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植村振作・河村 宏・辻 万千子 著
3,990(3,800)円 A5 640頁 978-4-385-35605-1
農薬毒性情報を集大成した唯一の本。市民から専門家まで幅広く活用されている1988年初版以来のロングセラーの第3版。残留基準ポジティブリスト制度に伴う農薬問題の全てがわかる。農薬の名前・分類・作用機構・生産・流通・登録・関連法律などの制度や規制値から、食品や環境への残留実態、毒性・人体中毒事例などについて、約400の農薬別に解説し、さらに事項別にも解説。年表やポジティブリスト農薬一覧、農薬の様々な名前から引ける索引も充実。
1988年 7月30日 初版 発行
2002年 7月30日 改訂版 発行
2006年 8月16日 第3版 発行
はしがき
目次
凡例
索引一覧
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●はしがき―『農薬毒性の事典 第3版』の刊行にあたって
1988年の初版刊行から18年、02年の改訂版刊行から4年が経過し、この間、農薬をめぐる規制・基準が大きく変化したために、農薬行政や残留農薬に関連する項目を第1章に大幅に書き加えて、字も大きく読みやすくして第3版を出版しました。
私たち著者は、初版以来述べていますように、「農薬は本質的に毒である」という視点に立っています。
農薬は本質的に生きものの正常な機能を狂わせることを目的に使用される物質です。
そのような視点に立って、農薬をめぐる動きが、国民の農薬摂取・被曝を減らすという方向に向かっているかどうか、検証し続け、行政に対して、市民の立場から意見を述べ続けてきました。
06年5月29日からは、「食品に残留する農薬等のポジティブリスト制度」が施行されましたが、農作物、特に輸入農産物の流通に支障を来たさないことが重要視され、安全性の確認がまだできていない農薬にも残留基準が設けられました。国民の農薬総摂取量を減らすという視点が欠けたまま、いわば、輸入農産物に都合の良い通行証を与えるような基準が設定され、国民としては安心してはいられない方向に向かっています。
そのような状況を正しく伝え、理解してもらうことが重要だと考えて、特にポジティブリスト制度に関する項(130頁、パート9)を新たに書き加えました。
ポジティブリスト制度下で残留基準が設定された農薬等の数は799になりました。
この799の農薬等と農作物類との組合せによる個々の基準は約16万にも及びます。
とても全てを載せることはできないので、799の中から農薬として使われるもの610を選び、どの農薬が、どの食品群に設定されたのか一目でわかる一覧表(ポジティブリスト)を作成しました(139頁)。これを見て、皆さんはどんな印象をもたれるでしょうか。
第2章「農薬別毒性解説」と合わせて読んで頂ければわかるように、登録が失効して日本では使われなくなった農薬や、使用禁止になった農薬にも、多数の基準が設定されています。一覧表の初めの方から拾っただけでも、外国でしか使われていない農薬、アザコナゾール、アザフェニジン、アザメチホス、アシフルオルフェンと並んでいます。リストのおよそ半数は、日本で農業者が使えば、違法として取締りの対象となる農薬です。
国がこれらを「人の健康を損なうおそれがない量」として認めたことは、裏返せば、海外に多くの食糧を頼っている危なさを国民に実感させるものです。
農水省は「食品の安全性に関するリスクコミュニケーション」というプロジェクトを組み、数年前から全国各地で意見交換会を開催していますが、05年10月には熊本市でも「農薬に関する意見交換会」というサブタイトルで開催されました。
その際、農水省は、「農薬を使わなければ著しく減収になる。農薬の安全性は確実に担保されているので安心です」と説明をしましたが、これに対して、永年、有機農業を実践している医師が会場から「農水省は、農薬は必要と云うが、私は30年来農薬を使わない農法でやってきた。農水省は農薬を使わなくて済む農法の研究はしているのか」との主旨の厳しい質問をしました。
この質問は、まさに今回の農薬残留基準改正にもあてはまります。
公害防止と同様、その原因は、発生源から絶つことが最も重要です。
農水省は安直な農薬の必要性ばかりを論じるのではなく、農薬は毒だという認識の下に、消費者にも農薬使用者にも、毒性情報をきちんと公開し(国や業界はホームページ等で毒性試験の概要や審議経過を公開するようになりましたが、十分ではありません)、危険性を知らせた上で、生産段階でのより一層の農薬使用削減の方向を示すことです。
本書の52頁にある、2002年のOECDの調査では、単位当たりの農薬使用量は日本が相変わらずトップです。世界では、これを半減させた国もあります。日本も「脱農薬支援体制」をつくって、削減に向けて力を入れるべきです。
ある集会で、化学物質過敏症の娘さんの母親が訴えた言葉が耳に残っています。「娘は入退院をくり返し、退院しても、安心して住める家がなく、そのたびに、古いアパートに戻るしかありませんでした。娘が苦しい原因は家では使用していない、ゴキブリ駆除のくん煙剤、スプレーの殺虫剤などが部屋に目張りをしていても、よそから入ってくるからです。」「山奥なら住めるところがあるかも知れないと、我慢して車に乗り、探しに行ったところ、山の宿泊施設でも殺虫剤が使用されており、泊まることができませんでした。」
農薬は、日常生活でも深刻な被害をもたらしています。ポジティブリスト制度の施行に伴い、農水省は、対象外の農作物に農薬が飛散しないよう万全の対策をとるよう指導を強化していますが、生活環境での農薬などの使用に際しても、農作物の場合以上に、人の健康に影響を及ぼさないよう細心の注意が必要です。「予防」や「消毒」と称する街中の衛生害虫管理を理由とした過剰な薬剤使用や、樹木の景観維持のための散布をやめる意識の転換が求められています。
本書では初版以来、「農薬」という言葉を広い意味でとらえてきましたが、農薬問題を広くとらえざるを得ないことが、行政にもようやく認められ始めました。
近年、農水省の消費・安全局長通知「住宅地等における農薬使用について」(46頁)や東京都環境局の「化学物質の子どもガイドライン―殺虫剤樹木散布編」(48頁)、群馬県の無人ヘリコプター利用の農薬散布団体に対する「有機リン系農薬の空中散布自粛要請」が出されました。学校や公共施設、商業ビルなどでの害虫駆除についての規制の指導通知が関係省庁から出され、シロアリ防除剤では、クロルピリホスやクレオソートの規制がかかりました。
農地で使われている農薬と同じ成分の薬剤が、生活領域で使われていて、しかも規制がほとんどありません。そんな化学物質濫用社会に歯止めをかけるためには、例えば、生活環境を汚染する化学物質の規制に関する法律(仮称)のような、総合的な新たな法律の制定が早急に望まれます。
最近、微量農薬摂取による神経、免疫、内分泌、発達等への影響についての報告がなされていますが、本書では載せ切れませんでした。今後、著者らの活動する反農薬東京グループのホームページでフォローしていく予定です(巻末案内も参照)。
本書の編纂にあたり、各種学会誌、自治体や各種研究機関の報告書、農薬関連書・URL等を参照しました。資料や論文を提供して頂いた研究機関や研究者の皆さんにお礼申し上げます。
第3版では、改訂部分を植村・河村・辻が受け持ったために、3名の共著になりました。初版及び改訂版から引き継いだ部分について、旧版共著者の冨田重行氏、前田静夫氏にあらためて感謝します。
初版以来貴重な助言を頂き、索引づくりを担当された三省堂出版部の阿部正子さん、そして校正者の山口英則さんに心からお礼を申し上げます。
本書が一人でも多くの人びとに利用され、農業のみならず薬漬けの日常生活を見直すことに役立つことを著者一同願ってやみません。
2006年6月20日
著者を代表して 植村振作
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