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  憲法判例論

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憲法判例論

小林 武 著  (品切)

3,000円 A5 336頁 978-4-385-32162-2

わが国憲法判例、とりわけ最高裁判例の半世紀の軌跡をふまえて、違憲審査制の特質を明らかにする。憲法判例の「展開」(第1部)、「機能」(第2部)、「周辺」(第3部)を精細に考察した著者積年の研究成果をここに集成。

2002年6月10日 発行

著者紹介 はしがき(抜粋) 目次



●著者紹介

小林 武(こばやし・たけし)

1941年、京都に生まれる
現在、南山大学教授(憲法学)
   法学博士
【主要著書】
『現代スイス憲法』(法律文化社、1989年)
『自治体憲法』<共著>(学陽書房、1991年)
『いま日本国憲法は』<共著>(法律文化社、1992年、新版2000年)
『演習講義憲法』(法学書院、1995年)
『地方自治の憲法学』(晃洋書房、2001年)
『人権保障の憲法論』(晃洋書房、2002年) ほか



●はしがき(抜粋)

 日本国憲法によって導入された違憲立法審査制(違憲審査制)──それが違憲の判断のみを機能とするものでないところからすれば、より正確には憲法適合性審査制と呼ばれるべきであろう──は、半世紀を超える年月を閲して、新世紀を迎えるに至った。そこには、多くの憲法判例、つまり、《憲法とは裁判官がこれが憲法だとするところのものである》という、その裁判官の判断実例が蓄積され、憲法規範の内容を良かれ悪しかれ具体化してきた。そして、それをとおして、最高裁は、統治機構の中での自らの位置を定めるに至ったようにみえる。

 ただ、憲法の最後の番人と位置づけられた最高裁判所が、とりわけ人権擁護の任務を、期待されたごとくに適切に果たしてきたかをみると、検討されるべき点は多い。とくに、最高裁の法令違憲判決が半世紀余の間に、なお十指にも満たないという現実の意味するものは、わが国の法令がそれほどまでに憲法に忠実であることでは遺憾ながらなく、むしろ、最高裁が自らを政治部門の守護者に任じてきたことである、といわざるをえない。つまり、最高裁判例は、違憲判断の消極主義を基本としつつ、同時に、憲法判断それ自体については積極的にとりくみ、もってすぐれて政治的な役割を果たしてきたのである。もっとも、最高裁の五〇余年は、一色で彩られるものでは当然ながらなく、その各時期において相当異なった特色を示しており、それを見極めた上で考察することが不可欠と思われる。

 本書は、右のような意識をもって憲法判例、とりわけ最高裁のそれを分析することをとおしてわが国違憲審査制の特質を明らかにしようとするものである。もとより、その作業をよく成し遂げるには、判例のみならず、それをもたらす要因としての司法行政、さらに政治動向そのもの、そして、学説や世論、裁判運動との関連など、戦後史全体をとらえる仕事を必要とする。本書は、それを不可欠と認識しつつもその本格的考察を今後の課題とし、ひとまず、戦後憲法判例の展開に焦点を合わせた作品とした。ひきつづき、わが国裁判所の憲法判断構造の分析とともに、違憲審査制史のトータルな把握につとめたいと思う。なおまた、私が違憲審査制研究にとりかかったその本来の対象であるスイス憲法訴訟(Verfassungsbeschwerde)制度についても、一二五年ぶりの全面改正により二〇〇〇年から施行されている新連邦憲法をふまえて、できるだけ早く一冊の書物にできれば、と考えている。

 本書は、わが国憲法判例の半世紀余の経緯を追い、現状を明らかにして将来の可能性を探るべく、その「展開」、「機能」および「周辺」を省察する三部構成とした。まず第一部では、冒頭のIで、違憲審査制の軌跡と課題を概述して、本書全体の輪郭を示した。その上で、 II および III の両章を、一九八〇年代以降の憲法判例およびその今日的段階の特徴を分析することに充てた。そして、 IV において、新世紀の憲法訴訟の展望によせる私見を述べた。

 ついで第二部では、政治部門との関連における違憲審査の機能を、判例史に即した形で論じている。 V は、行政事件の分野での最高裁判例の果たす役割を、またVIは、立法権との関係に焦点を合わせつつ、わが国憲法判例のもつ問題性をやや包括的に検討したものである。VIIは、小品であるが、本書のテーマにかんする私の考察視角を幾分なりとも整理して示したものとして収録した。併せてVIIIでは、最高裁憲法判例の機能を理解するための一助とすべく、その判断手法の特徴をやや微視的に描いた。

 そして第三部では、主に、憲法判例の形成に影響を与え、ないしそれと響き合う要因のいくつかをとりあげた。すなわち、IXの統治過程、Xの憲法訴訟論、XIの裁判運動がそれである。残る二つの章では、文字どおり「周辺」を扱っているが、XII は、外国(この場合スイス)の公法研究者に日本違憲審査制を紹介した際の稿である。末尾のXIII は、わが国憲法訴訟理論史に期を画した大著への、大学院生であった時期の無謀を顧みない小さな書評であるが、それでも研究の出発点にあるものとして、ここに収めることにした。

 本書は、学会報告、すなわち、公法学会、全国憲法研究会、憲法理論研究会、民主主義科学者協会法律部会などにおける報告を中心とした既発表の論文を基にしている。それぞれに必要な補訂を加えて体系性をもたせることにつとめたが、発表時の原型をとどめている。そのため、とくに、叙述の重複部分が残り、また参照文献は当時の版のままとしたこと等をおことわりしたい。これらの論文を掲載していただいた各誌・出版社に厚く御礼申し上げる。

 右のうちで、一九七七年一〇月の全国憲法研究会(全国憲)学会報告(本書第 V 章)は、私にとって忘れがたいものである。それは、私が日本違憲審査制にとりくむ契機でもあり、そこでの憲法訴訟研究の姿勢は、のちに「批判的憲法訴訟論」と括られる流れの驥尾に付すものともなった。この学会のシンポジウムは、私のものは別にして、報告・討論の参加者・内容とも、その充実ぶりは圧巻といえる(ジュリスト六五七号にその全体が収められている)。私は、実のところ、初めての学会報告に、緊張がその極に達していたのであるが、それを温顔をもって救って下さったのが恩師・山下健次先生である。先生は、全国憲が恒例としている学会前の予備研究会に、在京メンバー以外でただ一人、京都から足を運んでそっと加わって下さっていた。アカデミズムへの門を、遅れてやってきた菲才に開いて下さった先生は、二〇〇一年三月一六日にご壮健で古稀を迎えられた。ご恩に報いるには稚拙に過ぎる作品であるが、お許しを乞うて、本書を山下先生にささげたい。

 また、今は亡き芦部信喜先生からは、このシンポジウムにおいて、当時全国憲代表として、情と理を兼ね備えた心暖まる励ましを受け、その後、数々の大著を刊行の度にご恵贈下さることでご鞭撻を頂戴した。本書を、深い感謝をこめて偲ぶよすがとさせていただきたいと思う。──この学会こそ、私でも学界の片隅に居ることが許されるのかも知れないとの念をわずかなりとも抱くことのできた機会であった。改めて、これからの精進を心に誓う。

  二〇〇二年四月

小林 武



●目  次

第一部 憲法判例の展開

I わが国違憲審査制の軌跡と課題

 はじめに──テーマの限定

 第一節 違憲審査制性格論議の原況と現況
  一 制度発足時の論議と今日的見直し
  二 憲法裁判制導入の提唱をめぐって

 第二節 違憲審査の軌跡と現段階
  一 判例に即した違憲審査史
  二 一九八〇年代以降の憲法判例と近時の変容

 第三節 違憲審査と応答するもの
  一 憲法訴訟の理論
  二 憲法裁判運動の可能性──むすびにかえて

II 一九八〇年代の憲法判例の形成──「矢口=草場コート」にみる

 はじめに

  一 司法に期待される機能
  二 「矢口=草場コート」の憲法判例

 第一節 議会との関係における最高裁判決の問題性
  一 「立法の放任」による政策形成
  二 憲法判断における過度の積極性

 第二節 最高裁判決における議会像と議会の最高裁判決への対応
  一 最高裁の抱懐する「合理的立法者」像
  二 最高裁判決に対する議会の態度
 むすびにかえて

III 最高裁憲法判例の今日的局面

 はじめに

 第一節 憲法判例の現段階
  一 最高裁のみせた変化の兆し
  二 「新局面」をもたらしたもの──感想的私見

 第二節 「新局面」後の判例の推移

 第三節 最高裁の今後──むすびにかえて

IV 二一世紀憲法訴訟の展望によせて

 はじめに──世紀を跨る憲法改革

 第一節 「憲法調査」の中の違憲審査制

 第二節 憲法判例の「新傾向」に映される新世紀像

 第三節 民主司法の理念と違憲審査制改革論

 むすびにかえて──憲法訴訟論への言及

第二部 憲法判例の機能

V 行政事件と最高裁判所

 はじめに

 第一節 判例の動向と傾向
  一 司法判断の限界
  二 行政手続
  三 行政上の損害賠償および損失補償
  四 その他の分野

 第二節 憲法訴訟理論のいくつかの論点をめぐって
  一 判断開始の要件──原告適格論
  二 判断の対象と基準──「二重の基準」論
  三 判断における事実認識──立法事実論、「歴史」
  四 判断の限界──立法裁量論
  五 権利の保護・救済手段の創造

 第三節 最高裁判所像の検討──とりわけ「石田コート」以降について
  一 判例理論の「緻密」化現象
  二 複合的な判決姿勢

 むすびにかえて

VI 憲法訴訟と立法権──憲法判例の再検討のために

 はじめに──課題と対象

 第一節 テーマに即して概観した憲法判例史(一九八〇年までの)

 第二節 立法権との関係における審査手法の特徴
  一 若干の整理と検討対象の限定
  二 立法裁量論の現状と限界
  三 規制タイプによる審査基準論の問題性

 第三節 憲法判例の機能(主として立法権との関係における)
  一 立法作用に対する直接的影響──立法の制定改廃
  二 政治過程・社会過程に対するインパクト──憲法判例の法創造・政策形成機能

 むすびにかえて──違憲審査権行使の望ましいあり方にふれて

VII 立憲主義的司法権の役割

 はじめに

 第一節 立憲主義的「司法権」観念の歴史性
  一 近代立憲主義と司法権
  二 現代立憲主義と司法権
  三 「司法権」観念の変容
  四 分析道具としての「近代型」・「現代型」

 第二節 わが国司法権の政策形成作用とその問題点
  一 今日の憲法判例の政策形成作用の特徴
  二 憲法判例のもつ法創造・政策形成のインパクト
  三 政策提示型判決を司法に期待すべきか──むすびにかえて

VIII 最高裁の憲法判断手法の特徴──手続上の論点にかんして

 第一節 憲法判断手法をめぐる問題の概観

 第二節 憲法訴訟提起の要件
  一 訴訟要件としての原告適格(訴えの利益)
  二 訴えの対象

 第三節 憲法判断を求めるための要件
  一 違憲の争点を提起する適格
  二 「原審における主張判断の経由」の原則

 第四節 「憲法判断回避の準則」
  一 憲法判断の法律判断への付加
  二 限定解釈による憲法判断の回避

 第五節 司法判断の限界
  一 裁量行為
  二 統治行為その他

第三部 憲法判例の周辺

IX 統治過程の中の憲法判例

 はじめに──課題と限定

 第一節 最高裁憲法判例の推移と今日的段階
  一 憲法判例史把握の視点
  二 憲法判例の各時期

 第二節 八〇年代判例の特質とその若干の起因
  一 政治部門との協働関係の追求
  二 政治過程と司法権

 第三節 憲法判例分析と憲法訴訟論──むすびにかえて

X 憲法訴訟論の意義と限界

 はじめに──憲法訴訟論「盛況」の光と影

 第一節 わが国憲法訴訟論の特徴
  一 「神学的」違憲審査状況下での憲法訴訟論の導入と展開
  二 憲法訴訟論への批判

 第二節 憲法訴訟論と憲法判例
  一 裁判所による対応
  二 憲法訴訟論の今日的課題にふれて

 むすびにかえて──憲法訴訟論の展望のために

XI 裁判運動と憲法判例

 はじめに──「裁判運動」とは

 第一節 戦後裁判運動のすがた──憲法事件にかんする裁判運動を中心に
  一 「裁判運動」の位置と成立条件──戦前の経験にふれて
  二 戦後裁判運動の原型としての松川裁判運動
  三 戦後憲法裁判運動の軌跡をめぐって

 第二節 裁判運動と裁判所および立法・行政
  一 裁判運動への司法行政の対応
  二 裁判運動の判決への投影
  三 裁判運動の政治過程・社会過程への投影

 第三節 裁判運動による学説へのインパクト
 むすびにかえて

XII 外国への日本違憲審査制の紹介

 はじめに──問題の提起

 第一節 日本違憲審査制の概観

 第二節 日本における憲法判例理論の展開
  一 時期区分
  二 現段階の憲法判例理論

 第三節 憲法判例の日本的特徴

 むすびにかえて──検討のまとめ

XIII 書評 芦部信喜著『憲法訴訟の理論』(有斐閣・一九七三年)

判例索引
事項索引

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