ことばは人を育て、未来をきりひらく知の源です。三省堂はことばをみつめて135年 サイトマップお問い合わせプライバシーポリシー
三省堂 SANSEIDOトップページ 三省堂WebShop辞書総合サイト Wrod-Wise Web教科書総合サイト ことばと教科
辞書教科書電子出版六法・法律書一般書参考書教材オンラインサービス
書名検索漢字かな著者名検索漢字かな詳細検索
新刊・近刊案内
メディアでの紹介
本の注文
書店様専用
大学向けテキスト
卒業記念
名入れ辞書
品切れのご案内
「ぶっくれっと」アーカイブ
会社案内
採用情報
謹告
三省堂印刷
三省堂書店へ
三省堂書店はこちら
声に出して読めない日本語。
「ほぼ日刊イトイ新聞」
(『大辞林』タイアップ・サイト)
  子どもが法と出会うとき 思春期法学のすすめ

法律書ジャンル別案内


子どもが法と出会うとき 思春期法学のすすめ

安藤 博 著  (品切)

1,800円 四六判 240頁 978-4-385-32316-9

「難しい年頃=思春期」を成長発達の好機ととらえ、子どもが身近な法体験から感じとったことを生きる力に変えてゆく法学習のあり方を分かりやすく提示。法と教育のあいだに横たわる多くの問題を実践的に読み解く。

2009年4月30日 発行

目 次   はしがき   著者紹介



目   次

はしがき

プロローグ 思春期に法と出会う

遠目を失った大人たち/生活の中の法体験を法学習の体験へ/現代社会と思春期の孤立化・社会化/思春期を生きることの保障と法学習の意味

I 思春期と法

1 子どもが育つ法学習

必要が生む “パラダイム転換”/法学習のパラダイム転換/子どもたちが求めている個別的・具体的な「ビフォーアフター」

2 子どもの育成は科学かアートか

臨床の登場/臨床の広がり/大切にしたい子ども臨床の柱

3 難しい年頃をどう支えるか

豊かさと貧しさは対立語なのか/振り返って見えてくるもの/思春期の社会化とコミュニティ・カウンセラーの役割

4 子どもの育ちとネット社会

 チャップリンならどう警告しただろうか/なぜ仮想現実が現実になってしまうのか/機器に変えられる人間関係/アナログ人間を原点にする社会的理解の浸透を/真にリアリティのある関係を構築するために

II 子どもと法

1 自己決定、それは自分を生きること

教師のつぶやき──「近くて遠い」子どもの権利/自己決定権の登場と意義/蚊帳の外か、渦の中か、両極化しやすい子どもの自己決定権/子どもの自己成長発達責任

2 契約、消費、自己管理

「もったいない(MOTTAINAI)」と法律/子どもと生活と法律/契約が持つ育てる力

3 一八歳は大人か

「一人前」は労働に由来する言葉/学生は「大人」をどうとらえているか/「私」を超える視点と行動力を持つのが大人

4 育つ責任、育てる責任

気になる「〜しちゃった」表現/子どもの責任は責任を担えるように育つこと/「つい」と「せい」では子どもは育たぬ

III 人権を問う力

1 「障礙」に学ぶ

盲導犬との出会い/「障害」か「障礙(碍)」か、それとも「障がい」か/知識より感性と自己点検力を

2 人格権は心豊かに生きるため

秘密を盗み、精神を傷つける行為/猫の首に鈴をつける行為か、無分別な暴挙か/自己情報と人格を尊重する意味

3 「赤ちゃんポスト」を授業のテーマに

「赤ちゃんポスト」、1年の概況/制度に対する学生の反応/授業実践のために留意すべきこと

4 児童虐待を学ぶ高校生

おしんの時代と子ども虐待/疑問と学びと新たな課題/虐待理解の基礎知識

IV いじめをのりこえる子どもたち

1 いじめの数字をどう読むか

いじめ数字と社会派推理/数字の動きと人の動き/「認知→対応→解消」のプロセスから見えてくるもの

2 なぜ、いじめは人権問題か

いじめと「目からうろこ」/“人として生き合う”学校生活/いじめを「殺心」ととらえる意味/人権がわが国の弱点となっていないか

3 子どもが使えるいじめ救済制度

リヤカーと社会規範意識/多様な救済と活用される制度/救済と制度の具体的検討

4 「いじめ防止法」を考えてみよう

10年ごとのいじめ撲滅キャンペーン/親密圏における暴力と法の介入/「いじめ防止法」の論点

V 少年非行から深めたいこと

1 非行予防と克服権

非行克服権とエピソード/子どもの非行意識を点検する/非行の危機感を検討する

2 暴力は連鎖する

伝播する心、連鎖する存在/家族の動き、法の動き/被害の実態、連鎖の構造/ポジとネガの逆転現象── 家裁からの報告

3 十代裁判と司法参加

参加の内容を問う/十代裁判を評価する/導入を模索する/学校教育で活用する

4 「感化」と「内省」── 少年院の実践

教養の復権/感化する関係が成立するためには/自分に向き合う力 ── 少年院の処遇から

VI 学校生活と規則

1 ゼロトレランスは毅然たる指導か

ゼロトレランスはリーガルマインドを要請する/“ずれない、ぶれない、ゆずれない”の三ない姿勢/協働化の力

2 マナーと共生社会

規範用語を整理する/法律・ルールの確実な機能がマナーを生かす/生徒指導におけるマナーアップとパブリック学習

3 外見は生徒の内面とどうつながるのか

悪態祭りと割れ窓理論/「服装の乱れは心の乱れ」の今日的意味を問う/制服の着崩しをどうとらえるか

4 生徒指導と“校長力”

なぜ「○○力」なのか/これからの生徒指導、三つの方向/校長の持つ五つの力

エピローグ 「役立ち感」を「変える力」に

子どもを主人公にする大人の知恵/自己肯定感から社会的有用感へ/自分と出会える多様な機会/大人たちの「役立ち感」


はしがき

法と人権の立場から、長く子どもの問題にかかわってきて、いつの頃からか、難しい時期と言われる思春期が、かえって法を学ぶのに最適な時ではないかと思うようになりました。
 意識して、それにふさわしいテーマを選び、深めてみると、意外に多くの発見があり、教えられました。それから「思春期法学」という名で考えることをしてきました。
 社会では、子どもの問題が起こるたびに、思春期の危機的面が強調されます。しかし、だからこそ思春期を学習の好機ととらえる視点が私たち大人には必要ではないでしょうか。

最近は、大人に余裕がなく、子どもの成長発達の視点が失われつつあります。その代わり、性急で荒っぽい議論がされるようになりました。狭隘で硬直した子ども観が力を得ています。しかも、それを受け入れる社会的状況が生じていることを懸念します。
 私は、こういう時だからこそ、しっかりとした子どもの発達観と教育展望を持ち、地道に子どもたちに力を育む実践が求められていると考えます。その一つに法学習もあると思います。
 そのためには法学習の枠組みを変える必要があります。何よりも子どもたち自身が法を育てる主体として尊重されることです。つまり、思春期法学は子どもを育てる法であると同時に、子どもが育てる法なのです。

法と人権は、裁判所の法廷や弁護士の事務所にだけあるのではありません。私たちの生活の中に、一人ひとりの意識と行動の中にあります。子どもたちの成長発達の中にあります。したがって、子どもたちはその実現の主体として、適切な教育を受ける権利を持っています。
 子どもたちは、現代の社会において重要となっている法と人権にかかわるテーマに出会い、身近に感じ、学び、生活の力にする発達の主体です。私たち大人は、その学習を促進するため、できるだけよい教材・資料を提供する責任を負っています。
 子どもを尊重するということは、好き勝手にさせることではありません。大人が責任をもって子どもの成長発達権を保障することです。

本書は、ここ数年、思春期法学を意識して書いた小論をまとめたものです。しかし、といって寄せ集めではありません。いくつかのねらいによって成立しています。一つは、子どもが主体的に学ぶ視点を大切にしていることです。二つは、法が子どもの育成に寄与できるものとしてできるだけ積極的にとらえていることです。三つは、教育実践にヒントとなるものを提供していることです。
 特長としては、テーマと内容に身近さを実感していただけるよう、わかりやすさ、読みやすさを心がけました。教育関係者はもちろん、親、子どもたちにも読んでほしいと思っています。

 子どもたちの育つ力を信頼し、ポジティブにとらえ、そのための具体的・現実的な資料を提示することが、今、大人の責任として必要と思われます。
 本書が少しでもそのお役に立てることになれば、大きな喜びです。

ところで、これまでの学びや実践をまとめる年齢になり、あらためて振り返ると、関心を持ち取り組んだ分野の広さを思います。もちろん本書にもそれがあらわれています。
 刑事法学に籍を置きながら、どこに行くのかわからない私をあたたかく見守ってくださったのは恩師・八木國之先生でした。そして実際に広い学問の世界に導いてくれた三人の先輩がおられます。私が大学院生の頃です。当時は無我夢中でしたが、今になると自分の研究手法の基礎はこの院生時代に培ったと思えます。一見遠回りのようでしたが、急がば回れは研究にもあります。というより、むしろ研究こそ急ぐならじっくり遠回りなのかもしれません。
 社会学に関心をいだき、犯罪社会学に誘ってくださったのは横山実さんでした。教育法学との出会いをつくってくださったのは山岸秀さんでした。お二人とも大学院の先輩です。さらに現実の法とのかかわりを教えてくださったのは、弁護士で日弁連の少年非行と法に関する研究会の先輩・吉峯康博さんでした。この場をお借りし、心からお礼を申し上げます。
 また、これまで私が出会った多くの子どもたち、私の講義を受講し、質問や意見を寄せてくれた学生たちに、心から感謝の気持を表わしたいと思います。

 なお、本書は、私が一時体調を崩したため出版が大変遅れました。にもかかわらず刊行できたのは、日本教育新聞社記者・高橋巨樹さん、同編集部・山下祥子さん、そして三省堂編集部の鷲尾徹さんのお力によるものです。お三人の励ましとアドバイスがなければ完成できませんでした。心からお礼を申し上げます。

二〇〇九年三月一日

安藤 博


著者紹介

安藤 博(あんどう ひろし)

茨城キリスト教大学非常勤講師

 1949年茨城県生まれ
 中央大学大学院法学研究科博士後期課程(刑事法専攻)単位取得満期退学
 2009年3月まで茨城キリスト教大学・大学院教授、非常勤として茨城大学、筑波大学大学院などの講師をつとめた。
 専門分野は、教育と人権、福祉と人権、司法福祉、教育法。
 子どもの権利に関する裁判や市民運動にかかわる一方、親、教師、医師、臨床心理士、福祉の専門家等との連携・交流の中から、教育・福祉に関するさまざまな提言・報告書をまとめてきた。
 社会活動として、日本犯罪社会学会常任理事、日本教育法学会理事、国立教育政策研究所社会実践研究センター調査研究委員、いばらき子どもの虐待防止ネットワーク“あい”代表、茨城県青少年健全育成審議会委員長などをつとめた。
 主な著書として、『子どもの権利と育つ力』三省堂、『子どもの危機にどう向き合うか』信山社、『学校・地域・ボランティア ── 生徒と教師のための福祉教育』茨城NPOセンター・コモンズ、『教育と体罰』(共編著)三省堂、『少年保護と学校教育』(講座「少年保護3」(共著)大成出版社 など。


このページのトップへ