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  乳ガン治療・あなたの選択


祝 菊池寛賞受賞!
近藤誠先生が「乳房温存療法のパイオニアとして、
抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、
がん治療における先駆的な意見を、一般人にも
わかりやすく発表し、啓蒙を続けてきた功績」により、
第60回「菊池寛賞」を受賞されました。

乳ガン治療・あなたの選択

近藤 誠 著

1,200円  四六 256頁 978-4-385-35380-7

乳ガンでも乳房を取らずに治す乳房温存療法がある! 欧米では既に主流のこの療法の日本での第一人者が,その考え方,方法,成績を医学的データを基に紹介し,女性が主体的に治療法を選んでほしいと呼びかける。

1990年11月15日 発行

新・抗がん剤の副作用がわかる本 データで見る 抗がん剤のやめ方始め方 再発・転移の話をしよう 再発後を生きる 明るいがん治療 医療・健康サイト




●はしがき

 乳ガンは、今や女性にとって、人ごとではなくなりました。私の姉も乳ガンにかかりました(治療後、再発、転移もなく健在です)。日本では、年間二万人が乳ガンにかかっています。そして、ますます増加しているので、もう10年もすると、発生数で、女性のガンの第一位になるでしよう。アメリカでは、女性の一生を通じてみると、10人に一人が、いずれかの時点で乳ガンになると言われています。日本の乳ガンの発生パターンも、アメリカに近づきつつあります。

 本書の目的は、そういう時代にあって、乳ガンになっても乳房を残して治療できることを広く知ってもらうことにあります。現在、乳ガンと言われて、乳房温存療法が自分に向いているかどうかの情報がなく悩んでいる方は、本書を読めば、解決の糸口がつかめるはずです。

 また、乳房にシコリを触れて乳ガンではないかとおびえている人、あるいは集団検診で乳ガンの疑いがあると言われた人も、乳房が残せる方法があると知れば、とりあえず安心できるでしょう。

 そして、すでに手術を受けて治療が終わっている乳ガン体験者の方で、より良い情報を求めている方も、本書を読んでいただきたいと思います。乳ガンでは、残ったもう片方の乳房に新しいガンができることが時々あります。その時にそなえる意味でも、乳房を切除しないですむ方法があると知っておくことが必要でしょう。

 また、娘や友人には、自分の受けた治療、あるいは、外科医から勧められた治療とは違う治療を探してあげたいと思う方にも参考になるでしょう。本書に盛りこまれた情報を教えてくれる外科医はまだ少ないはずです。

 さらに、医療現場の人も読者対象として考えています。医療の現場にあっても、乳房温存療法について詳しく知っている看護婦さんや技師はいないでしょう。いや、ドクターでも、その内容を正確に理解している人は、皆無に近いはずです。そこで、本書には、乳房温存療法をめぐる最新情報を盛りこみました。とはいえ、易しく書き下ろしたので、一般の人にも無理なく読めるはずです。

 本書の内容をかいつまんで紹介します。

 乳ガン治療というと、日本では、乳房のみならず筋肉まで切除するような手術(ハルステッド手術という)が、まだ、全患者の半数に行われています。しかし、欧米では、筋肉まで切除する手術はとっくに消滅しています。その手術方法の医学的問題点や、患者さんにとっての問題点を紹介します。欧米諸国では、今や乳房温存療法が主流になりつつありますし、温存療法が過半数を占める国も出現しています。第一章、第二章では、なぜ、そのような治療法の変化が生じたのか、その経過と基礎となった考え方を、科学的データを混じえて説明します(データはできるだけ易しく理解できるよう、図表の読み取り方も含めて解説してあります)。

 そして、第三章では、本書のメイン・テーマである、乳房温存療法はどのように行われるのか、今までの治療と比べて成績はどうなのか等に関し、欧米での現状とともに、私達の方法・成績を紹介します。

 ここまで読んでくださっても、読者の目的は十分に達せられるはずです。

 第四章以下では、なぜ日本では温存療法が少ないのか、日本の医療の実態を探り、患者さんがどうしたら主体的に自分の治療を選択できるかを一緒に考えてみたいと思います。

 ところで、乳ガンだと言われても、過度にあせらないでください。乳ガンがガンであることは間違いありません。転移もあるし、死亡することもあります。しかし、乳ガンの実像は、皆さんがガンに対して持っているイメージからは、だいぶ隔たっているはずです。乳ガン全体の五年生存率は80%もあります。心筋梗塞や肝硬変や脳卒中の五年生存率の方がずっと低いのです。また、乳ガンは、再発しても、他のガンよりずっと長生きすることができます。再発して10年生きている患者さんも大勢います。これは一般的なガンのイメージからは遠いはずです。

 このように、乳ガンはむしろタチは良いとも言えるので、じっくり調べを尽くしても大丈夫です。あとで『しまった』と思わないようにする秘訣は、一刻も早くとあせらずに、入院するのを二日待って、乳ガンに関する本を読み、患者さんを探して、その体験談を聞くことです。たとえ他の病院を探しだして転院したために、治療の着手が二週間、三週間遅れても、より良い治療が受けられれば、生存率はむしろ改善するでしょう。ですから、気を少し安らかにして、外科医に『大変だ、急げ』と言われても、軽々しく治療に同意しないように。あわてずに、じっくり治療法を選んでください。

1990年9月17日

近藤 誠



●目  次

第一章 ガン治療には、どんな問題があるか

ある乳ガン患者さんからの手紙/患者さんが抱える悩み

第二章 乳ガン治療はどのように変化したか。乳房ガン治療以前のこと

1.ハルステッド手術とその興亡

ハルステッド手術とは/ハルステッド手術の成績/患者さんにとってはつらい美容上の損失/患者さんにとってはつらい機能上の障害/ハルステッド手術をしても転移や再発はある

2.手術の縮小化を促したクジ引人体実験

筋肉を残す手術方法(胸筋保存乳切)/クジ引人体実験の考え方/局所病と全身病

3.乳房は残せる。温存療法への道

温存療法とクジ引人体実験/温存療法の内容

第三章 乳房温存療法はどのように行われるか

1.私達の温存療法の方法と成績

治療体制/診断の方法/手術方法/放射線照射/全身療法(抗ガン剤・ホルモン剤)/これまでの成績/機能上の後遺症/美容的結果

2.放射線照射よどのように行われるか

放射線照射の効果/放射線の副作用/未熟な照射技術による怖さ

3.全身療去はどのように行われるか

全身療法(抗ガン剤・ホルモン剤)の効果/抗ガン剤の長期連用は生存率を下げる/飲む抗ガン剤が治療を妨げる/ホルモン剤の効果/抗ガン剤の副作用

4.温存療法はどこまで可能か

温存療法は何パーセントの患者さんに可能か/どの時期まで可能か/何センチまでのガンなら可能か/乳輪・乳頭へのこだわりはおかしい/代わりの治療にどんなものがあるか/乳頭保存乳切の危険/乳房切除後の乳房再建は、じっくり考えた上、形成外科で行うのがベター/新しい礼房温存の方法

5.温存療法後の過ごし方

普通に生活して体力を落とさないことが大切/反対側乳房にガンができたら/乳房内に再発したら/遠隔転移をしたら/痛みについて/心の持ち方

6.温存療法はどこで受けられるか

どの病院へ行けばよいか/温存療法を行っている病院一覧

7.温存療法を受けた患者さんの手記

乳房イコール命/女性ですもの/Happy New Year

第四章 日本ではなぜ乳房保存療法が遅れているか

1.日本的研究方法の欠陥

温存療法が普及しない理由/乳ガン治療では後進国/ガンの大きさの測定にもバラツキ/クジ引人体実験への無理解

2.根強い医師の偏見と独断

『日本人は違う』という偏見/外科医の好みで治療法が決まってしまう/『日本ではまだ早い』という怠慢

第五章 乳ガン治療を改善するにはどうしたらよいか

1.どんな医療皮害が起きているか

強引に再建手術を勧められ、肉体的・精神的・経済的損失を被った患者さんの手紙/医師の説明不足/はっきりした同意もなく、乳房を切除された患者さんの手紙/『検査のために入院しましょう』というのは嘘、医師が知っておくべき乳ガン治療の法律的側面/家族の同意は無効/インフォームド・コンセントとセカンド・オピニオン

2.医療訴訟による医療の改善

国民と医師が知っておくべき医療訴訟の問題点

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