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国際政治の半世紀

国際政治の半世紀

神谷不二 著

1,900円 四六 216頁 978-4-385-35996-X (品切)

戦後50年、世界の様相は大きく変った。冷戦からポスト冷戦期へ、朝鮮戦争、ベトナム戦争、米中和解、ソ連崩壊など大事件が連続して起っている。本書はその軌跡を国際政治学の泰斗が語りおろしたものである。小社PR誌『ぶっくれっと』に『回顧と展望・国際政治の半世紀』として連載したものをまとめた。

2001年6月10日 発行


【著者略歴】

神谷不二(かみや ふじ)

1949年、東京大学法学部卒業。大阪市立大学教授、慶應大学教授、コロンビア大学客員教授を経て、東洋英和女学院大学国際社会学部長。慶應大学名誉教授、法学博士。国際安全保障学会会長、日本世界戦略フォーラム理事長、平和安全保障研究所および日本国際問題研究所の理事、韓国国際関係研究所在外顧問をつとめる。
主な著書に、『朝鮮戦争』(中央公論社)、『現代国際政治の視角』(有斐閣)、『戦後史の中の日米関係』(新潮社)、『アメリカを読む50のポイント』『朝鮮半島論』『勝負の美学』(ともにPHP研究所)など。


 

【は じ め に】

 いつしか遠いむかしのことになった。大学を卒業して「助手」として研究室に残り、国際政治の勉強をはじめたのは1949年(昭和24年)。以来半世紀、遙けくも来つるものかなと思う。

 半世紀前はどんな世の中だったか。どう形容したらよいか、ひたすら迷わざるを得ないが、とにかくそのころは日本も世界も物情騒然としていた。「山雨将に到らんとして」の詩句を思わせる、明日何が起きてもふしぎではないような、不安で不穏な空気が、そこかしこに漂っていた。

 大東亜戦争と第二次世界大戦が終って、当分は平和を享受できるかと思ったのも束の間、米ソ東西の「冷戦」は加速度的に顕在化し、前途予断を許さぬものを感じさせた。日本はむろんまだマッカーサーの占領下にあり、国際社会の除け者だった。ページ数の極端にすくない新聞に載る海外ニュースとては、APとかロイターとかの外電がすこしだけで、世界の動きなど、とても正確には掴めなかった。

 そんな中で、しかし、西ではベルリン封鎖(四八-四九年)やソ連の原爆実験(四九年)が、東では中華人民共和国の成立(四九年)や朝鮮戦争の勃発(五〇年)が、不気味なものを暗示するかのごとくだった。

 ついでながら、私が助手になったのは「外交史」講座のそれであった。「国際政治」という科目は、当時、政治学関係の科目が他大学に比べて多い東大法学部のカリキュラムの中でも、まだ市民権を持っていなかった。今日ではどの大学にもある「国際関係論」は、その言葉さえほとんど聞いたことがなかった。助手といえども文部教官ではあったものの、その給料たるや二食付の下宿代にも及ばず、将来長く研究職を続けてゆくことができるかどうかに不安を隠し切れぬ日々でもあった。

 こうして、内憂外患こもごもいたるといっても誇張ではないような雰囲気の中に、当時の私はひっそりと息づいていたのである。

 その後五十年、世界の風景は想像を絶するほどの様変りをした。

 革命後三十年で二極世界の一方の雄にまでのし上ったソ連も、世界地図から姿を消して早くも十年になる。

 過去数世紀を通じてさまざまな国に敵意と戦場を提供してきたヨーロッパは、いまやEU(ヨーロッパ連合)の枠を固め共通通貨ユーロを持つまでに、友好と統合を進めつつある。戦前は日本などほんの二、三カ国を除いて欧米の植民地ばかりだったアジアが、戦後は独立国ばかりになり、誤解と過信の所産とはいえ九〇年代の一時期には、「二十一世紀はアジアの世紀」といったユーフォリア(舞上り)まで出たほど、その経済力が高く評価されるようになっている。

 この間、日本もまた大きな経験を重ねた。軍事と政治で大をなすことを断念し、経済に専念する道を戦後選んだ日本は、幸いにして経済大国の目標を達成した。だがその絶頂期は意外に長続きせず、ここ十年来は、内外政とも成功よりも挫折を多く記録している。

 国際舞台に目を向ければ、大戦終結の年に五十一カ国を原加盟国として発足した国際連合が、現在では加盟国の数を四倍近くにまで増やしている。

 以上ざっと概観したように、この半世紀、世界はまさに滄桑の変というもおろかなほどの変貌を遂げた。そしていまさらのごとく気づくのは、変化が早ければ早いほどその痕跡も急速に薄れてゆくという事実だろう。時は仮借なく過ぎる。われわれを待ってはくれない。こうしてホッと一息ついている間にも、冷戦を直接体験した人は刻々と減り、それを肌で感じたことのない人がどんどん増えているのである。

 それに思いをいたしながら、私はいつしか「冷戦の語部」という役目にこだわるようになっていた。

 歴史というのは、結局感性の問題だろう。とすれば、われわれが肌で感じた冷戦と若い世代が本で読む冷戦との間には、すくなからぬ落差があるはずだ。冷戦との出会いや葛藤を語ることによって、その落差をすこしでも埋めることができれば、ささやかながらも後の世代への貢献になるのではなかろうか。

 こうして、私は語部の役に挑んでみようという気持を固め、三省堂の広報誌『ぶっくれっと』担当の塩野谷幹雄さんのお誘いを受けて、1998年1月号から2000年3月号まで十四回、「国際政治の半世紀」と題して勝手なお喋りをさせていただいた。それをベースにして、曲りなりにも一冊の書物にまとめたのがこの本である。

 「半世紀」と謳いはしたものの、中身はご覧のように隙間が多く、繁簡よろしきを得ていない。冷戦の中でも、取上げた問題よりもむしろ取上げていない問題の方が多い。

 それは、しかしながら、わが意に反してそうなったのではない。もともと通史や概説をものすつもりはなく、「つれづれなるままに……心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく」考えてみるつもりであったため、勢いそうなっただけである。法師風の気儘を平に御容赦いただきたい。

 2001年3月


 

【目  次】
はじめに  1

プロローグ−−「国際」を疑う………………………………9

ソ連崩壊と戦後アメリカ外交…………………………………27
 体制の崩壊について−−日本の敗戦とソ連邦解体  28
 ソ連はなぜ倒れたか  38
 朝鮮戦争とベトナム戦争  49
 アメリカ外交とキッシンジャー  60

一九七二年………………………………………………………73
 デタントとは何だったのか 米ソ関係を中心に  74
 デタントとは何だったのか 米中関係を中心に  83
 ヨーロッパのデタント  91
 沖縄返還  105
 日中国交回復  117

戦後半世紀の国際会議…………………………………………127
 下田会議  128
 日米欧委員会  136
 日ソ・シンポジウム  144

朝鮮半島の五十年………………………………………………161
 朝鮮半島と私  162
 躍進する韓国・停滞する北朝鮮  174
 「悪玉韓国」イメージの転換  184
 日韓関係の将来  194

エピローグ−−ポスト冷戦期の課題…………………………203

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