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学問の自由と大学の自治 学問の自由と大学の自治

伊ヶ崎暁生(いがさき・あきお) 著

2,500円 四六 256頁 978-4-385-32164-X (品切)

21世紀初頭における「学問の自由と大学の自治」につき、理念、歴史を述べ、国立大学の独立行政法人化問題を含めて大学改革のあり方を提起する。日本の大学の自治の歴史を物語り風に詳述。巻末に事項・人名索引。

2001年10月1日 発行



●著者紹介

1930(昭和5)年   中国・大連生まれ
1948(昭和23)年 山口県立徳山中学校卒業
1949(昭和24)年 第五高等学校(熊本)一年修了(学制改革)
1953(昭和28)年 東京大学教育学部教育行政学科卒業
     〃       東京大学大学院人文科学研究科中退
    〃       東京大学教育学部助手
1957(昭和32)年 国民教育研究所所員
1966(昭和41)年 東京大学教育学部講師(非常勤1985年まで)  
                その他、北海道大学、名古屋大学等講師
1975(昭和50)年 日本学術会議会員(10〜12期1985年まで)
1988(昭和63)年  国民教育研究所所長(1990年退職)
1993(平成5)年   富山国際大学教授
1994(平成8)年   富山大学講師(非常勤2000年度まで)
2001(平成13)年 富山国際大学定年退職

蕃書
『大学の自治の歴史』 (1965年 新日本出版社)
『国民の教育権と教育政策』(1972年 青木書店)
『文学でつづる教育史』 (1974年 民衆社〉
『明日をひらく教育』 (1984年 芽ばえ社)
『小説のなかの教師たち』 (1986年 みくに書房)
『わたしたちの教育戦後史」(1992年 新日本出版社〉
『教えることは学ぶこと−「富山国際大学紀要」の論文8編』(2001年 私版)



●はじめに

 二十一世紀初頭、改めて学問の自由と大学の自治のあり方が問われてきていることから本書はその理念、歴史と今日の大学問題についてまとめたものである。

 学問の自由とは、真理探究の自由であり、学問的知的研究活動の自由であって、学問的見解の自由、その発表・表現の自由、学問的見解を教育することの自由が含まれる。学問研究は、真理を探究しようとする人間の理知的営みであり、神話的迷信や感性的独断に対する理性的認識を意味しているが、常識を科学に高め、また常識を科学に置き換え、公認の真理への自由な懐疑と検討、また新たな事実に対する自由な追求によって進歩するものであるところから、学問外の諸権威の干渉・統制を排除する自由が要請される。憲法が思想および良心の自由、表現の自由の保障に加えて「学問の自由」(第23条)を設けているが、それは学問研究が常に新しいものを生み出そうとする営みであって、歴史の発展に寄与するところが大きかった反面、それだけに時の為政者による迫害を強く受けたことから、とくにこれを制度的に保障したものであるといえよう。

 大学の自治とは、大学が政治上・宗教上・行政上その他の権力または勢力の干渉を排して、大学構成員の意志に基づいて研究と教育の自由を行使することである。それは真理の探究を使命とする大学を大学たらしめ、学問の自由が機関としてとった形態であり、学問の自由を保障するための制度的慣行といえよう。大学自治の内容には、大学の学長・教授その他の研究者の選任にあたっての自主性、研究や教育内容の自主性、大学施設や学生の管理の自主性が含まれる。警察権力の直接介入からの自治は、学問・思想・言論などの自由を実質的に保障するうえで不可欠である。

 これらは第二次世界大戦終了前、学問の自由と教育の自主性が不当に拘束されていたことへの批判と反省に裏づけられているとともに、知的研究活動に対する弾圧に抗した幾多の先覚者たちの抵抗と主張が結実したものである。それとともに、戦後にあっても半世紀にわたり、その遺産を発展させるべく努力とたたかいが展開されてきた。

 しかし、様々な中央統制・行政権の拡大、財政誘導、法改正を通して、実質的な大学自治の空洞化が進行してきている。その顕著な現われが、政府主導の国立大学の独立行政法人化の動向である。政府は行政改革・国家公務員削減策の一環として、公共性の高い政府機関に法人格をもたせて独立させる構想を立て、その対象に全国九九の国立大学を加えた。

 学長任命制、中期計画の認可とその評価による法人の改廃を含む事業全体の見直しなど、大学が政府の支配下におかれ、真理の探究という学問の本質から程遠い「効率性追求」の事業体に変質し、日本の学問の衰退をもたらすおそれがあるとして大学側からの強い反発が引き起こされている。「採算のとれない哲学や文学、数学などの基礎学問は大学から消えていく」「学問の自由・大学の自治が失われる」などの危惧が表明されている。

 このように、学問の自由・大学自治の問題は過去のことにとどまらず、二十一世紀の今日重要性を増していることは、最近のユネスコの勧告や宣言にも表われている。「教育および教育研究への権利は、高等教育機関での学問の自由と自治の雰囲気のなかでのみ十分に享受することができる」(ユネスコ「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」1997年) 、「社会に対する十分な責任と説明責任を負いながら、一連の権利および義務として考えられる完全な学問の自由と自治とを享受しなければならない」(ユネスコ高等教育世界会議「二十一世紀にむけての高等教育世界宣言」1998年) などがそれである。

 学問の自由と大学の自治を求めることと表裏をなすのが専門家集団としての社会的責任の明確化である。大学において学問研究の健全な発達をはかり、有益な応用を推進し、高等教育機関にふさわしい人材養成を進めることは社会の要請であるとともに、研究と教育の専門家としての果たすべき任務である。すなわち専門家集団としての社会的責務を自らの意思に基づいて国民の前に明らかにすることが求められる。1980年、日本学術会議が四年間の討議にもとづき、全会一致で「科学者憲章」を採択したが、それは国民的基盤に立つ大学の建設のためには欠かせないものの一つであろう。

 国立大学の独立行政法人化問題を含む大学改革にむけて、改めて大学の生存権ともいうべき学問の自由と大学の自治について議論がまきおこることを期待し、また国民の大学を「知る権利」とその説明責任について本書がその参考文献の役割を果すことを願っている。

2001年8月

伊ヶ崎 曉生



●目  次

第一章 学問の自由と大学の自治について
  一 日本国憲法と学問・思想の自由
  二 大学の自治とその意義
  三 歴史のなかの学問の自由と大学の自治――ヨーロッパの場合――
  四 日本における大学自治・「滝川事件」の教訓
  五 戦後改革と大学の自治

第二章 日本の大学自治の歴史から

 I 大学の自治の歴史――戦前編――

  1 久米事件(1892年)・哲学館事件(1902年)
   2 戸水(七博士)事件(1905年)
   3 沢柳事件(1914年)
   4 森戸事件(1920年)
   5 早稲田大学軍事研究反対闘争と学内臨検事件(1923年)
   6 三・一五事件と京大・東大・九大事件(1928年)
   7 滝川事件(1933年)
   8 天皇機関説事件(1935年)
   9 矢内原事件(1937年)・学者グループ事件(1938年)
  10 荒木貞夫文部大臣の「大学改革案」(1938年)
  11 河合事件(1939年)
  12 津田事件(1940年)
  13 太平洋戦争と大学自治

 II 大学の自治の歴史――戦後編――

  一 戦後の大学自治の復活(1945から1946年)
  二 大学理事会案と大学法反対運動(1948から1951年)
  三 イールズ事件とレッド・パージ反対運動(1949から1950年)
  四 東京大学ポポロ座事件(1952年)
  五 自民党・池田勇人内閣の大学管理制度改革と反対運動の展開(1962から1963年)
  六 北海道学大札幌分校主事問題(1961から1964年)
  補論 ナチスの大学管理制度改悪

第三章 科学者の社会的責務と科学者憲章
  一 はじめに
  二 科学者憲章とは
  三 国際的な科学者憲章について
  四 科学者憲章の内容
  五 ま と め

第四章 日本の大学――現状と歴史的性格・改革の課題をめぐって――
  一 日本の大学の現状と問題点について
  二 歴史の教訓に照らして
  三 第二次世界大戦後の大学改革
  四 大学改革の課題について

あとがき



●あとがき

 私が学問の自由と大学の自治について関心をもちはじめたのは、第二世界大戦後まもなくであった。小・中・高・大学の学校生活16年のうち、前半8年は「教育勅語」の戦前教育であり、後半8年は戦後教育であって、1947年には「教育基本法」が制定された。最後の旧制高等学校の一年間、占領下「大学理事会案」が問題となり、教育改革で新制大学に入学して直面したのが大学教授の「レッド・パージ」の「イールズ事件」であった。その反対闘争のなかで「反共は戦争の前夜」「滝川事件を想起せよ」「大学自治を守れ」とのさけびを聞きながら、その歴史的理解は不十分であった。大学三年のとき、大学構内に私服刑事が侵入して、自治会・組合活動、平和運動などを詳細に内偵したことが「東京大学ポポロ座事件」として発覚し、学問の自由と大学の自治が社会問題となった。

 教育学部で教育行政を学ぶなかで憲法・教育基本法の「学問の自由」についての理解は進んだが、教育の国家統制の強化のなかで、学問の自由と教育の自主性を擁護することの歴史認識が深まり、東京大学の助手から、国民の立場に立つもっとも自由で自主的な研究機関として考えた国民教育研究所の所員となり、歴史学者の上原専禄、教育学者の宗像誠也、宮原誠一、勝田守一、梅根悟などの諸先生の影響を受け、学生時代から関心をもち続けた学問の自由と大学の自治について調べはじめ、1962年の「大学管理法」問題への取り組みのなかで、1965年に『大学の自治の歴史』をまとめた。

 その後予想を超えた広範な読者を得て、1980年には新版も出したが、それから20年近く入手が困難という指摘もしばしば寄せられた。復刻版を考えなかったわけではないが、今回、三省堂のご好意により、旧版で不必要になった部分を省略し、あらたに「学問の自由と大学の自治について」と「科学者の社会的責務と科学者憲章」、「日本の大学ー現状と歴史的性格・改革の課外をめぐって」を加えてまとめたのが本書である。

 「学問の自由と大学の自治」については、『科学者・研究者・技術者の権利白書――その理念と実態――』(日本科学者会議編、水曜社2001年)所収論稿とほぼ同趣旨のものであり、「日本の大学ー現状と歴史的性格・改革の課題をめぐって」は2001年2月、中国・北京大学・南開大学(天津)日本研究センターでの講演(中国語全訳・北京大学日本研究中心編『日本学』第10集)と、同3月、日本科学者会議北陸地方区合同研究集会での報告(『福井の科学者』82号)である。「科学者の社会的責務と科学者憲章」は旧稿をもとにまとめ直したものである。

 出版事情の厳しい折、出版にこぎつけられた三省堂および担当していただいた佐塚英樹氏に心から感謝申しあげる。

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