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トータル・フットボールの世界
オランダサッカー 強さの秘密

オランダサッカー 強さの秘密

糀 正勝 著

1,700円 B6 208頁 4-385-60230-1 (品切)

魅力的で攻撃的なオランダサッカーの強さの秘密は? ヨーロッパ屈指の強さを誇るオランダサッカーを育んだ歴史や文化を知り、世界のサッカーの規範となるトータル・フットボールを創始したシステムを明らかにした。混迷の続く日本サッカーに今、求められているのは日本サッカーの哲学「ジャパン・ビジョン」である。

2000年6月30日 発行

 目  次
 自著自讃『オランダサッカー 強さの秘密』

 フットボールと英語のはなし


【目    次】

はじめに

第1章 オランダを知ればオランダサッカーが解る

 1 日本とオランダの交流は今から400年前に始まった/2 オランダの歴史とオランダ人/3 オランダの季節と風景/4 オランダのサッカー

第2章 オランダが世界に挑む

 1 1974年ワールドカップ・西ドイツ大会/2 オランダが生んだ天才 ヨハン・ クライフ/3 空飛ぶオランダ人 リヌス・ミケルス監督/4 1990年ワールドカッ プ・イタリア大会/5 1994年ワールドカップ・アメリカ大会/6 1998年ワー ルドカップ・フランス大会/7 2000年ヨーロッパ選手権に向けて

第3章 オランダサッカー・強さの秘密 ― 組織力 ―

 1 オランダサッカーの組織/2 オランダサッカー協会/3 プロサッカー・マネジメント/4 オランダサッカーの伝統

第4章  オランダサッカー・強さの秘密 ― 育成システム ―

 1 アヤックスの育成哲学/2 アヤックスとトータル・フットボール/3 科学的なトレーニング

第5章 オランダサッカー・強さの秘密 ― 経営哲学 ―

 1 フィテッセの革命/2 ミッション・ステートメント

※オランダ・いくつかの出会い

 名門クラブ・フェイエノールト/地域のクラブ・ローダJC/ヤン・フェルシュライエン監督のこと/ピム・ファベーク監督のこと

第6章 トータル・フットボールが世界を変えた

 1 リヌス・ミケルスとオランダ代表/2 プレッシング・フットボール

第7章 トータル・フットボールはなぜオランダに生まれたのか

 1 オランダ人とイニシアティブ(主導権)/2 人間はホモ・ルーデンス(遊ぶ人)である/3 トータル・フットボールの完成

第8章 二十世紀のロスタイム

 1 オランダサッカーの2000年/2 日本サッカーの2000年/3 トータル・フットボールに学ぶ

あとがき/関連資料/参考文献


自著自讃 『オランダサッカー 強さの秘密』    糀 正勝

(PR誌『三省堂ぶっくれっと』144号より)

 6月10日(2000年)から始まったヨーロッパ選手権は、7月2日にフランスの優勝で幕を閉じた。四年に一度開催されるこの大会は、ワールドカップに匹敵するヨーロッパ最大のスポーツイベントである。今回のヨーロッパ選手権は初めてベルギーとオランダの共催で開催された。

 大会前の予想では、オランダ、フランス、スペインなどが優勝候補にあげられていた。約一年半の長丁場の予選を勝ち抜いたヨーロッパ最強の16カ国が参加するこの大会は、実力が伯仲している。その意味ではどの国にも勝利のチャンスはあるが、予選リーグから準々決勝、準決勝、決勝まで勝ち上がるには、攻撃、守備、戦術等の総合力が不可欠だ。

 サッカー大国であるドイツとイングランドは予選リーグで敗退し、一つの時代の終焉を印象づけた。トルコ、ルーマニア、ユーゴスラビアは善戦したが共に準々決勝で敗退した。準決勝に進出した四強は、フランス、ポルトガル、イタリア、オランダの四カ国である。ダークホースのポルトガルは、華麗なパスまわしで実に魅力的なサッカーを展開したが、不運な反則を取られPKでフランスに敗退した。イタリアは伝統的なカテナチオ(かんぬき作戦)で守り抜き、攻撃的なオランダを破った。イタリアは決勝戦では99%優勝を掴みかけていたが、最後の最後で勝利の女神に見放された。優勝したフランスはチームの編成と攻守のバランスが良く、98年ワールドカップに続きヨーロッパ選手権も連続優勝という栄誉を勝ち取った。

 開催国優勝を期待したオランダ国民の声援は熱く、アムステルダム、ロッテルダム等のスタジアムはオランダカラーのオレンジ一色で埋まっていた。テレビの視聴率も、開幕戦のベルギー対スウェーデン戦は65%、オランダ対フランス戦は80%にも達している。

 37歳のライカールト監督率いるオランダチームは、オランダ伝統の攻撃的な「トータル・フットボール」を展開して、予選リーグのチェコ、デンマーク、フランスを破った。準々決勝のユーゴスラビア戦では、六対一という圧倒的な強さで快勝した。だが準決勝では、退場で一人欠いたイタリアの捨て身の守備に一度もゴールを奪うことが出来なかった。それでもオランダは優勝したフランスに匹敵するヨーロッパ最強チームと称えられている。

 オランダサッカーの強さの秘密は、小国オランダの知恵の中から生まれた。オランダの国土は九州程度の広さで、人口は約1500万人である。「神は世界を造ったが、オランダはオランダ人が造った」と言われているように、オランダでは国土の四分の一が海面下にある。オランダ人は、土地を干拓し、堤防を造り、自らの手で新しい国土を開拓してきた。こうしたオランダの地理的・風土的環境が、通商と航海を中心としたオランダ市民社会を形成し、独立心が強く、進取の気質に富み、しかも国際感覚豊かなオランダ市民を育てた。

 サッカーもまた文化である。自立的で革新的なオランダ人は、世界と戦うために新しいサッカー哲学を創造した。それがオランダの「トータル・フットボール」である。

 オランダ全体の統一的なスポーツ理念の下に、国内外の組織を整備し、子供から大人までの優れた育成システムを確立し、地域と共生する革新的なクラブ経営の哲学を提案する。トータル・フットボールとは、オランダ人が世界最高のオランダサッカーを創造するために生み出した、独創的で革命的なサッカー哲学である。

 ヨーロッパ選手権のホスト国であるオランダは、街の至る所の商店街やレストラン、パブをオレンジの旗や風船で装飾し、広場にある噴水の色までオレンジに染めて歓迎した。国内を移動する交通機関は、試合観戦チケットを提示すれば全てが無料で利用できた。準決勝で敗れたライカールト監督は、「オランダ代表には優勝する力は十分あった。私の力が及ばなかった。非常に残念なことだが、これがサッカーだ」と鮮やかな辞任を表明した。

 新しいオランダ代表監督には、アヤックス、バルセロナという名門クラブを率いた名将ルイス・ファンハールが就任した。オランダのトータル・フットボールの新たな挑戦が始まった。

(こうじ・まさかつ インター・スポーツ代表)

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