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フィールド・ノート 子どもの権利と育つ力 フィールド・ノート 子どもの権利と育つ力

安藤 博 著

2,400円 A5 264頁 978-4-385-32178-X (品切)

「子どもの生きる力」を育むために、いま何ができるのか。いじめ、非行、虐待、不登校など具体的な事実から、大人・地域・学校は何を学ぶべきか。実践への手がかりをわかりやすく提示。

2002年 10月 1日 発行



●著者紹介

 茨城キリスト教大学生活科学部人間福祉学科教授、 日本教育法学会理事、子どもの人権研究会世話人
 (地域での関わりについては、あとがきを参照)  1949年茨城県生まれ
 中央大学大学院法学研究科博士後期課程(刑事法専攻) 単位取得満期退学
 専門分野は、子どもの人権、教育と人権、福祉と人権
 担当科目は、教育と人権、司法福祉論、ボランティア論 (学部)、教育法学特論・演習(大学院)。
 主な著書に、『教育と体罰』(共編著)三省堂、『少年保 護と学校教育』(共著)大成出版、『学校・地域・ボラン ティア』茨城NPOセンター・コモンズ発行など



●まえがき──私の問題意識と研究姿勢

1 本書の背景

 作品が生まれるには背景がある。作品によっては、それを書いた方がより読み手の理解を得られるであろう。だが、論文集や研究書は、それを書くことはあまりしない。むしろ捨象し、淡々と書いてあるから論文集、あるいは研究の書というのかもしれない。

 しかし、本書については、それらに少しふれさせていただきたい。一つには、二〇〇〇年五月、元「水戸子どもの人権を守る会」(現在は「子どものための市民オンブズパースンの会)代表の上村徳子さんが亡くなられたことである。私が、人権問題の大切さを現実との関わりで学んだ方である。昨年、追悼文集『ひと粒の麦』を、ともに人権問題に取り組んだ方々と一緒に出版した。それは、私自身の一つの区切りでもあった。本書をまとめたいと思った動機の一つに上村さんへの感謝がある。

 いま一つは、私なりの研究方法も意義があると思うようになったからである。私は、研究者の使命は論文にあると考えていた。しかも、できるだけそれは時代の課題に応えられるものでなくてはならないと思い、意識的に書いてきた。さらに、それは、少しでも現実の変化に関わることができればもっといいと思っていた。どちらかといえば、私は論文を書くことには積極的であったが、本にすることには消極的だった。ところが、研究者にはいろいろな手法があり、また私の方法もそれなりに意味があるのではないかと示唆を受けた。とくに若い研究者にとっては意味があるとの励ましも受けた。これも本書をまとめたいと思った動機であった。

 そこで、まえがきで「私の問題意識と研究姿勢」を書かせていただくことにした。

 2 地域に関わり、地域に学んで

 本書は、私が机の上で作ったものではない。後述するように、いわば足で書いたものである。その意味でフィールド・ノートである。各論文は子どもの問題に関わっている人たちに支えられ、またその人たちに向けて整理したものである。できるだけわかりやすく、子どもの理解と実践への手がかりとなるよう意識してまとめた。したがって、子どもの問題に取り組んでいる方々にとっては実践へのヒントとなりうるものが書かれていると自負する。

 前述したように、私はもともと人との関わり、地域との関わりから、テーマを考え、深め、文章を書いてきた。もちろん自分の学問的欲求や問題関心がないわけではないが、どちらかといえば、さまざまな関わりから必要とされ、要望されて、文章を生み出してきた。したがって、一つ一つの文章に思い出があり、また人々の顔も浮かんでくる。その意味で本書は、私一人の力でできたものというより、地域の人との共同の、いわば“共創”による作品である。

 私の研究の原点は「事実に学ぶ」ことにある。もともと犯罪と非行に関する法と政策(刑事法学)を学んだが、学校に発生した体罰やいじめの事件・裁判に関わることで、問題を具体的かつ広く考えるようになった。とくに子どもの人権に関わる弁護士との勉強は私にとって刺激的だった。一九八六年の『少年法通信』二七号(日本弁護士連合会)には、夏期合宿への参加記を寄せた。その中に次のような記述がある。

 「資料が実に多い。弁護士にとり常に直面するのは、具体的事実であり、はじめに事実ありきが原則であるので当然であろう。資料にもとづきいくつか報告が出されると、次第に共通性が見えてきた。克服すべき課題が提示されている。弁護士が関わる個別事件の人権救済の特殊性が、実は現代の子どもの人権侵害という普遍性を内在していることがわかる。」

 いま読み返しても、私の原点がここにあるように思う。

 私の学問・研究の場は地域と子どもたちにある(具体的にどういう関わりかについては、「あとがき」に詳しいのでお読みいただきたい)。事実にぶつかり、それをどうとらえ、どう解決するのか、そこに自分の課題があると考えてきた。そのため、地域に積極的に関わり、さまざまな人に出会い、その思いを知り、提起される課題に取り組んできた。活動の中からテーマを深め、地域に還し、また課題を発見してきた。したがって、その方法は、「事実をくぐる」という表現の方が的確なのかもしれない。

 私の歩みは遅い。事実に関わり、テーマを確認し、紆余曲折を経て、やっと何かが見えてきて、まとめたい、あるいはまとめなくてはならないと思うからである。

 3 学生からの刺激

 学生との関わりにおいても、学生たちが持っている事実や疑問を大切にしてきた。学生の提起する課題は、それ自体が子どもの問題を解明するテーマであった。そのため学生の声を聞き、アンケートをよくとらせてもらった。大切なのは、学生から学ぶ姿勢とそれを持ち続けることであった。学生の素朴な疑問と率直な意見は刺激的であり、深めていく力となった。

 昼夜間開校制の大学院では、院生から多くのことを学ぶことができた。とくに社会人の方たちが提起する現場の事実に対しては、すぐに明快な回答を出せず呻吟した。現職の教員、校長退職者、元児童福祉施設長、養護教員、児童相談所の職員と顔ぶれは多彩である。

 大学院での学びを、教育や福祉現場に仕事を持つ院生は、現場の課題を抱えながら、即解決策は得られなくともヒントを得る機会となり、リフレッシュになると言ってくれる。それは教員にとっても厳しい関係であるが、私の研究の意欲はかき立てられた。昼夜間開校制の大学院は、院生と教員のいわば“共学”であると思う。

 非常勤として行っていた介護福祉士養成校では、学生が一か月間の実習後だいぶ成長している姿に考えさせられた。そして、体験の内面化がさらに教育側の課題として問われていることを実感する。看護学院の生徒からは、守秘義務とプライバシーの実質的な意味について現場の視点、地域の実態から鋭い疑問が提示される。

 私の学問・研究の環境はめぐまれていると感謝している。

 4 地方か地域か

 さらに、私の研究にとってありがたいのは茨城という地の利である。茨城は私の問題関心と研究の手法にとってありがたい地であると思っている。学会、研究会は東京に近い。それが、事実と考えを深めるよい機会となっている。

 いま、中央に対し地方という言葉が使われている。私は、地方という言い方はおかしいと思う。なぜなら、生活している住人にとって大切なのは、自分の足下、地域である。その意味で、これからは、「地方の時代」ではなく「地域の時代」である。自分の住んでいる地域の個別の課題に向き合うことは、こんにちのわが国の普遍的な課題を包含していると考えている。

 5 各章・各論文の意味

 本書は、読者が関心を持たれたどの文章から読んでいただいても理解していただけるようになっているが、ここでは少し各論文の特徴について述べておきたい。

 プロローグでは、本書の全体に関わる内容を凝縮している。

 第1章は、新しい子どもの課題と対応をとりあげている。Iの「子ども虐待の本質問題」は、虐待防止のネットワークの立ち上げに関わる中で考えさせられたものである。 II の「子どもの『自立』と『地域親』」は、青少年の健全育成に関わりながら、こんにちの社会に即して自立をどう理解するのか、どう育てるのか、実践を強く意識してとらえてみた。実践へのヒントを得ていただけるものと確信する。

 第2章は、教育を切り拓くために、とくに子ども・生徒に関して書かれている。Iの「法律学習と“市民の視点”」は、思春期だからこそ法律を学ぶよい時期であるとの視点から、どういう力が大切なのかの問題を提起した。 II の「子どもの人権と自己決定」、 III の「子どもの責任をどう考えるか」の文章も、子どもが育つための実践に結びつく視点を出した。通常、責任はネガティブにとらえられがちであるが、ここでは成長発達というポジティブなとらえ方をしている。

 第3章は、教育を切り拓くために、教師に向けてまとめたものである。Iの「学校における危機管理」は、教育実践に引きつけて、教師に求められている力を明らかにした。 II の「教育紛争と解決」は、人気コミックの『家栽の人』に描かれた教育紛争を法的に分析したものである。 III の「学校教育と被害」は、日本被害者学会で報告したものに加筆した。被害者学から学校教育を対象にした論文としては最初のものであろう。

 第4章は、いじめをテーマとしている。Iの「いじめと心の被害」は、あるいじめ裁判に関わった際に裁判所に提出した意見書の一部である。いじめがいかに子どもの名誉・精神的価値を侵害するのかを検討した。とくに裁判官にいじめの本質の理解を求めたかった。 II の「いじめ事件と学校教育」は、いじめ事件の紛争化過程の基本的課題を整理し論じたものである。 IIIの「いじめと少年事件」は、生徒と教師のための少年法という観点から両者の関わりをわかりやすく述べた。 IV の「いじめ対策の法的検討」は、いじめに関わる主要な対策を真に有効なものとするためにはどのようにすべきかを追究した。

 第5章は、学校教育と生徒の非行をテーマとしている。Iの「生徒指導のパラダイム転換」は、従来の生徒指導に対して問題提起したものである。 II の「学校教育と生徒非行」は、だいぶ前のものであるが、そこで展開されている内容はこんにちでも生きていると考える。 III 「少年法は何を求めているか」は、少年法の基本的な考え方を発達の視点に立ってわかりやすくまとめた。 IV の「少年法『改正』の動向と課題」は、今次の改正点を教育の視点から考察したものである。

 重複する記述もあるが、執筆時の問題意識を大切にしながら、できるだけ整理した。

 さまざまな仕事を抱え、集中的に時間をとることのできない私が、本書をまとめることができたのは、ひとえに三省堂編集部の粘り強い励ましと的確なアドバイスによるものである。心からお礼を申し上げたい。

 二〇〇二年七月一五日

安藤 博



●目  次

まえがき──私の問題意識と研究姿勢

プロローグ──生活の中で育む人権実現の力

第1章 子どもの権利・自立と現代社会

I 子ども虐待の本質問題──子育ての意味を考える

 はじめに

 1 実態への理解

   1 懸念される虐待論の行方
   2 虐待数をどう見るか

 2 子どもの権利への理解

   1 虐待とはなにか──とくに「しつけ」と関連して
   2 子どもの存在の特性
     (1)子殺しが親子心中となる国──「心中(しんじゅう)」と「心中(しんちゅう)」
     (2)「親が一番つらいはず」という意識と免責
   3 子どもの権利の特質
     (1)子どもの発達環境権
     (2)世代連鎖と過剰反応の危険性
   4 子どもは自らを育てていく主体

 3 対応への理解

   1 虐待の本質──子ども保護の先進国ではない日本?
   2 発見と危機介入と援助──子どもを救えない構造
   3 子育て観と子育て支援
     (1)セラピー化重視の危険と社会政策の視点の欠如
     (2)求められている情報の「人間化」
     (3)子どもを育てる地域文化の創造

II  子どもの「自立」と「地域親」──子育ち・子育て、地援・結援

 1 21世紀を生きる子どもたちの力とは

   1 自己決定と自己責任、しかし…
   2 子育ち、子育て、支援の力
   3 子どもたちの発達課題

 2 子育ての社会化と地援・結援

   1 スローガンとしての「社会化」
   2 成人式騒動──求められているのは、セレモニーかイニシエーションか
   3 「親父をいつか越えたい」──身近なモデルと手応え感

 3 自立とは何か

   1 見えていた「一人前」
   2 見えにくいこんにちの自立
   3 中退は自分探しの途中の一コマ

 4 大人の後姿と前姿

   1 子どもの成長に必要な四つの「し」
   2 大人になくなった「ひ・け・し」

 5 「地域親」(コミュニティ・ペアレント)のすすめ

   1 育つため、育てるために大切なこと
   2 大人の主体性、行政の主体性

第2章 教育を切り拓くために(1)──子どもたちへ

I 法律学習と“市民の視点”──「思春期法学」のすすめ

 はじめに──事件のたびに強調されるしつけ・規範・厳罰
 
 1 生活事実と発達課題との乖離

 2 なぜ「思春期法学」なのか

   1 法の体験と法学の経験
   2 定義と特徴
   3 父母との連携

 3 思春期を生きることの保障

 4 学校生活と法律学習

   1 思春期法学をどのように学ぶか
   2 社会要因と発達実践の峻別
   3 学校における生徒主義の厳しさ
   4 思春期法学と体験の意味

 おわりに

II  子どもの人権と自己決定──校則・不登校を課題として

 はじめに

 1 子どもの自己決定

   1 「保護」とは何か
   2 なぜ自己決定なのか
   3 子どもの自己決定をどのように理解するか
   4 自己決定と誤解
   5 自己決定とインフォームド・チョイス

 2 校則問題──「保護と教育」から「学習と援助」へ

   1 校則と日本人の法意識・法観念
   2 校則における人間像

 3 不登校──「学校価値」から「学習価値」へ

   1 不登校問題の本質は社会の学校観にある
   2 「受け皿」「バイパス」という表現に学校中心意識がある

 おわりに

III  子どもの責任をどう考えるか──「育つ責任」の保障

 1 子どもの責任の誤解

 2 権利と責任の関係

   1 成長発達上の責任
   2 子どもの責任と法律

 3 責任の学習性と形成性

   1 役割負担において責任を学ぶ
   2 学校教育と責任学習
   3 子育てと子どもの責任

第3章 教育を切り拓くために(2)──教師たちへ

I 学校における危機管理──問われている力は何か

 はじめに

 1 見る力、洞察する力

   1 危機管理を通して見なくてはならないこと
   2 学校教育において見なくてはならないこと

 2 育つ力、育てる力

   1 生徒と危機管理──主体の思想
   2 子どもたちの日常生活と危機管理──学習のテーマとして学ぶ

 3 開く心、拓く力

   1 父母への説明と学校の危機管理──共有と共援の関係の形成
   2 学校を閉じるのではなく、教育という主体性を貫く──学校事件とマス・メディア

 4 つながる力、つなげる力

   1 自己完結という「責任意識」からの脱却──連携力とは
   2 学校のできること、できないこと──子ども虐待から

II  教育紛争と解決──『家栽の人』から

 1 問題を解決するのは本人自身

 2 学校と教育事件・紛争

   1 「教育を法紛争化させない意識」
   2 「地域紛争」としての学校事件
   3 学校を相手に訴訟を起こすということ
   4 問われている学校観

 3 体罰事件・裁判・判決

   1 体罰とは何か
   2 求められる教師の懲戒の力──受容と許容の違い
   3 「学校裁判」の特徴
   4 「沼浸け体罰」裁判で問われているもの
   5 教育紛争解決手続きと教育弁護士

 4 校則・不登校と教育・人権・法

   1 校則と生徒の参加権・法律学習
   2 不登校──成長発達権から問い直す

III  学校教育と被害──被害者学から見えてくるもの

 はじめに

 1 学校教育におけると被害の分類と関係性

   1 被害の概念
   2 被害の関係
   3 被害の分類
   4 学校教育に「被害」の概念を入れることの難しさ
   5 被害性の認識の弱さ

 2 学校教育と被害の諸問題

     (1)生徒指導に関わる問題
     (2)学校事故における対応の問題
     (3)プライバシーの侵害
     (4)教育情報の独占
     (5)教科教育における問題
     (6)生徒指導における「抱え込み」の被害

 3 こんにちの学校教育をめぐる「新たな被害」問題

   1 生徒の被害
     (1)不登校
     (2)いじめ
     (3)高校中途退学
   2 教師の被害

 4 学校教育事件の紛争化と被害

   1 事件の隠匿化──組織的加害性
   2 学校教育問題を問いにくくしている意識と構造──「被害者バッシング」
   3 裁判における被害
   4 マスコミの取材・報道と被害

 5 学校教育における被害と被害者の学習

   1 育成されなかったものとしての「消極的被害」──規範意識の不形成
   2 生徒の発達と「被害者」

 6 学校教育に求められているもの

   1 被害の連鎖性・重層性──局面的把握と構造的把握
   2 過重な教師像からの解放
   3 法的責任の限定化・明確化
   4 開かれた学校づくり
   5 学校教育における被害学習プログラム
   6 親の学校観の転換/123

第4章 いじめと法と裁判

I いじめと心の傷──いじめ裁判の意見書から

 はじめに

 1 いじめを理解する視点

 2 子どもの心に立脚したいじめの定義

 3 いじめにおける救済と回復と発達保障の論理

   1 被害者生徒の救済
   2  いじめと被害
     (1)加害者側の事実の認容と謝罪
     (2)いじめとトラウマ
     (3)いじめが阻害する自己肯定感の成長と人間関係の形成
     (4)証言の環境形成とサポート体制
   2 精神的侵害・心の傷と子どもの名誉権
     (1)成長発達権と精神的侵害、名誉毀損
     (2)学習権と精神的侵害、名誉毀損
   3 いじめと親
     (1)被害者生徒の親
     (2)加害者生徒の親

 おわりに──いくつかの問題提起

II  いじめ事件と学校教育

 はじめに──「鹿川君から大河内君へ」の10年間の意味

 1 いじめの背景──「だれがいったい弱者なのか」

 2 いじめの定義

   1 警察庁・文部科学省──何が重視されているか
   2 法務省──いじめはどのような人権を侵すか

 3 いじめと事実の確保、認定過程

   1 イメージとしてのいじめ
   2 いじめと数字
   3 少年事件としてのいじめ
   4 学校事件としてのいじめ

 4 学校と教育事件・紛争

   1 事件化・人権化の論理
   2 「地域紛争」としての学校事件
   3 教育事件は「不祥事」か?
   4 学校の危機管理能力と紛争解決手続き

 5 いじめをめぐる法律上の課題

   1 いじめと教育法
   2 いじめと少年法・児童福祉法
     (1)理念・目的
     (2)事件
     (3)調査・審判
   3 民法上の責任
     (1)加害者少年の親
     (2)教師・学校

 おわりに

III  いじめと少年事件

 はじめに

 1 いじめ論はいじめを解決するか──なぜ、司法のアプローチは弱いか

 2 司法といじめの本質──いじめという言葉を使うことで見えてくるもの、見えなくなるもの

 3 少年事件として、司法の評価を受けることの意味

 4 いじめ事件における「解決」とは何か

 5 いじめ事件・学校教育紛争と教育弁護士

   1 子どもの代理人としてのチャイルド・ロイヤー
   2 いじめ事件における教育弁護士の機能

 6 いじめ少年事件と少年司法過程における発達支援のシステム

   1 審判に付すべきものは点か線か──犯罪類型としての行為か、行為の全容としてのいじめか
   2 少年審判は、いじめの本質を明らかにできるか──大河内清輝君事件に学ぶ
   3 少年審判の決定書──個別機能か、社会的機能か

 7 いじめ事件と児童福祉法──親と子の共同課題

IV  いじめ対策の法的検討

 はじめに

 1 「子どもの人権」への誤解──「ある万引き事件」から

 2 子どもの人権の統合的保障

 3 いじめ事件の展開

 4 出席停止措置をどう理解するか

   1 学校教育法26条の趣旨
   2 児童虐待における危機介入(crisis intervention)の場合
   3 緊急的対応と教師の臨床的指導力

 5 いじめと「教育弁護士」──隠蔽と裁判の間で

     (1)いじめ紛争の問題点
     (2)「教育弁護士」の役割

 6 第三者機関──「いじめ問題対応委員会」のあり方

   1 委員会の性格と構成
   2 設置機関
   3 活動内容

 7 子どもの発達権保障としての親権法(教育権)の実践

第5章 学校と非行と法

I 生徒指導のパラダイム転換

 はじめに

 1 何が危機か──「消費型」非行の拡がりと深まり、そして「勉強と引き換え」のつけ

 2 スクール・カウンセリングかスクール・ポリスか、それともスクール・ロイヤーか

   1 学校に法を、生徒に法律学習を
   2 転換か継承か──文部省「問題行動」協力者会議報告書

 3 「人権受難」の時代?

   1 主体化と学習と育成の視点
   2 「非暴力・対話」という名の子どもへの圧力
   3 学校の危機管理と持ち物検査

 4 「懲戒」実践による育成の視点

   1 規範の学習と子どもの責任
   2 「懲戒」の意義──「自分の行為の事実から逃げない」

 5 連携という「連帯無責任」

   1 連携のための条件
   2 家庭と地域の課題
     (1)子育て観を転換する
     (2)地域を具体的にとらえる

II  学校教育と生徒非行

 はじめに

 1 ある告訴事件から

 2 学校の閉鎖性と事件・紛争解決能力

   1 生徒の言い分
   2 閉鎖性の背景
   3 閉鎖性の克服

 3 生徒の規範意識と法と人権の教育

   1 告訴と学校
   2 人権教育の諸要素

 4 教育の「限界論」と「局面論」

 5 学校と少年司法機関との連携

   1 学校の主体性
   2 連携に求められているもの

 6 学校事件の取材と報道

   1 「教育報道規準」の必要性
   2 教育論の一貫性

III  少年法は何を求めているか──その基本思想と理念

 1 少年育成の構造と法理

   1 少年の自己変革
   2 非行のある少年の権利

 2 何が少年を育てるのか

   1 自己との闘争
   2 少年のつぐないと責任

IV  少年法「改正」をめぐる動向と課題──子どもサポート法の可能性

 はじめに──私の疑問

 1 社会は何を合意したのか──私の立場

   1 成長発達=立ち直りサポート法としての少年法
   2 教育法学と少年法・少年法「改正」問題──技術と本質をどう考えるか

 2 学校教育と少年法

   1 少年法への不知・誤解・歪曲──学ぶ権利の意味とは何か
   2 思春期法学としての少年法学習

 3 つくりだされる危機感──少年たちのほんとうの危機

   1 危機感情の増幅と行方
   2 非行の実体をどうとらえるか──数字は客観的で解読は主観的か

 4 「改正」における特徴と論点──少年も変わり、法も変わる?

   1 改正過程における民主主義──「子の声、民の声」はどこに
   2 「改正」点の問題
     (1)合議制──自己変革の原点である「心を開き、自分を語る」ということ
     (2)検察官関与──rareはruleを生むか
     (3)観護措置期間の延長と検察官への抗告権の付与──子どもの“時間(とき)”は大人と同じか
     (4)被害者に対する審判の結果等の通知──被害者に寄り添う制度の充実

 5 21世紀少年法をどう構築するか

   1 子どもサポート法に徹底できるか
   2 少年法「改正」と子ども観──少年法は国際化したか



●あとがき

 地域で仕事をしていると、私自身について二つの質問を受ける。「専門は何ですか」ということと「テーマがどうして広いのですか」ということである。

 確かに専門分野は研究者のテーマを知る手がかりになるが、私の経験でいえば、地域の機関(民間であれ行政であれ)は専門としている分野にテーマを持ってくることはもちろんであるが、同時に、研究者の姿勢、地域との関わり方に対してもテーマを持ってくるのである。

 地域に関わっていると、実にさまざまな課題を突きつけられる。そして、それに応えようとすると、自ずと専門の枠、従来の考え方を越えざるをえない。

 こんにちの課題は複合している。対応も当然学際性・協働性が必要となる。研究者にとってまず大切なのは、テーマに付き合う誠実さとそこから学びとろうとする意欲である。

 実際、私がどのようなことに、どのような立場で関わり、学んできたか、「まえがき」からだけではなかなか理解が難しいと思われるので、具体的に知っていただくために少し書かせてもらいたい。

〈子どもの人権〉

 子どもの人権研究会(世話人)では、弁護士、家裁調査官、教師など、現場の方々との議論が私の認識を深めてくれた。

 水戸子どものための市民オンブズパースンの会(代表)では、いつも子どもに対する思いを強く受けとめることができた。いばらき子どもの虐待防止ネットワーク“あい”(代表)では、とくに医師、臨床心理士と福祉関係者から多面的な見方をいただいた。

〈青少年問題〉

 茨城県青少年問題協議会(会長代行)、茨城県青少年健全育成審議会(委員長)では、ここ四年間二つの報告書の作成に関わった。なかでも調査部会では、報告書作成のために委員全員が主体的に討議し、調査し、執筆を分担してきた。また、調査部会に青少年の方々に参加していただき、議論・調査・執筆に加わってもらった。私のわがままを許していただいた女性青少年課には大変感謝している。

 さらに、茨城県青少年教育施設検討委員会(委員長)では、具体的実践的にハードとソフトについて討議を開始し、そこでも柔軟な子ども観について刺激を受けている。

〈福祉教育、ボランティア〉

 茨城県防災ボランティア検討会(会長)では、阪神淡路大震災をきっかけとして防災とボランティアについて考える機会を得た。体験から引き出された提言が説得力を持っていた。茨城県社会福祉協議会福祉教育あり方検討委員会(委員長)では、これからの福祉教育に関する報告書を作成し、現場(学校と社会福祉協議会)の成果と課題を知ることができた。

〈子どもの福祉〉

 こんにちの子育ちと子育ての問題と施策については、茨城県エンゼルプラン策定委員会(委員長)、日立市子どもにやさしい街づくり推進会議(会長)、茨城県地域子育て支援体制づくり推進委員会(委員長)、茨城県社会福祉審議会児童処遇部会(委員)に関わり、多くの出会いの中で、具体的な問題提起を受けることができた。

〈高齢者福祉〉

 茨城県身体拘束ゼロ作戦推進会議(会長)では、人権の立場から参加しているが、先駆的な取り組みをされている事例から、私の人権の考えと同じ理解を得ることができて嬉しかった。すなわち、そこにあるのは「はじめに人権ありきではなく、これでよいのだろうかという疑問から出発し、取り組みの過程で人権を学習し、自分のものとして行く」という理解である。

 今後も地域の課題につきあいながら、自分の研究を深めていきたいと考えている。

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