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立憲主義・民主主義・平和主義 立憲主義・民主主義・平和主義

浦田賢治 編

10,000円 A5 592頁 978-4-385-32133-X (品切)

日本の憲法学にとって最重要で、しかも持続的課題である標題に取り組んだ共同研究。「人間の尊厳」を根本価値とする現代の立憲主義・民主主義・平和主義の精神を、新たな理念として再構成し、論憲時代におけるゆるぎない道標を示す。

2001年3月20日 発行



●はしがき

 日本国憲法はこれまで50年余にわたり施行され、この国に立憲主義、民主主義及び平和主義という、すぐれて支配的な思想と制度を提示してきた。だが、冷戦後10年を経たいま、国会両院に憲法調査会が設置され、いわゆる憲法論議が始まっている。その背後で進行しているのは、「パクス・アメリカーナ」の枠内で、しかも世界資本主義市場での競争で勝ち抜くために、この国の社会と国家のかたちを抜本的に作りかえる「改革」である。いわゆる政治改革、行政改革、財政・金融改革、福祉・労働法制改革、そして治安法制改革などである。これらはいずれも、日本にとって「失われた10年」といわれる1990年代に強行された。現に司法改革や教育改革がなされようとしている。このなかで、「ソフト・パワー」を構成する立憲主義、民主主義及び平和主義は、言ってみれば断崖絶壁に立たされており、はたして生き延びることができるのか、そうした危機的な状況にある。

 しかしながら視点をかえて、日本国憲法を、第二次大戦の歴史的経験に学び、平和を愛する世界の民衆の声に応えて紡ぎ出された英知の産物として理解するならば、日本国憲法のイメージは自ずから個性的にしてかつ普遍的なものとして、その姿をあらわしてくる。「人間の尊厳」を根本価値とする現代の立憲主義・民主主義・平和主義の精神を、現在及び未来の日本と世界の社会秩序形成にとって、かけがえもなく重要な新たな理念として再構成することは、日本の憲法学にとって持続的課題であることが理解できるのである。

 この文脈で考えれば、立憲主義・民主主義・平和主義の担い手は、原理的におそらく国連憲章の冒頭にいう「われわれ人民」であり、また同じ意味で、日本国憲法前文にいうところの、われわれ「日本国民」である。ちなみに、地球規模で強まる経済の相互依存、地球環境破壊の進行、国際犯罪やテロによる市民的安全への脅威など「世界問題」が出現している。これに対して、国民国家の役割は大いに発揮されなければならないが、他方国民国家の力は事実として相対的に弱まり、したがって国際社会による対応が必要とされている。このためにも、国連は民主的に改革され、力をつけるべきであり、国連の存在意義は今後とも大きいといえる。それとともに、科学技術の異常な発達と利用が、人間の尊厳を脅かしている。例えば、核兵器システムの存在自体がそうである。また遺伝子研究の成果を無責任に用いる技術によって、人間の生命・生活の危険に関わる諸問題が産まれている。こうした問題領域では、社会も国家も、自律的人格者が自己決定することを承認し、「個人の尊重」という憲法価値を擁護することが緊要な課題である。家庭、地域、学校、職場など、各単位社会の行為者が、「人間の尊厳」を侵害する権力の行使を批判し、これに抵抗することは、諸個人が連帯・共同してなすべき今日的な仕事である。総じて、日本を含むアジアという地域においても、市民社会の存在理由は、市民的公共性というものを育んでいくために、ますます大きいといえる。こうした市民的公共性を確保するため市民が自己統治する政治共同体を形成する方向を追求する必要があるのではなかろうか。

 私は、本書に集約された研究成果を公刊することによって、早稲田大学が長年、私と私どもに示された大きな恩恵に対して深甚なる感謝の意を表したい。早稲田大学の特定課題研究は、1992〜93年(共同研究)及び1994年〜97年(個人研究)に及んでいる。私自身の成果についてあえて言及すれば、憲法学界に寄与する点で、まことに忸怩たるものがある。しかしながら、私たちの共同研究の成果は、確固とした財産を学界に残していると考える。この共同研究の成果を生むことができたのは、まずは共同研究参加者全員のお陰である。この意味で参加者各位に感謝したい。また、研究成果をまとめ、原稿を幾度も書きなおすなど、執筆の労をとらえた方々に、心から謝辞を申し述べたい。さらに、本件共同研究に参加しなかったにもかかわらず、編者の要請に応えて研究成果を寄せて下さった方々にも改めて深謝したい。とくに編者の見こみ違いと力不足によって、本書の刊行がこのように遅れたことについて、私は早稲田大学ならびに関係のみなさまにお詫びしなければならない。お許しいただきたいと切にお願いする次第である。本書の刊行に漕ぎつけるまで、当初から企画・編集など事務万般にわたってお世話くださった方は少なくないが、とくに久保田穰氏と元山健氏の名前をあげて、厚くお礼を申しあげる。また、今日まで辛抱強く待ってくださった三省堂の佐塚英樹氏と鷲尾徹氏にも、ここで感謝の意を表したい。

2000年10月31日

早稲田大学法学部研究室にて

浦 田 賢 治



●目  次

はしがき

I 序説

 立憲主義・民主主義・平和主義の諸相……浦田賢治

II 立憲主義

「政治問題の法理」再論――合衆国最高裁レーンキスト・コートの一判決を機に……諸根貞夫
アメリカ合衆国における妊娠中絶をめぐる議論の一断面……小竹 聡
憲法院と一九九三年移民抑制法……今関源成
イングランド革命と立憲主義の生成――大臣責任制の観念の誕生……小栗 実
イギリスにおける閣僚委員会制度と「内閣統治」の現在……宮井清暢
イギリスにおける通信の傍受法制――「一九八五年通信の傍受法」……倉持孝司
立憲主義・制度・自由市場――権利論再考のための覚書……岡田正則
NGOの憲法学――予備的考察……君島東彦

III 民主主義

イギリスにおける立憲主義と民主主義――政治的民主主義の憲法論……元山 健
イギリスにおける放送メディアと選挙過程……小松 浩
イタリアの新しい選挙運動規制法――マスメディア・選挙費用の規制を中心に……高橋利安
アルジェリア政治体制の転換と法――「民主化」から緊急事態体制へ……渡辺 司
ヨーロッパ統合と民主的正統化の諸問題……高橋 洋
名誉毀損と反論権……右崎正博
男女共同参画社会基本法と男女平等(ジェンダー平等)の実現――法による変革の「推進」と「転轍」という観点からの若干の考察……根森 健
外国人の公務就任権……後藤光男

IV 平和主義

学校教育と平和創造の課題――子どもの人間としての尊厳性と体罰問題の考察を通して……船木正文
「人道的介入」の展開とその問題性――日本国憲法の視点から……水島朝穂
日米安保条約の「立法事実」と違憲論拠の構成問題……久保田 穰
平和的生存権の新しい弁証――湾岸戦争参戦を告発する憲法裁判……浦田賢治

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