入門
朝鮮の歴史

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朝鮮史研究会 編 (編集代表 旗田 巍)

1,650円 四六 256頁 978-4-385-34872-X (品切)

隣国朝鮮の歴史3千年を,日朝関係を軸として46のテーマにより,わかりやすく描く入門書。地図・写真・資料・コラムなども用いて初学者・市民向けに編集。好評のロングセラー『朝鮮の歴史』の姉妹編。

1986年11月10日 発行


●はじめに

1982年の夏は、いわゆる教科書問題でかまびすしい夏であった。4年後の今夏もまた、それに似て特筆すべき事件が相次いだ夏となった。去る82年夏には、日本のアジア「侵略」が「進出」に書き替えられるなどの教科書検定に対して南北朝鮮をはじめとするアジア諸国から厳しい批判がなされた。このため、日本の外交的立場が悪くなるのを懸念した政府は、文部省に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という新たな検定基準を設けさせ、文部大臣談話でそれを周知徹底するなどして一連の対策に大わらわであった。

 しかし、その後の事態はどうであろうか。1985年夏には、侵略戦争の責任者であるA級戦犯を合祀した靖国神社への中曽根首相の公式参拝が行われ、今年7月には、日本のアジア侵略や植民地支配の実態を極力隠蔽し、侵略戦争を肯定的に描き出そうとする『新編日本史』(日本国憲法の平和規定条項を削り、天皇制復活の憲法づくりの運動を進めている「日本を守る国民会議」のメンバーが編集した高校用日本史教科書)が検定に合格した。さらに9月には、藤尾文部大臣(当時)が日本の韓国併合(朝鮮の植民地化)には「韓国側にもやはり幾らかの責任なり、考えるべき点がある」と発言した。

 これらに対するアジア諸国の再批判が高まるなかで、『新編日本史』は一部修正を余儀なくされ、藤尾文部大臣は罷免されたが、外交的配慮から行われる措置は決して問題の禍根を斬つものにならない。 私たち朝鮮史研究会は82年9月、「教科書問題に関する声明」を発表し、アジア諸国の対日批判の核心は「日本人のアジア観、歴史認識の問題」にあり、それは「日本国民全体のものの考え方にかかわることである」と指摘した。また、「近隣諸国との友好を語るためには、近隣諸国の歴史に対する豊富な知識と深い洞察カが求められている」とものべた。本書の刊行はこうした私たちの考え方に基づいて企画されたものである。

 私たちは、今日改めて「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という日本国憲法の精神を確かめあう時にきていると思う。他民族に対する偏見、差別、蔑視の多くが朝鮮人に向けられている日本社会の現状をみるとき、朝鮮民族の尊厳を理解し、認める立場に立つことの重要性はおのずから明らかである。

 古来、朝鮮は独自の文化を育み、日本との長い友好の歴史をもってきた。その朝鮮に対し、日本人がどのような歴史的見方をするかは、日本と世界、とりわけ日本と第三世界との結びつきの試金石となるにちがいない。

なお、本書では南北朝鮮全体を表す場合には「朝鮮」といぅ呼称を使用した。これは日本では「朝鮮」という用語が朝鮮半島全域を指す地理的表現や民族の総称として一般的に用いられていることを考慮するとともに、朝鮮民族の統一を願う私たちの希望がこめられた表現でもあるということに拠っている。また、「大韓民国」「朝鮮民主主義人民共和国」という国名は各項の初出の部分でフル・ネームを用い、あとは「韓国」「共和国」と略記したことも併せおことわりしておく。

  1986年2月

朝鮮史研究会

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●もくじ

(注: はコラム)
はじめに

朝鮮の土地と人         8
 朝鮮語と日本語
原始時代の朝鮮と日本      16
古朝鮮と漢の四都        22
三国の成立と抗争        26
三国と日本           32
広開土王陵碑と任那問題
高句麗と隋・唐とのたたかい   38
新羅の三国統一         42
統一新羅の社会と文化      46
 朝鮮の仏教
渤海の社会と文化        54
新羅・渤海と日本        58
高麗統一国家の成立とその文化  64
高麗のモンゴルヘの抗戦と元こう 70
李氏朝鮮の社会         76
 両班
倭こうと日朝貿易        82
ハングルと李氏朝鮮文化     86
 琉球と朝鮮日本のやきものと朝鮮
豊臣秀吉の朝鮮侵略       92
朝鮮通信使           96
実学思想の発展         100
 朝鮮の農業
商品経済の展開と民乱      106
開国前夜の朝鮮         110
 年中行事
雲揚号事件と江華条約      116
壬午軍乱と甲申政変       120
征韓論と朝鮮侵略思想      124
甲午農民戦争          130
 朝鮮のキリスト教
日清戦争と朝鮮侵略       138
日露戦争から「韓国併合」へ   142
反日義兵闘争と愛国啓蒙運動   146
武断政治(1910年代の朝鮮支配) 150
土地調査事業          154
 朝鮮の民謡
三・一独立運動         160
関東大震災時の朝鮮人虐殺    166
産米増殖計画−米を食えなくなった農民たち− 172
同化教育            176
 柳宗悦常緑樹の世界
植民地下における民衆運動のひろがり 182
日中戦争下の抗日闘争      186
戦前の在日朝鮮人史       190
皇民化政策           194
朝鮮人の強制連行と徴兵     200
 朝鮮人の血縁意識と家族観
抗日闘争に根ざす建国理念    208
解放と米ソ分割占領       212
朝鮮戦争と日本         218
戦後の在日朝鮮人史       222
四月革命と日韓条約       228
 全泰壱の死ムクゲとウサギ
朝鮮民主主義人民共和国の歩み  234
七・四共同声明と統一問題    238
 なぜ指紋をとるのか
朝鮮問題と日本         244
祝祭日一覧
参考文献一覧

あとがき

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