二世帯住宅その前に

二世帯住宅その前に

こがめの会(大沢悟郎、大沢 匠、東 由美子、矢賀部雅子) 著

1,500円 A5 224頁 978-4-385-35595-X  (品切)

親世帯,子世帯それぞれの本音をさりげなく汲んで建てる,二世帯住宅作りのこつを,4人の建築家がアドバイス。20の実例と住み方のルール作りを含めソフトを提供。イラスト満載。好評『家づくりその前に』の続編。

1994年10月10日 発行

 家づくりその前に
 老いの住宅大作戦 (品切)


●はしがき

 私たち著者四人は、日常的には各人別々の事務所を持ち、住宅を中心に設計活動をしています。

 この本をまとめるにあたり、グループを組み、それぞれの経験を持ちより、議論したり、すでに私たちが手がけた二世帯住宅に住み始めている方々にアンケ−トをお願いしたりして、お互いの認識を深めあいました。

 完全同居型ではない形の二世帯住宅での生活経験は、歴史も浅く、親世帯と子世帯の間でのつきあい方、地域や親類、友人などとのつきあい方のルールがまだ確立されていません。そのために、設計に着手する前にさまざまな問題を解決しなければならなかったり、着手してからも、方針を決定するのに手間どるのが現状です。

 住み手のほうでも、一緒に住み始めてから、「こんなはずではなかった」とか、逆に、「想像していたよりうまくいった」などの声が出始めているようです。

 この本に収録されている事例は、どれも実際に私たちが設計したものです。プライバシーには配慮し仮名にしましたが、できるだけ生の声を載せたいと思ったので、ある程度生活にふみ込んで書かせていただきました。

 それらのご家族には、アンケートにも協力していただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

 事例では、この本に書いたこと以外にも、いろいろと設計上の工夫はあるのですが、二世帯に関するものになるべくしぼりました。

 第2章の実例については、それぞれの設計者が執筆しました。設計者の名前は目次に入れてあります。目次の最後に、イラスト目次として、20の実例の簡単なプロフィールを入れましたので、参考にしてください。本文イラストは、主として東が描きました。

 私たちの力不足で、住み手の考えていることを十分にくみ取れなかったり、将来をみこした提案をしきれていない部分もあると思いますが、知り得た知識と情報の最大限を公開したつもりです。

 これから二世帯住宅を建てようと考えていらっしゃる方の参考になれば幸いです。


●目  次

イラスト目次…こだわりの二世帯住宅・実例20のプロフィール

はしがき
プロローグ●今、二世帯住宅に注目が!
第1章 あいまいなままでの同居は問題あり
第2章 こだわりの二世帯住宅・実例20
第3章 住まい方を考えながらプランをたてる
第4章 どうするどうなる資金と税金
第5章 建築家を二世帯のかけ橋に


●プロローグ

今、二世帯住宅に注目が!

 「二世帯で住む家を設計してください」という仕事の依頼が、我々設計事務所にも近頃増えています。住宅メーカーでも、「二世帯住宅セミナー」や「二世帯住宅フェア」などを頻繁に催して、二世帯住宅の売り込みに懸命です。

 今、なぜ、二世帯住宅が注目を集めているのかを、考えてみようと思います。

●もう親の土地に建てるしかない

 バブル時代の崩壊といっても、まだまだ大都市圏の地価は、依然として高値。ふつうのサラリーマンが土地を買って一戸建マイホームを手に入れることは、とても無理な状況になっています。本来は、独立して家を持ちたいと思っていた子世帯も、すっかりあきらめ顔。古くから住んでいる親の土地に、二世帯住宅を建てるしかないと考える押しかけ同居派の子世帯が出てきました。

 親世帯が比較的上の世代(70代)だと、まだ昔の大家族の暮らしの体験や、「嫁姑の苦労」などの記憶があり、必ずしも同居を望まない場合もあります。

 そうして、子供たちが巣立ったあとの広い家で、ゆったりとマイペースで過ごしていた親も、子供の入学時期などを口実に、親の土地の占拠にかかろうとする積極的な子世帯には、たじたじ、しぶしぶ、同居を承諾するというケースまで出てきています。

 このように、二世帯同居の問題などをよく考える時間がないままに、二世帯住宅を建てる家族が増えています。

●高齢化社会でも二世帯なら安心?

 厚生省の人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」によれば、2010年には、総人口のうち65才以上の人口割合は21%となり、2025年には、なんと25%。四人に一人は高齢者になると言われています。

 これは、世界的にみても、欧米を抜いて超高齢化の国になるということです。

 かつて経験したことのない超高齢化社会を想定した時、ともすると暗いイメージしか浮かばず、非常に不安感にかられ、いざというとき、子供が近くにいればと思う親も多いと思います。

 ましてや一戸建ての家に住んでいると、庭の手入れや窓の掃除、家のメンテナンス等、身体の衰えを感じ始める年齢になると、とてもおっくうになってくる仕事があります。このようなことが、そろそろ子世帯との同居を考える親の気持となって現れてきます。

●親の手を借りたい共働き子世帯派

 近年、女性の社会への進出がめざましくのびて、共働きの家庭も着実に増えています。日常の家事、育児の他、子供が急病だけれど仕事の都合でどうしても休めないという時など、親がそばにいてくれたらなと思うことは多いと思います。

 自分の子供だけは鍵っ子にしたくないし、近所づきあいもしなくてはいけないし、旅行中のペットの世話等も誰かに頼みたいと、親をまるで自分に都合のよい留守番人に仕立ててしまおうとする共働き世帯も現れているようです。

●いつまでも子と暮らしたい

 同居の苦労を経験していない、比較的若い世代(50代)の親世帯の中には、子供の数が少ないことから、親子べったり型がいるようです。

 娘との同居、息子との同居をすっかり期待している場合もあり、まだ子供の伴侶も決まっていないうちから、二世帯住宅を建ててしまったりします。

 親は、子と、いつまでも友だちづき合いのように暮らしたいと思っていて、子が結婚して新しい伴侶が来ても、ひきつづき同じように暮らせるのではないかと期待しているのです。

 「子供さんと一緒に住める家をこの土地に建てておくのは、親の甲斐性ですよ」というような住宅メーカーの言葉に乗せられて、大きな二世帯住宅を建ててしまう親も現れてきているようです。二世帯同居のルールづくりどころではない、このような同居の未来は……。

(以下、省略)


●あとがき

 「おばあさんが消えた」というショッキングな話を聞いたことがあります。

 長年一人暮らしに慣れていた気丈なおぱあさんも、寄る年波には勝てず、足腰が弱くなり、息子家族の新築を機に、はじめ嫌がっていた同居を決意したのです。

 ところが、世帯間の生活感の違いが如実に現れはじめ、同居から二、三か月たったある日、突然、おばあさんが消えたのです。消えたというのはおおげさですが、以前住んでいたところへ戻ってしまったのです。住み慣れた場所には、親しくしている人たちが来て、いろいろと面倒をみてくれますし、週二回のお手伝いさんと、週末には息子夫婦が来てくれることで、一人暮らしの快適さを取り戻したそうです。

 このケースのように、また戻れる場所があればいいのですが、そういう場合ばかりではありません。

 この本を書くにあたり、改めて、『二世帯住宅とは何ぞや』と、皆で話し合いました。いろいろな人の話や意見を聞くにつれ、ますます謎の深みにはまるばかりで、本当に二世帯住宅が必要なのだろうかと、究極の疑問にまで行きつくのです。でも、現に二世帯住宅は存在し、年々増加しています。

 その中で、悩み、また、これから建てようと夢ふくらませている人もたくさんいるわけですから、そういう人たちのためにも、私たちが今考えていること、仕事上経験したこと、等を知ってもらえば、二世帯住宅を考える一助になるのではないか。そういう立場に立って、私たちはこの本を書きました。

 今、子供の世話にはなりたくないという親たちが増えているようです。身体が不自由になった場合を考えて、アレコレ装置を付けたいという子世帯に、「そんなにまでして生きていたくない」という親世帯もいます。これからは、長男長女の時代、親の面倒をみたくてもみられないのが現実かもしれません。また、逆に、子世帯に、夫の両親、妻の両親と、三世帯住宅時代が来るのかもしれません。

 家族の形態が多様になるのと同様に、二世帯住宅も、家族のわくを越えた多世帯住宅となっていくのかもしれません。

 いずれにしろ、まだ二世帯住宅も実験途上にあり、今後が見えにくい状態です。二世帯住宅が、次の世代に代変わりした頃、また新たな展開を見せるのではないでしょうか。この本が、その時までの橋渡しになれば幸いです。

 私たちは、この本を書くにあたり、何度も話し合いを重ね、意見のくいちがいを調整したつもりです。生活観の違いや、まだ解決しきれない問題については、それぞれの判断にゆだねていますので、文章に一貫性を欠いたところもあるかもしれませんが、著者が複数のためと、お許しください。

 私たちは日頃、仕事の上でも判断に迷うことが多々あります。それは住まい手の本当の要求を読み取ることがむずかしいからです。

 まして、二世帯住宅のように、相手が複数となると、よけいです。でもその分、できあがった時の喜びもひとしおで、それを励みに、また仕事に向かうのです。

 この本づくりも同じく、一度座礁にのりあげたり、負傷で一時休止せざるを得なかったりと色々ありましたが、その分、完成した喜びはひとしおでした。これからも試行錯誤しながら、次のステップへゆっくりと歩いていきたいと思います。

 最後に、この本づくりのきっかけをつくってくださった、エディターハウスの小野寺信吾さんに感謝します。「こがめの会」の名通りに、ゆっくりペースの私たちに、適切なアドバイスをしながらつきあってくださった三省堂の阿部正子さん、ありがとうございました。

 そして、この本に登場していただいた多くの方々に、遅ればせながら、紙面を借りて、お礼を申しあげます。

こがめの会一同

1994年盛夏


●見本ページ

見本ページ

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