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  犯罪被害者保護法制解説 第2版

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犯罪被害者保護法制解説 第2版

髙井康行・番 敦子・山本 剛 著

2,500円 A5判 240頁 978-4-385-32267-4

犯罪被害者等基本法の制定以降の犯罪被害者の権利の確立と支援の拡充のためのさまざまな法改正を、詳細に分かりやすく解説した。新たに設けられた被害者参加制度や損害賠償命令制度等も踏まえた最新改訂版。

2005年11月20日 初版 発行
2008年 10月10日 第2版 発行

目 次 ※別ウィンドウで表示
はじめに   改訂にあたって
著者紹介



目 次 ※別ウィンドウで表示


はじめに

1 犯罪被害者が置かれていた状況

 犯罪被害者は、長い間、社会からも法制度からも忘れられ、放置されてきた。被害者は犯罪の当事者でありながら、刑事手続においては単なる参考人、証人として蚊帳の外に置かれ、捜査内容についても刑事手続等についても情報から遮断され、援助もなく孤立し、精神的苦痛や経済的な負担に苦しんでいた。

 ヨーロッパにおいては、20世紀半ばに犯罪被害者に関する論文が次々と発表され、その後、犯罪被害者についての調査・研究が進み、70年代以降、欧米各国において被害者の補償制度の制定がなされ、さらに、アメリカの「NOVA(National Organization of Victim Assistance)」、イギリスの「VS(Victim Support)」、ドイツを中心とした「白い環(Weisser Ring)」などの大規模な民間支援組織による被害者支援活動が始まった。

 日本において犯罪被害者の権利およびその支援が議論されるようになったのは、ごく最近のことである。1974(昭和49)年の三菱重工ビル爆破事件を契機として、1980(昭和55)年に「犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)」が制定されたが、本格的な被害者支援は始まらなかった。1995(平成7)年に地下鉄サリン事件が発生したが、そのような悲惨な事件が契機となってようやく被害者に目が向けられるようになり、翌年には警察庁が被害者対策要綱を策定し、被害者対策室が設置された。同時期、民間でのカウンセリングを中心とした精神的(心理的)支援活動が始まり、1998(平成10)年には、全国被害者支援ネットワークが発足し、翌99(平成11)年5月、「犯罪被害者の権利宣言」を発表した。

 犯罪被害者には、被害発生直後からそれぞれの段階に応じた、精神的、経済的、医療的、法的支援等さまざまな側面からの支援が不可欠である。それにもかかわらず、日本の支援体制は極めて貧弱なものであった。それどころか、犯罪そのものによる被害に加えて、社会や周囲の人々、マスコミ、捜査関係者や裁判官、弁護士らの無理解な心ない言動によって、被害者はしばしば二次被害を被った。このような被害者の過酷な状況は、ようやく社会の目が被害者に向けられ、被害者も声を上げるようになるまで知られることはなかった。

 

2 犯罪被害者関係の法整備

 2000(平成12)年になると、犯罪被害者に関する法整備が進んだ。

 同年5月には「ストーカー行為等の規制等に関する法律」および「児童虐待の防止等に関する法律」が、2001(平成13)年4月には「配偶者からの暴力の防止及び被害者保護に関する法律(ドメスティック・バイオレンス防止法)」が制定された。

 刑事手続に関しても、犯罪被害者の保護という視点から「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律(刑訴法等改正法)」および「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(犯罪被害者保護法)」のいわゆる犯罪被害者保護二法が2000(平成12)年5月に成立した。刑事司法手続の外に置かれていた被害者が、事件の当事者として刑事司法に接近することが認められるようになった。検察庁では、すでに始められていた事件の処分結果等を通知する「被害者通知制度」とともに、出所情報の開示も認めるようになった。

 経済的支援に関しては、2001(平成13)年には前述の犯給法が「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」として改正され、支給対象が拡大され、支給金額も増額された。また、同法は、一定の要件を満たす民間支援組織を犯罪被害者早期援助団体として指定し、警察から被害者情報の提供等を行うという規定を新設し、被害者に対する犯罪発生直後からの直接支援(危機介入)を可能とした。

 

3 民間支援組織と支援の限界

 このように、日本における最近の犯罪被害者支援の進展はめざましいものがあるが、しかし、あらゆる方面においていまだに支援が不十分であるのも明確な事実である。

 全国被害者支援ネットワークに加盟する民間支援組織は2005(平成17)年9月1日現在40団体に増えたが、改正犯給法に基づく早期援助団体として指定されたのは、社団法人被害者支援都民センターをはじめ8団体にすぎない。どの支援組織も資金不足にあえいでおり、直接支援を広く進めることは財政面においても人的な面においても困難な状況である。

 また、犯給法による支給金が増額されたといっても、もともと犯給法の性格は見舞金であることから、その支給にも限界があり、他に被害者に対する経済的支援制度がないことから、医療費や生活費に苦しむ被害者に対する問題の解消には至っていない。被害者が陥りやすい心的外傷後ストレス障害(PTSD)を診断できる医師も少なく、精神医療の面でも体制は不十分である。刑事司法上、被害者は当事者ではない、という事実も変わってはおらず、被害者の刑事司法手続へのアクセスにも限界があり、被害者の不満も強い。

 

4 犯罪被害者等基本法制定

 50年に一度、あるいは100年に一度といわれる司法制度改革が進められ、各論点ごとに検討会が設置され、公的弁護、裁判員制度、司法アクセス等について議論され、裁判員制度の実施、日本司法支援センターの設置等が決まった。しかし、司法制度改革においては犯罪被害者問題は取り上げられず、各種設置された検討会においても、被害者の権利あるいはその支援については議論されなかった。被害者の権利の実現、支援の拡充は、2000(平成12)年ごろの法整備をもって、一段落という状態になるかとも思われた。

 しかしながら、2003(平成13)年7月、犯罪被害者自身が、その悲惨な状況および刑事手続における疎外された地位に対する不満を、直接首相に訴えたことを契機として、事態が急転回した。

 自民党の司法制度調査会は、2004(平成16)年2月、犯罪被害者問題を検討するチームを立ち上げ、被害者および関係諸機関、支援団体、学者等からのヒヤリングを精力的に行い、同年6月、「犯罪被害者に対する総合的施策のあり方に関する提言」をまとめた。同提言では、犯罪被害者の権利を謳い、基本法の制定および総合的支援の必要性を強調した。同提言をもとに、自民党は議員立法を目指して基本法案を作成し、与党内の調整、民主党との調整の後、同年12月1日、犯罪被害者等基本法が成立し、2005(平成17)年4月1日施行された。

 基本法は、前文において、犯罪被害者が置かれてきた状況および支援の必要性等を謳い、基本理念として、「すべての犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」(3条1項)と規定した。犯罪被害者の権利は、憲法上の明文がなく、従前議論は分かれていたが、基本法によって権利として明確に示されたことは意義深いものがある。さらに、基本法において、犯罪被害者に対する支援は、国、地方公共団体および国民の責務であることが規定されたことから、今後の犯罪被害者支援の進展が期待される。

 また、犯罪被害者が望んでいた刑事手続への参加については、「……刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずるものとする。」(18条)と規定された。

 基本法の施行を受け、内閣府において犯罪被害者等施策推進会議が設置され、犯罪被害者等基本計画案が検討され、同年8月、基本計画骨子案として公表され、意見募集がなされた。基本計画案については、さらに推進会議で議論が重ねられ、本年12月、閣議決定される予定である。

 基本法の理念が真に実現されるか否かは、今後の具体的施策の検討を待たねばならない。犯罪被害者の悲願だった基本法が、その成果を発揮することを願わずにはいられない。

 

5 本書について

 本書は、犯罪被害者支援活動に携わっている弁護士が、犯罪被害者等基本法を中心として、犯罪被害者に関する法律、法改正等について網羅的に論じたものであり、関係諸機関の犯罪被害者に関する施策等についても触れている。また、実際の支援活動に根ざした視点から、今後さらに改善・充実が図られなければならない問題点にも論及している。

 なお、本書においては、条文の解釈以外の記述中「犯罪被害者」あるいは「被害者」と記載した場合には、原則として遺族も含むものとする。

 本書は、「第3章 犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」は山本剛が、その他の章は番敦子が執筆し、髙井康行が全体を監修したものである。

 本書が、犯罪被害者の権利の確立および犯罪被害者支援の一層の充実・進展の一助になれば、誠に幸甚である。

 

2005(平成17)年9月

  髙井 康行
  番 敦子

 


改訂にあたって

 本書初版刊行後、2005(平成17)年12月に犯罪被害者等基本計画が策定され、被害者のための具体的施策が講じられるようになった。そして、2007(平成19)年には被害者参加制度および損害賠償命令制度等が、2008(平成20)年には少年法や犯給法が改正された。犯罪被害者等基本法制定後の犯罪被害者の権利の確立および支援の拡充にはめざましいものがある。

 このような状況を鑑み、本書を改訂することとし、現時点までの新制度の創設および法改正等を盛り込んだ。改訂にあたっては、山本剛が新制度の草稿を担当し、番敦子が改訂作業を行い、全体を髙井康行が監修した。

 今後とも犯罪被害者のための施策が推進され、拡充されることを願ってやまない。

 

2008(平成20)年9月

  髙井 康行
  番 敦子
  山本 剛

 

著者紹介

髙井 康行(たかい・やすゆき)

弁護士(元検事)

早稲田大学法学部卒業
1972年4月 検事任官
      東京地検、岐阜地検、青森地検、浦和地検等において主に捜査を担当
1990年4月以降 福岡地検刑事部長、東京地検刑事部副部長、横浜地検特別刑事部長などを務める。
1997年6月 東京高検刑事部検事を最後に退官後弁護士登録(第一東京弁護士会)
政府の司法制度改革推進本部 裁判員制度・刑事検討会委員
同推進本部 公的弁護制度検討会委員
内閣府「支援のための連携に関する検討会」構成員
日本弁護士連合会 2005年度、2006年度犯罪被害者支援委員会委員長
[主要著書]
『選挙関係犯罪(シリーズ捜査実務全書)』(共著、東京法令出版)
『警察オンブズマン』(共著、信山社)
『情報をめぐる法律・判例と実務』(共著、刑事法研究会)
『法曹の倫理と責任』(共著、現代人文社)他

番 敦子(ばん・あつこ)

弁護士

東京外国語大学大学院外国語学研究科修士課程修了
1994年4月 弁護士登録(第二東京弁護士会)
日本弁護士連合会 犯罪被害者支援委員会副委員長
同連合会 日本司法支援センター推進本部委員
第二東京弁護士会 犯罪被害者支援委員会委員長
内閣府「民間団体への援助に関する検討会」構成員
法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会委員
最高裁判所刑事規則制定諮問委員会幹事
東京都 建設工事紛争審査会特別委員
[主要著書]
『犯罪被害者等基本計画の解説』(共著、ぎょうせい)
『Q&A ドメスティック・バイオレンス法児童虐待防止法解説』(共著、三省堂)
『Q&A DVってなに?』(共著、明石書店) 他

山本 剛(やまもと・ごう)

弁護士

慶應義塾大学法学部卒業
2002年10月 弁護士登録(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会 犯罪被害者委員会副委員長
日本司法支援センター 犯罪被害者支援課専門員


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