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教育法学と子どもの人権 教育法学と子どもの人権

市川須美子・安達和志・青木宏治 編

3,000円 A5 304頁 978-4-385-31444-X (品切)

教育原理の実現を支える法規範を究明してきた教育法学の到達点を明らかにし、現代的課題に迫る意欲作。

1998年 3月31日 発行



●執筆者(五十音順。*は編者)

青木 宏治* (あおき・こうじ)    高知大学人文学部教授
安達 和志* (あだち・かずし)    神奈川大学法学部助教授
市川 須美子* (いちかわ・すみこ)  獨協大学法学部教授
小野田 正利 (おのだ・まさとし)   大阪大学人間科学部教授
片山  等 (かたやま・ひとし)    宮崎大学教育学部教授
川口 彰義 (かわぐち・あきよし)   愛知県立大学教育学部教授
喜多 明人 (きた・あきと)      早稲田大学文学部教授
交告 尚史 (こうけつ・ひさし)    神奈川大学法学部助教授
成嶋 隆 (なるしま・たかし)     新潟大学法学部教授
野村 武司 (のむら・たけし)     山梨学院大学法学部助教授
世取山 洋介 (よとりやま・ようすけ) 新潟大学教育学部助教授



●はしがき

 わが国の教育法学界を一貫して名実ともにリードしてこられた兼子仁教授が、本年三月をもって東京都立大学を定年退職されることとなった。本書は、この兼子先生の定年ご退職を記念する論集として構想されたものであるが、執筆者の自由論題による記念論集とは異なって、今日の時点で教育法的に重要とみられるテーマを編者が協議して選定し、系統的な内容編成をしている(各論題の全体的な位置づけについては序論を参照されたい)。

 今日の学校生活をめぐって、違法な教師体罰や、細かすぎる生活規制の校則に反した生徒への懲戒処分、生徒間の陰湿ないじめによる被害などの多発が指摘されるようになって久しい。こうした子どもの深刻な人権侵害的事件への文部省や教育委員会の対応は、当面の応急的な対策マニュアルづくりやスクール・カウンセラーの配置、 "心の教育" の強調など多分に緊急避難的な措置にとどまり、いまだ原因の十分な究明と根本的な解決策の提示には至っていない。また、国のレベルで進行しつつある現下の「教育改革」論議にも、教育人権や子どもの人権をふまえた学校改革という視点は必ずしも明確に示されていないように思われる。

 他方で、一九九四年に政府が批准した国連・子どもの権利条約は、子どもの人間的な成長発達権と市民的自由の主体性を世界的規模で確認するものであり、子どもに人権主体性を承認することが今や国際常識となったことを示している。この条約の精神と規定内容は、わが国の現行教育法制を解釈・運用していく際の国内法的指標としても十分に生かされていかなければならないであろう。また、一九八○年代に入って以来、全国各地で制定され出した情報公開条例と個人情報保護条例は、国民の知る権利や情報プライバシー権の保障を自治体の一般行政について制度化したものであるが、近時、これらの情報条例を通じて教育委員会や学校の保有する教育情報の公開・開示等が進められつつあることが注目される。これは、従来とかく閉鎖的と批判されてきた教育行政や学校教育の現場に子どもの情報人権の保障が及ぼされるという画期的事態にほかならない。

 子どもの人権をめぐる状況がこのように多面的に展開している中で、教育の現実の担い手である教師が、右のような直面する問題を率直に受け止め、声を出す元気を失っているようにみられるのは大変に残念なことである。“危機に立つ教育”に立ち向かう教師の実践を励まし、現在の教育制度を、子どもが自ら学び、成長発達していくことを真に保障しうるしくみへ改革していくために、教育法学が果たすべき役割はますます重要性を増しているといえよう。戦後の憲法・教育基本法のもとで新しく現代法の分野として開拓された「教育法」は、教育という人間的営みの性質にそくして教育制度に特有な法論理とその体系を究明する学問として成立した。戦前から戦後当初にかけては行政法各論としての教育法規の解説が主流をなしていたが、一九六○年代以降になって、教育行政学、教育思想史等の研究成果に学びつつ、教育法社会学的な研究をも含みながら、国民と教師の教育の自由、子どもの学習権などの教育人権論を基盤とする「教育法学」が形成された。その特徴は、法学(憲法・行政法・民法など)と教育学などの関連領域との学際性にあるが、なかでもその中心をなす解釈法学としての教育法学においては、教育条理解釈すなわち教育の条理(事物の性質にそくしてあるべきものと認められる法論理)にそった現行法の解釈が重視される。

 日本教育法学会の創立(一九七○年)とともに、教育法の研究は多面的かつ組織的に展開され、比較法研究を含めて相当な成果をあげるようになってきたといえる。しかし、学会創立時にすでに活躍されていたいわば第一世代の研究者に対して、当初期待された大学の法学部における「教育法」の講座化の停滞ともあいまって、法学系の第二世代・第三世代の研究者が顕著に減少しているという事実も軽視することができない。八○年代以降の特に教育法解釈学の領域における理論状況にも、こうした問題が多分に反映しているように思われる。憲法・教育基本法の施行から五○年を経て、二一世紀の新時代へ向けて混迷を深める教育の現実に展望を切り開くべき時期にあたって、教育法学の理論水準をいっそう高めていくことが求められよう。

 本書の編者である私ども三名は、いずれも都立大学大学院で兼子先生から直接に教育法の手ほどきを受けた者であり、その学恩にいささかなりともお応えするとともに、右に述べたような時代状況の認識から、この機会に今後の教育法学の理論的課題について多少とも新たな問題提起を含む内容の一書としたいと考えて本書の企画にあたった。各論題の執筆は、これまで直接・間接に兼子先生の指導または影響を受けてきた比較的若手の研究者のうち、法学系の研究者にやや重点をおいてお願いした。編者の無理な注文にもかかわらず、快く執筆をお引き受けいただいた執筆者各位、そして、本書の趣旨および企画に賛同され、終始暖かく励ましてくださった三省堂編集部の方々に厚く御礼を申し上げたい。

1998年1月26日

市川 須美子
安達 和 志
青木 宏 治



●目  次

序論 教育人権と子どもの人権    編者

 一 教育の自由と教育法学
二 教育法学と子どもの人権
三 教育への権利と参加・選択

第1章 教育の自由の現代的展開

1 最高裁学テ判決以後の教育判例の展開――教科書判決を中心として    成嶋 隆

 はじめに

 一 学テ判決までの軌跡〔概略〕
二 学テ判決
三 教科書判決における学テ判決の援用
四 その他の教育判例と学テ判決
おわりに

2 分権改革と教育の地方自治    安達和志

 はじめに
一 戦後五〇年と教育の地方自治
二 地方分権の推進と教育分権改革への動き
三 教育における地方分権の課題

第2章 子どもの市民的自由と学校 1 学校教育措置訴訟と子どもの人権    市川須美子

 一 子どもの人権裁判における学校教育措置訴訟
二 学校教育措置と教師の教育権
三 学校教育措置訴訟の分類
四 教育評価過誤訴訟の論点
五 障害者平等権訴訟の可能性
六 市民的自由訴訟の展開

2 公立学校における信教の自由と宗「教」的中立性    片山 等

 はじめに

 一 信教の自由
二 国家と宗教
三 憲法、教育基本法審議における宗教教育・宗「教」的中立性
四 政教分離原則に関する目的・効果基準
五 信教の自由と公教育における宗「教」的中立性
六 アメリカ合衆国における信教の自由、政教分離
むすびにかえて

3 アメリカ公立学校と市民的自由――公民教育法における修正第一条法理の展開    世取山洋介

 はじめに

 一 Barnette-Tinkerラインの意味――リベラリズムに基づく教育法制<像>
二 Barnette-Tinkerライン批判の文脈――「公民教育法」の基本的枠組みと二つの流れ
三 八〇年代における三つの連邦最高裁判例
四 Tinker判決の現在

第3章 子どもの人権侵害と救済 1 子どもの個人情報と開示請求    野村武司

 一 問題の所在
二 子どもの評価情報の本人開示
三 子どもの個人情報の親による開示請求
むすびにかえて

2 体罰・いじめ事件の処理と防止のための制度的工夫    交告尚史

  はじめに
一 国の取り組み
二 地方公共団体の取り組み
三 総合的考察
おわりに

3 学校災害問題の現状と課題    喜多明人

 はじめに
一 学校災害救済制度の現状と課題
二 学校災害防止と安全基準の課題

第4章 教育への権利と選択・参加 1 教育法における権利・自由の存在形態    青木宏治

 一 課題への視点
二 教育法の展開のなかでの権利・自由
三 権利・自由にもとづく教育法への改革
四 自治型教育法の発達の課題

2 義務教育制度と学校選択の権利    川口彰義

 はじめに
一 公教育の制度原理としての教育(選択)の自由
二 義務教育制度と学校(教育)選択の権利
むすび

3 教育参加制度の展望――日本とフランス    小野田正利

 はじめに
一 最近の教育行政改革の動向と教育参加論
二 フランス教育参加法制とその理論
三 教育参加の法制化の必要性と慎重性
おわりに

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