過程を明らかにしていくことが重要である。

「精神障害法」は、インフォームド・コンセントや強制入院の問題のように、従来から精神保健福祉法の範囲でも論じられてきた問題はもとより、成年後見制度、個人情報保護法、医療観察法、障害者自立支援法など21世紀に入って立法化された新たな法律との関係を重要な論点として取り扱わなければならない。また、障害者権利条約は法的能力の平等性(12条)や障害を理由とする差別的自由剥奪の禁止(14条)、インテグリティの保障(17条)などだけをとりあげても精神障害法に衝撃的ともいえる影響を与えずにはおかないものである。さらに、先進諸国を席巻する新自由主義の思潮や福祉分野におけるワークフェアやアクティベーションという「福祉から就労へ」という流れを社会権・生存権の規範的観点からどのように評価して対応すべきなのかも将来の精神障害法のあり方に影響していく問題である。

精神障害法は、性質上、精神医学や精神保健福祉領域の学問・実践との対話が不可欠であり、社会学・社会心理学、政治経済学などの社会科学による知見を基礎とする必要がある。また、法学領域としても精神保健福祉法だけではなく憲法、民事法・刑事法、社会保障法をはじめ諸法の領域さらに法社会学を広く含み、国際人権法をも含めていかなければならない。したがって、精神障害法を確立していくためには、それぞれの分野の専門家の学際的な協働が不可欠であり、本書を一実務家である著者がまとめ上げることには自ずから限界があることは自覚している。むしろ、本書を素材として精神障害をめぐるさまざまな社会的・法的課題を一つの研究・実践領域として多くの関係者の方々の研究と実践が進むことを望む次第である。その意味で、本書について関係各位の忌憚のないご批判、ご意見をいただければ幸甚である。

2011年5月

池原 毅和



目 次

目 次

はしがき

第1編 総論

第1章 精神障害法の意義

I 精神障害法の意義および範囲

1 精神障害法を論じる意義

2 精神障害法の概念と実定法

3 「精神障害者」の定義

4 精神障害法制史

II 精神障害法に関する法思想と社会意識

1 ノーマライゼーション、ソーシャル・ロール・ヴァロリゼーション

2 国際生活機能分類(ICF)──障害の医学モデルと社会モデル

3 完全参加と平等、人間の尊厳、自己決定権

4 精神障害法を動かす社会意識

III 治療的法学(Therapeutic Jurisprudence)

第2章 国際人権規範および憲法上の基本規定

I 憲法と障害および国際人権規範の発展

II 精神障害法の基本的な人権規範

1 精神障害法の基本規範1(人間の尊厳原理と自律権)

(1) 人間の尊厳と自律権

(2) 自発的治療の原則

(3) 身体の自由

(4) 情報プライバシー権

2 精神障害法の基本規範2(法の下の平等)

(1) 平等の一般原則

(2) 医療・福祉における平等原則

(3) 雇用における平等原則

(4) その他の生活場面での平等原則

3 精神障害法の基本規範3
  (労働・地域生活の権利、社会参加とインクルージョン)

4 精神障害法の基本規範4(良質な医療・福祉を受ける権利)

5 精神障害法の基本規範5(手続的権利)

III 私人間での適用関係

第3章 精神障害のある人に対する差別立法と反差別立法

I 差別法と反差別法

II 日本の精神障害法の政治過程と司法過程

(1) 政治過程

(2) 司法過程

第2編 医療と精神障害法

第1章 総説

I 医療における権力構造とインフォームド・コンセントの原則

II 精神医療におけるインフォームド・コンセントの原則

1 インフォームド・コンセントの内容と根拠

2 インフォームド・コンセントの例外

3 治療行為の準則とインフォームド・コンセントの関係

4 治療選択課題の判断能力にかかわる要素

5 インフォームド・コンセントと治療拒否権

(1) 両者の関係

(2) 医療観察法における治療受忍義務

6 コミュニケーション過程としてのインフォームド・コンセント

(1) 決定と決定までのプロセス

(2) コミュニケーションの工夫

(3) 不当な影響の回避とTJ(Therapeutic Jurisprudence)

7 インフォームド・コンセントの個別的課題(病名告知、薬物療法、ECT)

(1) 病名の告知とインフォームド・コンセント

(2) 薬物療法におけるインフォームド・コンセント

(3) ECTにおけるインフォームド・コンセント

第2章 精神医療における患者の自己情報コントロール権

I 自己情報コントロール権

II 自己情報コントロール権の保障と限界

III 自己情報コントロール権と個人情報保護法制

1 個人情報保護法制

2 医療・福祉機関と個人情報保護法制

3 通知・公表、明示原則

4 通知・公表、明示、同意原則の例外

5 カルテ等の診療情報の開示

第3章 強制医療の許否とその限界

I 強制入院・強制通院の許否とその限界

1 強制入院

(1) 障害者権利条約成立前

(2) 障害者権利条約と強制入院に関する人権規範

2 強制通院

(1) 強制通院制度の類型

(2) 強制通院の許否

II 現行法上の強制入院・強制通院

1 精神保健福祉法

(1) 措置入院

(2) 医療保護入院

(3) 移送(34条)

(4) 任意入院(22条の3)

2 医療観察法

(1) 鑑定入院

(2) 入院による医療

(3) 入院によらない医療(精神保健観察)

(4) 医療観察法の医療の特殊性

3 行動制限

第3編 精神障害のある人の経済的、社会的、文化的権利

第1章 障害のある人に関する経済的、社会的、文化的権利

I 障害のある人に関する社会権規定の分節化・敷衍化

II 社会権と人間の尊厳原理との関係

III 経済的、社会的、文化的権利の実現

1 生存権(憲法25条)

2 障害者権利条約に基づく社会権規定の直接適用可能性

3 法の支配のグローバル・ダイナミズム

第2章 経済的、社会的、文化的権利を具体化する法制度

I 具体化された福祉的支援の内容

1 所得保障

(1) 就労所得と所得保障の関連性

(2) 障害年金

(3) 生活保護

(4) その他の所得保障に関連する制度

2 非所得的保障

(1) 健康な生活

(2) 文化的な生活

(3) 労働

(4) 費用負担の原則(応能負担と応益負担)

II パラレル・トラック(社会保障法と障害者差別禁止法)

第4編 成年後見・保護者制度と権利擁護制度

第1章 成年後見制度と保護者制度

I 支援を受けた自己決定と自己決定の能力

II 成年後見制度

1 事理弁識能力(民法7条、11条、14条)

2 法的能力の平等性

3 成年後見人の行為準則

4 成年後見制度と日常生活活動

5 成年後見と医療行為

(1) 問題の所在

(2) 患者本人による治療同意と代諾の法的意義

(3) 成年後見人に治療代諾権は認められるか

III 保護者制度

1 保護者制度の概要

2 保護者制度の問題点と改善のあり方

(1) 問題点

(2) 保護者制度改善のあり方

3 保護者、成年後見人、親族の損害賠償責任

(1) 責任弁識能力(民法713条)

(2) 保護者(精神保健福祉法22条)と法定監督義務者(民法714条)

(3) 成年後見人と法定監督義務者

(4) 親族、成年後見人と不法行為責任(民法709条)

(5) 被害者保護

第2章 精神保健福祉法と医療観察法の人権擁護システム

I 精神障害のある人の権利擁護(アドヴォカシー)の必要性

II 精神保健福祉法

III 医療観察法

(1) 処遇改善請求

(2) 入退院および医療終了

第3章 その他の権利擁護制度

I モニタリング、オンブズパーソン

II 法律扶助制度

III 障害のある人の地域人権審査機関

第5編 刑事事件と精神障害法

第1章 責任能力

I 刑事責任と社会意識

II 精神障害法と刑事責任能力

1 精神障害法の基本原理と刑事責任能力

(1) 刑事責任能力の人権法および刑法上の位置づけ

(2) 責任能力判断における恣意性の排除

(3) 最高裁決定の影響

(4) 責任能力の証明の程度と挙証責任

2 障害者権利条約と期待可能性論

3 医療観察法と責任主義

III 鑑定と黙秘権等の告知

第2章 訴訟能力

I 訴訟能力の意義および根拠

II 訴訟能力の基準

III 訴訟能力を欠く場合の対応

1 訴訟係属

2 訴訟能力を欠く被告人の拘禁と治療

第3章 刑事収容施設内処遇と社会内処遇における精神医療福祉

I 刑事収容施設における精神医療福祉

II 社会内処遇と精神保健福祉

引用・参考文献

資 料

精神障害者の保護及びメンタルヘルスケア改善のための原則(抜粋)

障害者権利条約(抜粋)

国連被拘禁者人権原則(抜粋)

事項索引

判例索引



著者紹介

池原毅和(いけはら・よしかず)
  東京アドヴォカシー法律事務所代表弁護士

※多数者支配的民主主義の中で少数派が法律を梃子にして社会改革をする手法をLegal Advocacyといい、米国では障害のある人たちの自立生活運動の一分野として障害のある人たちが法律家と協働してLegal Advocacyを進めてきた。東京アドヴォカシー法律事務所はその理念を込めて創立したもの。

早稲田大学臨床法学教育研究所招聘研究員、内閣府障がい者制度改革推進会議差別禁止部会部会員、日本弁護士連合会人権擁護委員会障がいのある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会委員、日本弁護士連合会高齢者・障害者の権利に関する委員会精神保健福祉プロジェクトチーム委員

主な著書

  • 「法的能力」松井亮輔・川島聡編『概説 障害者権利条約』法律文化社、2010年
  • 「精神障害者の人権擁護 法律の立場から」松下正明総編集『司法精神医学概論 1』
      中山書店、2006年
  • 「患者・家族から見た触法精神障害者問題」法律時報74巻2号(通巻914号)日本評論
      社、2002年
  • 『精神障害のある人の人権』関東弁護士連合会編・共著、明石書店、2002年ほか


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