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  自治体の政策創造

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自治体の政策創造

青山 佾(やすし) 著

2,600円 A5 288頁 978-4-385-32298-8

高度情報化社会における政策創造研究の意義を説く。総合計画、危機管理などの政策創造の課題を明らかにしつつ、住宅問題、ホームレス、防災訓練など具体的な論点と、実践的な都市政策・まちづくりのあり方を提示。

2007年 9月20日 発行

はしがき 著者紹介 目 次



●はしがき

 私は、都庁勤務を終えたとき、その後の人生は、明治・大正・昭和の日本をつくった人々を小説のかたちで描くことに使おうと思っていた。大久保利通、山県有朋、児玉源太郎、榎本武揚、黒田清隆などについて、資料を集め構想も練っていた。並行して、新しい時代を担う人たちと政策の勉強もしていきたいと願っていた。

 そんなとき、明治大学から、公共政策大学院をつくるので参加しないかという話を頂いた。現職時代、現場における具体的な政策決定にあたって関連ある基礎学問や原理原則の重要性を痛感していた私の血が騒いだ。誰かを教えようという気持ちはない。誰かとともに学ぼうという気持ちが強いのである。1年間の浪人生活を経て、明治大学大学院ガバナンス研究科の設立に加わり、教員生活を始めることになった。東京大学工学部都市工学科にも非常勤講師として通うようになった。

 私の父と母は、戦後労働組合運動等のため、志半ばにして教員生活をやめている。もしかすると二人の未練とか因縁のようなものが私に影響していたかもしれない。

 公共政策大学院を開設してみると、自治体の首長・議員、国や自治体の職員、会社員、市民活動団体のリーダーなどで、勤務や活動を続けながら政策の研鑽をしたいと思う人々が意外に多いことがわかった。多くの人がこの大学院に集まった。いずれも、これからの日本を担う逸材である。

 この数年間、私は彼らと政策の議論を重ねてきた。互いに仕事をもつ身である。議論はときに休日や深夜に、あるいは正月休みに行われた。彼らとともに、あるいは一人で、国内外の多くの都市を訪ね、多くの人と議論した。訪問先はニューヨークやロンドンから、ソウル、北京まで、世界に及んだ。

 ジョージタウン大学ビジネススクールのデニス・クィン教授やピエトラ・リボリ教授、ロンドン市環境政策の責任者ディビッド・ハッチンソン氏、ニューヨーク市民活動家のロザンヌ・ハガティ氏、同じくニューヨークの市民派弁護士フレデリック・フォード氏、ハーバード大学ケネディスクールの院生たち、アメリカからの訪日自治体議員団など、私たちが関心をもつ分野で活躍する人たちを大学に招いて意見を交換した。

 そのなかで、市場化と公共関与、社会的包容力(ソーシャル・インクルージョン)、新しい自治のかたち(ガバナンス)、少子化対策、都市の危機管理、容積率と都市景観、都市の魅力など、従来から問題意識を抱いていたテーマについて多くのことを学んだ。これら多くの課題に対する私たちの共通の姿勢は、いかにして具体的な政策を創造していくかである。本書は、いわば彼らとともに私が学んだ記録である。

 私は、その都度得られた知見を、『月刊ガバナンス』(ぎょうせい)、『地方自治職員研修』(公職研)、『都政研究』(都政研究社)、『ガバナンス研究』(明治大学大学院ガバナンス研究科)、東京新聞、産経新聞などに書いてきた。

 本書は、これらを合体すれば出来上がると当初は軽く考えていた。しかしこの考えは甘いとすぐにわかった。月刊誌の連載は、その都度、一定の結論を出さなければならない。そのため、相互に重複した記述も多い。これらを整理していくと、新たに加筆すべきことも次々と生じてくる。こうして、本書は、連載した個別の原稿はほとんど原型をとどめないほどまでに改修されることになった。

 この間、私は、三宅島の生活支援や東京のホームレス対策、防災士養成、消費生活研究所などの市民活動や、荒川区、墨田区、浦安市、御殿場市、中野区、品川区、大田区、文京区、千代田区、神奈川県、など多くの自治体における実際の政策創造に関わってきた。東京電力、全日東京アカデミーなど民間の経済活動、社会資本整備審議会、東京地方社会保健医療協議会など政府関係の仕事、八王子学園都市大学、神奈川工科大学、日本自治体危機管理学会、明治大学危機管理研究センター、東京市政調査会など教育研究関係の活動にも関わらせて頂いている。日程調整は大変だが、いずれも自分の知見を形成するにあたって血肉となっている。

 私たちの大学院に集う人たちは、修士の資格をとれば目的を達するという人たちではない。絶えず自らの政策を研磨して社会に貢献したいという志をもっている。だから2年か3年で課程を修了しても、そのあとも通ってくる。そのための受け皿のひとつが都市政治フォーラムである。修了した人たちが自主運営をしている。この人たちが伸びていくと、日本の社会が変わる。本書を都市政治フォーラムに集う人たちに捧げたい。

  2007年8月 ロンドン、オリンピック予定地ストラッドフォードにて
青山 佾



●著者紹介

青山 佾(あおやま・やすし)

1943生まれ。
1967年、東京都庁経済局に入る。中央市場・目黒区・政策室・衛生局・都立短大・都市計画局・生活文化局等を経て、高齢福祉部長、計画部長、政策報道室理事等を歴任。
1999年〜2003年、東京都副知事(危機管理、防災、都市構造、財政等を担当)。
現在、明治大学大学院教授(2004年〜)。
[専門] 自治体政策・都市政策・危機管理・日本史人物伝
[主な著書等]
『小説 後藤新平』〔ペンネーム:郷仙太郎〕1997年、学陽書房
『行政マンの新戦略ニューストラテジー』〔ペンネーム:郷仙太郎〕1999年、ぎょうせい
『東京都市論』2003年、かんき出版
『高齢者のためのいい病院』2004年、かんき出版
『ロンドンプラン――グレーター・ロンドンの空間開発戦略』(ケン・リビングストン編)〔監訳〕2005年、都市出版
『大災害・テロを生き抜く!1億人の防災ハンドブック』〔監修〕2005年、ビジネス教育出版社
『東京都副知事ノート――首都の長の権力と責務』2007年、講談社 (文庫)



●目  次

 はしがき

序 現代の公共政策

 1 高度情報化時代の公共政策
 2 市場化と公共関与の問題
 3 第三の分権化、第四セクターの時代

第1部 政策創造総論

第1章 市場化と公共関与

 1 建築確認偽装事件の教訓
 2 政府の失敗・市場の失敗
 3 市場化原理主義を捨てよ

第2章 NPM(新しい行政経営)とガバナンス(協治)

 1 NPMと地域自治
 2 市場化に公共がどう関与すべきか
 3 地域の多様な実施主体にこそNPMの未来がある
 4 ガバナンスとは何か――市民と政府の関係は縦から横へ
 5 社会的包容力もガバナンスの論点に

第3章 政策創造の時代

 1 制度・思想・政策
 2 政策とは何か
 3 政策の表現形式
 4 政策の形成過程
 5 政策の調整過程
 6 政策創造の新しい手法
 7 政策創造と市民参加
 8 政策創造と自治体計画

第2部 政策創造の課題

第1章 総合計画の使い方

 1 計画はつくるものではなく使うもの
 2 メリハリをつけてその自治体ならではの計画を
 3 抽象論や制度論は避けて市民が読みたくなる計画を
 4 新たな時代の総合計画の機能

第2章 拡散から集約への政策転換

 1 まちづくり三法改正の意味
 2 コンパクトシティを目指す
 3 その都市の特性を生かす

第3章 コンパクトシティ

 1 ヨーロッパの空間計画
 2 アメリカのスマート・グロース

第4章 市民運動との連携

 1 前例のない新しい試みは市民運動から
 2 なぜ行政による実施ではなく市民運動団体なのか
 3 力をつけてきた日本の市民運動

第5章 CSR(企業の社会的責任)

 1 なぜCSRが問題となるのか
 2 自治体はCSRをどう考えればよいか

第6章 少子化対策は国策として総合政策で

 1 フリーター解消など若者の所得水準向上が必要
 2 児童手当の充実と保育・教育費の税額控除
 3 保育は福祉政策でなく国策として実施すべきだ
 4 多様な働き方と婚外子差別の解消
 5 危機感をもって取り組まないと経済も社会も崩壊する

第7章 観光振興

 1 観光ビジネスの重要性
 2 観光政策として何が重要か

第8章 危機管理における統合と分離

 1 ニューオーリンズでは堤防より教育が重要
 2 情報システムの場合は分散が主流

第3部 政策創造の論点

第1章 容積率制度はこれでいいか

 1 容積率制度がほころび始めた
 2 もともとは絶対高さ制限だった
 3 人々は建物の高さにこだわる
 4 地区ごとにあらかじめ街並み形成のルールと基準を決めておくべきだ

第2章 特別養護老人ホームはまだ足りない

 1 介護保険法改正の柱は筋力トレーニング
 2 認知症性高齢者グループホームや在宅サービスの充実はどうなったか
 3 特別養護老人ホームの待機者が減らない
 4 介護保険、医療保険、年金の関係を整理すべきだ

第3章 住宅問題は解決したか

 1 量的には確保したが防災、遠距離通勤など質的には低水準
 2 転換を迫られる公営住宅政策

第4章 被災者に対する生活支援はこれでよいか

 1 本当に避難所運営が自治体の最重要事項なのか
 2 現金給付は慎重に

第5章 コンプライアンスをどう考えるか

 1 情報の取り扱いの適否が組織の命運を制する
 2 コンプライアンスのための3つの方法

第6章 商店街繁栄の条件

 1 歩ける商店街
 2 座れる商店街
 3 夜遅くまで利用できる商店街

第7章 地球温暖化対策の問題点

 1 京都議定書の説得力
 2 省エネルギー化など納得のいく、地域の発展にもつながる温暖化対策を
 3 消費地自治体は電源構成の問題にも関心を

第8章 図書館改革

 1 民間委託でサービス向上
 2 日本の文化にとって複数購入の横行は危険な傾向
 3 地域特性に合った特色ある図書館を

第9章 ホームレス対策の基本

 1 ホームレスに欠けているのは住宅だけではない
 2 パート労働を含めて1年程度の職業訓練をするべきだ
 3 そもそもホームレス行為を禁止するべきだ

第10章 防災訓練はこれでよいか

 1 動員訓練
 2 事例演習
 3 図上訓練

第11章 教育改革の論点

 1 習熟度別授業や学力テスト結果学校別公表
 2 小学校からの英語教育
 3 不登校
 4 学校図書館

第4部 都市政策論

第1章 容積率と都市景観

 1 容積率とは
 2 なぜ容積率によって建築を規制するのか
 3 容積率の規制と緩和、使用状況
 4 容積率緩和の経緯
 5 高いビルが建つのは容積率が高いからでなく公共スペースをつくるため
 6 建築制限は容積率を基本にするのではなく街並み形成を基本に
 7 街並みをそろえるためにどのような制度があるか

第2章 21世紀の都市像

 1 2012年オリンピック招致でロンドンはなぜパリに逆転勝ちできたのか
 2 フランスでは都市近郊に原子力施設
 3 最先端技術活用の省エネ都市像発信を
 4 コンパクトシティとは高密度都市のこと
 5 20世紀的政策から21世紀的政策への大転換を

第3章 時代の変化と魅力あるまち

 1 活気づくロンドン
 2 ソーシャル・インクルージョンの論理
 3 行政もPPPの時代へ
 4 防災に見る固定観念の罠
 5 容積率建ぺい率規制でなく眺望景観規制へ

第4章 世界の大都市が機能を更新中

 1 ハーレムをのんびり歩く
 2 蘇ったニューヨーク
 3 国土の均衡発展ではなく、拠点都市に重点投資する時代
 4 東京オリンピックを機会に21世紀型都市をつくれ

第5章 都市再生批判を考える

 1 立体過疎、都心居住過疎の平面都市
 2 情報社会・成熟社会と都市再生
 3 容積率緩和とビル床過剰説
 4 都心居住と環境
 5 メガロポリスの都市論とコミュニティの住民参加論

第6章 ロンドンプランに見る衰退都市の活性化

 1 テームズ河沿いにたくさんのマンション
 2 なぜ今、積極策なのか
 3 合意形成に時間をかけた

第7章 社会的包容力仮説

 1 ロンドンプランにおける社会的包容力
 2 東京都の経験
 3 ニューヨークでのヒアリング調査
 4 ボストンでのヒアリング調査
 5 社会的包容力についてのひとつの仮説

第8章 道路を考える

 1 ラファエロの道を見て考える
 2 道路は諸刃の剣
 3 道路づくりの順番を間違えた
 4 環状道路の完成を急げ
 5 道路をつくれば環境がよくなる

第9章 自治体の危機管理と防災

 1 危機と危機管理
 2 危機管理の内容
 3 危機管理の訓練
 4 危機管理の基本
 5 危機管理における情報
 6 危機管理とプレス
 7 情報セキュリティとコンプライアンス活動
 8 適度の緊張態勢
 9 危機管理の要諦

第10章 三宅島火山地震勉強ツアー試論

 1 海・魚・温泉だけでは観光にならない
 2 島には船で行くのが一番
 3 20年前の溶岩流がそのまま残る
 4 帰島できたのは砂防ダムができたから
 5 2泊2日のツアーで3万円以内

第5部 政策創造と自治体

第1章 議会における政策創造

 1 議会は本来の機能を果たしているか
 2 アメリカでは連邦でも地方でも法案を出せるのは議員だけ
 3 議会の政策創造力を高めるにはどうしたらよいか

第2章 政策創造と首長のリーダーシップ

 1 政策創造とリーダー
 2 美濃部都政とその時代
 3 時代の先覚者・後藤新平
 4 吉田茂・ワンマン宰相の気概
 5 責任をとる現場指揮者・児玉源太郎
 6 日本史に学ぶリーダーの条件

第3章 政策創造と職員

 1 時代の変化と自治体職員の役割
 2 政策創造に求められる能力
 3 市場化が進行する過程における市民の役割と行政の情報公開・説明責任
 4 組織人としての対応力
 5 時代の変化と職員の対応
 6 危機管理能力で問われる政策創造能力