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  何でもわかる日本語便利帳


何でもわかる日本語便利帳

三省堂編修所 編 (品切)

1,500円 B7変 544頁 978-4-385-36029-4

日本語に強くなる、ことばの「知識+使い方」百科。用字用語、書き方・話し方から漢字の読み書き、古典の知識まで、日常生活やビジネスで必要なことばの知識を網羅したハンディな「日本語」実用百科、登場。

2002年6月15日 発行

はしがき 目次 【第一部】用字用語 一 かなの使い方 【第二部】書き方・話し方(一部)


●はしがき

 現代は高度に発達した情報化社会であるといわれ、膨大で多様な情報があふれています。私たちは、必要な情報をより分け、自分のものとすることが難しくなっています。ことばも同じようにあふれています。しかし私たちに、どれほどの言葉が身についたものとなっているでしょうか。知っているつもり、わかっているつもり、実際はそんな不確かなものが多いのではないでしょうか。

 こんな事情を背景としてでしょうか、ことばに対する関心は、これまで以上に高まってきました。それは、たとえばことばの乱れと呼ばれる現象に対する議論に表れています。また、国際化の時代を反映してか、世界に数多くある言語のうちの一つとして、日本語を問い直す試みも見られます。

 このような時代に、ことばについて、まず何が求められているのでしょうか。それは、現代の日本語について知っておかなければならない基礎的な知識や教養を集約した「ことばの基本台帳」です。氾濫することばの海の中で、私たちを導く羅針盤となるものです。

 こうした求めに応えるため、一九九五年に刊行して以来、多くの読者に愛用されてきた『何でもわかる ことばの知識百科』を母体に、この度あらたに『何でもわかる 日本語便利帳』を編みました。編集に当たっては、現代の言語生活全般に即応するものであることを目指しました。

 読者のみなさんが、ある場面では効果的に、ある場面では豊かに、そしてある場面では正しく、本書に示した、ことばにかかわる知識と技術を活用されることを望みます。

 二〇〇二年四月

三省堂編修所

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●目  次

【第一部】用字用語

 一 かなの使い方…………………………8

    [音節の種類]
    [ひらがなで書いたほうがよい単語]
    [漢字とかなを使い分けたほうがよい単語]
    [かたかなで書く単語]

 二 現代かなづかい………………………12

    [かなづかいの移り変わり]
    [現代かなづかい]
    [現代仮名遣いの要領]

 三 送りがな………………………………16

    [送りがなの移り変わり]
    [新しい送りがなの付け方]
    [送り仮名の付け方の要領]

 四 句読点…………………………………25

    [区切り符号の種類と使い方]
    [繰り返し符号の種類と使い方]

 五 数字の書き方…………………………29

    [横書き文章の場合]
    [縦書き文章の場合]

 六 ローマ字………………………………32

    [ローマ字のつづり方]

 七 カタカナ語の書き方…………………34

    [外来語の書き表し方]

 八 書体……………………………………40

    [書体の種類]

 九 約物・罫線……………………………44

    [約物・罫線の種類]

【第二部】書き方・話し方

 一 敬語の使い方…………………………48

    [敬語とは]
    [敬語の種類]
    [主な尊敬語・謙譲語]
    [不適切な敬語]

 二 慶弔のあいさつ………………………55

    [口頭で]
    [慶弔電報定型文例一覧]

 三 手紙の書き方…………………………70

    [手紙の効用]
    [手紙の形式]
    [手紙の形式の五つのポイント]

 四 外国郵便の書き方……………………87

    [手紙文の様式]
    [封筒について]

【第三部】漢字の知識

 一 まちがいやすい漢字…………………92

 二 熟字訓・当て字………………………108

 三 難読語…………………………………117

    [一般に使われている難読語]
    [ジャンル別の難読語]

 四 同音同訓異義語………………………162

 五 対義語…………………………………196

 六 主な四字熟語…………………………204

 七 和語を漢字熟語で……………………259

 八 新字と旧字……………………………314

 九 主な部首の名称………………………317

    [部首の種類]

【第四部】ことばの知識

 一 慣用句…………………………………328

 二 暦・年齢のことば……………………464

  ○暦のことば

    [二十四節気]
    [五節句と雑節]
    [年中行事]
    [国民の祝日]
    [陰暦の月の名称]
    [その他の月の異名]
    [六曜]
    [その他]
    [十干十二支]
    [時刻・方位]

  ○年齢のことば

    [故事による年齢の別称]
    [日本で使われる長寿の祝い]

 三 ものの数え方…………………………481

 四 メートル法……………………………485

    [現代の度量衡]

 五 元号一覧………………………………486

 六 旧国名…………………………………491

 七 季語一覧………………………………493

 八 色の名前………………………………515

 九 星座・星の名前………………………519

【第五部】古典の知識

 一 五街道…………………………………530
 二 源氏物語五十四帖……………………534
 三 百人一首………………………………536

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●【第一部】用字用語 一 かなの使い方

【音節の種類】

かなは日本語の音節を表す文字である。

1直音 撥音・促音を除いてかな一文字で書き表される音。
 あるく[歩く]  かい[貝] かきぞめ[書き初め] ぺこぺこする

2拗音 ねじれた音。「や」「ゆ」「よ」を右下に小さく書き添える。
 しゃかい[社会] ちゅうい[注意] かいじょ[解除]

3撥音 はねる音。「ん」で表す。
 けんり[権利] しんねん[信念]

4促音 つまる音。「つ」を右下に小さく書き添える。
 かっき[活気] はしって[走って]

5長音 のばす音。
 かあさん くうき[空気] とうだい[灯台]

6清音 すんだ音。
すすむ[進む] はし[橋] れきし[歴史]

7濁音 濁った音。右肩に濁点(゛)をつける。
 ふで[筆] もみじ[紅葉] ゆずる[譲る]

8半濁音 右肩に半濁点(゜)をつける。
 さんぽ[散歩] はっぽう[発砲]

【ひらがなで書いたほうがよい単語】

 常用漢字で書けるかどうかが目安である。ただし、常用漢字で書けても、読みやすさや漢字が本来もつ意味からはなれているかどうかを考慮して、ひらがなで書いたほうがよい単語がある。おおよその目安は、次のとおりである。

1名詞

(1)常用漢字で書けない単語のうち、言い換えや別の常用漢字で置き換えのできないもの。
 あいさつ[挨拶] あぐら[胡座] あっせん[斡旋] 竹ざお[竹竿] 手ぬぐい[手拭い]
注 動植物名を学術的なものとしてとらえたときには、常用漢字で書けるものであっても、かたかなで書くことが多くなってきている(「かたかなで書く単語」参照)。

(2)外国語に由来する感じが薄れた外来語。

 かるた たばこ きせる

2形式名詞

 こと[事] 音楽を聞くことが好きだ。
 もの[物] 決して謝るものか。
 とき[時] 彼が来るときはいつも雨だ。
 ところ[所] 聞くところによると、あいつは、もうすぐ結婚するらしい。

3代名詞

 あなた[貴方] わたし[私] おれ[俺] これ[此れ] それ[其れ] だれ[誰] ここ[此処] そこ[其処] どこ[何処] どなた[何方]

注 次のものは漢字で書ける。

 私(わたくし) 僕 我 君 彼 彼女 自分 何

4動詞・補助動詞

 動詞は、意味によって、漢字とひらがなを使い分けるほうが望ましい(「漢字とかなを使い分けたほうがよい単語」参照)。

5形容詞

 ありがたい[有難い] おもしろい[面白い] おかしい[可笑しい] かわいい[可愛い] すばらしい[素晴らしい] うらやましい[羨ましい] うれしい[嬉しい] ゆゆしい[由々しい] つまらない[詰まらない]

6連体詞

 ある[或] いわゆる[所謂] この[此の] その[其の] わが[我が]

7副詞

 あえて[敢えて] あまり[余り] あらかじめ[予め] いずれ[何れ] およそ[凡そ] かなり[可成り] せいぜい[精精] せっかく[折角] ぜひ[是非] だんだん[段段] なお[尚] ほとんど[殆ど] ますます[益益] もし[若し] やはり[矢張り] わずか[僅か]

注 漢字で書くほうが多いものには、次のようなものがある。

 案外 一概に 主に 格別 現に 強いて 徐々に 絶えず 何しろ 奮って 優に

8接続詞類

 あるいは[或いは] および[及び] さて[扨] しかし[然し] しかも[然も] すなわち[即ち] ただし[但し] ところが[所が]

9感動詞

 ああ おい おお へえ もしもし

注 強調するときは、かたかなで書くことがある。

10助詞

 くらい[位] ながら[乍ら] まで[迄] ばかり[許り] など[等] ほど[程]

11助動詞

 べき[可き] ようだ[様だ] そうだ[相だ]

 12接頭語・接尾語

 お葬式 お名前 ご覧ください ご結婚 青み 高め 子どもたち

13いわゆる当て字

 すてき[素敵] めでたい[目出度い] とかく[兎角] やはり[矢張り] おくゆかしい[奥床しい] さすが[流石] ちょっと[一寸] わんぱく[腕白]

【漢字とかなを使い分けたほうがよい単語】

 意味や使い方によって、漢字とかなを使い分けると、読みやすくなる単語がある。

上げる 本を棚に上げる。
    本を読んであげる。
言う 意見を言う。
   人間という生物。
行く 町へ行く。
   消えていく。
入れる 口の中へ入れる。
    人の意見をいれる。
上 台の上に置く。
  ご一読のうえ、返送願います。
内 内をかためる。
  見ているうちに、気分が悪くなった。
得る 高収入を得る。
   やむをえません。
限り 限りなく広がっている。
   命令がないかぎり、動くな。
切る 紙を切る。
   この紙には書ききれない。
下さる 先生が本を下さった。
    はやく返してください。
来る 明日は三時に来る。
   ちょっと行ってくる。
事 事は重大だ。
  食べることが趣味だ。
出す 返事を出す。
   動きだす。
通り にぎやかな通り。
   そのとおりです。
時 時は金なり。
  帰りついたときはだれもいなかった。
所 新しい所へ移る。
  今、書いているところだ。
中 家の中へ入る。
  雨のなか、ありがとうございます。
見る 映画を見る。
   小説を書いてみる。
持つ ステッキを持つ。
   あと五年はもつ。
物 重い物を運ぶ。
  そんなことをするものではない。

【かたかなで書く単語】

1外国の地名・人名

 アメリカ フランス ロシア ベルリン アダムズ アリストテレス

2外来語

 アナウンサー インフレーション エチケット ケーブルカー
注 日本語にとけこんでいて、外国語に由来する感じが残っていないものは、ひらがなで書いてもよい。
 たばこ てんぷら じゅばん

3外国の貨幣や度量衡の単位

 ドル ポンド ユーロ メートル リットル ヘクトパスカル

4擬音語・擬声語

 カタカタ ガチャン ワンワン メーメー

5俗語・隠語

 インチキ デカ ピンはね

6動植物名

 タヌキ キツネ サケ マス タマネギ スミレ ヒノキ
注 動植物の意識が薄れたもの、動植物名が比喩的に使われたもの、加工されて動植物そのものの形がなくなったものなどは、ひらがなで書いてもよい。

 かまぼこ こいのぼり のり巻き わしづかみ

注 漢字で書いてもよい(常用漢字表にとりあげられている)動植物名。

 動物→犬 牛 馬 蚊 蚕 鯨 猿 象 鶏 猫 羊 豚 蛇 蛍
 植物→麻 稲 芋 梅 漆 菊 桑 桜 芝 杉 竹 茶 菜 松 豆 麦 桃 柳 綿
 総称として→魚 貝 木 草 鳥 虫 藻

7「学術用語集」で決められている語

 カセイソーダ タンパク質 リン酸

8際立たせる場合(ふつうは、ひらがなで書く)

(1)擬態語
 ニヤニヤ ダラリ ノッソリ
(2)感動を表す語
 アラ オット マア
(3)その他、意味やニュアンスを強調する場合
 交渉はヤマを迎えた。
 この人、ちょっと、ヘンです。

9漢字の音読みを強調するとき

 「愛」の音読みは「アイ」である。

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●【第二部】書き方・話し方(一部)

一 敬語の使い方

【敬語とは】

 (1)先生が言いました。
 (2)先生がおっしゃいました。
を比べてみよう。
 述べている内容自体は同じことである。しかし、(1)と(2)では「先生」に対する敬意が違う。(2)では「おしゃる」という表現を使うことによって、「先生」に対する敬意があらわされている(「先生」が高められている)のに対して、(1)ではとくに敬意はあらわされていない。
 (2)の「おっしゃる」のように、特別な言葉づかいをすることによって、敬意あるいは丁寧さをあらわす表現が敬語である。
 なお、敬語は、目下から目上に使うことが多いことは確かだが、いつもそうだとは限らない。言葉づかいの丁寧な人は、目上から目下へも、かなり敬語を使うものである。敬語は封建的なものだと思っている人もいるようだが、現代の敬語は、むしろ気配りの表現だといえる。

【敬語の種類】

 一口に敬語といっても、いろいろな種類がある。大まかには、尊敬語・謙譲語・丁寧語と三つに分けられているが、ここではもう少し細かく分けてみる。
 
1尊敬語

 話し手が主語を高める(主語に敬意を示す)表現。
  先生がおっしゃいました。
  奥様がこの文章を書かれた(お書きになった)らしい。
の「おっしゃる」や「書かれる」「お書きになる」などが敬語である。それぞれ、主語である「先生」「奥様」を高めている。
 「……(ら)れる」型の言い方は、「書かれる」の他にも「始められる」「出発される」などのように、また、「お/ご……になる」型の言い方は、「お書きになる」のほかにも「お始めになる」「ご出発になる」などのように、それぞれ多くの動詞に関して使える代表的な尊敬語である。
 尊敬語には、このほか、「なさる」「くださる」「いらっしゃる」「召しあがる」などがある。
 名詞の場合は、その名詞に「……の」で係る人を高める。たとえば、「先生のおからだ」「その方のお名前」は、それぞれ「先生」「その方」を高めている。
注 主語や「……の」で係る人は、表現されないこともあるが、その場合でも、尊敬語を使えば、やはり高められる。たとえば、「先生」の話をしているときには、「先生がおっしゃった」と言わずに、ただ「おっしゃった」と言ったり、「先生のおからだ」と言わずに、ただ「おからだ」と言ったりすることがあるが、「先生」が表現されていなくても、「おっしゃる」「おからだ」という尊敬語によって、やはり「先生」が高められているのである。(こうした事情は、以下の各敬語でも同じ。)

2謙譲語

 話し手が主語を低める表現。
[謙譲語A]
 話し手が主語を低め、行為の関係する方面を高める(行為の関係する方面に敬意を示す)表現。
  私が先生に申し上げました。
  〔私は〕これから〔あなたの〕お宅に伺います。
  父が先生をご案内するそうです。
の「申し上げる」「伺う」「ご案内する」などが謙譲語Aである。初めの例は、主語である「私」を低めて、「申し上げる」という行為の向かう先である「先生」を高めている。二番目の例も、主語「私」を低めて、「伺う」先つまり訪ね先である「〔あなたの〕お宅」を高めている。三番目の例も、主語「父」を低めて、案内する相手である「先生」を高めている。
 「お/ご……する」型の言い方は、「ご案内する」のほかにも、「お待ちする」「お知らせする」「ご報告する」のように、いろいろな動詞に関して使える謙譲語Aの形である。
 謙譲語Aには、このほか、「いただく」「さしあげる」「存じ上げる」「お目にかかる」などがある。
 謙譲語Aの主語は、普通は、話し手自身か身内である。
 名詞の謙譲語Aも存在する。たとえば「先生にお手紙をさしあげる」というときの「お手紙」は、手紙の向かう先である「先生」を高めているので、謙譲語Aである(ただし、「先生がお手紙をくださった」という場合の「お手紙」は尊敬語)。
 
[謙譲語B]

 話し手が主語を低め、聞き手に対して改まって述べる(聞き手に敬意を示す)表現。
  私が会議室の掃除をいたします。
  私は夏休みに旅行にまいります。
  父が私にそう申しました。
の「いたす」「まいる」「申す」や「存じる」などが謙譲語Bである。初めの二つの例では「いたす」「まいる」によって主語「私」を、三番目の例でも「申す」によって主語「父」を、それぞれ低めている。謙譲語Bの主語は一般に話し手自身か身内で、これを低めることで、聞き手に対して丁重に述べる効果が出るのである。
 名詞の謙譲語Bとしては、自分の会社をへりくだって述べる「弊社」や、自分の書いた本をへりくだって述べる「拙著」などがある。
 
[謙譲語Bの用法の広がり]

  低気圧が通過いたします。
  まもなく電車がまいります。
のような「いたす」「まいる」は、「低気圧」や「電車」を低めているわけではなく、ただ聞き手に対して丁重に述べる働きをしている。謙譲語Bの本来の「主語を低める」という働きは消えてしまっているが、「聞き手に対して丁重に述べる」という働きは保っているわけで、これも正しい使い方である。このような使い方は、丁寧語に近いともいえる。
 謙譲語Bの主語は、右に述べたように、話し手や身内であるのが一般的だが、今のような使い方の場合は、そうでないものでもよいわけで、いわば、謙譲語Bの用法が広がってきたわけである。
 ただし、本来が主語を低めるものであるから、
 ×あなたも旅行にまいりますか。
 ×先生もその会にまいりました。
のように、聞き手や、高めるべき人について使うのは、やはり誤りである(この場合、尊敬語「いらっしゃる」を使うべきである)。

[謙譲語Aと謙譲語Bの違い]

 謙譲語AとBとは似ているが、誰に対する敬意かという点が違う。Aは行為の関係する方面に敬意をあらわし、Bは聞き手に敬意をあらわすのである。Aの「伺う」と、Bの「まいる」とで、比べてみよう。
  私はこれから鈴木先生のお宅に伺います。
は、適切な敬語である。この場合、「私」を低めて、「伺う」つまり訪ねていくという行為の関係する方面である「鈴木先生」を高めている。簡単にいえば、「伺う」は訪ね先に対する敬意をあらわす敬語である。
 これに対して、
 ×私はこれから公園に伺います。
は不適切である。これでは、公園を高めることになってしまう。また、
 ×私はこれから祖父の家に伺います。
といえば、自分の祖父を高めてしまい、身内を高める誤りになる。
 あとの二つの文の「伺う」を「まいる」に変えて、
  私はこれから公園にまいります。
  私はこれから祖父の家にまいります。
と言えば、正しい敬語である。「まいる」の場合には、行為の関係する方面(訪ね先)ではなく、聞き手に対する敬意をあらわすので、訪ね先はどこであっても使えるのである。
 一方、たとえば、「これから先生の家に行く」という内容を親しい友人に伝えるような場合には、
  僕はこれから先生のお宅に伺うんだ。
  私はこれから先生のお宅に伺うのよ。
と述べるのは適切だが、
 ×僕はこれから先生のお宅にまいるんだ。
 ×私はこれから先生のお宅にまいるのよ。
とは、もちろん言わない。
 以上のことからわかるように、「伺う」は行為の関係する方面への敬意、「まいる」は聞き手への敬意をあらわす敬語である。行為の関係する先と聞き手が同一人物の場合(つまり、聞き手に対して行為を向ける場合)は、
  これからお宅に伺います。
  これからお宅にまいります。
のどちらでも使うことができる。

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